新生紙化工業株式会社 様

高速で回転するドライラミネート加工機

統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例

税理士、金融機関のサポートで
成長続けるラミネート加工会社

食品の消費期限を伸ばすのに欠かせない個包装のドライラミネート加工。大阪地区での数少ない専業加工企業として知られる新生紙化工業の業績が好調に推移している。横山悟史社長、吉田俊夫会長、辻床治税理士に『FX4クラウド』を活用した業績管理の実際などについて聞いた。

個包装食品の拡大追い風にここ数年は増収増益

──事業内容を説明してください。

横山 当社が手掛けているドライラミネート加工は、異なる機能を持つフィルムを複数枚接着剤で貼り合わせる工程です。ドライラミネート加工によって密閉性が保たれることから、水蒸気や酸素を通さずカビや酸化を防止するバリアー性、変色などを防止する遮光性、香りを逃さない保香性などの特長を持つ包材をつくることができます。食品関連の包材向けが7割を占め、なかでも一番多いのは豆腐のパックのふたとして用いられているフィルムです。その他最近では繊維や雑貨などのパッケージ、フィルム包装向けも増えています。

──独自技術はありますか。

横山 ラミネート加工をすると通常中身の商品は見えなくなります。しかし化粧品などでは中身を見せてほしいというリクエストがくることがあります。その場合、通常は窓を開けたい部分だけ裏側のアルミ蒸着した部分を薬品で洗い流す手法をとるのですが、①薬品を使うので環境に悪影響がある②コストが高くなる③納期がかかる等の課題がありました。そこで当社では、より簡単に低コストで、小ロットから対応できる窓あけ加工方法「SKBラミネート加工」を開発、特許を取得しました。数年前には大手化粧品メーカーに採用された実績があります。

──コロナの影響は?

横山 1人暮らしの高齢者が増えるのにともないもともと個包装が増加している傾向のなか、コロナ禍に冷凍食品の売り上げが急増したことで、ラミネート包材の需要が一気に高まりました。アルコール消毒のためのウェットティッシュ用包材向けも伸びるなど、コロナショックは追い風になり、ここ数年は増収増益が続いています。

──力を入れている「3S活動」について詳細を教えてください。

横山 2002年に異物混入の大きな事故が発生し、納品したすべてのフィルムを回収して廃棄したことがありました。その反省から徹底的に異物混入対策をしようと決め、はじめたのが整理、整頓、清掃の「3S活動」です。この取り組みを20年続けた結果、文化として定着し、ISO22000の取得にもつながりました。

強固なトライアングルで懸案だった工場移転が実現

──12年に現在の工場に移転されています。

横山 大阪市此花区にあった旧工場が手狭になったのと、衛生管理のさらなる高度化のため、エアシャワーや手洗い設備の設置、通勤用・準クリーンルーム・クリーンルーム内の3つで靴を分ける、通勤服と作業服を保管するロッカーを分ける必要があったからです。居ぬき物件として見つけた現工場は敷地が900坪とそれまでの180坪に比べかなり広く躊躇しましたが、メインバンクの北おおさか信用金庫さんの後押しもあり移転を決断しました。その際、何度も相談に乗っていただくなど全面的に支援していただいたのが、20年以上前からお世話になっている辻床治先生です。

──顧問契約までの経緯について教えてください。

 私が個人事務所を立ち上げたころ、中小企業家同友会の宿泊研修でたまたま吉田会長と隣同士の席になったのがきっかけです。吉田会長が新しい会計事務所を探していることが分かり、顧問契約を結ばせていただきました。当初からTKCの『FX2』と『PX2』を導入、月次巡回監査を通じた月次決算を行ってきましたが、会社規模の拡大にともない、複数人での入力・チェック体制の必要性が拡大してきたことから、20年に『FX4クラウド』にバージョンアップしています。また『継続MASシステム(※)』による予実管理も行っており、工場移転の計画について吉田社長から相談を受けた際には、売上高と利益、設備投資の計画を何度もシミュレーションし、金融機関との交渉に活用しました。企業と金融機関、会計事務所の強固なトライアングルで工場移転が実現したと思います。

──月次巡回監査はどのように?

 吉田会長からは「タイムリーな業績を確認するため、とにかく前倒しで数字をチェックしたい」と言われています。毎月10日ごろに月次巡回監査を実施し、モニター画面を見ながら前月決算データの確認と問題点の所在、今後の打ち手などについて意見交換をしています。

──新工場の立ち上がりは?

吉田 工場移転にともなう負担増から計画では2年間赤字になることを見込んでいましたが、実際には4年間連続で赤字になりました。融資を決断してくれた北おおさか信金から、バブル期に購入した此花区の工場売却を求められ、売却の結果多額の損失が発生してしまったからです。北おおさか信金さんからの提案でリスケジュールを含む金融支援を受けることになりましたが、その後順調に業績が伸び、22年にはリスケの状態は解消しています。さらにその間保証協会付きの複数の借入金の借り換えも行っています。より好条件の金利になっただけでなく、経営者保証を外すこともできました。

──業務システムとの連携は?

 販売管理システムとデータ連携をしています。通常は得意先ごとの月の売り上げと入金額を販売管理システムと会計システムそれぞれで2回入力する必要があるのですが、データ連携することによってそれが1度で済んでいます。

──毎月金融機関に業績の報告に出向いているとか。

吉田 借入金が多かったため、月次試算表が確定次第すぐにコピーをして北おおさか信金に足を運び、支店長に毎月業績の報告を行っていました。しかしそれも過去のこと。現在は「TKCモニタリング情報サービス」で試算表を送信できるからです。

※TKC『継続MASシステム』…経営者のビジョンに基づいた「中期経営計画」と、次年度の 業績管理のための「単年度予算」、「短期経営計画」の策定を支援するシステム

限界利益率60%を目指し老朽化設備の更新を計画

──「証憑保存機能」を利用されるなどデジタル化にも着手されたと聞いています。

 はい。実は私は昨年8月、M&Aで尾中税理士法人(尾中寿所長)と経営統合し、同法人天神橋オフィスとして新たなスタートを切りました。経営統合した理由は、電子帳簿保存法やインボイス制度、フィンテックへの対応などについてきめ細かなサポートをするには、個人事務所では限界があると感じたからです。新たな体制のもとでさらなるペーパーレス化のお手伝いができればと考えています。

──《変動損益計算書》で最も重要視されている項目は?

吉田 やはり限界利益率ですね。目標は60%で現在は56%前後まで達成できています。

──限界利益率を上げる方策は?

横山 まずは価格転嫁の実行です。得意先にはここ数年で3度値上げに応じていただきました。また老朽化した機械の更新による生産性の向上も検討しています。受注量拡大にともない現在工場は3交代制の24時間稼働。新しい機械へ更新して生産性が向上すれば、利益率の悪い日曜日夜間の稼働をやめることができると見込んでいます。残業削減や休日の増加につなげ、当社なりの働き方改革をを実現していきたいと考えています。

企業情報

低コストで窓あけラミネート加工ができる特許技術「SKBラミネーション」

新生紙化工業株式会社

業種
食品包装、繊維・雑貨品の包装用(軟包装)
ドライラミネート加工
設立
1967年4月
創業
兵庫県尼崎市大浜町2丁目50番地
売上高
約12億円
従業員数
44名
URL
https://shinseishika.co.jp

顧問税理士 所長 尾中寿
尾中税理士法人
天神橋オフィス
税理士 辻床治

所在地
大阪府大阪市北区天神橋2丁目北1番23号丸丹ビル402号
URL
https://onakakaikei.net

『戦略経営者』2024年4月号より転載)