制度連結のスピードアップと管理連結の充実を同時に実現
「アースノーマット」「ごきぶりホイホイ」「モンダミン」など数々のヒット商品で知られるアース製薬グループ。家庭用殺虫剤と生活用品の2つの分野で長年業界を牽引してきた。そんな同グループの財務戦略を支えているのが、TKC連結会計システム『eCA-DRIVER』だ。アース製薬管理本部経理部の田中精一役員待遇部長と松原卓史課長に、同グループの事業戦略と併せてその活用法を聞いた。

新カテゴリーの創出でヒット商品を連発
――御社は「ごきぶりホイホイ」や「アースノーマット」などのヒット商品をお持ちです。特に殺虫剤市場ではシェア50%でトップですね。
田中 当社は「ベストクオリティで世界と共生」を社是とし、高品質商品でお客様(消費者)の暮らしに役立つことを目的に事業展開しています。事業領域はおっしゃった家庭用殺虫剤分野と、「モンダミン」(洗口液)や「バスロマン」(入浴剤)など生活用品分野の2本柱です。各カテゴリーでナンバーワンもしくはナンバーツーを狙える付加価値の高い商品開発を基本戦略にしています。
――「アースノーマット」は印象深いです。「煙が出ない蚊取り器」という常識を覆す商品でした。
田中 「アースノーマット」は画期的であったためにかえって認知されるまで時間がかかりました。発売当初は1軒のお店で1日に数個しか売れず、本社の事務スタッフまでかり出し社員総出で店頭での売り込みを行ったんですよ。
このように新市場を開拓していくというのはなかなか難しいことなんです。特に家庭用殺虫剤の市場は成熟化してきているので独自の視点で商品開発を行わないといけません。
――「独自の視点」とは?
田中 たとえば市場を細分化し新たなカテゴリーを創出する方法です。一例を挙げると、新商品の「蜘蛛の巣消滅ジェット」。これは蜘蛛に直接かけて駆除する効果と巣を張らせない効果が特徴のスプレー剤で、蜘蛛という個別の害虫の駆除に特化させることで差別化しています。このように生活者の視点と斬新な発想を融合させることが大切です。
――販売促進にも工夫が必要ですね。
田中 販促活動にはテレビCMを行うなどして注力してきました。ただ、すべての商品のテレビCMが打てるわけではありませんから、店頭で直にお客様に手にとっていただけるようパッケージデザインやネーミングの工夫なども同時に行っています。
加えて販売店に直接提案営業を行うといったこともしています。これは女性スタッフの専門部隊がきめ細かな売り場演出などを提案するというもので、2004年に立ち上げました。現在は200名体制で、これを300名に増やす予定です。
――ということは、販売店に商品をダイレクトに卸しているのですか。
田中 いいえ、当社は代理店制度を採用しており、各地域の代理店を通じて全国のスーパーやドラッグストアなどの販売店に卸しています。その一方で販売店に対し直接インストアマーチャンダイジング(品揃え、陳列法、売り場演出など店舗内で行う販促活動)の支援を行っているわけです。販売店の売上が向上すれば代理店の取引量も増加し、結果、当社を含めたトリプル・ウインの関係が築けると考えています。
――連結子会社で海外市場の開拓にも着手していますね。
田中 連結子会社は国内2社、タイに1社、中国に2社、計5社あります。ちなみに当社自身も大塚製薬を筆頭とする大塚グループの一員です。
――子会社それぞれの概要を…。
田中 国内では工場施設などの衛生管理サービスを提供するアース環境サービスと、ペット用品などの製造販売を行うアース・バイオケミカル。海外ではタイのアースケミカル(タイランド)社がタイ国内向けに殺虫剤や日用品の製造・販売。中国の天津阿斯化学が日本向けと中国国内向けの殺虫剤製品の製造販売、安速日用化学(蘇州)が日本向け日用品の製造です。
現状、中国子会社は日本向け製品の製造拠点という意味合いが強いのですが、中国国内市場の開拓にも着手し始めています。経済発展を続ける中国は市場としても非常に有望で長期的な視野の下で展開をしています。
決算業務を30日に短縮金融商品取引法へ対応万全
――昨今、日本企業に内部統制が強くが求められてきています。御社も管理面の強化をはかっていると思いますが、中でも連結会計においては『eCA-DRIVER』を導入し対応していると聞いています。
田中 当社は「アース製薬行動指針」を策定してコンプライアンス体制の整備を行うなど、内部統制強化のための数々の施策に取り組んでいます。『eCA-DRIVER』もその一部です。税務・会計の専門家集団が推奨する会計ソフトということで、平成16年末に導入しました。
松原 直接の動機となったのは、平成17年11月の株式上場に備え決算の早期化と四半期決算体制の構築が必要だったからです。
選定にあたっては5社以上からプレゼンを受けたのですが、その中で
――導入はスムーズに行えましたか。
松原 上場審査と並行してシステムの導入作業を行わなければならず非常にタイトなスケジュールで行ったのですが、TMC(
――導入のメリットは?
松原 第一に連結会計処理の飛躍的な効率化が図れたことです。『eCA-DRIVER』の導入前はエクセルで行っていましたから、それは比較にならないほど楽になりましたね。
特に年度決算の場合、法人税額を算出する正規の税務手続きを経て個別財務諸表を完成し、会計監査に回した段階でもうヘトヘト。その後さらに子会社のデータを集めて連結処理するんですから作業量的にも精神的にもかなりきつかった。税効果仕訳の計上やエクセルへの入力チェックなど煩わしい手作業をミスなくこなさなければならないので重圧感がもの凄くありました。それが『eCA-DRIVER』ならボタン操作で終わる。面倒な開始仕訳や税効果仕訳が自動で行われ、修正仕訳があっても一貫性をもって自動的に再処理されます。また親会社主導で運用できるので子会社の負担もほとんどありません。それでキャッシュフロー計算書やセグメント情報までがほぼ完璧にできるんです。大幅な時間短縮ができましたね。
――来年4月から金融商品取引法で連結グループの四半期報告書の45日以内の開示が義務化されます。
松原 『eCA-DRIVER』の導入によって現在、四半期決算については30日で開示できる体制にまでなっています。金融商品取引法には安心して対応できそうです。
連結精算表2期比較機能でグループ業績を詳細に把握
――連結会計処理の効率化以外ではどのような効果がありましたか。
田中 連結精算表の2期比較機能が分析業務に役立っています。たとえばグループ全体の業績が前年並みであっても、子会社レベルで見るとバラツキがあったりします。売上はあがっているのに利益が減っているなどといったことが、子会社ごとに細かく把握できています。
他社との競争が激しくなっている中で、経営企画部などからも連結レベルの業績管理資料を求められることが増えてきました。その作成においてもこの機能を有効活用するようにしています。
松原 子会社の経理担当者にこうした資料を作成・提出させるのは、事務量負担やスキルの面からいって実質的に困難です。それが『eCA-DRIVER』を導入したことで子会社に負担をかけずに、上司から「こういう資料が欲しい」といわれてもすぐに作成して出せるようになりました。
――最後に今後の抱負を。
田中 制度連結への対応は現状満足できるレベルに来ています。今後は管理連結において今以上に『eCA-DRIVER』をフル活用できるようにしたいですね。具体的には予算連結業績管理体制の構築を考えています。
名称 | アース製薬株式会社 |
---|---|
業種 | 家庭用殺虫剤・生活用品製造 |
代表者 | 大塚達也 |
設立 | 1925(大正14)年8月 |
所在地 | 東京都千代田区神田司町2-12-1 |
TEL | 03-5207-7451 |
URL | http://www.earth-chem.co.jp/ |
売上高 | 844億円(連結ベース) |
社員数 | 1789名(連結ベース) |
上場 | 東証一部 |
『戦略経営者』2007年10月号より転載
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