株式会社富岡食品 様

統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例

高付加価値戦略と計数管理で
“100億企業”を目指す

来年創業100年を迎える富岡食品。小さな納豆製造店からスタートし、豆腐加工の揚げものへと主力商品を変化させながら、着実に成長を重ねてきた。その歴史に培われた技術とノウハウで、10年後の“100億企業”を目指している。同社の冨岡宏臣社長と土屋政信顧問税理士、鈴木敦詞監査担当に話を聞いた。

冨岡宏臣社長

冨岡宏臣社長

──創業は1926年だとか。

冨岡 来年で100周年を迎えます。初代で曾祖父の冨岡信が富岡納豆製造所を開業し、納豆を背負いかごに入れ、深谷の町を引き売りしながら得意先さまを増やしていったと聞いています。

──当初は納豆屋さんだったのですね。

冨岡 はい。その後、昭和40年代に入り、納豆と同じ原料でつくった豆腐の製造をスタートし、77年には、営業部門を設けて小売業界に売り込みを開始。地元大手スーパーとの取引が始まり、さらに80年代に油揚げのきざみ揚げ、味付け油揚げ(いなり寿司の皮)、がんもどきなどに広げていきました。

高付加価値製品にシフト

──納豆の引き売りから、現在の年商(約37億円)にまで成長されたのはすごいと思います。

冨岡 とはいえ、決して順風満帆ではなかったですね。創業製品である納豆や豆腐は、全国の小さな店舗でもわりあい簡単につくることができるために供給過剰となりがちで、薄利に陥りやすいという欠点があります。そのため当社では、2014年には納豆と豆腐の「自社製造」を終了し外注に任せ、付加価値の高い「豆腐加工の揚げ物に特化していく」という宣言をしました。つまり、加工度の高いものを手掛けて、レッドオーシャンを脱してブルーオーシャンで勝負しようと……。

──大きな転換点ですね。

油揚げの製造過程

油揚げの製造過程

冨岡 納豆・豆腐の自社生産を終了すると同時に、直火炊きいなりの皮を使用した「釜炊きいなり」の量産化に成功しました。この釜炊きいなりは、機械メーカーとコラボしながら開発に2年をかけたのですが、皮の味がしっかりしみ込んでいるのが特徴で、首都圏の大手スーパーの総菜売り場のロングセラー商品となっています。

──同じ14年にいなり寿司専門店もオープンされていますね。

冨岡 はい。「富ばあちゃんのいなり本舗」ですね。

──富ばあちゃんとは。

冨岡 私の祖母で、3代目社長の冨岡セキのことです。祖母のつくってくれた味が忘れられなくてこの店舗をつくりました。家庭で煮炊きするような素朴な味を、味わっていただきたいという思いです。富ばあちゃんのいなり本舗では、定番いなりはもちろんですが、カレーいなり、イタリアンいなりなども商品化して、テレビでも紹介されるほど話題になりました。さらに昨年(24年)には、新たに「富じいちゃんのがんも屋」もオープンしました。

──ということは、14年あたりは、飛ぶ鳥を落とす勢いだったと?

冨岡 いいえ。私が代表取締役に就任したのは08年のことなのですが、当時はOEM(相手先ブランドによる生産)商品が全売上高の7割を占めていました。当然利益は薄く、経営状態もよくありませんでした。進む方向性を変えなければ……と、とても悩んでいた時期です。

部門別管理で利益体質へ

──その頃、土屋政信先生が顧問に就任されています。

土屋政信顧問税理士

土屋政信顧問税理士

土屋 ある銀行のセミナーで講演をした際に、冨岡社長が参加されていて、名刺交換したのをきっかけに相談を持ちかけられ、会社を訪問させていただきました。

──いかがでしたか。

土屋 年商数十億円の会社で社員の方もたくさんおられるのに、月次の業績を把握できていない状況でした。それから工場や製造ラインも複数あるのに部門別管理ができていない。これだと、正確な打ち手を講じることは難しいので利益は出にくくなります。「社長、まずここから変えていきましょう」と、『FX4クラウド』の導入を提案しました。

──冨岡社長としても、計数管理について問題意識があったと。

冨岡 やはり正確かつタイムリーな数字が経営には必要だし、限界利益を意識することが重要だと、土屋先生のお話を聞きながら実感しました。何が儲かって何が儲かってないかが正確に分からないと思いきった決断はできませんからね。TKCシステムを導入し、部門別で数字がはっきり見えたことで、薄々は分かっていたことも「やっぱりそうか」と確信でき、それがその後、利益率の高い高付加価値商品への転換に、舵を切っていく決断ができた理由でした。

──どの部門が赤字でしたか。

冨岡 OEM商品はそれこそ真っ赤でした。赤字部門が分かれば「やめる」という選択肢もあるし「値上げ」の決断だって可能です。

──部門分けはどのように?

鈴木敦詞監査担当

鈴木敦詞監査担当

鈴木敦詞監査担当 まず4つの工場を部門分けし、それぞれに商品などをぶら下げる形で計10部門ほどで階層管理をしています。

──利益体質に変わったのは?

土屋 徐々に、ですね。年商も大きいし、従業員もたくさんおられますから、赤字が分かっても製造ラインは動かす必要があります。すぐに商品をなくすわけにはいきません。

──部門別の結果を打ち手につなげるには?

冨岡 システムを導入してから月1回の会議に土屋先生はもちろんですが、各工場長も参加してもらうようにしました。工場長自身が自部門の業績の詳細が分かってないと、うまく利益体質に転換できないと考えました。たとえ売上高が伸びても、製造過程のロスが大きければ利益幅が減少します。月次の業績把握は「なぜこんなに儲からないのか」を工場長が考えるきっかけになるし、それが具体的な打開策の実行にもつながります。

数字を見るのが楽しみに

──工場長の方々からの反応は?

冨岡 最初は戸惑いがあったようですが、どこかのタイミングで、自部門の数字がどうなっているかを見るのが楽しみになってきたみたいです。

土屋 日々業績改善をしている結果が分かる、つまり自分たちのやってきたことが形として見えるので、打ち手に自信があれば月次決算の数字が楽しみになるのは当然でしょう。

冨岡 ちなみにこの会議は「幸福会議」という名称にしています。われわれの活動によって社内外の人間が幸福になろうというプロジェクトの一環です。

──会議は何日くらいに行われるのでしょうか。

冨岡 前月の業績を締めるのが10日前後なので、月半ばには実施します。

──早いですね。

冨岡 当社には販売管理を行う基幹システムがあり、それと『FX4クラウド』を連携させているので、導入前に比べて相当早くなりました。

鈴木 加えて、TKCのシステムということで言えば、フィンテック機能である「銀行信販データ受信機能」や金融機関に決算書と月次試算表をリアルタイムに送信する「TKCモニタリング情報サービス」も採用していただき、業務の効率化に役立てておられます。

──現在はどういった商品構成になっていますか。

冨岡 味付け油揚げ、きざみ揚げ、がんもどきという独自性の高い高付加価値製品3種で売り上げの80%を占めています。

──今後はいかがでしょう。

冨岡 売上高100億円をめざします。中小企業庁が実施している“100億宣言”への申請も視野に入れています。そのためにさまざまな事業を考えていますが、海外展開もその一つ。東南アジアでのいなり寿司の皮のニーズがかなりあるのでそこを狙っていきたいと思っています。それから「富ばあちゃんのいなり本舗」「富じいちゃんのがんも屋」などといった直営店でのBtoCビジネスも、さらに増やしていきたいですね。

土屋 当事務所が関与し始めた頃と比べると、よくまあここまで来たなという感じです。それもこれも冨岡社長の若さと柔軟な考え方があったからでしょう。また、冨岡社長と社員の方々、そして当事務所がチームとして動けたことが大きかったと思います。

冨岡 土屋会計事務所さんのおかげでリアルタイムでの数字の把握と適切な打ち手の実施が仕組み化できました。今後は、この仕組みを生かしながらより業績管理を精緻化していき、着実に成長していきたいと考えています。

企業情報

商品群

商品群

株式会社富岡食品

業種
豆腐加工食品製造業
創業
1926年4月
所在地
埼玉県深谷市東大沼229-1
売上高
約37億円
従業員数
約100名
URL
https://www.tomiokafoods.co.jp

顧問税理士 土屋政信税理士事務所
所長 土屋政信

所在地
埼玉県深谷市本住町10-6
URL
https://tkc-nf.com/office-tsuchiya

『戦略経営者』2025年12月号より転載)