株式会社オートサービスヤマグチ 様

右から中井宏顧問税理士、経理担当の後藤祥子さん。
左端が監査担当の佐々木修一統括部長

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自動車整備のプロ集団が実践する
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北海道広尾町を拠点に、自動車の整備・販売などの事業を展開するオートサービスヤマグチ。山口悟会長、山口幸将社長、後藤祥子さんに、中井宏顧問税理士、監査担当の佐々木修一統括部長を交え、同社の経営戦略と財務戦略の要諦を聞いた。

──2008年に第三者承継で会社を継いだとお聞きしました。

山口 悟会長

山口 悟会長

山口悟会長(以下会長) もともとは石田自動車という商号で、主に小型車の整備を手がけていました。私は個人で板金塗装業を営んでいたのですが、同業者ということで、懇意にしていた石田社長から「一緒に仕事をしないか」と誘われ、06年の1月に入社し、その2年後に社長に就任しました。22年には甥である幸将に社長を譲り、現在は会長という立場で経営に携わっています。

山口幸将社長(以下社長) 私は大手トラックメーカーで整備士として勤務したのち、11年にオートサービスヤマグチに入社しました。私自身がトラックの整備をなりわいとしていたこともあり、入社を機に大型・小型を問わず、自動車の整備を幅広く請け負うようになりました。現在は大型車の整備ニーズが高まっており、19年には現下の整備需要の高まりに対応するべく、今の場所に本社工場を移転しました。

トラック販売事業への参入で売上高が飛躍的に向上

──強みは?

山口幸将社長

山口幸将社長

社長 車に関する困りごとをオールインワンで対応できるところです。当社では車検や定期点検、板金塗装、フレーム修正といった整備はもちろん、中古車の買い取りやカー用品の販売、廃車の回収も行っています。19年にはスウェーデンのトラックメーカーであるボルボ・トラックのディーラーになり、同社製トラックの販売事業に参入しました。広尾町には首都圏との物流拠点である十勝港があり、町内では多くのトラックが行き交っています。トラックの販売や整備需要を取り込んだことで、売上高も飛躍的に向上するなど、業績にも好影響を与えています。

会長 親しくしている運送会社の社長たちから、「オートサービスヤマグチさんがトラックを扱うなら、ぜひ買いたい」と言ってもらえたこともあり、販売は堅調に進みました。

──ボルボ・トラックのディーラーになった理由を教えてください。

社長 整備士の技術力を高めるためです。自動車整備業において、お客さまの車をメンテナンスするなかで、分からないことや自社でできないことが出てくると、つい「ディーラーに持っていってください」とたらい回しにしてしまうことがあります。その点、ディーラーでは大手メーカーの看板を背負う以上、お客さまの悩みや要望から逃げずに、真摯に向き合う必要がありますし、その積み重ねが整備士の技術力向上につながります。ちなみに、ボルボに狙いを定めたのは、同社のエンジンが大型車の世界標準だからです。最近は外国製のトラックはもちろん、日本のトラックもボルボのエンジンを搭載するようになりました。こうした世界的な流れに商機を感じたのも、ボルボのディーラーになった理由の一つです。

佐々木 巡回監査で毎月、本社工場を訪れていますが、ボルボのディーラーになられて以来、広尾町でボルボのトラックを目にする機会が格段に増えましたね。

巡回監査担当者との面談で自社の課題と打ち手を明確化

──中井会計事務所との関係は40年以上に及ぶと聞きました。

会長 石田自動車のころからのお付き合いなので、それくらいになりますね。私が入社したころは、手書きの伝票をもとに帳簿をつけていました。

中井 その後、『e21まいスター』という小規模事業者向けの自計化システムを導入され、昨年、『FX4クラウド』にアップグレードされました。オートサービスヤマグチさんは、新しい機能やサービスの導入に前向きに取り組まれるので、当事務所としても提案や運用支援のしがいがあります。最近は「月次決算速報サービス」の利用を開始され、「『この変動損益計算書から分かること』のコメントがとても参考になる」との感想をいただきました。

──特に注目している指標や勘定科目はありますか。

社長 指標や勘定科目は全体的に注視するように心がけています。業績を管理する上で重宝しているのは、損益を部門ごとに分けて管理できるところです。当社では「本社」「幸福支店」「自動車販売」の3部門に分け、それぞれの業績データをこまめに確認するとともに、経営判断を下すうえでの参考情報として役立てています。

会長 毎月20日前後に佐々木さんが来社されるので、このときに経営課題の精査と、打ち手に関する相談や意見交換を行っています。最新の業績を、予算や前年同月、前月の実績と比較し、自社の課題がどこにあるのか、その課題を克服するために何をするべきかを、佐々木さんとの対話を通して明確化しています。
 佐々木さんとの業績検討会は、事業を成長に導くうえで欠かせないことと捉えており、現在は社長が佐々木さんと毎月面談しています。私もたまにではありますが、時間の合うときは会議に出席しています。

佐々木 オートサービスヤマグチさんを担当して、10年ほど経つでしょうか。当初は町の自動車整備工場という印象でしたが、ここ数年で売り上げ規模を3~4倍に拡大されました。担当企業の成長を間近で見られるのは、監査担当者として、とてもうれしく思っています。

新開発のモーターシステムで新たな市場を開拓する

自動車整備技能競技大会で優秀賞を複数回受賞するなど卓越した整備技術が強み

自動車整備技能競技大会で
優秀賞を複数回受賞するなど卓越した整備技術が強み

──入力面で特に重宝されている機能は?

後藤 当社は預金取引が多いので、銀行信販データ受信機能が良いですね。預金取引をほぼ自動で仕訳計上できるのはありがたいです。特に、幸福支店をとかち帯広空港の近くに整備工場として開設して以降、預金取引が2倍近くに増えたのですが、入力業務に費やす時間はほぼ変わりませんでした。

中井 このほか、オートサービスヤマグチさんでは「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)で月次試算表と決算書を取引金融機関にデータで提供されるなど、タイムリーかつ透明性の高い業績開示にも、前向きに取り組んでおられます。

──最後に、今後の目標をお聞かせください。

社長 当社が昨年開発したダンプトレーラー用のモーターシステム(ヤマグチモーターシステム)の販路を広げていきたいと考えています。従来、ダンプトレーラーの荷台は運転席のレバーで操作するため、運転手は運転席のモニターを見つつ、外にいるオペレーターの指示を踏まえて上げ下ろしする必要がありました。一方、このシステムを搭載したダンプトレーラーは、荷台の昇降をリモコンで操作できるため、荷台を上げ下ろしする際にオペレーターを配置する必要がありません。人手不足が叫ばれる運送業界において、このシステムを活用することで人手不足の緩和が期待できます。この技術は特許も取得しており、北海道発明協会が主催する令和6年度北海道地方発明表彰で「北海道発明協会会長賞」を受賞しました。
 このシステムを搭載したダンプトレーラーはすでに販売を開始しており、中部地方の運送業を中心に4台納品しています。今後はヤマグチモーターシステムを新たな収益の柱に育てるべく、全国の運送業者に向けて積極的な営業攻勢をかけていきます。

企業情報

2019年に移転した本社工場

2019年に移転した本社工場

株式会社オートサービスヤマグチ

業種
自動車整備・販売業
創業
1964年3月
所在地
北海道広尾郡広尾町並木通東3-34
売上高
約4億円
社員数
約10名
URL
https://as-yamaguchi.com

顧問税理士 中井会計事務所
税理士 中井宏

所在地
北海道帯広市東3条南4-5
URL
https://www.nakaikaikei.net

『戦略経営者』2025年4月号より転載)