140の連結子法人をまとめ税務コンプライアンスを強化
(1)テクノロジーソリューション、(2)ユビキタスプロダクトソリューション、(3)デバイスソリューションという3本の柱を軸に、日本の情報通信技術(ICT)産業を牽引する富士通。今から8年前に連結納税制度を導入し、グループ内の税務コンプライアンスの強化を実現したグローバルTAX室の平井隆史室長と平澤岳仁マネージャーに、TKC連結納税システム『eConsoliTax』の活用メリットなどを聞いた。

「繰越欠損金」の存在を背景に連結納税制度に着目
――富士通の経理部門体制について簡単に教えてもらえませんか。
平井 約60名が所属する経理部には、(1)グループ経営管理部(単独及び連結決算管理)、(2)財務企画部(外部公表・外部監査及びフィナンシャルリスクマネジメント)、(3)グローバルTAX室(税務に関わる事項)、(4)会計センター(社内シェアードサービスセンター)という4つのセクションがあります。グループ経営管理部は「管理会計」を、財務企画部は「制度会計」をメーンにしています。そして、私と平澤マネージャーが所属するグローバルTAX室は「税務会計」を中心にしていて、富士通グループの連結納税をつかさどっています。
――連結納税の対象となる子法人の数はどのくらいですか。
平井 持株比率100%の子法人である約140社が該当します。半導体部門を担っている富士通セミコンダクターをはじめ、アプリケーションを開発しているシステム会社(富士通システムソリューションズ等)、販売系の会社(富士通マーケティング等)や、製造系の会社(島根富士通等)があります。どちらかというと、グループ会社にソフト開発を含めた製造を担わせ、富士通本体は開発や販売といった上流部分に注力しています。
――連結納税制度を導入した時期は?
平井 ご存じのように、国内における連結納税制度は2002年度の税制改正により導入されました。そして、富士通グループではその初年度から採用しております。
平澤 連結納税制度の導入を考えるようになったのは、親法人である富士通が01年度と02年度に「税引き前損失」を計上していたことが背景としてありました。この時期は、情報通信技術(ICT)産業に携わる企業にとってのちょうど“端境期”に当たります。いわゆるドットコムバブルの崩壊や、コンピュータの汎用機からオープン時代への移行、あるいは電子デバイス事業の急速な変化など、会社を取り巻く経営環境が大きく変わった時期でした。この中で様々なリストラクチャリングを進めた結果、税引き前損失が計上されました。しかし、それによる多額の繰越欠損金を期限内(当時5年以内)に使い切れない可能性があった。そこで、富士通の繰越欠損金と子法人の所得を通算する目的で連結納税を適用するのはどうかという話が持ち上がってきたのです。
――子法人の多くは好調な経営を続けていたわけですね。
平澤 ええ。投資リスクなど、リスクのあるビジネスが親法人である富士通に残っている一方で、製造や販売など比較的リスクの少ないビジネスを子会社が担当しているという状況でしたから。本来なら「リスクのある会社もきちんと利益を出す」というパターンにしなければならないところですが、それは正直難しいところがありました。
でも、「親法人と子法人の事業を一本化して見た場合、どうなのか」という観点からすると、それなりに利益は出している。そうした思いもあって連結納税に注目するようになったのです。
システム選定においては「サポート力」を重視
――実際に連結納税制度を導入するにあたり、どんな検討をしましたか。
平井 まずは連結納税の有利不利を数値的見地からシミュレートしてみました。要するに、個別会社ごとに、単体納税から連結納税に移行した場合における税務ポジションの変化を、キャッシュメリットとブックメリットの双方から数年先まで追っていくという作業です。当時、約120社あった連結納税対象子法人のうち、何社かには繰越欠損金があったものの、それよりも親法人の富士通が持っている繰越欠損金の方がはるかに大きかった。子法人の欠損金を切り捨てたとしても、それ以上のキャッシュセーブが見込めたのです。こうした検証をしていくなかで、連結納税導入のメリットが間違いなくあることを確証しました。
また他にも、グループ全体の申告書の記載内容や作成手順といった業務の均質化と業務の流れを統制できるかどうか(「申告業務の制度設計」)や、「税効果会計」の検討もして、将来的な組織再編や事業構造見直しをする場合にも、連結納税制度を導入することは意義あるということを明らかにしました。
――100社を超える子法人が対象になるわけですから、効率的に申告業務を行うためにも、何らかのシステムを活用することを検討していく必要があったと思います。
平井 自社開発ということも少しは考えましたが、すぐに断念しました。というのは、毎年の税制改正に対応していけるだけの人的リソースが確保できないことが明白だったからです。だとすれば、申告業務のベースになる「箱」については外部のパッケージソフトを利用したほうが得策だと考えました。
そこで次の3項目を重要視しながら、システムの選定にあたることにしました。(1)システムの安定性、(2)サポート力(組織力)、(3)導入の容易性の3つです。システムの安定性というのは絶対必要だし、毎年の税制改正に対応(保守・メンテナンス)してもらえるだけのサポート力も欠かせない。さらに「低コストでの導入が可能」といった導入の容易性というのも大切な要素でした。
――最終的にTKCの『eConsoliTax』を採用したわけですが、その決め手になったポイントというと…。
平澤 税務・会計のシステムやサービスを本業にしている点が大きかったですね。税金関係の法律は毎年かなりの改正があり、それをシステムに反映してもらえ、なおかつ法律的にも間違いがないものでなくてはならない。TKC以外のシステムベンダーさんからも売り込みがあったのですが、そこでの信頼性という部分で実績のあるTKCを選びました。
――連結納税の運用をスタートするにあたり、準備段階でとりわけ力を入れたことは何ですか。
平井 連結納税対象子法人の経理担当者に対する教育です。合計4回の子会社向け研修会を開催しました。1回目と2回目については連結納税制度自体に関する知識習得をうながし、3回目と4回目で申告書の書き方も含めたシステムに関する知識を共有してもらいました。
子法人の作業状況を把握できる《進捗管理機能》
――これまでに8回の連結納税申告をした富士通さんですが、申告までの業務フロー(流れ)を教えてください。
平井 まず4月の時点で有価証券マスター登録といった基本・共通情報のセットアップをします。そのうえで確定申告データの入力をして、仮計算をします。そして、5月に入ってから一度、本計算をして地方税の見込み納付をします。さらに入力検証用資料(連結法人税申告書)を作成し、データ検証・修正入力を6月の時点で行って、再度本計算をしたうえで修正申告をします。
平澤 これらの申告までの一環した作業は、あくまで団体行動になります。100名を超える経理担当者が足並みを揃えて仕事をしていくわけですから、親法人としてはそれをまとめていくのが大変なところです。
――これらの申告作業にあたるなかで『eConsoliTax』の使い勝手はいかがでしたか。
平井 子法人が申告データを入力したかどうかなどを、システムの画面上でタイムリーに確認できる《進捗管理機能》はいいですね。「あそこの担当者はまだ、レポーティングパッケージを一度も開いていない」といったことが見えるわけです。これは私たち親法人にとって実に便利な機能です。
――TKCのフォロー体制についてはどんな印象をお持ちですか。
平井 マニュアルが充実しているし、疑問点等があればヘルプデスクがすぐに教えてくれるので非常に助かっています。「申告書のここの欄に数字を出すには、画面上のどこに入力すればいいか」ということを電話やメールで時々質問しています。あと、毎年の税制改正の内容や、それによってシステムのどの部分が修正されたかということを詳しくレクチャーしてもらえる点もよいですね。
――連結納税を導入したことで社内のレベルアップがなされた点があればお聞かせください。
平井 グループ内で統制のとれた申告業務や記載内容の統一化・共有が実現されたことにより、税務調査が入った際には子法人・親法人が一体となって対応が取れるようになったこと等が挙げられます。税務調査は約20~30社を対象に、2~3年に1回のペースであります。いずれにしても連結納税を通じて、グループ内の「税務コンプライアンス・統制の強化」がなされたのは確かといえます。
――現在、グローバルTAX室が目指しているものは何でしょうか。
平井 コンプライアンスが前提となりますが、現在と将来の「税務ポジション」というものを見据え、キャッシュやブック面でのメリットをどのように享受していくかを検討し、実行に移していくことが我々の大事な使命と考えています。「グループ全体の税金マネジメントをどのようにしていきたいのか」「本質的に、税金というものに会社としてどう取り組んでいくか」というコンセプトを基本に、より効果的な業務構築を進めていきたいものです。
名称 | 富士通株式会社 |
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業種 | 通信システム、情報処理システム、電子デバイスの製造・販売等 |
代表者 | 山本正已 |
本社 | 東京都港区東新橋1-5-2 |
TEL | 03-6252-2220 |
売上高 | 4兆6795億円(連結) |
社員数 | 17万2000名(全世界) |
URL | http://jp.fujitsu.com/ |
『戦略経営者』2010年10月号より転載
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