導入システム eCA-DRIVER/FX5/OBMonitor
会計システムの一元化がグループ経営の効率化を導く
リサーチ(R)、サービス(S)、テクノロジー(T)の3つの単語の頭文字を統合した社名を持つアーレスティ。顧客貢献を第一義に、アルミダイカストメーカーとして業界をリードする。一方で、国内外のグループ経営の統一化に向けて管理面の充実を加速させており、さらなる飛躍へ準備万端だ。高橋新一取締役、経理部の鈴木茂生部長、古橋孝祥課長、糟川和也氏、経営企画部の山本千香子氏、そしてシステムコンサルタントの山岸崇裕公認会計士・税理士に話を聞いた。
左から山岸崇裕公認会計士・税理士、糟川和也氏、鈴木茂生部長、
高橋新一取締役、古橋孝祥課長、山本千香子氏
──ここ数年、売り上げが拡大していますね。
高橋 当社の主力は、アルミニウムダイカスト部品の製造ですが、9割が自動車向けです。なかでもエンジンブロックやミッションケースなど大型の部品を得意としており、高機能化に伴い複雑化していく自動車部品の形状にも対応できる技術力を持っているところが強みです。その自動車市況がこのところ世界的に堅調で、現在約9000万台の生産台数が、数年後には1億台を超えるのではと予想されています。そのため、当社の売り上げも増加傾向にあります。
──最近では、HPも刷新され、メディアへの露出も増えてきました。
山本 われわれはBtoBの会社ですが、来年創業80周年を迎えることもあり、積極的に当社の存在感をアピールするよう努力しています。また、HPも刷新し、企業理念はもちろん10年ビジョンやコーポレートガバナンスのあり方、あるいは社員の行動指針であるRSTWay(「誠実」「率先」「スピード」「成長」「挑戦」)なども前面に打ち出しています。結果、マスコミにも、いくつか取り上げていただけるようになってきました。狙いは顧客や株主、投資家に当社をよりよく分かってもらうことですが、採用面、従業員やその家族のモチベーションアップにもつながっています。
大型ダイカストマシンが並ぶ工場内観
──アルミダイカストは、軽量が売りだと聞いています。
山本 アルミダイカストは、鉄の約半分の重量で製品化でき、リサイクル性にも優れています。当社はアルミダイカストを通じて、燃費と環境問題の改善に貢献しています。また、10年ビジョンとして「信頼を究めよう2025」をスローガンに掲げています。単に売り上げを追求するのではなく、顧客に貢献することを第一義にするという意味です。なかでも、「グローバルで車の軽量化に役立つ」ということは非常に重要な視点だと考えています。車体の軽量化はメーカーの至上命題ですから。
──海外展開に積極的ですね。
高橋 1988年にはじめて米国工場を設立し、現在ではメキシコ、中国、インド、タイの計5カ国に8拠点を設けています。ダイカストメーカーは中小企業が多く、世界的に見ても5カ国以上に展開している企業は数社しかありません。生産拠点のグローバル化や部品の共通化が進む自動車業界で、当社ではグローバルネットワークを活用し、顧客からの多彩な注文に応じて品質の高い製品を各国に供給する体制を整えています。これが、多くの自動車メーカーから支持を得ている当社の強みのひとつでもあります。
──今後、電気自動車の普及は確実で、部品の減少が懸念されます。
山本 2040年くらいにはガソリン車から電気自動車へと主役がシフトすると考えられています。しかし、現状、バッテリーが重いので、それをカバーするためにも車体のさらなる軽量化が求められるでしょう。そうなると、軽量で寸法精度も高いアルミダイカストが、ボディに使われる可能性が高くなります。当社ではすでに、ボディのアルミ化へ対応するための組織横断的なチームを立ち上げています。
MRレポート設計ツールを課題解消に有効活用
──TKCの連結グループソリューションを採用されていますが。
鈴木 2005年から連結会計システムを導入し、TKCさんとのお付き合いがはじまりました。一方で、個別システムは他社製品を使用していたのですが、グローバル事業の拡大が進むにつれ抜本的な改革が必要となりました。その一環として、経理財務部門においても、会計システムの統一による業務の効率化・標準化が求められました。具体的には関係会社間の債権債務・内部取引の照合の自動化などです。従来は、これらを親会社が実施しており、連結決算遅延の原因になっていたからです。
──なぜTKCのシステムを?
古橋 従来のシステムは柔軟性がなかったのです。とりあえず、国内関連会社の勘定科目を統一したかったのですが、業務システムとのデータ連携に大幅なカスタマイズを行ってきていたために、もし、従来のシステムを使い続けるならゼロベースで作り直す必要がありました。
糟川 だったら『eCA-DRIVER』と親和性のあるTKCの『FX5』の方がよいのではないかと。『FX5』では、「グループ統一マスター機能」がついていて、簡単に勘定科目の統一ができます。業務システムとの連動にカスタマイズも必要ないので保守コストもかからない。非常に使い勝手がいいと感じました。
古橋 従来のソフトでは業務システムとの連携は困難でした。一方で、『FX5』はインターフェースが分かりやすく、新しいソフトと連携させることも比較的簡単にできます。原価計算や経費精算のシステムとも、われわれの力だけで連携することができました。
──山岸先生は2011年からシステムコンサルタントとして携わられています。
山岸 当時、前の機種から現在の『eCA-DRIVER』へと変更した際、メキシコの現地法人でキャッシュフローに「差異」が出て困っていると、助けを求められたのが最初です。監査法人から理由を追及してくれと。かなり時間がかかりましたが、期末の数字と期首変更の際の数字の連続性が途切れていたことを発見し、なんとか解決しました。
──『FX5』においても引き続きコンサルをされているとか。
山岸 『FX5』も連結決算と密接に関係するので……。いずれにせよ私がアーレスティの経理部の方々に感心したのは、勘定科目を統一しようというパワーです。そして、TKCシステムに搭載されている「マネジメントレポート(MR)設計ツール」を使ってグループ全社の経営管理資料をつくられているし、非財務情報もこの機能で一元管理しておられる。驚きましたね。変革にチャレンジする姿勢がすごいなと。いまはとても良い財務管理体制になってきていると思います。
古橋 山岸先生には本当に助けられました。半年に1回来社いただき、税務や連結決算についての多彩なアドバイスをいただいています。
糟川 MR設計ツールは便利ですね。簡単な設定で予実管理表などの独自の管理帳表を自動出力できるので、これまで業務管理レポート作成のために発生していた転記・集計作業の約1100時間/月(グループ)を削減し、分析業務に注力できるようになりました。
──TKCの海外ビジネスモニター(OBMonitor)も合わせて導入されたそうですね。
鈴木 会計システムの統一プロジェクトをスタートした2012年。実は、TKCさんに当初から要望していたのが、海外子会社をオンラインでリアルタイムに管理できるシステムが欲しいということでした。ちょうど、当社の海外売上高比率が国内を抜いた頃ですね。海外子会社の現地会計システムはバラバラで、親会社は『eCA-DRIVER』で四半期ごとの精算表しか見ることができない状態でした。
古橋 この要望に対し、すばやく動いていただき、OBMの製品化につながったと聞いています。つまり、当社がOBMユーザー第一号ということです。TKCさんには、OBMに限らず、われわれのニーズをきめ細かく吸い上げてもらいました。
──OBMはどのような役割を果たしているのですか。
糟川 現地の各種会計システムとデータ連携し、その会計データが日本語や英語に自動翻訳されます。親会社は仕訳まで閲覧でき、透明性が増しました。
鈴木 従来は海外子会社の勘定科目などは粗かったのですが、国内外のグループ17社の勘定科目を粒度の細かいものに統一。会計システムをTKC連結グループソリューションに集約し、精緻な業績管理を実践した結果、連結業績予測の精度も上がりました。経営陣のわれわれへの要望でもある「決算以上のこと」、つまり精緻な分析作業を行う素地もできてきたと思っています。
名称 | 株式会社アーレスティ |
本社・テクニカルセンター |
---|---|---|
設立 | 1943年11月 | |
所在地 | 愛知県豊橋市三弥町中原1-2 (本社・テクニカルセンター) 東京都中野区本町2-46-1 (東京本社) |
|
売上高 | 1,366億円(2017年3月期 連結) | |
社員数 | 7,215名(2017年3月現在 連結) | |
URL | https://www.ahresty.co.jp/ |
『戦略経営者』2018年1月号より転載
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