2021年7月号Vol.123
【ユーザー事例2】より効率的・最適な行政経営へ、パッケージを徹底活用
公会計システム > 埼玉県ふじみ野市
総合政策部 経営戦略室 主査 鈴木健悦 氏 / 財政課財政係 主査 黒川大介 氏
- 住所
- 埼玉県ふじみ野市福岡1-1-1
- 電話
- 049-261-2611
- 面積
- 14.64平方キロメートル
- 人口
- 114,488人(2021年6月1日現在)
──ふじみ野市では、予算編成や事業実施の指針となる中期計画『ふじみ野市将来構想・実施計画』(計画期間は3年間)を策定し、社会や経済情勢の変化などを見据えながら毎年度計画の見直しを行っていると伺いました。
鈴木 ふじみ野市将来構想』は、人口減少時代に備えたまちづくりの基本方針や目指すべき将来像としての方向性を明確に示すとともに、実現に向けた分野ごとの方針を定めたものです。これは「基本構想」「基本計画」「実施計画」の3層構成となっています。
基本構想では、将来像を実現するため優先的に取り組むべき四つの「重点戦略」を定めています。また、基本計画ではそのために推進する具体的な取り組みとして六つの重点プロジェクトを定めています。そして、実施計画は基本計画の施策を展開するための政策的経費を決定し、予算編成の指針となるものです。
特徴的なのは、予算編成前に予算編成と同じレベルで3年分の実施計画の要求を各課が行うことです。その後、経営戦略室での査定や、政策判断が必要な事業は市長ヒアリングを経て実施計画を決定し、これら査定結果を予算編成システムに反映させています。
黒川 当初予算編成では、主に実施計画に掲げられた「前期重点プロジェクト」や「主要事業」について実現の方法と当初予算要求額の妥当性について精査するほか、実施計画策定後の制度改正や経済状況の変化に応じた〈より具体性をもった予算〉を計上することで、実施計画との連係を図っています。
また、財政収支予測についても経済状況や地方財政計画、税制改正の動向などを踏まえ、できる限り最新の見通しを反映させて編成しています。
効果的なPDCAの定着で
将来像の実現を目指す
──将来構想の推進にあたり、パッケージシステムをフル活用して業務フローの最適化に取り組まれています。
鈴木 毎年、6月上旬から3か年分の実施計画の策定と要求入力を開始します。以前は、システムのほかエクセル表なども組み合わせて3年分の計画・予算等を管理していましたが、いまではTKCシステムだけで業務が完結できるようになりました。
具体的には、「行政評価システム」で実施計画策定の要求を行い、査定作業においては3か年の予算を積算単位で策定しています。また「歳出計画」だけでなく、「歳入計画」についても各課で見込み入力を行い、加えて財源充当まで実施しています。予算編成では実施計画の結果と連動することで、計画と予算の一体化が図られています。
黒川 実施計画では、全ての事務事業の事業費を当初予算編成レベルで積算しています。その結果、各課は当初予算編成の準備を早い段階で行うこととなり、要求額の精査にもつながっています。また、実施計画査定額を性質分類により集計・分析することにより、性質ごとに拡充や縮減等の方向性も検討し、さらに当初予算編成に反映することができます。
──なるほど。
黒川 当初予算編成は、毎年10月上旬から翌年2月中旬までに行っています。10月上旬に行政評価システムから実施計画の査定結果を「公会計システム」へ取り込むことで、公会計システムの予算要求入力画面に実施計画の査定結果がセットされます。各課では実施計画の査定結果を踏まえた当初予算要求入力を開始できるため、実施計画と連係した予算要求が可能で、業務フローの最適化を図っています。
鈴木 さらに3月には“ふり返り”のため、事務事業評価と施策評価を実施しています。4月には人事異動があるため3月中に担当者が評価を行い、新体制で4~5月に最終版を確定するようにしています。実務に携わった担当者が評価することで、進捗状況などをより正確に把握できると考えています。
その評価結果とともに、直近の社会状況等の変化にもとづいて、あらためて次の期間の3か年実施計画を策定することになります。システムへの入力も前年度に策定した3か年実施計画の2年分のデータを自動でセットし、ローリングして活用できるため、前年度に策定したものを基本とした継続的な実施計画となっています。これらの作業を円滑に進める上でもシステムが大いに役立っています。
──PDCAサイクルにより、継続的な経営改善を図っているのですね。
鈴木 そうですね。また、計画を推進する上でも、全ての事業内容が具体的に見えるようになったことで、中長期的な視点に立った改善・見直しがしやすくなったと感じています
──今後の計画を教えてください。
鈴木 持続可能な行政運営を行っていくには、システムを最大限に活用し、市民に住み続けたいと思っていただけるさまざまな取り組みを推進していく必要があります。今後は、将来構想の進捗管理を行う行政評価システムにおいても、EBPMの実践を意識しながら実効性のあるものへと改善していきたいですね。また、ふじみ野市ではSDGsの取り組みを進めており、その目標(ゴール)達成に向けて市の事業とシステムをどう紐付けるか――などについても検討していきたいと考えています。
掲載:『新風』2021年7月号