緊密なグループ間の連携が大きなシナジー効果を生む
橋梁、道路、まちづくり等の社会資本整備のコンサルティングを手がける長大。高い技術力を持ち、グループ会社をうまく連携させながら厳しい環境に立ち向かっている。同社の山脇正史取締役管理本部長、経理部の菅原淳部長、増村明彦主査、岡本直也主任、そしてシステムコンサルタントの一木伸夫公認会計士に、グループ経営のコツについて話してもらった。
──現在の業況はいかがでしょう。
山脇正史取締役管理本部長
山脇 今上半期(9月決算)は早期発注傾向が強まり、国内の受注はいまのところ堅調に推移しています。当社ではICT技術を活用したCIM(3次元データモデルなどの導入・活用による生産性向上の取り組み)やi-construction(ICT関連技術の統合)、ビッグデータの活用などの分野で他社に先んじていると自負しており、今後、これらを活用しながらより大きなビジネスチャンスをつかめるのではと期待しています。しかし一方で、海外事業が、ISのテロや中国の金融不安などの影響で案件の延期や中止が相次ぎ、前期の業績を落とす要因となりました。今期に入り、状況改善の兆しも見えてきましたが、まだ先行きは不透明です。
──経営の安定化が課題ですね。
山脇 当社は、橋梁(きょうりょう)や道路、港湾、まちづくりといった社会資本整備にかかわる官公庁の仕事が全体の58%を占め、公共事業の波に左右されるというリスクを抱えています。そのため、道路や公共施設の運営、デマンド交通システムの提供などサービスプロバイダーとしての方向性も探りながら、安定経営への転換を進めています。ちなみに海外では新事業への投資にも力を入れており、たとえばフィリピンなどでは小水力発電事業や、稲作やウナギ・エビの養殖にも取り組んでいます。これらは、産業育成や雇用創出を含めた地域開発・振興事業への参入を意味します。
さらには、「働き方改革」にもいち早く取り組んでいます。経営理念の「人・夢・技術」にも表されているように、当社では、人は会社の財産だと考えています。昨年、プロジェクトチームをつくり、ワーク・ライフ・バランスや女性活躍に結びつく施策を今年度中には打ち出すよう全社的な意思統一ができています。建設というと男性のイメージですが、近年は、まちづくりや環境の分野などで女性のセンスを必要とする分野も増えてきました。その意味でも今後は適材適所で、女性の力を最大限生かしていく仕組み作りが必要になってきます。
──企業グループを教えてください。
山脇 現在、連結対象のグループ会社が6社になります。いずれの企業も、競合しない分野で高い技術を持っています。お互いが連携することで補完し合い、案件形成から企画、設計、各種コンサルタントサービス、マネジメントサービスまでをノンストップで提供することを目指しています。
──グループ会社の特徴とは?
山脇 基礎地盤コンサルタンツは地盤工学のコンサルタントとしてはパイオニア的存在で日本のトップ企業です。シンガポールやマレーシアにも子会社(グループ連結対象)を保有しています。また、長大テックは道路など公共施設の点検や維持管理、順風路は道路交通サービスの開発運営に特化しています。各社が連携することでシナジー効果を発揮し、さらには適正に機能するコーポレートガバナンスによって株主に高く評価される企業集団になることを目指しています。
グループ会社への徹底指導で連結決算の業務品質が向上
──『eCA-DRIVER』導入のきっかけは?
菅原淳部長
菅原 従来はエクセルを使用して連結処理を行っていましたが、2011年に当社と同規模の基礎地盤コンサルタンツをグループ化し、その海外現地法人2社を加えて6社の連結グループとなったことで、連結決算業務のスピードと品質を維持することが困難になってきました。そこでパッケージソフトを導入する方向で検討がスタートしたのです。
──なぜ、TKCのソフトを?
菅原 当初、4つのソフトを比較検討しましたが、TKCのコンサルティング体制は群を抜いていました。担当者の方も熱心に相談に乗ってくれる上、会計の専門家がコンサルティングをしてくれるというところが魅力的でした。こんなソフトは他にはないですし、価格的にはより安いものもあったのですが、トータルに見て『eCA-DRIVER』が最も安心でき、コストパフォーマンスもいいと判断したのです。また、クラウドサービスなので、どこからでもアクセス可能で、グループ会社側からダイレクト入力できる。これもTKCを選択した理由のひとつです。
増村明彦主査
──具体的には?
増村 やはり、公認会計士である一木伸夫先生に、立ち上げから運用にいたるまでご指導いただけたのが大きかったと思います。システムの面からも法制度の面からも、分からないところはすぐに教えていただけますから、安心して導入を進めることができました。
──一木先生は、どのようなご感想をもたれましたか。
一木 それまで長大で使用されていたエクセルの仕組みを教えていただいた上で、それらが『eCA-DRIVER』ではどれに当たるのかを丁寧にご説明させていただきました。その際には、自由に帳表が作成できるマネジメントレポート(MR)設計ツールを活用し、差異が出たところに色をつけて、数値のチェックができるようにしながら進めていただけたのが、成功の理由のひとつかなと思っています。
岡本直也主任
岡本 いきなり違うシステムを押しつけられても何が何だか分からなくなりますが、ひとつひとつの項目について、従来のやり方と『eCA-DRIVER』を比較してご説明いただいたことで、われわれサイドも迅速に理解できたのだと思います。
──導入されていかがでしたか。
増村 連結決算は間違うと莫大(ばくだい)な金額の差異が出ますから、非常にリスキーです。そのため『eCA-DRIVER』のエラーチェック機能には助けられています。この機能を間違いなく活用できるように、詳細なチェックリストつくって取りこぼしがないようにグループ会社にも徹底しました。せっかくの機能も運用を正しく行わないと意味がないですからね。これによってグループ全体の業務品質がかなり上がり、ミスはほとんどなくなりました。
──その「グループ会社への対応」というところが大変だったのでは?
菅原 その通りです。まず、TKCの東京本社で、各グループ会社の担当者を集めて、説明会を開いていただきました。これをとっかかりとして、後は、レジュメをもって一社一社回りながら操作の指導を行いました。
岡本 以前は、各社が誤ったデータのまま報告してきて、それを差し戻しても、また誤ったものが送られてくる(笑)。結局は親会社で帳尻を合わせるようなことをしていました。しかし『eCA-DRIVER』導入後は、システムの整合性チェックやスプレッドシートで作成した個別のエラーチェックが完了してから報告してもらうようにしていますから、非常に効率化されました。
一木伸夫公認会計士
一木 長大の経理部の方たちは、もともとの志が高く、このシステムを使い倒してやろうという意識が垣間見えました(笑)。それが実を結んでいるのだと思います。絶対自分たちでは修正入力は行わずに、グループ会社に徹底的に指導する。なかなかできることではありません。ところで監査法人の反応はいかがですか。
増村 監査法人に閲覧権を与えることで、作業工数は確実に減っていると思います。その分、料金を下げてもらいたいくらいです(笑)。それと監査法人のなかには『eCA-DRIVER』に詳しい方もおられ、そんなときは助かりますね。「分からなければ聞いてよ」と言われることもあります(笑)。
──最後に山脇管理本部長のご感想を。
山脇 業務品質の向上や省力化は会社全体を通じた課題です。属人的なものを排し、できるだけ一気通貫で行うこと。『eCA-DRIVER』導入もその一環です。この方向性をグループのなかに浸透させていきたいですね。
名称 | 株式会社長大 |
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設立 | 1968年2月 | |
所在地 | 東京都中央区日本橋蛎殻町1-20-4 | |
売上高 | 249億円(2016年9月期連結) | |
社員数 | 1,423名(グループ) | |
URL | http://www.chodai.co.jp/ |
『戦略経営者』2017年2月号より転載
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