導入事例 CASE STUDY
株式会社幸建 様
後列左端は岩崎至総務部顧問
統合型会計情報データベース(FX4クラウド) ユーザー事例
クラウドを通じたDX推進で
東海地区トップを目指す建設会社
愛知県内の建設企業ではじめてDX認定を受けた幸建。同社の山本邦夫社長、北斗中央税理士法人の長谷川英輝税理士・公認会計士、谷口精社会保険労務士・シニアマネージャーらに、TKCシステムを中心としたデジタル化による業務改善について聞いた。
山本邦夫社長
──沿革についてご説明ください。
山本 当社はもともと父親がモルタルやタイルなど左官工事の一人親方として始めた会社で、今年で創業53年を迎えました。19歳のときに父の元で働き始め会社を継ぎましたが、次第に一人親方のままでは社会的な信用力を得られないことを痛感するようになり、1994年に株式会社化、5年前には新社屋を設立して現在に至ります。
──事業内容を教えてください。
山本 左官工事そのものが激減したため、現在は基礎工事が売り上げの6割、外構工事が2割、タイル工事と造成工事が1割を占めています。特徴はなんといっても若手が活躍していること。建築業界では従事者数の3割が55歳以上と言われていますが、当社の平均年齢は30歳。顧客からみれば機動力もあり、将来性もあると認識していただけているのではないでしょうか。
多くの若手社員が活躍中
──若手社員が集まる秘けつはなんでしょう?
山本 一つは、新人に対して指導的役割を果たす社員として、あまり年の離れていない先輩社員をあてていることです。これは会社説明会でも強調していますが、新入社員にとっては安心感が生まれるようです。また社員寮を3棟所有していることも関係があると思います。家賃は月額約3万円と低く設定し、電気代と水道代、ガス代、通信回線、駐車場はすべて会社持ち。お米も会社から支給しています。寮内では社員同士で懇親会を開くなど良好なコミュニケーションがとれているようです。
愛知県内建設企業で初めて経産省「DX認定」を受ける
──経済産業省の「DX認定制度」において、愛知県の建設会社ではじめて認定を受けました。経緯は?
山本 若い人が建築業界を選んでくれない理由の一つに、デジタル化の遅れがあると感じていました。そこで可能な限り業務をスマホでできるようにしようと考えたのです。しかしDXといっても何から手を付けてよいかわからなかったので、長谷川先生に支援をお願いしたのがきっかけです。
長谷川 当事務所では、さまざまなデジタルツールをまずは事務所内で1回試験的に導入し、TKCシステムと連携可能かどうかも含め、本当に良いと思ったものをおすすめするようにしています。幸建さんの場合は、社員の方も身近に感じる勤怠管理システムをまずは導入。紙のタイムカードによる打刻をやめ、どこにいても位置情報とともに勤怠の打刻がクラウドを通じ行えるシステムになりました。また打刻データは『PX2(戦略給与情報システム)』にCSV連携し、労働時間の手入力作業を省くことができるようになりました。
山本 その結果大きな利便性を実感することができ、完全にDXにドライブがかかりました。今では給与計算の入力業務は絶対にやりたくありません(笑)。
谷口精シニアマネージャー
長谷川 それから原価管理や日報の作成もオンラインでできるようにしました。社員や職人が材料を購入した場合、スマホでその場で入力。それまで紙ベースで報告していた作業日報も現場でスマホ入力できるため、報告書を作成するために現場から会社に戻る必要はなくなりました。現場から飛んだデータはCSV連携でそのまま原価管理システムに入るので、転記による入力ミスがなくなります。日報作成や経費の申請が隙間時間でスマホ入力できるので、大幅に残業時間が減りました。
大切なのはこれら個別業務のデータをできる限り連携させることで、最終的にTKCシステムによって決算、申告までを一気通貫で行える体制の構築を当初から目指しました。TKCシステムは、他の業務システムとの接続について間口が広く、DXやITとの親和性が高いシステムだといえるのではないでしょうか。
谷口 社会保険料の改定なども確実に対応してくれるので、初期設定と流すデータさえしっかりしていれば安心して使えるシステムです。入り口の勤怠データから給与計算、決算、申告までを正確に一気通貫で行える安心して使えるシステムとしてご提案しています。
──ほかにデジタル化による成果はありますか。
小田智亮氏
小田智亮氏(管理部総務課) 協力業者との請求書のやり取りの電子化も実行しました。当社が請求書をメールで送信し、それを受け取った協力業者の方がスマホで確認し、その場で合意ボタンをタップするだけで済むやり方に変更したのです。年配の職人さんなどに受け入れてもらえるかどうか最初は心配でしたが、今では「早いし投函の手間がなくなり楽になった」と喜んでいただいています。請求書の到着時間が短縮し仕入れの締めが早期化、請求書の送り忘れも減少しました。このほか支払通知書の自動送信を実施するなどRPAツールの活用も進めています。
──DXの成果は?
山本 残業が圧倒的に減りましたね、データを入力する業務は感覚的には3分の1以下に減ったと思います。今後会社が成長して売上高が倍くらいになっても、管理部門は現状の人数でもいけるでしょう。技術は常に進化していますから、それを追うのを止めたらダメ。企業の成長と一緒で永遠に進化していかなければなりません。止まるということは衰退を意味しますからね。
4つの部門別業績管理で外注工事の利益率をチェック
──北斗中央税理士法人が関与されたきっかけについて教えてください。
長谷川英輝税理士・
公認会計士
長谷川 お互いに先代の時代からお付き合いさせていただいています。私が事務所に入所したのは18年前ですが、山本社長と懇意になったのは、関与先の若手経営者十数人を集めた勉強会を開いてから。その中のメンバーの1人が山本社長で、「お互いの会社の試算表を見せ合って意見を言い合いましょう。正しい数字をもとにしないと的確なアドバイスはできません」と主張されたのです。山本社長はチャレンジ精神旺盛かつ経営に役立つさまざまな情報収集にも積極的で、一度決めたことをやり遂げる実行力を持っています。
──TKCシステムはどのように活用されていますか。
山本 当初は『FX2』を入れていましたが、4年前に『FX4クラウド』に移行しました。その後原価管理システムの切り替えを行ってFX4クラウドとCSV連携ができるようにし、業務効率を大幅に改善しています。また基礎工事、基礎工事(外注)、外構工事、外構工事(外注)の4部門で部門別業績管理を行っており、内製化工事と外注工事の利益率をそれぞれ注意深く比較しています。やはり気になるのは外注工事の利益率で、想定の幅を超えるイレギュラーな数値を示した場合は、現場の人数が適正かどうかを再度検討しなおすなどの対応をとっています。
──「TKCモニタリング情報サービス」も活用していると聞いています。
山本 はい。月次決算確定後の試算表を自動的に金融機関に送信しています。銀行からは「会社から毎月自動で送ってくるのは珍しい」と言われますが、私から言わせれば当たり前。紙で印刷して毎月持っていくのは面倒です。自動送信であれば忘れることもありませんしね。
──メリットを感じていますか。
基礎工事や外構工事がメイン
山本 当社の現状をよく踏まえたうえで、今当社にとって一番必要な金融サービスを適切なタイミングで提案してもらえるようになったと思います。今は半年もすれば業績が一気に変わってしまい、打ち手が少しでも遅れると致命傷になってしまうほどスピード感が求められる時代です。決算書だけのやりとりだけではタイムラグがありすぎます。
──今後の抱負を教えてください。
山本 現在は拠点が1カ所ですが、三河地方をカバーできるような新たな拠点の設置を考えています。また現在当社では、重機のレンタルや資材置き場の共同利用などを通じ所属社員の独立・起業を支援する取り組みも進めていますが、これをさらに強化していきたいですね。これまで3名が起業を実現しましたが、5年後にはエリアごとに合計20名の社長を生み出す目標を立てています。
企業情報
本社社屋
株式会社幸建
- 業種
- 土工・コンクリート工事業
- 設立
- 1994年12月
- 所在地
- 愛知県春日井市上田楽町2738-3
- 売上高
- 約8億円
- 従業員数
- 27名
- URL
- https://www.e-koken.co.jp/
北斗中央税理士法人
代表 長谷川英輝
- 所在地
- 愛知県小牧市中央5-203小牧中央ビル1F
- URL
- https://hasetax.jp/
(『戦略経営者』2023年6月号より転載)