税務官公署出身会員に聞く
お客さまから認められる存在になり地域社会の発展に貢献したい
風張広美税理士事務所 風張広美会員(東北会宮城県支部)
風張広美会員
平成23年に退官し、専業主婦を経て独立開業した風張広美会員。TKCシステムを徹底活用した事務所経営を目指し、地域社会に還元したいと語る。
仙台国税局初の女性所得特別国税調査官
──ご経歴について教えてください。
風張 昭和48年、仙台国税局に採用されました。本科20期で、記帳指導、関係団体との連絡協調、税務調査、税務相談などを経験しています。平成23年に退官したのち専業主婦をしておりましたが、平成25年に地元の関係団体からのお声掛けがあり再就職することになり、税理士登録をしました。その矢先に母が体調を崩したため、内定を辞退し自宅で税理士事務所を開業することになりました。
──印象深い業務は何でしたか。
風張 税務調査ですね。男女雇用機会均等法が制定された時代の変わり目で、私は仙台国税局管内で初めて女性で調査の仕事を与えられました。「私がやらなくては後が続かない」という先駆けの苦労もありました。当時の上司に「業種に精通するのではなく、人に精通しなさい」と言われ、その言葉の意味や重みを税理士となった今でも実感し、人とのつながりを一番大切に考えています。
──前職のご経験が活きていると感じられるところはどこですか。
風張 通算8年にわたって税務相談に従事し、ありとあらゆる種類の税金の悩みを受けてきた経験は、直接今の仕事につながっています。今、じっくり話を聞き、複数に絡まり合った悩みを整理し、税務とそうでない部分を分類して、必要があれば提携先の専門家を紹介することができるのも税務相談室での経験が長かったからだと思います。税務相談室はどんな相談がくるのか分からない上に、非常に専門的な内容が多くて随分鍛えられました。
「日本一話しやすい、経験豊富な女性税理士です」を事務所のキャッチコピーにしていますが、これは当時の経験があったからこそですね。
経営ノウハウを惜しげもなく教えてくれる
──TKC入会のご経緯は?
風張 税務調査を通じて多くの納税者や税理士とお会いしましたが、TKC会員の税理士は、関与先の指導をしっかり行っており、知識が豊富で、尊敬できる方が多く、事務所も発展しているという印象でした。ですから、自分が税理士になったら「TKCに入会する」という以外の選択肢はありませんでした。
──入会後の感想はいかがですか。
風張 何でも相談できる仲間がいて、長年苦労して会得した事務所経営などのノウハウを惜しげもなく教えてもらえる、こんな組織は他にはないと思います。もし、自分が頼られる立場になったら、惜しげもなく伝え、順繰りに恩返ししたいと考えています。TKCの「自利利他」の精神そのものですね。
──TKCのシステムについては、いかがですか。
白ゆりのように
心清く
香高く
誇高く
誠意 誠実 真心
風張 税務調査では、提出された決算申告書を調査する「過去会計」を行ってきましたが、「税理士として関与先の経営に関わるには、会計を経営に活かす『未来会計』を学ばなくてはならない」と考え、独自に勉強していました。
TKC入会後に参加したセミナーでは、e21まいスターやFX2等の自計化システムの導入、書面添付の実施、継続MASシステムの活用による経営計画の策定等のTKCシステムの徹底活用が未来会計につながることが分かり、「私が学びたかったことはここにあった」と感動しました。私1人では身に付けられないスキルと付加価値をTKCが与えてくれることは事務所の大きな強みになっていると思います。
右も左も分からない状態で開業しましたので、とにかくTKCのやり方で挑戦してみようと思い、新規のお客さまには「TKC会員事務所の業務のご紹介」のパンフレットを使って、順番通りに業務を案内し、TKC自計化システムの活用をご提案しています。実は、私自身パソコンが得意な方ではありませんが、担当SCGの方がとても丁寧にフォローしてくれますので、その点も安心できます。
自計化で経営者の意識に大きな差が
──自計化による効果を実感されたと伺いました。
風張 開業当初に、「お客さまが望むなら何でもやろう」と記帳代行や領収書の整理まで受けた先がありました。偶然にも、その会社と同業種、同規模、社長の年齢もほぼ同じという会社が同時期に関与先となり、そちらは自計化に成功していました。1年経って2社を比べると、自計化していない先は「先生、うちは儲かっていますか?」と聞いてくるような状態。一方、自計化した先は、日々の業績を確認するのを楽しみながら、社長自らが経営改善策を考えてくるようになっていました。たった1年で、社長の「経営者としての意識」に大きな差ができてしまったんですね。
この経験から、「真にお客さまのためになることを考えて、迷わず自計化を推進しよう」という決意が生まれました。
──今後の展望をお聞かせください。
風張 これまで得た経験を、今までお世話になった方々への恩返しとして地域社会に還元していきたいと考えています。税理士事務所としてお客さまをサポートしていくことはもちろん、油絵やダーツ、お香などの趣味があるので、それらを活かして地域の方のための趣味のコミュニケーションスペースをつくることも夢です。まだまだやりたいことだらけです(笑)。
まずは、税理士としてお客さまから認められる存在になること、つまり事務所経営で成功しなくてはなりません。そのために、TKC理念にのっとり、TKCシステムの徹底的な活用を目指した事務所経営を行い、お客さまとともに事務所を成長させていきたいです。
(TKC出版 小早川万梨絵)
(会報『TKC』平成27年12月号より転載)