税制改正への即時対応と電子申告で効率性と正確性の向上を実現
大同特殊鋼は、自動車や産業機械といった日本の基幹産業を支える世界最大級の特殊鋼専業メーカー。同社経理部門がTKCの電子申告システム『ASP1000R』を導入した。経理部の林克彦部長、清水享経理室長、堀内優雅氏、加藤正典氏に背景を聞いた。
グローバル展開で新たな成長シナリオを描く
――まずお聞きしますが、特殊鋼とは何を指すのでしょう。
林克彦部長
林 普通鋼は鉄と炭素が主成分であり、自動車のボディの鋼板や建設用の鉄骨に使用されますが、特殊鋼はクロムやニッケルなど合金鉄を添加して強靭性、錆びにくさ、耐熱性などの特性を付加したものです。特殊鋼専業ではわれわれがトップシェアです。
――どんなところに使われるのでしょうか。
林 当社の鋼材の場合、自動車用部品に6~7割。あとは産業機械や航空機などの部材に使用されています。自動車関連を例にとると、外からは見えないエンジンのクランクシャフトやバルブ、駆動部分のトランスミッションなど、強靭性や耐熱性が求められる部品に使われます。
――最近の事業環境について教えてください。
林 自動車関連では国内生産の縮小は避けられませんが、当社の主な顧客である日系メーカーは海外を中心に生産が増加する見通しです。また、産業機械は設備投資需要が今年に入って国内外とも持ち直しの機運があり、さらに、エネルギー、航空機分野は世界的な成長局面に入っています。しかし、一方で懸念材料もあります。円安や原発事故の影響で資材やエネルギーコストが増大し、14年度は電力料金の値上げも大きく影響しています。
――そのような環境にどう対応されていますか。
星崎工場で圧延中の特殊鋼線材(上)
電気炉で溶解された鋼(下)
林 製鋼プロセスの合理化を狙い、約200億円かけて主力の知多工場の設備を更新しました。150トン大型電気炉を導入するなどして、エネルギーの高効率化と溶解・精錬機能の向上を進めています。溶解・圧延などの上工程は良質なスクラップが手に入る国内で行い、鋼材等を広大なアジア市場に供給していくため、流通、加工拠点などのサプライチェーン構築に一層注力していきます。
――課題は。
林 まず、知多工場の製鋼プロセスの合理化に代表されるようなエネルギー対策。それから、輸出競争力の強化。現在、海外での売り上げが全体の約20%ですが、これを次の3カ年計画(2015年度~17年度)中には30%を目指したいと考えています。ここのところアジア市場への拡販は順調で、金型材料である工具鋼、航空機、発電機用途を中心とした自由鍛造品などのグローバルリーディング商品を中心に、14年度も拡大が継続すると見ています。
渋川工場では高級鍛造品を製造しており、世界的なインフラや航空機需要への対応に力を入れつつあります。また、磁石事業、ターボ部品事業などを次世代成長事業と位置づけ、設備投資と世界市場への販路拡大に取り組んでいます。
電子申告の実践で手間とコストが大幅に節約
――話は変わりますが、従来使用されていた他社の申告システムからTKCの電子申告システム『ASP1000R』に変えられたいきさつを教えてください。
清水享経理室長
清水 結論からいうと当社担当者の熱意です。ぜひ、TKCのシステムに変えたいと(笑)。システム導入の手間を乗り切るには担当者のやる気は大事ですからね。
当社では従来、若手の税務担当者は一人としてきました。責任範囲を明確にして当事者意識を高く持ってもらうためです。ただ、税務の分野は奥が深いため、担当期間が長くなりがちであり、申告時期の業務負荷も高くなってしまうというデメリットがありました。一方システム面では、未対応の別表があったり、転記が必要な部分があり、やや非効率で担当者の負荷が増している面がありました。
また、電子申告については地方税は行っていない状況でした。今春、地方税ポータルシステム(eLTAX)がすべての自治体で使えるようになりましたので、このタイミングに、まず、より効率的なシステムに変更し100%電子申告にすること、そして、それによって担当者の負荷を少しでも減らし、作業だけではなく考えることにより時間を使えるようにしようということで『ASP1000R』の導入に踏み切りました。
今後は税務担当者のローテーションや育成法も少し見直して、税務がわかる人を増やしていくことに力を入れていくつもりです。
堀内優雅氏
堀内 地方税もすべて電子申告化できた結果、印刷や封筒詰めの作業がなくなったのはもちろん、代表者・経理責任者の自署、押印といった作業も電子署名に置き換わり、手間とコストの大幅な節約につながったと思います。
また、税制改正に即座に対応できるシステムだったということも導入理由の一つです。平成25年度税制改正で生産等設備投資促進税制が創設されましたが、従来のシステムはこれに対応していませんでした。この税制では法人税額の20%が税額控除の限度になっていますが、申告の作業中には課税所得がめまぐるしく変わるため、従来のシステムのままでは非常に混乱することが予想されました。『ASP1000R』に変えたことでこの税制改正にもしっかり対応できました。税額控除限度額が自動計算されますので安心して作業できました。
その他にも、外国税額控除の別表に対応しているのも魅力でした。それからなんといっても、画面を開いたときに申告書の作成から電子申告を完了するまでのプロセスがメニュー化されて出てくるので、非常にわかりやすいですね。
経営判断をサポートできるタイムリーな情報を提供する
――TKCのコンサルティング体制はいかがでしたか。
加藤正典氏
堀内 導入時には宇野邦規先生に3回ほど来社いただき、操作まわりを中心にご教示いただきました。20個くらいの質問をあらかじめ送付させていただいていたのですが、そのすべてに明瞭に答えていただき、大変助かりました。
――実際の申告は堀内さんから加藤さんに引き継がれてから実施されたとのことですが。
加藤 堀内の指導を受けながら、分からないところは宇野先生に電話やメールで質問するというスタイルで進めました。以前、他のシステムを導入した際に、ベンダーの担当者からの回答を税法に照らして見直したところ疑問点が出てきたというような出来事がありました。その点、TKCでは、税理士の宇野先生に回答をいただけるので助かっています。
――今後の経理部のあり方をどうお考えですか。
林 決算業務や税務申告はこれからも変わらず、正確性と効率性をより追求していきます。と同時に、TKCさんのお力も借りながら、複雑化していく事業に経営判断をサポートできるような経理情報へと適切に加工し、タイミングよく提供していける力をつけていきたいと思っています。
名称 | 大同特殊鋼株式会社 | |
---|---|---|
創業 | 1916年 | |
所在地 | 愛知県名古屋市東区東桜1-1-10 | |
売上高 | 4577億円(2013年度連結) | |
社員数 | 10709人(2014年3月現在 連結) | |
URL | http://www.daido.co.jp/ |
『戦略経営者』2014年11月号より転載
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