導入事例 CASE STUDY
秋田ノーザンハピネッツ株式会社 様
統合型会計情報データベース(FX4クラウド) ユーザー事例
異業種への参入と部門別管理で
新B1リーグ参入を目指す
秋田ノーザンハピネッツは、プロバスケットボールクラブを通じて秋田県民が「元気」「夢」「希望」「誇り」を実感できる風土づくりに寄与することを目的とし、2009年に誕生した。水野勇気社長、長谷部光重税理士事務所の長谷部直哉税理士、巡回監査を担当する木村隆之氏にTKCシステムの活用方法などを聞いた。
──設立の経緯を教えてください。
水野勇気社長
水野 秋田市内にある国際教養大学に在学中、交換留学生としてオーストラリアでスポーツマネジメントを学ぶ機会があり、プロスポーツチームを秋田に立ち上げたいと考えたのがきっかけです。
秋田といえばかつて全国大会優勝の常連だった能代工業高校、天皇杯で優勝した秋田いすゞ自動車に象徴されるようにバスケットボールが盛んです。2005年にスタートしたプロバスケットボール「bjリーグ」が公募でチーム数を増やしていたこともあり、チーム立ち上げの活動を始めました。出資金を募って前身となる秋田プロバスケットボールクラブ株式会社を設立したのが2009年でした。
──観客動員数の推移はどうですか。
水野 ホームゲームの観客はおかげさまで右肩上がりに増えています。平均入場者数は1年目の2,257人でスタートし総試合数の変化などで単純比較はできませんが、2019-20シーズンでは3,400人を超えました。ただコロナの影響で収容人数の50%制限があった20-21シーズンはがくんと落ち込みましたが、100%収容に戻ってから回復しており、今シーズンはすでに3,500人を超えてきています。
──観客を増やす工夫は?
収容制限が解除され客足も回復
水野 当社の成長フェーズに応じてさまざまなことを行ってきました。例えば1年目はとにかくファンクラブの会員を増やす取り組みを行いました。講演や会議に出席したときにファンクラブ制度のアピールも同時に行い、参加者にその場で申込書に記入してもらったりもしました。当時は会員になるとチケットの引換券を1枚プレゼントしていたので、実際にバスケットボールの試合を見たことがない方にとってはよいきっかけづくりになったと思います。一方でコアなファンを増やすという意味では、年間全試合を見ることができるシーズンパスの販売にも注力しています。また子どもたちへのアプローチも重視しており、例えば小学生を無料で招待して親子で一緒に観戦してもらうイベントも開催しています。ファンクラブの仕組みは3年前にリニューアルしており、従来の年会費制に加え月額会員制をスタートしました。より気軽にファンクラブに入会していただくことが可能になりますし、会員単価の増加による売り上げ増を見込んでいます。これは2026年からスタートする新B1リーグをにらんだ施策です。
──新B1リーグとは何でしょう?
コッペパン専門店「ハチトニ」
水野 新B1リーグは26年10月から始まる新たなリーグで、昇降格が撤廃されるのが大きな特徴です。この新リーグは事業基盤と事業投資力の裏付け、成長の原動力を各チームに求めており、それぞれ①入場者数平均4,000名②売上高12億円③28-29シーズンまでに新B1アリーナ要件を充足する──の3つの基準を満たす必要があります。アリーナの建設は行政との協議になりますが、とにかくクラブとしては①と②をなんとか達成しなければなりません。売上高12億円基準については、総売上高のうち20%にあたる2億4,000万円はバスケットボール事業以外でもよいことになっています。そのため当社でも異業種への参入にチャレンジしており、クラフトビールの製造販売、コッペパン専門店の運営、道の駅の指定管理者事業なども手掛けるようになりました。
複数部門の部門別業績管理で収支バランスを毎月チェック
──会社設立当初から長谷部光重税理士事務所と契約をされていたとお聞きしています。
水野 大株主として設立当初から支援していただいている地元企業のイヤタカの北嶋正会長から紹介されたのが、長谷部光重先生でした。手弁当の活動で収入もなく、将来どうなるかわからない会社でしたが、今に至るまで変わらず応援をいただき、とても感謝しています。
長谷部直哉税理士
長谷部 水野社長は、とにかくチームと秋田のために奔走されています。その熱意と行動力にはいつも感嘆させられています。税理士事務所の目線から言えば、なかなかプロスポーツチームのような特殊な業種とお付き合いさせていただくことはそうあることではないので、勉強になることばかりです。小売業や製造業のように一定のパターンを参考にすることができないので、書籍などで確認しながらすすめています。今後も当事務所と秋田ノーザンハピネッツさまが一緒に成長していければと考えています。
──最初は『FX2』を導入し、2018年から『FX4クラウド』に移行されたそうですが、経営にはどのように活用されていますか。
水野 本業のチーム運営、興行部門のほかに当社はパン屋やクラフトビール事業などさまざまな事業を展開しています。それらの事業ごとに収支を正確に把握できるので、大変助かっています。
木村隆之巡回監査担当
──具体的には?
木村 「共通興行部門」「チーム運営部門」「アカデミー部門」「MD部門」「ハチトニ(コッペパン販売)部門」「子ども食堂」、クラフトビール事業を展開するあくら関連などの部門で管理しています。
──月次巡回監査の流れについて教えてください。
木村 請求書や売り上げの日報などをチェックし、夕方ぐらいにある程度数字が出たところで、水野社長と確認作業をします。各部門の数字を見ながら「ここは増えていますが原因は何ですか」などというやり取りをしながら増減要因の情報共有をしていきます。
──必ずチェックするところは?
水野 当社も設立後10年以上経過したので、やはり各部門の収益が前年同月に比べて増えたかどうかが一番気になります。バスケットボール事業は、同じ月でもシーズンによって試合数が異なるなど、ほかの業種に比べて業績の変動要因が多いほうだと思います。そのため、そうした動向をいち早くつかむためにも前年との比較は欠かせません。ちなみに今のBリーグの中で言うと、最もチーム予算の大きなチームに比べ当社は3分の1程度の規模。チームを強くするためにいい選手と契約しようとすればそれだけお金がかかりますが、それでは収支のバランスが崩れてしまいます。
当社が原則として目指しているのは、秋田で永続するプロバスケットボールチームであること。お金をかけすぎて会社がつぶれてしまっては元も子もありません。収支バランスをどうとるかは極めて重要なので、予算に対する進捗状況を毎月確認し、決算の着地点を常に想定しておくことが大切だと思います。
銀行信販データ受信機能で経理業務の効率化を推進
昨シーズンは過去最高勝率をあげた
──日々の仕訳を入力する体制について教えてください。
木村 最近は事業の多角化が進み、事業別で複数の経理担当者が置かれるようになりました。現在は3人の担当者がブラウザーを通じて同時接続して入力ができるように設定しています。また現金出納帳をエクセルで管理しているのですが、そのエクセルファイルからそのまま仕訳計上できる機能も便利ですね。エクセルファイルの数字を再度入力する手間が省けたと担当者にも好評です。「銀行信販データ受信機能」も活用しており、経理業務の効率化につながることはできるだけ取り入れるようにしています。
──「TKCモニタリング情報サービス」は活用されていますか。
木村 はい。秋田銀行と日本政策金融公庫に対して「決算書等提供サービス」を利用し、決算書を提出しています。コロナ融資を受ける際に提出を求められたので、ちょうどいいタイミングということで利用することにしました。
──今後の抱負は?
水野 昨シーズンは過去最高勝率をあげ、し烈なワイルドカード争いを勝ち抜き「チャンピオンシップ」に出ることができました。今後はまず新B1リーグへの参入を確実に実行すること、そしていずれは優勝争いができるようなチームにするのが目標です。ただ親会社として大企業がバックについているような会社ではないので、当社がその目標を達成するためには、稼ぐ工夫を続けていかなければなりません。いろいろな事業にチャレンジし収益性を高めていく努力を続けたいと思います。
企業情報
秋田ノーザンハピネッツ株式会社
- 業種
- プロバスケットボールチームの運営
- 設立
- 2009年1月
- 所在地
- 秋田県秋田市中通7丁目1-2-3
秋田ノーザンゲートスクエア 2F - 売上高
- 約9億3,000万円
- 社員数
- 30名
- URL
- https://northern-happinets.com/
長谷部光重税理士事務所
- 所在地
- 秋田市大町4丁目4-21
- URL
- https://hasebekaikei.com/
(『戦略経営者』2023年5月号より転載)