導入事例 CASE STUDY
株式会社山のせ 様(旧社名:山のせピーエス株式会社)
統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例
「MR設計ツール」で作った
独自帳表を店長会議で活用
阿波名物「たらいうどん」を主体にした和食レストランなどを多店舗展開しているのが、山のせピーエスだ。従業員の理念教育に注力することで顧客満足度の向上を実現した同社の早藤重忠社長(59)が業績管理に役立てているのが、TKCの『FX4クラウド』である。その活用法を聞いた。
うどんととんかつの2業態で徳島県を中心に多店舗展開
──複数の業態で飲食店を営まれているそうですね。
早藤重忠社長
早藤 たらいうどん「山のせ」と、こだわりとんかつ「山かつ」の2つの業態を展開しています。山のせは、徳島県の郷土料理であるたらいうどん(丸い桶(おけ)に入った釜揚げうどん)をメーンに、天ぷらや押し寿司(ずし)(サバ等)などのセットメニューも充実した和食レストランです。
一方、山かつのほうは、とんかつ専門店。熟成肉を使っているのがウリの一つで、お客さまから注文いただいた後にパン粉をつけて揚げています。柔らかくて、とてもジューシーなんですよ。新鮮な地元野菜を中心にしたサラダバーも自慢のひとつで、自社農園や契約農家さんから仕入れた無農薬のものを使っています。
──現在の店舗数は?
早藤 山のせが3店舗(石井本店、松茂店、徳島店)。山かつが、徳島・香川の両県にまたがって6店舗(空港店、国府店、藍住店、高松店、屋島店、丸亀店)あります。
──グループ会社(有限会社おしこく)のほうで、洋食事業も手がけられているとか。
早藤 カフェレストラン「珈琲哲學」、パスタ&ピザ「DanRan」をそれぞれ1店舗ずつ運営しています。
──創業は1976年とお聞きしました。
早藤 先代の父(早藤信秋氏)がうどん店を出したのがスタートです。その後、90年までに3店舗体制にしました。しかし周辺には競合するうどん屋さんが多かったため、それ以降の出店については別の業種・業態のほうがよいと考えました。いろいろリサーチする中で目を付けたのが、当時はまだ全国的にも珍しかった郊外型のとんかつ専門店でした。1年かけて肉、パン粉、油など食材の選定とメニュー開発を進め、94年に第1号店をオープンしました。やっていくうちに、うどんよりも客単価が300~400円高く、専門性を深めていけば他社にもまねされにくい業態であることが分かったので、その後もとんかつ店を増やしていきました。
──御社にとってはまさに成長期を迎えたわけですね。
早藤 ええ。98年までの5年間でとんかつ店を毎年1店舗ずつ出店し、売り上げも好調に推移しました。
ところが2001年ごろから、地元の飲食業界をとりまく経営環境が大きく変わってきました。少子高齢化・過疎化が進む一方で、さまざまな業態の外食チェーンが出店してきたり、コンビニや弁当屋あるいはショッピングモールの中食店舗も増えたことから、競争が激しくなりました。それに伴い、既存店の売上高が毎年数パーセントずつ下がっていったのです。
──ピンチを跳ね返すために、どんな手を打ったのでしょうか。
早藤 一言でいえば、お客さま満足度の向上です。従業員教育を通じて接客力にさらに磨きをかけたり、居心地の良い雰囲気のお店にリニューアルしようと改装工事を少しずつおこなっていきました。また、新メニューの考案にも取り組み、「祝い会席」「お偲(しの)び膳」などの料理を充実させて祭事・法事の利用者を増やしたり、持ち帰り弁当の販売も始めました。
──その効果は……。
早藤 おかげさまで、前々期(1月決算)から売上高は上向きに転じ、今期も数パーセントの伸びを達成できそうです。
「部門グループ別管理」で業態ごとの採算性などを把握
──業績管理には、TKCの『FX4クラウド』を活用されているそうですね。
早藤 以前は『FX3』を使っていましたが、より多角的に部門別管理をしたいという思いから、2年ほど前に『FX4クラウド』に切り替えました。
──現在どのようなかたちで部門別管理をされていますか。
早藤 山のせ3店舗、山かつ6店舗をそれぞれ部門に見立てて管理しています。さらに、各店舗を支援するサポートオフィスである「本部」についても、1つの部門として設定しています。こうすることで、それぞれの店舗の売上高や限界利益率、人件費などの固定費がタイムリーに把握できるようになりました。
矢野隆弘・監査担当 また山のせピーエスさんでは、部門横断的な「部門グループ別管理」も実践されています。うどんととんかつの2業態をグループとして設定し、その業態ごとの業績を把握できるようにしています。つまり、山のせ3店舗をグループとして見た場合の数字と、山かつ6店舗をグループとして見た場合の数字がパソコン上ですぐにわかるのです。
早藤 うどんの業態のほうの原価率がどうなっているか、あるいは生産性が良いのか悪いのかといった判断をしていくうえで、部門グループ別管理の機能は役立っています。
──日々の業績管理をするなかで、特に注視している数字は何ですか。
早藤 飲食店なので当然、FLコストには目が向きますね。つまりFOOD=原材料費と、LABOR=人件費の2つです。このFLコストが適正な推移を示していれば、利益はおのずと出てきます。
ただ、月によって意外とばらつきがあり、食材コストは台風が来たりしたら急に高騰したりします。今年は異常気象も手伝って、野菜などが高値で推移しました。
──人件費を適正に抑えるための工夫を教えてください。
早藤 現在、従業員約320名のうち9割をアルバイト・パートさんが占めています。それらのスタッフのシフトの組み方が大事となります。「この時間帯はこの人数で」といった具合に、うまくスタッフィングしていくことが店長や社員の腕の見せどころ。人が少なすぎればサービスの低下につながるし、逆に多すぎると店内に活気がなくなる。店長たちには、とにかく適正なスタッフィングを心がけるように指導しています。
「仕訳読込テンプレート」活用しPOSレジのデータを連携
──店長を集めての会議は定期的に開かれているのでしょうか。
早藤 お客さまに対し、きちんと「価値」を提供できたかどうかを検討する会議と、FLコストについて検討する会議を、それぞれ1カ月おきに開催しています。
早藤孝規取締役
早藤孝規・取締役 FLコストを検討する会議では、『FX4クラウド』から得た数字をもとに作ったオリジナルの経営資料をもとに、さまざまな話し合いをしています。
たとえば当社には「営業損益」と呼んでいる、すべての店舗の「売上高」「原価」「人件費」「営業利益額」などを一覧にした独自の経営資料があります。これについては、『FX4クラウド』の機能の1つである「MR(マネジメントレポート)設計ツール」を使って作成しています。MR設計ツールを利用すれば、最新の業績データを反映させた自社独自の帳表をスプレッドシート(エクセル)で簡単に作れるのです。
──『FX4クラウド』の導入によって、仕訳データ入力の作業がだいぶ楽になったそうですね。
早藤 従来は、各店舗の売り上げなどをすべて担当スタッフがシステムに手入力していました。しかし「仕訳読込テンプレート」の機能がある『FX4クラウド』にしてからは、各店舗のPOSレジと連携させることで、そのデータを自動的に仕訳入力できます。おかげで担当者の負担はかなり減り、その分、サポートオフィスとしての本業とも言える販促ツール(メニュー表やポスター・POP類)の作成やご意見カード(顧客アンケート)の集計作業などに時間・労力をさけるようになりました。
──今後の展望は。
早藤取締役 当社が長期ビジョンとして掲げているのは、「縁ある人たちが笑顔で集う場」の創造です。その実現に向けて、居心地のよいお店作りを追求していきたいですね。そのためには従業員に理念の浸透をいっそう図っていくことも大事といえます。
企業情報
株式会社山のせ
(旧社名:山のせピーエス株式会社)
- 設立
- 1976年12月
- 所在地
- 徳島県名西郡石井町石井字石井673-12
- 売上高
- 約10億円
- 社員数
- 約320名(うち正社員40名)
- URL
- http://www.yamanoce.co.jp/
顧問税理士 久米健司
税理士法人すばる会計(第二事業部)
- 所在地
- 徳島県徳島市中洲町1丁目45番地3
- TEL
- 088-622-2272
- URL
- http://www.subarukaikei.or.jp/
(『戦略経営者』2015年12月号より転載)