導入事例 CASE STUDY
株式会社リミックス 様
左から門石雅裕社長、山中信一代表、井手浩一顧問税理士、
坂本丞司監査担当
統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例
透明性の確保をキーワードに
職場の「ホワイト化」に挑む
愛媛県南予エリアに美容室を3店舗展開するリミックス。山中信一代表が戦略を描き、門石雅裕社長が戦術の実施を担当する独自の経営スタイルをとり、近年は柔軟な働き方のできるヘアサロンとして美容業界から熱い視線が注がれている。「健全経営は正しい会計から」と語る山中代表と門石社長に、社内マネジメントの手法や財務データの信頼性を高める取り組みを聞いた。
スタッフの〝定着力〟で顧客の安心感を獲得
──メインの顧客層や客単価について教えてください。
門石 私たちが拠点を置いている地域は、住民の高齢化と若年層の減少が顕著で、30~40代以上の大人の女性が主要顧客層です。オリジナルメニューが多数あり、平均客単価は1万円ぐらい。競合他社より高めだと思います。
近隣には低価格サロンも存在しますが、当社は価格競争の土俵には乗らず、テクニックはもちろん、カウンセリング教育などでお店の付加価値を高めると同時に、リターン率の向上や来店サイクルの短縮化に注力しています。商品の購買率が高いのも、お客さまから信頼されている結果であると感じています。
──「従業員が辞めないヘアサロン」として注目されています。
山中 美容業界では入社3年未満の従業員離職率が80%にのぼるといわれるなか、当社は5年連続ゼロを達成しています。業界誌で取り上げられたり、同業者向けの講演会で働き方をテーマに講演したりしています。以前は同業他社と同じく、うちも長時間、低賃金労働が当たり前の職場で、技術を習得する前に退職してしまうスタッフもいました。離職率を下げるためには、労働環境をまず変えるべきだと気づいたのが2010年ごろ。営業時間を1時間短縮し、短時間正社員制度も導入しました。
私は中長期のビジョンと戦略立案を担当していて、スタッフに細かい指示を出しません。現場に施策を落とし込むのは、もっぱら門石社長の役割。トップダウンでなく、現場を熟知している社長によるミドルダウンだからこそ、スタッフは納得し、定着率向上につながっているのではないでしょうか。
門石 日ごろ大切にしているのは、スタッフ一人ひとりとのコミュニケーションです。体調や家族の状況、各自の抱えている課題などを聞き取り、スタッフ全員分のカルテを作成し、どんなアドバイスを行うべきか検討する際の資料として活用しています。
──その他にどんな労務対策を実施されましたか。
門石 育児や親の介護などで柔軟な働き方を希望するスタッフが増えており、38種類の勤務体系(社員37種類とパートタイム)の中から働き方を選べるようになっています。なおパートタイムを除き、社員全員が社会保険に加入しています。
──所属ヘアスタイリストの方が著名なコンテストのファイナリストに選出されたそうですね。
門石 優れたデザイン技術を備え、その1年間に活躍したスタイリストを表彰する「Japan Hairdressing Awards」という賞があり、当店在籍のスタイリストがノミネートされました。国内の美容業界では最高峰といえる権威ある賞で、県内のスタイリストから選出されたのは、過去30年間で数名程度です。スタッフが積極的に社外研修会に参加してきた成果だと捉えています。
「会計」の信頼性を高めたMISと書面添付の実践
──2016年に『FX4クラウド』に移行されたいきさつを教えてください。
「QRコード決済」もいち早く導入
(写真は大洲市にある「リロー」)
山中 当時は店舗でカット業務をしつつ、閉店後に私1人が3店舗分の仕訳を『FX2』に入力していました。POSレジの残高と『FX2』の売上金額が一致しない場合も間々あり、井手会計事務所の坂本さんに相談したところ、仕訳入力を省力化できる仕組みとして『FX4クラウド』を紹介されたんです。
坂本 『FX4クラウド』導入後も山中代表自ら仕訳を日々入力されています。
山中 経理業務を行っていると、勘定科目コードがおのずと頭の中にインプットされてくるんです。6118販売促進費……とか仕訳をどんどん入力するので、その光景を目にした人からよく驚かれます(笑)。
──システム移行後、どんな点が変わりましたか。
山中 何といっても仕訳入力に要する時間が劇的に減りました。「仕訳読込テンプレート」機能を活用し、POSレジの売り上げデータを『FX4クラウド』に連携できるため、双方のシステムの数字がピタリと一致するようになりました。これは気持ちいいですね。また業績分析面では「マネジメントレポート(MR)設計ツール」を用いて、3店舗ごとの商品売上高や技術売上高などを1枚のシートで比較できる書式を設定。社長と打ち合わせる際のツールとして役立てています。
──データがTKCデータセンター(TISC)で保存されるのも『FX4クラウド』の特徴です。
門石 昨年7月に発生した西日本豪雨では大洲市一帯が冠水し、店舗と事務所も床上浸水したため、20日間営業停止を余儀なくされました。ただ、経理業務で使用しているパソコンは故障してしまったものの、財務データをTISCから復元でき、とても助かりました。自然災害という経営リスクへの備えとして、クラウド型のシステムは有用であると感じています。
山中 水害により移転してしまったり、営業を再開できていないお店もまだあります。われわれの店舗が比較的早く営業再開にこぎつけられたのは、片づけを手伝ってくれたスタッフや近所の皆さまのおかげ。大勢のお客さまがお店の掃除など再開を支援していただいたのは大変ありがたかったです。
──復旧に公的資金は活用されましたか。
門石 特に助成金は活用していません。水害直後は将来に不安を感じるメンバーもいましたが、向こう3カ月間の給与を支払う余力のある点を伝え、心配を払拭(ふっしょく)するよう努めました。
──金融機関に対する業績開示も積極的に実施されているとか。
山中 おととし以降、「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)を活用して年次決算データを金融機関に送信しています。提出先の伊予銀行大洲支店では当社がMIS利用の1社目だったようで、支店長から称賛されました。加えてウェブサイトに財務ハイライトのページを設けており、直近5期分の売上高、経常利益、キャッシュフローなどの数字を公開しています。融資を申し込む際、月次試算表をすぐに出力して提出すると、金融機関の担当者からびっくりされます。
井手 MR設計ツールにしろ、MISにしろ、新たな機能がリリースされるとリミックスさまに最初に提案し、さまざまな機能を率先して活用いただいています。書面添付(※)も長年実施しています。
──これまでに税務調査はありましたか。
坂本 創業3年目に一度受けましたが、修正を指摘された項目はありませんでした。以来今日まで税務調査を受ける機会がなかったのは、書面添付を毎期実施しているためかもしれません。
井手 過去には税務署を訪問し、会社の状況について聴取された機会もありましたが、幸い調査省略になりました。
山中 当社の目指しているのは財務データや労働環境をはじめ、上場企業なみの透明性を確保すること。私が代表を務めている間にあらゆる面をホワイトな会社にしてバトンタッチしたかった。ですから会社の業績を隠す理由は何もないんです。
──今後の展望を。
山中 来年代表を退き、門石社長が新たに経営トップに就任する予定です。門石社長は創業メンバーの1人であり、これまで事業の方向性を共有してきました。今後も地域の方々に愛されるビューティーパートナーとして、地元の優良企業を目指してほしいと思います。そして財務面では、最初の数年は社長に仕訳入力をしてもらうつもりですが、ゆくゆくは経理担当者が入力する体制に改めてほしいと考えています。
※ 「書面添付制度」とは
税理士が申告書作成にあたり次のような項目について、添付書面に記載します。
- 関与先にどのような資料、帳簿類が備え付けてあり、どの帳簿類を基に計算し、整理し、申告書を作成したか。
- 今期大きく増減した科目の原因及び理由。
- 関与先からどのような税務に関する相談を受け、回答したか。
- 税理士として関与先の申告書内容について、どのような所見を持っているのか。
書面添付をすると、調査対象となる前に、税理士に記載内容についての意見を求められることがあります。これを「意見聴取」と言います。この意見聴取で疑問点が全て解決できれば、調査省略となります。また、調査に移行したとしても、既に調査を行うテーマが分かっており短時間で終了するのが殆どであり、税理士・関与先ともに負担が軽減されます。
日本税理士会連合会「書面添付制度をご存じですか?」より引用
企業情報
株式会社リミックス
- 設立
- 1998年12月
- 所在地
- 愛媛県大洲市東大洲1050
- 売上高
- 1億7,000万円
- 社員数
- 25名(短時間正社員8名含む)
- URL
- https://re-remix.jp/
顧問税理士 税理士井手浩一事務所
税理士 井手浩一
- 所在地
- 愛媛県松山市北藤原町1-16
- URL
- https://www.tkcnf.com/ide
(『戦略経営者』2019年10月号より転載)