導入事例 CASE STUDY
株式会社サーラ 様
統合型会計情報システム『FX4クラウド』
『TKCモニタリング情報サービス』 ユーザー事例
5年間の緻密な資金繰り計画で
戦略的に新施設を立ち上げる
岐阜県各務原市や瑞穂市で有料老人ホーム、障害者グループホームを運営する株式会社サーラ。辻井喜久子代表取締役は、TKCシステムの活用による緻密な資金繰り計画の存在と、酒井智義税理士事務所の酒井康成公認会計士によるアドバイスが、新拠点への投資判断に大きく影響を与えたと語る。
──20年前に事業を始められたそうですね。
辻井喜久子代表取締役
辻井喜久子代表取締役 介護保険制度がスタートしたのは2001年ですが、それから1年後の02年8月、岐阜県各務原市で有料老人ホーム「パルク・ド・フレール」を開設しました。当時老人ホームといえば、介護度3、4の方や重度の方が入居されるのが一般的でしたが、体の具合が悪くなってから入居するのではなく、「人生最後の数年くらい楽しく生きよう、そして介護が必要となればここで人生の終焉(しゅうえん)を迎えよう」という方のための施設を作りたいと考えたのです。
──当時では珍しく株式会社による施設運営だったとか。
辻井代表取締役 岐阜県下では初の民間法人による老人ホーム設立だったことから、県の福祉関係者や施設関係者、医療関係者等多くの方が見学に来られました。当時は、社会福祉法人や医療機関は補助金によって建設から経営まで9割方のコストがまかなえるケースがほとんどでした。「株式会社で老人ホームを作ってもやっていけないだろう」「倒産するかも」と批判も浴び苦労もしましたが、おかげさまで20年間継続して事業を運営してこられました。運営するトライアンフカンパニーの経営は現在長男が行なっています。
満床が続いている「まりあんヴィラ」
──それからサーラを新たに設立されたと。
辻井代表取締役 はい。6年ほど前に瑞穂市にたまたまご縁があり、26人定員の老人ホーム「まりあんヴィラ」を立ち上げました。事業を始めた各務原とは異なり土地勘のない場所でしたが、一生懸命頑張り地域の方に認めていただけました。さらにサーラとして3事業所目となる「シニアハウスHANAZONO」を今年2月に開設。現在10名の入居者と3名の方の体験入居予約をいただいています。このほか精神障害者の方のグループホーム「サーラほのぼの」(入居者10名)と障害者の方のデイサービス(累計登録者約30名)を運営しています。
万全の医療体制と質の高いサービスで満床を継続
──各施設の特徴について教えてください。
辻井麻里社長
辻井麻里社長 14年に開設したまりあんヴィラは、おかげさまで満床が続いています。昼間の時間帯でも看護師が最低2人いますので、酸素吸入や胃ろうの方などの受け入れも可能です。施設内で調理した出来立ての食事も好評を博しているほか、食事内容の個別対応や買い物への付き添いなど、入居者やご家族の要望にできるだけ応えるサービスもケアマネージャーさんなどから評価されています。
西村利佳施設長 サーラほのぼのは、定員14名で精神障害を持つ10名の方が入居されています。グループホームなので自由に買い物に出かけたり、スタッフの支援を受けながら身の回りの掃除などを行ったりして、穏やかな生活を送っていただいています。さらに、「仕事をしたい」という意欲をお持ちの入居者向けに、内職の仕事も準備しています。
辻井代表取締役 シニアハウスHANAZONOはまりあんヴィラのサービスを踏襲しつつ、部屋の広さや設備の充実度は少し高めの設定になっています。普段の生活には不自由しないけれども1人暮らしは辛いし少し心配かなという方を対象に、20年前に目標とした「豊かな終焉」を迎えられる施設を作りました。そうした方々は、自立の方や要支援1など介護保険対象外になってしまうので、当社への収入源が少なく少し高めの料金設定になっていますが、その分豊かな日常生活を送っていただけるよう配慮しています。
──シニアハウスHANAZONOの場所については、再び各務原市を選んだとお聞きしています。
2月にオープンした
シニアハウスHANAZONO外観
辻井代表取締役 たまたまパルク・ド・フレールの道を挟んだちょうど真向かいの400坪近い土地が売りに出ており、知り合いの不動産会社から購入しないかと声をかけていただいたのです。どうしてもその土地が欲しくて金融機関に相談したところ、二つ返事で「わかった」と積極的に支援していただけましたので、3年前に購入しました。
すんなり金融機関の支援が受けられたのも、酒井先生の指導のもときっちりとした決算書を作ってきたからだと思っています。いくら私が欲しいといっても、帳簿作成がいい加減で決算書に信用が置けないならば、銀行もプロフェッショナルですから、そう簡単に首を縦に振ってはいただけなかったと思います。
酒井康成公認会計士 同社は「TKCモニタリング情報サービス」を利用して、複数の金融機関に決算書等の財務データを送信しています。土地購入で支援を受けた岐阜信用金庫蘇原支店とは支店長さんと少なくとも月に1度は面会するほど良好な関係を構築できています。金融機関から支援を受けやすい環境を作り上げてきたのは辻井代表取締役のすごいところだと思います。
巡回監査時の「経営診断」で適切なアドバイス受ける
──酒井先生の事務所と顧問契約を結んだのは起業した頃からですか。
古民家をリフォームしたサーラほのぼの外観
辻井代表取締役 起業した時に銀行から紹介されたのが酒井税理士事務所で、それ以来の長いお付き合いになります。お父さまの酒井智義先生から康成先生に引き継がれて5年ほど経ちますが、たまたま住まいも近く、頻繁に電話でやり取りをしたり、帰りに寄って下さったり、密接にコミュニケーションをとっています。ただ帳面をつけてもらうだけの通りいっぺんの会計事務所ではなく信頼関係が構築されています。
──土地を購入してからしばらく間が空いていますが……。
辻井代表取締役 巡回監査の時に毎回、今のサーラがどのような状況で、資本力はどれくらいで、資金的な余裕はどれくらいあるか、いくらまでの借り入れであれば返済に耐えられるかなど、資金繰りのアドバイスとともに当社の「経営診断」をしていただいています。土地を購入した時はすぐにでも次の老人ホームの準備に取り掛かりたかったのですが、酒井先生から「まりあんヴィラの状況が安定するまでもう少し待ちましょう」とのシミュレーションに基づいた意見をいただき、敷地を駐車場にして3年間は寝かせておきました。
酒井康成公認会計士
酒井 『FX4クラウド』の「マネジメントレポート(MR)設計ツール」を使って、5年間の資金繰り計画表を毎年作成しています。それに基づき、瑞穂市で開設したサーラとしては初の老人ホームである「まりあんヴィラ」の状況をまだ見極めたいと考えたので、少し待ってもらうことにしました。その後満床が続き順調にいい数字を出していたのを確認してからゴーサインを出したのです。
──部門別会計の詳細について教えてください。
酒井 まりあんヴィラ、サーラほのぼの、シニアハウスHANAZONOの3施設を部門別で管理して業績を把握しています。巡回監査ではそれぞれの施設長を務める辻井社長と西村施設長が月次の業績を発表し、売り上げや利益の現状、予想と実績にズレが生じた要因とその対応策などについてディスカッションをしています。
──酒井先生からはどのようなアドバイスを?
酒井 業種の特性上、入居率が安定すれば着地点がある程度見えてくるので、売り上げや利益についての具体的なアドバイスはそこまでしなくても良いのですが、気をつけなければならないのは新規の借り入れをする時。返済の負担がどれくらい増えるか、売り上げとのバランスがどれくらいかは常に注視しています。
──銀行信販データ受信機能は活用されていますか。
西村利佳施設長
西村 私はサーラほのぼのの責任者と会社全体の経理部門も担当していますが、この機能が搭載されてからというもの、本当に作業が楽になりました。入居者からの入金や仕入れ代金の支払い金額などをそれまで手で入力していたのが、選択肢から選んでいくだけで処理することができるようになったからです。半日かかっていた作業が30分くらいで終わるような感覚です。
──今後の目標についてお聞かせください。
辻井代表取締役 まずはオープンしたばかりのシニアハウスHANAZONOの収益を安定させたいですね。先日は90代のお母さまと70代前半の息子さんが別々の部屋で同時に入居されることが決まりました。さまざまなケースに柔軟に対応しながら、今後1年半くらいかけて満床にしていくのが目標です。
企業情報
株式会社サーラ
- 設立
- 2004年8月
- 所在地
- 岐阜県瑞穂市牛牧細道1107番地1
- 売上高
- 約3億円
- 社員数
- 17名(パート・アルバイト61名)
- TEL
- 058-213-5800(シニアハウスHANAZONO)
- URL
- https://www.sh-hanazono.jp/
顧問税理士 所長 酒井智義
酒井智義税理士事務所
- 所在地
- 岐阜県郡上市八幡町小野7-7-3
- URL
- https://www.tkcnf.com/sakaikaikei-gujo
(『戦略経営者』2021年6月号より転載)