効率化と標準化を可能にした電子申告への取り組み
故事の「小異を捨てて(残して)大同につく」を社名の由来とする大同生命保険。「加入者本位」「堅実経営」を創業の理念とし、経営リスクをカバーする保障商品を中小企業へ提供してきた。今年、創業115周年を迎える同社は、電子申告にも早くから取り組み、税務業務の効率化を実現している。主計部の金澤巌部長、佐々木大輔課長に話を聞いた。
──大同生命さんと言えば、「企業保障」というイメージですが……。
金澤巌部長
金澤 ご契約企業は現在約36万社に上ります。中小企業や税理士先生などを会員とする各種団体と提携し、中小企業のお客さまに充実した保障をお届けすることで、リスクマネジメント確立のお手伝いをさせていただいています。
──TKCとも古くからのご縁があります。
金澤 昭和49年に業務提携、51年には「TKC企業防衛制度」を共同開発させていただきました。万一の場合の経済的損失額(運転資金・借入金返済資金・納税準備資金などの「企業防衛のための資金」+ 役員退職慰労金などの「家族を守るための資金」)を、財務データから合理的に算出した「標準保障額」に基づいて、当該企業の経営指導を行うTKCの会員先生方がリスク対策のご提案を実践するこの取り組みは画期的なものであり、経営者の方々から、大きな評価をいただいてきました。当社がTKC全国会さまの理念である「自利利他」の理解につとめ、組織をあげて行動してきたことも成功につながった一因だと考えています。
──近年は個人保障にも力を入れておられるとか。
端末での保険申し込み手続きも推進
金澤 企業保障だけでなく、経営者ご自身に「個人保障」を提供することで、バランス良く「法人・個人のトータル保障」をお届けすることに注力しています。この一環として、経営者が死亡あるいは要介護状態になった場合の収入減少に備える「収入リリーフ」、介護施設への入居などによる介護費用の負担に備える「介護リリーフ」という新たな商品を平成27年10月に発売しました。
また、お客さまの利便性向上と事務品質の向上のため、平成25年から営業用端末「エース・ウィズ」を導入し、端末での保険申し込み手続きを可能にしています。
──4月から中小企業の「健康経営」の実践を支援する取り組みも開始されたそうですね。
金澤 健康経営は従業員1人当たりの役割が大きい中小企業にこそ必要な取り組みですが、ノウハウやコスト等の課題があり、普及が進んでいません。そこで、当社では健康経営の実践支援ツール「KENCO SUPPORT PROGRAM」の提供を開始しました。また、健康経営セミナーの開催による健康経営理念の啓発にも取り組んでいきます。
──社会貢献活動にも熱心に取り組んでおられます。
金澤 「全国障害者スポーツ大会」について、その前身となる大会を含め、平成4年から毎年特別協賛するとともに、役職員がボランティアとして参加しています。さらに、平成27年1月には、日本障がい者スポーツ協会とオフィシャルパートナー契約を締結。同協会主催の「ジャパンパラ競技大会」などの支援を行っています。
──創業100周年を迎えた平成14年から、大学でのオープン講座を実施されているとか。
大同生命創業者の一人である広岡浅子
金澤 各大学のご協力のもと、中小企業経営者・後継者や地域のみなさまに、経営・ビジネスなどに関する知識・スキルの習得の場を提供しています。ちなみに昨年度は、当社創業者の一人である広岡浅子が創立にかかわった日本女子大学をはじめ、福島、明治、法政、専修、関西学院、関西、神戸女学院、福岡の各大学で開催しました。例年、TKCの会員先生がご登壇される講座もあり、受講された皆さまからご好評をいただいています。
──その広岡浅子さんはNHKの連続テレビ小説「あさが来た」で一躍有名になりましたね。
金澤 女性実業家の先駆けである広岡浅子、そして当社の礎を築いた大坂の豪商「加島屋」について、さまざまな機会を通じて紹介しています。また、昨年10月からは、「あさが来た」のヒロイン・あさを演じた女優の波瑠さんをイメージキャラクターに起用したCMを全国放映しています。
TKCシステムの導入で法人・地方税を一元化
──平成16年に連結納税制度を採用された際、TKCの連結納税システム『eConsoliTax』を導入されました。狙いは?
佐々木大輔課長
佐々木 それまでは、法人税、地方税の申告書を、別々の担当者が別々の市販ソフトで作成し、紙ベースで提出していました。そのため、法人税で金額の変更があった場合、地方税にそのデータが反映されず、申告金額を誤るというリスクがありました。また、従来の市販ソフトでは、電子申告への対応ができず、地方税の税率変更なども自ら調査して打ち込む必要があり、これも誤申告へとつながる可能性を高めていたと思います。この状態を、『eConsoliTax』導入によって一元化することでリスクを大幅に減らし、加えて作業の効率化ができると考えました。
──実際どうでしたか。
佐々木 導入当初は、まだ先行事例が少なかったにもかかわらず、TKCさんによる迅速なサポートにも助けられて、適切な制度対応・法人税の電子申告を行うことができました。また、地方税ポータルシステム「eLTAX」については、その後、電子申告可能な自治体が次第に増えてくるなか、数年前に、法人税と連動した電子申告を実践。業務効率化やコスト削減につなげました。
──地方税申告書を提出しなければならない自治体はどれくらいあるのですか。
佐々木 223団体(47都道府県、176市町村)に上ります。これほどの数の申告書を印刷し、手作業で押印・封入するには、大変な手間がかかります。電子申告に移行後は、作業時間の大幅な短縮ができました。
──そのほかにシステム導入のメリットはありましたか。
佐々木 『eConsoliTax』では、クラウド上で常にアップデートが行われるため、最新の法令等に準拠した申告書を作成できます。また、保険会社特有の別表、地方税計算などにも完全対応しているので、非常に楽ですね。さらに、法人税と地方税の連携と同時に、外国税額控除の別表も連動しており、申告経験の浅い担当者でも漏れがなく対応できます。出力される納付書はそのまま銀行へ持参できるのも便利ですね。加えて、帳表が充実していますので、計算過程が分かりやすく、検証が容易ですし、自動で誤りを見つけ出す「税法エキスパート・チェック機能」によって単純ミスもなくなりました。また、TKCさんは税務の専門家ですので、分からないことがあればすぐに回答をいただけますし、とにかく安心してまかせられます。
──年次法定調書(所得税法や相続税法上、提出することが定められている資料)についても、電子申告を実践されています。
佐々木 平成27年度の税制改正で、年間1000枚以上の法定調書について電磁的記録による提出が義務づけられました。それに合わせて、TKCさんの『e-TAX法定調書』を導入して、法定調書の電子申告を行っています。
──効果はいかがでしょう。
佐々木 導入前までは、約600の団体に、給与支払報告書などを紙ベースで提出しなければなりませんでした。そのための法定調書の仕分けと郵送作業がなくなり、ワンクリックで対応できますので、手間が大幅に削減しました。また、たとえ、誤りがあっても再提出や修正作業も容易です。さらに、以前は国税関係は主計部が、地方税関係は人事総務部がそれぞれまとめて提出していたものが、いまでは主計部に集約されています。このように、大変な効率化を実現できたと思います。
──今後の課題は?
佐々木 法人税申告でCSV読み込み機能を一部の別表でしか使用していないので、今後はより活用して入力誤りの防止と作業時間の圧縮を行いたいですね。また、現在、償却資産税は、不動産・総務部門が固定資産システムでデータを作成し、紙ベースで申告書を提出しています。提出先は約200団体もあり、かなりの手間がかかっています。TKCさんの『e-TAX償却資産』を導入して電子申告することにより、効率化したいと思い、現在検討中です。
──電子申告を検討されている企業にメッセージを。
佐々木 当社が電子申告を進めてきて分かったことは、効率化やコスト削減はもちろんですが、属人的な部分が減り、業務の標準化が進んだということです。結果として、たとえ担当者を変更してもスムーズな引き継ぎが可能になりました。一つの税目であっても電子申告を実行してみると、精神的な抵抗感が減り、税目を拡大していくモチベーションが上がっていきます。紙ベースでの申告に慣れている会社では、つい、電子申告への移行を面倒に思われるかもしれませんが、ためしに、やりやすい税目から挑戦してみてはいかがでしょうか。
名称 | 大同生命保険株式会社 |
大阪本社(大阪市西区) |
---|---|---|
所在地 | 大阪府大阪市西区江戸堀1-2-1(大阪本社) 東京都中央区日本橋2-7-1(東京本社) |
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保険料等収入 | 7,489億円 | |
社員数 | 6,959名 | |
URL | http://www.daido-life.co.jp/ |
『戦略経営者』2017年5月号より転載
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