システム移行
TKC方式による自計化を推進し元気な関与先をどんどん増やそう!
システム移行座談会
事務所承継等を機に他社システムからTKCシステムへ移行し、TKCビジネスモデルによる事務所経営を目指す3名の会員にTKCシステムのメリットや今後のビジョンなどについて語り合ってもらった。
出席者(敬称略・順不同)
田中義一会員(平成23年3月入会・中国会)
藤井道明会員(平成13年4月入会・関東信越会)
稲村 太会員(平成26年2月入会・北陸会)
司会/TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会
ニューメンバーズ・フォロー部会小委員長 橋本真一会員(関東信越会)
25年以上サラリーマンとして働いた後、税理士へ転身
──まずは自己紹介をお願いします。
田中 山口県萩市で開業している田中です。私は平成20年にTKC未入会事務所へ職員として入所し、平成22年には税理士登録しました。所長が高齢を理由に引退するとなった際に、承継者が不在ということで私が事務所を承継したのです。現在、関与先は法人が105件、個人が22件あり、職員は7人です。
藤井 新潟県三条市に事務所を構えている藤井です。平成11年に税理士登録をして、平成16年に父の事務所を承継しました。現在、関与先は法人50件、個人32件で、職員は5人ですが、近く1人入ります。
実は、私は3人兄妹の末っ子で、兄が税務署に勤めていて、姉が県職員なんです。幼少期から父がお客さまに感謝されている姿をずっと見てきた影響で、「税理士って良いな」という思いがありました。
もともと兄が事務所を継ぐ予定でしたので、私は公認会計士になろうと勉強していました。でも、当時は激戦だったので結局、大学院へ進学して税理士の道へ舵を切り、卒業後は大手税理士法人で3年ほどお世話になりました。中堅・大企業の上場のお手伝いをした他、出向者として経理を手伝っていました。
稲村 石川県金沢市で開業している稲村です。「仲間と一緒に楽しむ」ことを経営理念に掲げ、楽しく働くことをモットーにしています。現在、職員数は6名で、関与先は約80件あります。
大学卒業後は、損害保険会社の営業マンを10年間勤めました。その後は、当時、市役所や県庁が民間企業から中途採用するのが流行っていて、縁もゆかりもない山口県防府市の市役所職員になりました(笑)。
市役所には7年務めましたが、父が亡くなったことをきっかけに地元の金沢市に戻ったのです。そして、地元の企業にご縁があって入社し、経理と総務を10年ほど経験しました。
25年以上サラリーマンとして働き、その間に社会保険労務士と税理士の資格を取得しました。「そろそろ次のステージへ行ってみよう」と決心し、開業したのが平成25年です。
平成27年に、他社システムを利用の事務所が廃業されるということで、関与先を引き継ぐことになりました。
もっと社長と話がしたいとTKCへ入会
──TKCへ入会した経緯を教えてください。
稲村 経理を任されていた会社で、導入する会計システムを検討していた際に、TKCの社員の方と知り合いました。その時に、「実は今度、税理士登録することになりました」とご報告したら、「事務所見学会に来ませんか」とお誘いをいただいたのです。見学会でいろいろなお話を聞くうちに、「TKCしかない」と思い、平成26年に入会しました。
田中 まだ職員だった頃に、近所のTKCの先生からお誘いを受けて行ったニューメンバーズフォーラムがきっかけです。私が承継した事務所は萩市の中では大手でしたから、今後も生活に困ることはないだろうとは思っていました。記帳代行をメインで行っていたのですが、もっと社長と話ができるような業務がしたいとちょうど考えていたので、承継したらTKCに入会しようと思っていました。
また、承継したタイミングでお客さまから「TKCシステムを使ってみたいんだけど」という話をいただいたこともきっかけの一つです。
藤井 父の事務所も記帳代行を行っていたのですが、将来予測はせず、決算が終わった後にいくら税金が出たか報告するだけで(笑)。それではダメだと思い、承継した時に会計システムを替えようと、一斉にベンダーを呼んだのですね。他社がシステムの利便性ばかりお話しされる中で、TKCの社員は巡回監査や自計化のお話をしてくださって、「巡回監査をして関与先と一緒に成長していく事務所づくりができる」というビジネスモデルと「自利利他」という理念にひかれて入会を決断しました。
会計がなければ経営助言もできないと実感
──稲村会員は独立開業を機に入会されシステム移行にも取り組まれたわけですが、藤井会員と田中会員は何か課題があり、移行を決めたのでしょうか。
藤井 以前、あるお客さまが去ってしまったのですが、継続MASを利用して経営助言はしていたものの、TKCシステムで自計化はしていない会社でした。結局、他社システムが強く、覆せなかったのですね。その時に、会計なくして経営助言はできないことを実感しました。
それと、ある関与先から「銀行に提出する経営計画書を作って欲しい」と依頼を突然受けたことも大きいです。事務所で継続MASを使って作業していたら、2時間ほどで計画書が作れてしまい、それを関与先から銀行へ提出しに行ってもらったら、「融資が下りました」と報告を受けたのです。TKCシステムならあっという間に作れて便利な上に、対外的にも通用する計画書が作れると分かり、「絶対にTKCだ」と。
田中 入会当初は、巡回監査にあまり取り組めていませんでした。でも、記帳代行をしていると、決算・申告書の作成が終わって最後の報告のタイミングで、納税額を見て「先生、どうにかなりませんか」と言われるんですよね。
コミュニケーションが不足していて、トラブルのような事態に発展することもあったので、やっぱり、TKCシステムに替えて、巡回監査もしっかりして、社長の気持ちを拾わなければと思ったからです。
サポート体制を説明すると移行を受け入れてもらえる
──具体的なシステム移行の方法やポイントがあれば教えてください。
稲村 法人ですとやはり決算期が区切りになりますので、決算が近づいた時にTKCへの移行を提案するようにしました。
自計化して巡回監査して、3カ月に1回は業績検討会をして、事前に決算対策もきちっとやって、書面添付をする、というTKCの一連の流れを説明したのですね。
入力は嫌がられるかなと思いましたが、意外にもお客さまで「いやだ」と言う人はおらず、皆さんに「お願いします」と言っていただけました。きちんと説明すれば大丈夫なのだと分かりました。
お客さまに説明する時には、職員を同伴するようにしていました。すると職員だけでも説明できるようになりましたし、移行のメリットをよく理解してくれたような気もします。
田中 職員にはe21まいスターの無償期間を利用して交渉するよう言っていました。今まで管理していなかった口座別・取引先管理の徹底により、業績がタイムリーに把握できるようになりお客さまから喜ばれ、そのまま移行するケースもありました。
また、TKCの自計化システムを使うことで、お客さまにきちんと経理を指導しようということも常に話しています。
所長とはいえ私が最後に入所した立場でしたから、移行に対して初めは誰も聞く耳を持ってくれませんでした(笑)。このままではまずいと思い、自分についてきてくれる職員を採用し、育てることから始めたんです。システム移行の経験を積んだ職員を増やした結果、移行が進むようになりました。
藤井 父の時代からのお客さまには、なかなか自計化してもらえませんでした。
しかし、経理担当者が代わるタイミングでTKCシステムを提案することで、自計化も進むようになりました。例え、時間がかかっても、根気強く移行をお願いしていくことが大切だと思います。
関与先数は同じだが元気なお客さまが増えた
──サービス内容の変化は料金体系にも影響しますが、お客さまの反応はいかがでしたか。
稲村 移行前の事務所と比べると、月額顧問料は高めですが決算料金はそれほどでもないという料金体系でしたので、「値段は以前と変わりません。月額は少し上がりますがサービスが充実します」と説明すれば、さほど抵抗はされませんでしたね。
田中 平成24年に、SCGさんからの勧めでOMSを導入したので、時間があれば関与先カルテを見ることを心がけています。業務日報と連動して時間単価が出てくるので、その画面をハードコピーして社長への決算報告時に持って行くんです。「社長、私も経営者です。実は御社の仕事の単価はこれくらいなのですが…」と言うと、社長も適正価格かどうか考えてくださるので、私も自信を持って値上げ交渉させていただきます。
稲村会員もおっしゃっていましたが、巡回監査をベースとしたTKCの一連のサービスを実施してから、昔との違いを感じていただけたのではないでしょうか。
事務所を承継して6年経ち、法人・個人の関与先数はほぼ変わりませんが、実は2割ほど入れ替わっています。自計化して経営助言ができるようになった分、事務所の収益も上がり元気なお客さまが増えました。
藤井 料金体系はあまり変えなかったですね。でも、FXやe21まいスターを導入する時は、顧問料を値下げする代わりにレンタル料を少し上げていました。結局、プラスにはなりますがその分、何かあった場合にはきちんと訪問して対応します。
「レンタル料」から「サポート料」に名称を変えて、ただシステムを貸しているだけではないということをアピールしました。
実際に、巡回監査で毎月話をお聞きするようになって、お客さまに喜ばれました。話し忘れたことがあっても、「また来月話すね」ということで話がつながりますし、より信頼していただけるようになりました。
事務整理で精一杯の状態から自社株評価ができるまでに
──事務所内ではどのような変化がありましたか。
稲村 実は廃業された事務所を承継した際に職員さんも1人引き継ぎました。初めはTKCシステムを覚えるのに苦労していましたが、周囲の職員に助けられながらも頑張ってくれています。職員同士が支え合いながら働いているので、職場の雰囲気もさらに良くなりました。
田中 職員が巡回監査で外出するようになり、社長さんに職員の顔と名前を覚えてもらえるようになったことが大きいです。
今までは電話がかかってきても、「あの子お願い」「うちの担当をお願い」というように名前が出てこなかったのに対して、「○○さんお願いします」と言われるようになりました。
私が社長さんとお話をしている時も、「職員の○○さん、いつもよくやってくれて、すごく助かってるよ」と感謝の言葉をいただく機会も本当に増えまして、職員も仕事にやりがいを持てるようになりましたね。
藤井 うちの事務所では経営支援セミナーを開催しているのですが、始めてから5年、10年と経ってくると、私よりも職員の方がいろいろと分かってきて、テキパキこなしてくれるようになりました。
記帳代行をしていた頃は手書きでしたから、「もう事務整理だけで手がいっぱいです」と言われていたので、嬉しいです。関与先の自社株評価もできるようになりましたし、企業防衛・リスクマネジメントについても今は職員が自分で調べることもできますからね。事務所の底上げはすごくできたなと実感しています。
「質の高い」職員を育て社会に送り出していきたい
──それでは最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
稲村 承継した関与先につきましては現在も移行中なので、なるべく早く自計化するために努力していきたいです。さらに今後は、情報や付加価値の高いサービスを提供していくために、お客さまへの提案やセミナーの開催など、アウトプットの活動もしていきたいですね。
そのためにもまずは、職員ができる業務を増やして、事務所全体の底上げをしなければいけないと思っています。例えば、TKCや大同生命の担当者による所内研修を始めました。リスケ案件がきた際の継続MASの使い方など、実際に業務を行う中で発生した案件をケーススタディにして、一つ一つ研修しているという感じです。
うちでは、社会保険労務士の業務も扱っているので、税務や会計だけではなく人事労務上の問題についてなど、他の事務所では扱っていないことにも対応しているということをアピールしていきたいと思います。
田中 うちの事務所は、「地域貢献」と「人材育成」を経営理念に掲げているので、地元企業・地域の方々・職員の三つを育てていきたいです。
その中でも特に、人材育成に重点を置いています。いろいろな人を育てていきたいですね。例えば、うちの事務所に女性職員が入ったとして、結婚・出産の後にまた戻ってきてくれてもいいし、他の会社で経理を担当してくれてもいいわけです。大切なのは、うちで働いた人は、「質が高い」と言ってもらえることですから。
今は求人募集を出しても、なかなか人が集まりません。萩市は過疎化が進む地域ではありますが、私は人は財産だと思っているので、できるだけ毎年人を採用して、育てて送り出していきたいと考えています。
また、事務所自体も人が集まる相談窓口にしていきたいです。困ったことがあればすぐに私の事務所が思い浮かんだり、とりあえず相談してみようと思っていただければ嬉しいですね。私が対応できなくても、職員を育てていれば、職員が解決してくれるかもしれません。そういう意味でも、人を育てることは大切だと考えています。
藤井 AIやFinTechがどんなに進化したとしても、使う側の人間が間違っていて、きちんとした情報が入っていなかったとすればどうでしょうか。税理士は将来なくなる職業に上げられますが、不確かな部分を確実に潰していけば、生き残ることができる職業ではないかと思っています。
ですから、会計事務所に求められることは、TKCシステムを導入して自計化をして、経営助言にもしっかり取り組むことだと考えています。
もし起業した人が周囲にいればぜひTKCシステムで自計化をしてもらって、初めは小さな会社だとしても、将来的に大きくなるよう、一緒に成長していきたいですね。
TKCは一生懸命、事務所発展のための施策を考えてくださっているので、入会当時の気持ちを忘れず、これからも素直にTKC理念を大事にしながら、事務所経営をしていきたいです。
(構成/TKC出版 菅 真衣子)
(会報『TKC』平成30年1月号より転載)