グループ力で世界を目指す 関西テレビ界のトップランナー
テレビでは昨年、昨年度ともに視聴率4冠を成し遂げ、ラジオでも聴取率でトップ争いを続ける関西の地上波ラ・テ兼営放送局・ABC朝日放送。絶好調の裏には歴史に培われた人脈やノウハウに基づいた番組制作力がある。東京のテレビ朝日と並んでANNネットワークの「Wキー局」を自負する同社の「10年ビジョン」には世界戦略や多角化というターゲットも。連結会計を含めたグループ経営戦略について、沖中進取締役、経理局の小原英嗣さん、小尻美樹さんに聞いた。
関西ならではの感性で創る自社制作番組に定評
──昨年(度)は「ゴールデンタイム(19:00~22:00)」「プライムタイム(19:00~23:00)」「プライム2(23:00~25:00)」「全日(6:00~24:00)」と視聴率4冠を達成し、今年も好調を続けておられると聞いています。
沖中 東京キー局であるテレビ朝日制作の番組、当社が独自制作する全国ネット番組と関西ローカル番組のいずれもが、ここ数年好調を維持しています。なかでも当社の特徴は、独自制作の番組が多いことですね。
──たとえば?
沖中 ローカル番組でいえば朝の5時から8時までの帯番組「おはようコールABC」「おはよう朝日です」が、関西に密着した情報発信をしながら、視聴率的にもトップを走っているのが大きいですね。他社は東京のキー局が制作したものを流しており、この時間帯で自社制作番組を流しているのは関西では当社が唯一です。このほか、ローカル番組で特筆すべきなのが、「報道ステーション」の後の枠にも「ナイトinナイト」(金曜日は「探偵!ナイトスクープ」)という高視聴率を誇る自社制作番組を放送していることです。
──ゴールデン・プライムタイムでの番組制作状況は?
沖中 「大改造!!劇的ビフォーアフターSEASONⅡ」「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」「世界の村で発見!こんなところに日本人」いずれも人気です。「土曜ワイド劇場」も月に1本制作しています。
その他の時間帯でいえば、「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」「新婚さんいらっしゃい!」「パネルクイズ アタック25」などは根強い人気を誇り、アニメの「プリキュア」シリーズは社会現象にもなっています。
──優れた番組制作力の源泉は?
沖中 番組はひとりでできるものではなく、出演者はもちろんプロデューサー、ディレクター、脚本家、カメラマン、照明さんなど、総合力の勝負になります。われわれは、その人脈ならびにノウハウを長年にわたって積み上げてきました。数年前には、ネット社会の進展によるテレビ斜陽論も出ましたが、ここへ来て当社を含めた危機感を共有したテレビマンたちが目の色を変えて良い番組をつくろうとがんばっており、その成果が出始めている感じはします。
──テレビ斜陽論が出た原因は?
沖中 やはりマンネリでしょうか。長年、お茶の間の娯楽の王様としてやや傲慢になっていた部分もあるかもしれません。ただ、いまは、現場のプロたちが本気になれば視聴率がついてくることが証明されつつあると思っています。
──東京のテレビ局へのライバル意識はありますか。
沖中 ないとはいえませんが、同じ土俵で張り合っても仕方ありません。当社では超有名タレントを数多くそろえたり、制作費のかかる番組をつくるのはむずかしい。だったら、企画優先で独自のものを創っていくしかない。その意味でも関西ならではの感性や才能を大事にした制作を心がけています。
──「10年ビジョン」という長期計画を打ち出されています。
沖中 はい。「関西ナンバーワン、世界へ」「家族をつなぐエンターテイナー」「OPEN←楽しいABC!」という3つのキーワードを実現していきます。そのためには、アジアなど世界へのコンテンツ販売、通販やハウジング事業への多角化、そして、個性豊かな人材育成が必要だと考えています。
作業工数の縮小と自動化で決算開示を10日以上短縮
──さて、そんな朝日放送さんですが、経理部門では連結決算の効率化を進めておられるとか。
小原 従来、スプレッドシートを使って行っていた連結決算を『eCA-DRIVER』を導入してシステム化しました。そもそも、経営陣から、決算開示の早期化の要請があり、経理部門として対応したわけですが、結果的に期末から40日以上かかっていた決算開示が30日以内におさまり、月内開示ができるようになりました。また属人化の排除も目的のひとつでした。実際、システム導入中の人事異動で、公認会計士の資格を持つ上田(昭博氏)から小尻(美樹さん)に連結決算担当の交代がありましたが、その引き継ぎがスムーズにいったのも『eCA-DRIVER』が標準化ツールとして機能したおかげだと思います。
──ところで、数あるシステムのなかでTKCを選ばれた理由は?
小原 効率化はしたかったのですが、それに伴う負担は親会社、子会社ともにできるだけ避けたかったので、導入の工数をなるべく抑えられるシステムが希望でした。『eCA-DRIVER』はシステム自体が他社に比べてシンプルで、現状のスプレッドシートの延長線上で運用できるのが魅力でした。
──連結決算の具体的プロセスを教えてください。
小原 当社は番組制作やCS放送、ハウジング事業、ゴルフ事業などを手がける連結対象子会社が5社ありますが、各社の担当者がクラウド上で直にウェブ入力する形です。マスタ設定には多少苦労したものの、『eCA-DRIVER』の導入により、開始仕訳や当期仕訳とも連結修正仕訳はほぼ自動化になりました。また、連結キャッシュフローやセグメント情報の仕訳も完全自動化できました。以前はわれわれがスプレッドシートのフォームを配付し、各社担当者に入力してもらって回収し、それを集計シートに貼り付けていくという作業をしていました。システム化により転記およびそのチェックの手間がなくなって、決算内容の確認や分析作業に多くの時間をさけるようになりました。
──TKC会計人のコンサルティングも『eCA-DRIVER』の売りのひとつですが、いかがでしたか。
小原 谷口(純一公認会計士・税理士)先生は、昨年の11月から今年の本決算まで週1のペースで来社され、ご指導いただきました。われわれと歳も近く、フレンドリーな方なのでよかった。また、前連結決算担当者の上田も公認会計士資格保持者なのですが、会計処理を連結システムに落とし込むマスタ設定作業のなかで、谷口先生からのセカンドオピニオンはとても参考になりました。
──上田さんから業務を引き継いだ小尻さんの感想は?
小尻 連結決算は初めての経験だったのですが、『eCA-DRIVER』では作業の流れがメニュー化されているので思いのほかスムーズに理解できました。スプレッドシートでの作業と違い、メニューを追っていけば次に何をすればよいかが分かりますからね。また、谷口先生には、初歩的なことから丁寧に教えていただき、人間的な相性も良かったと思っています。入力方法だけでなく、連結会計の仕組みや税効果会計に関する講義を開催していただいたりと、会計知識の面でも勉強になりました。
──そのほかにメリットは?
小原 子会社向けの操作研修会をTKCのPCルームをお借りして行ったのですが、その後の親睦会などを通じて親・子会社の担当者のコミュニケーションが深まりました。とくに子会社同士はそれまであまり交流がなかったので、グループの結束力強化という意味では大きな意味があったと思います。また、監査法人用IDをつくり、担当の公認会計士の方に『eCA-DRIVER』から欲しいデータを切り出してもらうことで、監査の効率化も実現できました。
──今後はいかがでしょう。
小原 『eCA-DRIVER』を活用することで属人性を排除し、誰が担当しても正確かつ迅速な連結決算を行える体制づくりをしていきたいですね。また、このシステムの目玉のひとつである「マネジメントレポート設計ツール」も活用しきれているとはいえません。この機能を使えば、われわれの意図するさまざまな形の経営分析資料の作成が可能だと聞いていますので、今後はぜひ、活用を進めていきたいです。
名称 | 朝日放送株式会社 |
---|---|
設立 | 1951年3月15日 |
所在地 | 大阪府大阪市福島区福島1丁目1番30号 |
売上高 | 788億円(2013年3月連結) |
社員数 | 639名(2013年3月現在) |
URL | http://asahi.co.jp/ |
『戦略経営者』2014年1月号より転載
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