グループ経営を研ぎ澄ませ反転上昇への準備万端
日本製シルクの輸出商社として1931年に創業したGSIクレオスは、その歴史のなかで繊維、工業製品、ナノカーボンへと事業領域を広げつつ、進化してきた。グローバルネットワークが持ち味の商社だけに、今後は海外現法を含めたグループ経営体制の構築が喫緊の課題だ。松下康彦常務取締役と財務部経理課の石田透氏に話を聞いた。
幅広いネットワーク駆使し独自性の高い製品を提供
――業容を教えてください。
松下 ストッキング・ソックス用原糸、高機能性インナー用生地や紳士婦人製品用生地などの繊維素材から紳士インナー、婦人ファンデーションや婦人ファッションアパレルなどの繊維製品までの企画開発、輸出入国内販売を行う『繊維事業』。そして、特殊コーティング塗料・化粧品原料の「化学品」、半導体機材から食品衛生機材を取り扱う「機械装置・資材」、プラモデル塗料工具に輸入家具までを取り扱う「ホビー・生活関連品」の3分野において取引実績を持つ『工業製品事業』。この2つが当社の事業の柱です。加えて、戦略事業としてナノテクノロジーの研究を推進。製品化・事業化を目指してナノカーボンの応用開発に取り組んでいます。
――業界環境が厳しいなか、昨年度は反転上昇されています。理由は?
松下 繊維事業では企画提案型の婦人ファンデーションの取引が堅調でした。工業製品事業では生産調整の進展や設備投資の回復により、樹脂など工業用材料の取引が増加、とくに半導体製造装置等エレクトロニクス関連機材や米国における化学製品の取り扱いが堅調に推移したことが業績の下支えになりました。また、円高もあり独自性の高い化粧品原材料の輸入取引が利益に寄与しました。さらに、前年度の業績にとりわけ貢献したのは数年前から取り組んできた中国香港地域での高機能インナー用原糸及び生地取引で、これが大きく伸びました。
――80年の歴史を重ねられた貴社の強み、コアコンピタンスは?
松下 日本のシルクを米国に輸出する商社として設立された当社は、繊維から工業製品さらにはナノテクノロジーへと領域を拡大してきましたが、強みは、豊富な海外事業のノウハウと有力取引先とのパートナーシップを活用し「事業創造型商社」として新たな価値を生む仕組みを構築している点です。繊維事業はインナー・レッグ・アウターウェアなどの分野で、工業製品事業は化学品、機械装置・資材、ホビー・生活関連品の分野で国内外の幅広いネットワークを駆使し、市場ニーズに適した原材料・製品や独自性の高い商品を提供しています。なかでも、パンストを中心とするレディースレッグウェア用途素材(原糸・加工糸)や模型用塗料などの取り扱いは業界トップシェアを誇っており、ニッチ市場で活躍するユニークさも当社の特徴です。
――淘汰の時代を生き抜くために今後どんな戦略でのぞまれますか。
松下 繊維事業は国内外のグループ会社間の連携を一層強化し、消費者ニーズの分析力、差別化素材の調達力、生産・物流のコーディネート力を統合しながら独自性の高い商品の企画と供給体制を構築し収益基盤の強化を図ります。また、工業製品事業は、既出の3分野を軸においた独自のケミカル事業を構築するため、主要取引先や海外拠点との連携を強化しながらグローバルマーケティングを推進、付加価値の高い商材の発掘と企画・提案力の向上を目指します。ナノテク事業は事業化への取り組みをさらに前進させます。これらによって、差別化素材を基軸とした独自の機能を構築し、次代の生活品質の向上につながる商品やサービスを供給していきます。また、子会社の内部統制システムの強化も重要な経営戦略と位置付けており、グループ経営管理体制構築などへの取り組みも加速させます。
『eCA-DRIVER』で決算業務が10日も短縮
――グループ管理体制の構築といえば、『eCA-DRIVER』導入もその一環ですか。
石田透氏 はい。きっかけは顧問の福田武彦先生(公認会計士・税理士)の紹介でした。従来使用していた他社システムから移行したわけですが、われわれとしては「良いソフトでより確かな決算をしたい」という思いが強く、信頼している福田先生の薦めに応じる形で2009年の12月に導入作業をスタートしました。
――導入プロセスはスムーズにいきましたか?
石田 前システムはデータの切り出しができなかったので、中身を移管するのが少し大変でしたが、毎週のように福田先生に来てもらいほぼ半年かけて導入を完了しました。苦労した甲斐あって導入してからは、連結決算のプロセスが驚くほど効率的になったと思います。
たとえば、以前は“決算発表45日ルール”のぎりぎりを使って残業や土日出勤でへとへとになりながらやっと決算が完了していたのが、いまでは遅くとも35日、やろうと思えば30日でできます。おかげで、人員も1名削減できました。
――どのような面が効率化されたのでしょう。
石田 色々ありますよ。まず、『eCA-DRIVER』では開始(繰越)仕訳が自動作成されるので、非常に楽になりました。以前のシステムではこの作業だけで丸1日くらいかかっていましたからね。
それから、キャッシュフロー計算書の作成もとても速くなりました。連結修正仕訳がキャッシュフロー仕訳に自動転換するし、また、精算表の段階でドリルダウンしてミスをチェックできるのでタイムロスが大幅に減りました。さらに、ASPならではの使い勝手の良さも大きいと思います。最新のアプリケーションを万全のセキュリティーでいつでもどこでも利用できるわけですからね。出張先でも自在に作業を行えるようになりました。
――監査法人のお立場から『eCA-DRIVER』はいかがですか。
加藤芳江公認会計士(監査法人保森会計事務所) 時間の短縮というよりも、監査の質が向上しましたね。以前は、会社に出向いて資料を出していただき、確認し、また出し直してもらい……などと大変でした。一方、『eCA-DRIVER』はASPなので、参照用パソコンから、必要な資料を自由に取り出してチェックすることができますし、監査上必要な資料はほぼ標準機能で閲覧可能です。
石田 実は、監査に必要であろう資料はあらかじめ福田先生にチェックしてもらい取り出せるように設定しているんですよ。
高い機能性と豊富な資料で監査の効率化を実現
加藤 それから、クリックひとつで科目をドリルダウンしていき、仕訳まで入っていけるのでとても分析がしやすいです。各数字がどんな要素で構成されているのかがその場ですぐに分かりますから。あと、連結精算表や連結修正仕訳の増減分析などを2期比較で行える機能もいいですね。それから、CSV形式でスプレッドシートに落とせるので加工がしやすいのも便利です。
他社システムも何度か拝見したことはありますが、『eCA-DRIVER』がもっとも操作性やデータの可視性がよく、資料も揃っています。“監査のツボ”が分かっているシステムという印象です。
石田 固定資産売買の際に、売却側・購入側の明細を自動照合してくれる機能もわれわれとしては助かります。純資産、資本は非常にセンシティブな部分であり、言ってみれば連結の命ですからね。ここでは福田先生のアドバイスにも大いに助けられています。
いずれにしても、私は9階にいて、監査時に加藤先生は7階におられるのですが、以前はこの2階分を頻繁に往来しなければならなかった。ところがいまはほとんど行き来しなくていいし、質問されることもなくなりました。
――連結決算業務のプロセスを教えてください。
石田 海外4社を含め11社の連結対象子会社から順次、BS/PLをメールやFAXで送付してもらい、それをこちらでチェックして組み換え、『eCA-DRIVER』に打ち込む形です。勘定科目を変更したり、細かな修正は全部本社で行っています。国内各社についてはデータ連携によってレポーティングパッケージを吸い上げるスタイルをとることもできますが、まだ実行には至っていません。いまのところ、そういう手間を差し引いても、『eCA-DRIVER』の導入メリットが大きかったということでしょう。数字さえ打ち込んでしまえば、あとはあっという間ですからね。ただ、『eCA-DRIVER』にはせっかく他社ソフトでも連携できるような優れた機能があるのですから、勘定科目を整理・統一するなど、もう一段の環境整備と子会社の経理担当者のレベルアップを行い、近い将来、データ連携を実現したいと思っています。
名称 | 株式会社GSIクレオス |
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業種 | 繊維原料・織物卸 |
代表者 | 深瀬佳洋 |
設立 | 1931(昭和6)年10月 |
所在地 | 東京都千代田区九段南2-3-1 |
売上高 | 1160億円(連結) |
社員数 | 254名 |
URL | http://www.gsi.co.jp/ |
『戦略経営者』2012年1月号より転載
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