グループ内に複数の課税形態が混在 煩雑な作業をシステム化で改善
グリーンエネルギー事業と省エネルギー支援とを主力にするファーストエスコグループは発電事業会社、外形標準課税会社、一般事業会社と3種類の課税形態の企業を持ち、実務上の課題を抱えていた。それを解決した「連結納税プロセスのシステム化」について、小池久士常務と長谷川祐・主計部長に話を聞いた。
エネルギーに関する多彩なソリューションを提案
──ファーストエスコとはどんな会社なのでしょう。
小池久士常務
小池 売上高は連結で約70億円。会計上の連結対象子会社が5社(税務上6社)ある、東証1部上場の会社です。当グループの主軸のひとつは「グリーンエナジー事業」で、震災以来とくに注目を集めている再生可能エネルギーに関する取り組みをしています。なかでも力を入れているのが木質バイオマス発電。現在、大分と福島で2基運営しています。
木材を燃焼すると二酸化炭素が出ます。しかし、樹木は二酸化炭素を吸収して成長しますから、地球規模の時間軸で考えれば差し引きゼロ。これは環境に影響を与えていないという「カーボンニュートラル」の考え方に基づいています。2基が発電する電気は一般家庭の年間電力量の3万7000世帯分に相当します。
それから太陽光発電についても、大分県で1800キロワットを出力できる設備を運営しています。年間の日照時間を平均3時間と計算すると、200万キロワット時間(2メガソーラー)の発電所ということになります。木質バイオマス発電とこの太陽光発電による電気を他の発電事業者に卸売りをすることがグリーンエナジー事業の内容です。
──なるほど。
小池 ちなみに、税務処理に関していうと、ひとつの会社で発電事業をはじめると別表4と5を発電事業とそうでない事業に分けて計算するという手間が発生します。そのへんも勉強が必要でした。
また、木質バイオマス発電所の運営と燃料の調達を行っているのが、一般事業会社のファーストバイオスです。森林資源の活用・開拓、燃料の安定供給、定期メンテナンスを行っています。発電所運営の人に関係するものはすべてこの会社が担っています。
──「省エネルギー支援サービス事業」も柱のひとつだとか。
小池 文字通りの省エネルギーはもちろん太陽光などの再生可能エネルギーを利用した発電を含め、エネルギーの利用に関する施設の設置やメンテナンスを手がけています。具体的には生産工場に自家発電設備を設置し、電力、熱、蒸気などを提供しています。あるいは、多店舗商業施設やスーパーなどの冷蔵ショーケースの設置、照明や空調設備のインバーター化やLED化などについても行っています。
──ESCO事業とは何ですか。
小池 ESCOとはエネルギーサービスカンパニーの略です。エネルギーに関するあらゆるソリューションを提案します。施工、効果測定や設備改修、資金調達、あるいは達成したコスト削減額のなかから料金を支払っていただく「パフォーマンス」契約もESCOの事業の特徴といえます。運用改善などを含め最低限の投資で効率よく省エネルギーを実践していくのが当社の方針です。
これまで述べてきたように、当社グループは非常に特殊で、発電事業会社3社と外形標準課税会社2社と一般事業会社2社に分けることができます。それぞれに課税形態が違うので、これらの税務計算が一括してできるソフトがほとんど見当たらなかったというのが大きな課題でした。
連結納税のプロセスがシステム変更で10日も短縮
──連結納税を選択した理由は。
小池 当社は過去大幅なリストラで親会社に繰越欠損金が発生しており、将来的に節税効果を享受するために最初から「連結納税ありき」でした。繰越欠損金の充当により、多額の節税額を見込んでいたので、連結納税を採用しないという選択肢はありません(笑)。それから、たとえば新設の子会社を作ったとして、初年度から利益を出すのは難しい。しかし、連結納税の対象会社だとグループで損益通算できるので税金の回収が当年中にできる。これも連結納税のメリットです。
──デメリットは?
小池 ひとことでいって面倒くさい。これにつきます。単体課税所得を計算し、それを連結別表に転記し個別の帰属額を確定、さらに地方税を計算するために単体に戻って計算し直さなければなりませんから。従来使用していたシステムでは単体と連結を別々のソフトで行っていて、ほとんど手作業でした。さらにいえば、会計上の連結とは別に税務上の連結計算をする必要もあり、とにかく連結納税導入初年度(2013年度)と翌年度は大変でした。
──経理関係は親会社ですべて行われているとか。
長谷川祐・主計部長
長谷川 親会社の主計部4名が子会社の管理を行っています。税務処理も同様なので、できれば税務のソフトも統一して切り盛りしたいという思いがありました。しかし、当グループは前述の通り、発電事業会社と外形標準課税適用会社、そして一般事業会社という3つの形態が混在しており、これらを包括できる税務計算ソフトはほとんどありませんでした。
──大変だったでしょう。
長谷川 そこで気付いたのは連動機能が必要だということでした。当初の2年間はほぼ手計算でしたからね。また2014年には発電事業会社の白河ウッドパワーが加入して、地方税の処理にも大変な苦労をしました。
──それでシステムの変更を考えられたのですね。
長谷川 はい。方々探し回りましたが、最終的にたどりついたのがTKCさんの『eConsoliTax』でした。このソフトでは単体で入力すると、それが連結納税額の計算まで連動します。つまり、このソフトひとつですべて完結させることができる。そこがわれわれの評価が高かったところです。要は、従来のように単体と連結を別々のシステムで計算する必要がなくなったということです。それと、入力画面をひらいて数字をセットしてボタンを押すと瞬時に連結の積算ができる。以前のシステムはボタンを押してから答えが返ってくるまでそれこそ何時間もかかるケースがありましたので、その意味でも非常にスピーディーになったと感じています。
また、発電事業会社という特殊な様式もTKCシステムの仕組みのなかですべてそろえていただきました。これも他社システムでは不可能なことでした。
さらにもうひとつ、税効果の算定がこのシステムをベースにして行えるのも大きな魅力です。当社は繰越欠損金が複雑なので将来の見込み収益をセットすると自動的に税効果を計算してくれるという機能は大変にありがたいですね。
──TKCのコンサルティング体制はいかがでしょうか。
長谷川 導入時はもちろん導入後も、専任のコンサルタントがついてくれているのが心強いです。税務とシステムの両方に詳しい方が、気軽に相談にのってくれるというサービスは他社には見られません。至れり尽くせりといった感じでしょうか。たとえば、何かあれば電話かメールで教えてくださいと投げかければ、懇切丁寧に教えてくれる。本当に頼りになります。
──具体的な導入効果について教えてください。
長谷川 以前は単体と連結の税務計算を別のソフトで行っており、その上、税効果会計や地方税の吟味も加えると正味14日くらいかかっていました。ところが、『eConsoliTax』などTKCシステムを導入した昨年度は、これらがすべてひとつのシステムで完結でき、なんと4日程度で終わった。これは驚くべき効果です。なかでも税効果計算の自動化が大きかったと思います。
──4日とはすごいですね。
長谷川 われわれ主計部の決算業務は常に短縮化の要請にさらされています。その意味で今回の10日短縮というのは画期的な成果だし、会社全体の効率化にも貢献できたと思っています。
──あらためてTKCシステム導入の感想を。
長谷川 繰り返すようですが、親会社の繰越欠損金を最大限活用するというのが、当社の連結納税採用の理由でした。はじめから採用する・しないの検討の余地はなかったのです。しかし、連結納税の適用が認められてからが大変でした。なんとかなるだろうという楽観論は吹き飛び、当初は途方に暮れるような状況でした。しかしいまは、単体への入力からはじめて一気通貫で完結する。さらにオプションではありますが税効果の数字まではじき出せる。その意味でTKCのシステムに出会って本当に良かったと思っています。
名称 | 株式会社エフオン (旧:株式会社ファーストエスコ) |
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---|---|---|
設立 | 1997年5月 | |
所在地 | 東京都中央区八重洲2-7-12 ヒューリック京橋ビル7F |
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売上高 | 約70億円(連結:2015年6月期) | |
社員数 | 97名(連結:2015年6月末現在) | |
URL | http://www.ef-on.co.jp/ |
『戦略経営者』2016年3月号より転載
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