ユーザー事例

株式会社安永

“連結会計”を磨き上げグループ全体を効率化する

三重県伊賀市に本拠を構える安永。その高い技術力は、ミシンから自動車エンジン部品への業態の大転換を支えてきた。そして今また、グループ内の結束を固め、次世代への仕掛けづくりに邁進中である。管理本部経理部の長谷川恵一部長、同経理グループの岩瀬一憲グループ長、中島康資氏、同システムグループの蔵本悟主事に、同社の“連結経営”について聞いた。

株式会社安永

高い技術力を背景にミシンからエンジン部品へ

――創業は戦前の1923年と、旧い歴史をお持ちですね。

長谷川 実際には、株式会社組織にした1949年を当社の創立年に定めています。おかげさまで昨年60周年を迎えました。

――創立当時の業態は?

長谷川 ミシンのアームベッド(頭部)の製造です。1962年には全国一の生産量を誇ったこともあります。ところが、その後、ミシン需要が下降線を辿り、生き残るには他の産業への進出が必要だった。そこで生きたのが、ミシン製造で培った、鋳物(アームベッド)を切削加工する技術でした。

――それが、現在の主力業態である自動車のエンジン部品加工につながるわけですね。

長谷川 はい。三菱自動車さんからの受注が最初でした。現在は、ゼネラルモータース(GM)グループさん、トヨタ自動車グループさん、三菱グループさんがメーン取引先となっています。ちなみに今年度はGMグループさんの売上比率が大幅に伸びそうです。

――どんな部品を?

長谷川 エンジン部品には「5C」と呼ばれるシリンダーブロック、シリンダーヘッド、コネクティングロッド、クランクシャフト、カムシャフトという部品があります。当社は、その中でも、シリンダーブロック、シリンダーヘッド、コネクティングロッドの3つを、戦略商品と位置づけて営業活動を行っています。

――エンジン部品というと難しい加工技術が要求されるのでは。

長谷川 エンジン部品は重要性、機密性が高いので、通常、自動車メーカーは加工を外部に出すことが少なく、そういう意味では、当社の切削加工技術を高く評価いただいていると思っています。それから、部品加工とその設備である工作機械の製造の両方をやっていることも当社の大きな強みになっています。つまり、部品加工のノウハウを工作機械に、工作機械のノウハウを自社の製造設備にと、各々の技術を共有化することにより、総合的な技術力の蓄積ができているのです。

――安永グループの全体像を教えてください。

長谷川 事業セグメントとしては、全体の約75%を占める「エンジン部品」、工作機械などの「機械装置」そして「環境機器」という3事業に分かれます。エンジン部品事業については、先程、お話させていただいた通りで、機械装置事業は、市場で分けると、自動車関連業界と半導体関連業界に分かれます。自動車関連業界の設備機械は、ご存知の通り国内需要はまだ回復には遠く、需要があるのは中国を中心とする海外です。今年の10月(予定)に中国に工作機械の設計・製造・販売を行う山東安永機械有限公司(仮称)を設立するのもそのためです。
 一方、半導体関連業界では、半導体の材料等を切断する「ワイヤソー」という機械や、IC外観検査装置等の製造販売を行っています。最近は、太陽電池の市場において、太陽電池用シリコンを切断するワイヤソーやIC検査の技術を応用して太陽電池用シリコンウエハーを検査する装置を開発。これらの商品の需要が高まっていますので、期待をかけています。また、太陽電池用シリコンをワイヤソーで切断した後の洗浄・検査といった工程も含めた一貫製造ラインを開発し、戦略商品として営業活動を行っています。
 環境機器事業は、関連会社の安永エアポンプがつくる浄化槽用のエアポンプがメーンとなります。また、高級マンションなどに設置される生ごみを処理するディスポーザを製造販売してきましたが、今年5月に設立した安永クリーンテックでは“ディスポーザシステム”としての販売を行っていきます。

厳しい状況だからこそコストをかけて導入…

――連結経営の状況は?

長谷川 09年度は、本体を入れて8社の連結。国内3社とアメリカ、インドネシア、中国、シンガポールの海外生産・販売拠点4社です。10年度は、前述した安永クリーンテックと山東安永機械有限公司(仮称)の2社が新たに加わりますから10社となります。

――連結会計システム導入のいきさつは?

蔵本 2011年度からセグメント会計基準が改正され、四半期ごとにセグメント別の資産を把握する必要があり、それまでの約80ものスプレッドシートを使って集計するやり方ではとても無理だと…。それで、まず、セグメント資産の作成方法をシンプルな形に変更しました。そのあとは、自社開発かパッケージソフトかの選択でしたが、法改正などに適切に対応するためにも、他社の連結会計ソフトを導入することにしました。

――数ある競合ソフトのなかからなぜ『eCA-DRIVER』を選択されたのですか。

蔵本 まず、我々のような規模の会社にちょうど使い勝手が良いソフトだということ。それから、会計の専門家であるTKCさんの実績は、“法改正への対応”という意味で安心できること。さらに、当社の基幹会計ソフト『SuperStream』(SS)との互換性が良いというのも大きかったですね。

――それにしても、大不況で業績が厳しいなか、設備投資に踏み切られた理由は。

長谷川 厳しい状況だからこそ導入したという認識です。当社はMD活動と称してあらゆる業務のムダ取りを行っていますが、セグメント資産の集計方法をはじめ連結決算の業務には大きなムダがありました。これを排除するために投資を行ったわけです。

岩瀬 当時、セグメント資産だけで80、損益計算を含めると120ものスプレッドシートを使っていました。しかも、その業務は1人に任せきり。この状態を、ずっと維持管理するには、引き継ぎの問題も含めてリスクが高すぎると考えました。だったら多少のコストはかかるが、費用対効果を考えて導入した方がいい…そう訴えると、社長にもすぐに決裁をいただけました。

――実務担当者として、機能面はいかがでしょう。

中島 関連会社間取引の仕訳を標準化するなどの改善を事前に行ったこともあり、関連会社間の債権債務など取引データの作成が容易にできるようになったのがありがたいですね。それから、スプレッドシートと違い、いろんな帳表を一度に開いて、比較しながら作業できるのも便利だと思います。いずれにしろ、以前に比べると手間が大幅に減りました。

関連8社を一体管理し効率化とリスクヘッジを実現

――『eCA-DRIVER』を使った業務フローを教えてください。

中島 コア企業である安永本体と安永エアポンプはSSを導入していますから、データはそのまま『eCA-DRIVER』に伝送されます。残りの6社には、レポーティングパッケージのフォームシートを配付・収集し、我々が手入力する形をとっています。

岩瀬 この6社の会社間取引はほとんどありませんから、SSを導入している本体と安永エアポンプできちんと入力されていれば、それほどの手間は発生しません。もちろん将来的には、すべての会社のシステムでデータ連携が可能になれば良いとは思いますが…。

――システム導入によって、どれくらい効率化ができましたか。

岩瀬 単体の決算を閉めてから、連結キャッシュフロー計算書を完成させるまで3日かかっていたのが2日に短縮できました。それと、なにより、そこに至るまでの準備が大幅に簡素化され、また、リスクも減少したと思います。

――『eCA-DRIVER』は、TKC会計人の密着コンサルティングもウリなのですが、いかがでしたか。

中島 土田繁(公認会計士)先生には、節目節目にアドバイスをいただいています。たとえば、海外法人の決算データを換算する際、為替レートの絡みでシステム運用がうまくいかないことがあり、土田先生に助けていただいたこともあります。会計の専門家にいつでも相談できるという状況は、やはり安心ですね。

――今後、目指されている連結決算体制は?

長谷川 いまは四半期、期末だけの決算ですが、いずれは月次の連結決算体制をつくりたいと思っています。そうすればマネジメントに直結するデータを経営陣に提供できるようになります。そのためには、我々もよりスキルアップし、『eCA-DRIVER』の機能を使いこなせる体制をつくっていく必要があると思っています。

会社概要
名称 株式会社安永
業種 自動車部品製造業等
代表者 高崎征輝
所在地 三重県伊賀市緑ヶ丘中町3860
TEL 0595-24-2121
売上高 248億円(2010年3月期連結)
社員数 724名
URL http://www.fine-yasunaga.co.jp/

『戦略経営者』2010年8月号より転載

掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、2010年8月現在のものです。
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