事業内容についてお聞かせください。
常務取締役 業務統括本部長
和久定信氏
和久 関西を地盤とする総合福祉企業です。学習塾の経営からスタートし、2000年に訪問介護ステーションを立ち上げて本格的に介護事業を開始しました。今では高齢者介護、障がい者(児)支援、医療、保育など幅広いメニューを提供していますが、介護保険法に基づく訪問介護、有料老人ホーム、認知症グループホームが事業の3本柱となっています。コロナ禍のダメージは最小限にとどまっており、業績は施設系、在宅系とも堅調に推移しています。
現在、グループで全国482事業所を展開し、創業の地である大阪では174カ所を設けシェア1位を占めています。
総合福祉企業を標榜していますが……。
和久 日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は3割と言われており、また、障がい者率は7%、また未就学児率は12%であり、合計すると約50%になります。つまり、日本国民の2人に1人は福祉の対象であり、その方々にサービスを提供するのが当社の使命と考えています。こうしたことから、最近は第4の事業として、在宅サービスのノウハウを活用して、上場企業では数少ない障がい者(児)支援事業の展開を加速しています。
オリジナル帳票を簡単に作れる「MR設計ツール」
TKCシステムを導入された背景を教えてください。
経理課 課長 井上裕樹氏
井上 以前のシステムは従業員数で保守料が決まる料金体系でした。しかし、当社の事業拡大が早かったこともあり、システム保守料が当初の2倍以上になっていました。さらに、将来的にも速いペースで従業員増加に伴う、システム保守料の増大が見込まれる状況でした。また、以前のシステム導入に携わった社員が退職してしまい、システムの利用範囲を拡張することが難しくなっていたことも見直しの要因です。
『FX5』と同時に、『FAManager』も導入した理由は何ですか?
経理課 マネージャー 辻下弘明氏
辻下 TKC以外のシステムベンダー数社からもプレゼンを受けました。そうした中で当社は業務をシステムに合わせ、合理化や運用コストの最小化を図ることをポイントに比較検討しました。その結果、3つの点でTKCのシステムの良さを感じました。
1点目は、Excelで作成した仕訳データを直接システムに連携できる機能が標準で備わっているという点です。2点目は、Excel上で初期設定の実施後は自動的に独自レイアウトの帳票が作成され、作成時間の短縮・正確性の向上が図れる「マネジメントレポート(MR)設計ツール」の機能がある点です。
そして、3点目が専用サーバーを自社で用意しなくてもセキュアな環境でシステムを運用できるという点です。これらの点が他社よりも抜きん出ていたことが採用の決め手になりました。しかも、TKCが保有するデータセンターを活用したクラウドサービスなので、安心感がありました。
また、以前の会計システムでは、レンタルサーバーを使って運用していましたが、その提供会社がサーバー事業から撤退することになったため、システムを切り替えなければならなくなったことも新システムに切り替える要因でした。
山田 以前のシステムは税務面が弱いという印象がありました。他方、TKCシステムは、TKC全国会の税務のスペシャリストが導入を支援していただけます。その点も魅力に感じました。
ケア21の新システム導入プロジェクトに参画されるにあたって、会計事務所としてどのような姿勢で臨まれたのでしょうか。
妙中公認会計士事務所
(システム・コンサルタント)
所長/公認会計士・税理士 妙中茂樹氏
妙中 TKCシステムの導入を支援する組織として、「TKC全国会中堅・大企業支援研究会(中大研)」があります。会員は税理士や公認会計士で、1,500名以上が所属しています。私はその代表幹事を務めていますが、システムの最適運用を目指して税務と会計の両面からシステム・コンサルティングを行うのが当研究会の基本姿勢です。そうしたことから、会計面では大手監査法人での勤務経験がある会計士の高田を、税務面では税理士の下村を支援の担当としてアサインしました。
システムで生産性向上 残業時間を大幅に削減
『FX5』の導入にあたり苦労された点がありましたら教えてください。
辻下 当社は事業所数や取引先が多く、業務を遂行する際の基礎情報となるマスターデータも必然的に多くなります。そのため、マスター類の作成には苦労しました。『FX5』はマスターに関する“枠”がたくさんあるので、当社が必要とするマスター全てを登録できたのは、ありがたかったですね。
次に「良かった点」について教えてください。
辻下 主に3つあります。1点目は、「支払管理」機能です。支払いに関する既存の承認フローが内部統制上、しっかりと構築できるか不安でしたが、そのための機能が『FX5』には標準機能として搭載されており、問題なく進めることができました。『FX5』のフローへの落とし込みもすんなりと行え、紙での承認を減らすことができました。
2点目は課税区分に関してです。以前のシステムは課税区分の捉え方が少し簡便的なところがありました。その点、『FX5』は税法をベースに、確固としたシステムが構築されています。また、スタッフに対する税制の研修も高田先生に実施していただき、大変ありがたかったです。
3点目は、仕訳連携を設定できる機能がある点です。「仕訳読込テンプレート」の機能を活用することで、Excelから直接、伝票のデータを『FX5』へ簡単に読み込むことができます。設定は大変でしたが、上流にある複数の業務システムのデータを仕訳連携するためのフローを構築することができました。
高田先生は『FX5』の導入サポートをされてみていかがでしたか。
妙中公認会計士事務所
(システム・コンサルタント)
公認会計士 高田 勇氏
高田 まず、経理課の皆さまの個々の能力の高さに感嘆しました。導入の中でケア21様の実施されている業務の内容なども拝見いたしましたが、驚くほどミスや間違いがありませんでした。ただ、個々人の能力に依存した業務体系だった側面もあり、経理課の方々がその点に高い問題意識をお持ちであることも感じていました。また、TKCシステムを導入して組織的な対応力を向上していくという目的と要望も明確でした。そのため、私はいかにして要望事項をシステムに落とし込んでいくのかを考え、TKCの導入担当者と相談しながら実施事項を提案していきました。関係者全員で課題解決に邁進していく、充実した導入活動になったと思います。
『FX5』を実際に利用してみての感想をお聞かせください。
財務課 次長 山田耕嗣氏
山田 業績管理の面については、実績データとの予算比較が一画面で簡単に行えるところが気に入っています。また、集計の作業がMR設計ツールを使ってできるようになったことで、業務効率が格段に向上したのも良かった点です。
当社は毎月、全事業所が4カ月先までの業績見込報告を行っています。『FX5』導入以降、MR設計ツールの機能によって使い勝手のよい経営資料がすぐに作成できるため、その作業が非常に効率的になったことで作業時間が短縮されたと実感しています。業績見込みの数値をシステムからアウトプットすることで事業所ごとの実績比較や予算比較の資料はスピード感をもって作成できるようになりました。
以前のシステムは業績管理の面で設定可能なマスター項目が豊富にありました。ただ残念なことに、そのすべてを利用しきれていませんでした。『FX5』は以前のシステムよりも項目は多くありませんが、そのすべてを可能な限り使用するという取り組みをしたことでシステム本来の力を以前よりもうまく活用できていると思っています。
辻下 目に見える効果として、仕訳入力とともに、承認、支払いフローへの落とし込みも容易になり、経理財務部門スタッフの月平均残業時間を1人当たり5時間も減らすことができました。効率化・ペーパレス化が図れたのは大きなメリットといえます。
さらに一言付け加えるなら、こちらが意図して作成したマスターに関して、その意図をコンサルタントの先生が汲み取ってくれたうえで、適切なアドバイスを投げ返してくれたことも高く評価しています。SEの方ではなかなか意図をくみ取るのが難しい経理業務の内容をしっかり理解してサポートしてくれたことは本当にありがたかったです。『FX5』の導入に際して、そうしたキャッチボールがしっかりとできたことが、その後の円滑な運用につながっています。
高田 そう言っていただけると光栄です(笑)。
シンプルなアプローチで作業が楽になった
御社は、『FAManager』も導入されています。固定資産の管理についてはどのような取り組みをされているのでしょうか。
井上 当社は多くの固定資産を保有しており、その情報を網羅的・一元的に管理しています。ただ、以前のシステムでは一元的な管理が不十分でした。それが『FAManager』の導入によって、所有する固定資産のうち8~9割の情報をシステムに載せることができました。
『FAManager』導入にあたり苦労された点を教えてください。
井上 私は以前の固定資産管理システムの導入にも携わっていましたが、それと比較しても特に苦労したということはなかったです。以前のシステムは数字の検証を含めてすべてこちら側で行わなければなりませんでしたが、今回は検証を含めて支援していただけたため、大変助かりました。
導入されて良かった点についてはいかがでしょう。
井上 償却資産データを電子申告システムのデータレイアウトに変更する必要がなく、完全に自動で行えるようになったのは大きな改善点です。以前はすべて手作業で実施していたので業務に2~3日はかかっていましたが、今は1時間程度で終わらせることができます。ミスも減らせ、業務の効率化も図れました。また、導入にあたって高田先生、下村先生には別表16の作成を見越したマスターの設計をご支援いただいたことで、別表16の作成も効率的になりました。これまでは別表16の作成用に、減価償却超過額の内訳明細を別途管理するためのExcelシートを作成していましたが、それは不要になりました。単純にシステムを使えるようにするだけではなく、税制面の対応もしっかりと意図してマスターの構築を支援していただけたのはありがたかったです。
システム・コンサルタントの先生方は『FAManager』の導入サポートをされていかがでしたか。
妙中公認会計士事務所
(システム・コンサルタント)
税理士 下村剛史氏
高田 私が印象的だったのは、初めての打ち合わせの際に井上さんから「全ての固定資産がシステムに載るとは思っていません」というお話があったことでした。その言葉を聞いて、「これは現場部門で相当苦労されている、何としてもシステムに載せなければならない」とスイッチが入りましたね。
下村 当初、ケア21様の膨大な償却資産とマスターを設定する必要がありました。マスターは別表16や償却資産申告を見据えて設定しなければならないため、ケア21様の意向を確認しながら進めました。高田と私であぶり出した問題点に対して、何千、何万とある償却資産の中から、井上さんが「それは○○です」と即答されていたのはさすがでしたね。しっかりと償却資産を把握されていることに驚きました。
高田 最後に償却資産申告が一致するかどうか心配でしたが、少しも間違いがなかったのはうれしかったですね。
『FAManager』を運用して1年以上が経過しています。利用された感想をお聞かせください。
井上 『FX5』との仕訳連携もとてもスムーズに行えています。『FAManager』から『FX5』へ仕訳を連携し、そこから支払業務までを一気通貫につなげることができています。また、先述した償却資産申告への対応や別表16への対応と合わせて、大きな業務改善につながったのは確かです。
辻下 利用したい機能がしっかり備わっているシステムだと実感しています。また私たちのシステム改善要望をTKCが聞いてくれて、システムの拡張が行われていくことは素晴らしいと思っています。だからこそ、期待してあれこれ要望を言ってしまうんですよ(笑)。
山田 TKCのシステムは非常に分かりやすいシステムだと思います。以前のシステムは搭載された機能が多かったのですが、各機能を設定するまでが大変で、利用しきれないことが多々ありました。TKCのシステムはシンプルなアプローチで経理業務に即したシステムになっていると思います。
また、経理の最も重要な業務の一つに役員向け資料を作成することがありますが、以前はシステムのさまざまなメニューを見る必要があり、帳票を作るのが大変でした。『FX5』ではExcelと連動させることでリアルタイムに帳票を作成できるとともに、機能がExcel関数のようで使いやすい。使いやすさと処理できることのバランスが大変良いシステムだと思っています。
TKCシステムの導入で監査法人の作業工数が軽減
『FX5』と『FAManager』を同時導入することで得られたメリットについて教えてください。
辻下 同時に導入したのは、以前のシステムの保守期間が同時に終了するというのが一番の理由でしたが、TKCシステム間の連携を確認しながら進めていけるというメリットを享受したい気持ちもありました。ゼロベースで『FX5』も『FAManager』も同じタイミングで連携の確認をしながら作業をしていくことで、システムを自分たちの業務に落とし込みながら導入できるという点でも良かったと思っています。
同時に導入したことで、マスター類を統一できたのも大きなメリットでした。導入のタイミングがずれると、「マスター類の桁数が違う」「読み替えないといけない」などの問題が出てきますが、同時導入したことでそうした問題とは無縁でした。
このほか、今回のシステム導入で改善されたことはありましたか。
辻下 『FX5』などのクラウド型システムの基盤となるTKCのデータセンターは、「3402監査報告書(旧86号報告書)」(日本公認会計士協会の保証実務委員会実務指針3402に基づく「受託業務に係る内部統制の保証報告書」)を受領されています。しっかりとした内部統制を構築された状態で各種クラウドサービスを運用されているところに当社が依拠できることは大きなメリットであり、当社を担当している監査法人の作業工数も軽減しています。
今回のシステム導入にあたり、システム・コンサルタントとして関与された感想をお聞かせください。
高田 私はシステム・コンサルタントの役割は「お客さまのやりたいことをいかにシステムに落とし込むかを考えて、お客さまとシステムをつなぐこと」にあると思います。今回の導入ではケア21様の実現したいことや要望が明確だったので、円滑にシステムの設定や運用に落とし込むことができました。
山田 当社は9つの経営理念を掲げて事業を推進しています。その中の1つが「現場第一主義」です。その理念に沿って今回、経理の現場が最も使いやすいTKCシステムを選ばせていただきました。また、「常に考え、変わり続ける」という理念もあります。これに沿って、以前の会計システムの保守期間が切れるタイミングで、もっと良い方向に向けて変えていこうとメンバー全員が奮起しました。そして、システム・コンサルタントの方々と同じ意識のもとに同じ方向に向いて、理念にもある常に「徹底討論・徹底和解」をしながら、理想的なシステム環境を作り上げることができたと自負しています。
最後に、御社の経理業務の今後の展望についてお聞かせください。
井上 キャッシュレス化や証憑の電子化、クレジットカードのシステム化などを進めていきたいと思っています。最も業務効率が図れる形で現在のシステムを有効活用していければと思っています。
山田 私たち経理・財務部門は経営の意思決定と密接に関係していると認識しており、さらなる効率化を目指していきたいと考えています。その意味で、システムの業績管理機能をどれだけ使いこなせるかが今後の課題です。効率化を目指してこれからもシステム・コンサルタントの先生方と一緒に取り組んでいければと期待しています。
和久 『FX5』と『FAManager』の導入はある意味、当社の進歩を促したと思っています。効率よく利用していくことで現場のレベルアップにつながっていきます。コロナ禍において、そうしたシステムの活用がより一層望まれています。
名称 | 株式会社ケア21 | |
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設立 | 1993年11月 | |
所在地 | 〒530-0003 大阪市北区堂島2-2-2 近鉄堂島ビル10F |
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従業員数 (連結) |
5,011名(2020年10月末時点) | |
URL | https://www.care21.co.jp/ |
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