有限会社衣笠木工所 様

右から永田信二営業部長、タン・チア・ユアン取締役、
2人おいて山本高久経理部長

統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例

贈答用ニーズを一手に集める
木箱メーカーの“先見性”とは

贈答用木箱の分野では知る人ぞ知る衣笠木工所。100年以上前に手延べそうめん製造からスタートし、今では年商20億に届かんとする中堅企業にまで成長した同社の経営戦略を、衣笠秀和社長、衣笠秀貴専務、富永一也顧問税理士に聞いた。

──ホームページには創業1964年とありますが?

衣笠秀和社長

衣笠秀和社長

衣笠社長(以下社長) 家業としては、100年以上前から手延べそうめんの製造を行っていて、私で4代目になります。1964年は木工事業を立ち上げた年です。

──そうめん製造は今でも?

社長 はい。われわれのルーツですから。そうめんなくして当社はありません。時代が変わっても継続していきたいと考えています。

──木工事業とは?

衣笠専務(以下専務) そうめんをつくるための木工器具製造です。その後、85年からは現在の主力事業である木箱の製造をスタートしました。いまでは業容の98%が木箱製造です。

──なぜ木箱を?

社長 手延べそうめんの製造は10月から翌5月くらいまでなので、夏場の仕事を確保する必要があったからです。これによって従業員を年間雇用することができるようになりました。当初はそうめん用の木箱だけでしたが、次第に日本酒やおせち料理、果物など食品全般、あるいはタオルなど日用品の贈答用木箱に広がっていきました。

──それにしても、その後の成長はすごいですね。理由は?

社長 まず人材、そして設備投資です。贈答品需要の高まりのなか、人を大事にしながら従業員を確保・育成した上で、先を見据えた設備投資を行ってきました。

衣笠秀貴専務

衣笠秀貴専務

専務 生産力を向上させることが当社の強みになると信じています。品質を保ちながら量産ができる木箱屋さんはほとんどなく、ここが他社ともっとも違うところかもしれません。それと、2019年にFSSC22000(食品安全マネジメントシステムの国際規格)を木箱業界では初めて取得したことも、大きかったと思います。これによって、お客さまに安心・安全な商品を提供していることが、証明されたことになります。

──成長を担保する具体的な強みを教えてください。

社長 繰り返しになりますが、「人材」と「設備」です。この2つを充実させることで、低コストでの量産が可能となり、また、企画・設計・デザインから製造・印刷まで一貫体制で請け負うことができる。そこを、お客さまに評価していただけているのだと思います。

──どのような営業活動をされているのでしょうか。

専務 特定の商品のイメージに合致した木箱を、勝手に企画・デザイン・印刷し、サンプルとして先方に送ります。興味を持っていただけたら問い合わせがきますから、そこから商談に入ります。これは当社独特のやり方で、飛び込み営業で全国を回るよりも、コストがかからないので効率がいい営業手法だと思っています。

社長 最初は反応がなくても、粘り強く送り続けていると、何度目かに問い合わせをいただけたりします。ある包装資材の商社さんなどは、最初は無反応でしたが、3度目に「話が聞きたい」と。また、ある酒造メーカーさんからは、商品販売数の増加に伴い、それまで採用していた他社の木箱の品質が、劣化してきていたと聞きました。自社の生産キャパシティー以上に生産しようとすると、どこかに歪みが出てくるわけです。当社には量産体制が整っていましたし、粘り強くアプローチしたことが実ったという一例です。

──ここ数年は、今をときめく商品メーカーからの引き合いが立て続けに来ているのだとか。

社長 たとえば、われわれのサンプルは、ただおざなりにつくるのではなく、先方の商品の特徴やどこに売りたいかなどを考えながらつくり、納得したものだけをお送りします。「もうひとつやな」というサンプルは絶対に出しません。そうした気持ちの入った丁寧な仕事が認められつつあるのではないでしょうか。

月次決算体制を推し進め金融機関と信頼関係構築

──富永先生とのご関係は?

専務 3年ほど前に、事業承継や相続についての相談に乗っていただき、その流れで税務顧問もお願いするようになりました。

社長 富永さんはとにかく一生懸命。そこがいいですね。

富永一也顧問税理士

富永一也顧問税理士

富永 社長にはいろいろと無理を聞き入れてもらいました。まず月次決算に取り組んでほしいとお願いし、そのためには『FX4クラウド』の導入が必要だと訴えました。当社の規模で経営を行うには、適時・正確なデータは必須ですから。さらに要望したのが、「優秀な経理マンを入れてほしい」ということでした。

──優秀な経理マンですか。

富永 はい。絶対に必要ですと。いかにも生意気な要望ですが、快く聞き入れていただきました。実際、大企業で経理を担当していた山本高久さんを経理部長として迎え入れてくださったのです。これが、月次決算体制がスムーズに築けた最大の要因です。

専務 当時われわれは、月次決算の重要性や経理担当者の必要性が分かっておらず、ちゃんとした企業としての経営感覚を富永先生に教えていただきました。

──毎月、月次報告会を行われているのだとか。

専務 月次決算の内容を経営幹部が共有した上で、課題を抽出し、タイムリーな打ち手を考える場にしています。

──入力の流れははどのように?

山本(経理部長) 販管システムと『FX4クラウド』をデータ連携できているので、入力は1度で済みます。また、「証憑保存機能」を活用して請求書や領収書など、データはデータのまま、紙はスキャニングして保存しているので、当社の経理作業はほぼペーパーレスです。さらに、TKCモニタリング情報サービス(MIS)も利用しており、取引金融機関に月次の試算表データを伝送しています。

専務 昨年11月に、金融機関の方々に集まってもらい、新倉庫建設計画の報告会を行ったのですが、その際にも、各金融機関にはMISで月次試算表データが送られているので、とても理解が速かったですね。

──新倉庫建設計画……ですか。

富永 ここ数年、受注が急激に膨らんできて、現在、倉庫を借りている状態なんです。新倉庫を建設するとなると10億円規模の過去最大の投資になるので、金融機関との情報共有が必要だったわけです。

──月次決算体制がさまざまな効果をあげつつあるようですね。

富永 金融機関との信頼関係構築が進み、借入金の経営者保証を解除することもできました。また、このほど特例事業承継税制の申請も行い、社長から専務への事業承継も5年後くらいには実現する予定で、これも金融機関や取引先にとっての安心感につながっていると思います。

──今後はいかがでしょう。

社長 さきほど「人材」という話をしましたが、経理分野では山本部長が来てくれたし、また、総務と開発の分野ではマレーシア出身のタン・チア・ユアン取締役を大手産業機械メーカーから招き、さらに営業には永田信二部長という優秀な人材がいます。生産部門には、ペルー人とベトナム人を70名雇用しており、人手不足にも対応できている。設備投資に加え、彼らが右肩上がりの受注をこなしていけば、さらなる飛躍は十分に可能だと考えます。
 また、取引先である食品メーカーの何社かは「世界戦略」を標榜(ひょうぼう)されているので、どんどん世界に進出してもらい、われわれの木箱も一緒に連れて行ってもらいたいという思いです。

企業情報

有限会社衣笠木工所

業種
木箱製造業
設立
1986年4月
所在地
兵庫県たつの市揖西町南山3-73
売上高
17億3,000万円(2023年8月期)
従業員数
120名
URL
https://kinugasa-mokkousyo.co.jp

顧問税理士 代表社員・税理士 富永一也
税理士法人セレクト

所在地
大阪府大阪市中央区本町1-5-7
URL
https://www.select-tax.jp

『戦略経営者』2024年9月号より転載)