独立開業
地元に根付いた事務所を目指して社長を元気にしたい!
ニューメンバーズ会員座談会
とき:平成28年3月31日(木) ところ:TKC東京本社
「TKC全国会重点活動テーマ・ニューメンバーズ部門表彰」(平成26年7月~平成27年6月)の各項目で受賞したニューメンバーズ会員3名が集い、事務所経営におけるKFSの推進、関与先拡大の取り組み等について語りあった。
出席者(敬称略・順不同)
【FX2純増件数第1位】
小島拓也会員(平成25年6月入会・北海道会)
【翌月巡回監査率90%超達成第1位・書面添付純増件数第2位】
山村祥弘会員(平成25年8月入会・中部会)
【翌月巡回監査率90%超達成第1位・継続MAS純増件数第2位】
清水智文会員(平成25年6月入会・九州会)
司会/TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会
ニューメンバーズフォロー部会小委員長 渡辺 忠会員(関東信越会)
「会計で地元を元気にします」農業法人を中心に関与先拡大
司会/渡辺 忠会員
──皆さまは開業から約3年ということですが、まずは事務所の概要や特徴について教えてください。
清水 地元の福岡県福岡市で開業し、妻と職員3人の事務所です。関与先は法人が24件、個人が15件、コンサル等を行っている先が1件で、計40件です。
勤務時代の事務所がTKC会員事務所でしたので迷うことなく開業と同時にTKCに入会しました。
「クライアントのハッピーライフを全力でサポートし共に成幸(せいこう)人生を楽しむ」ことを経営理念としています。お客さま一人ひとりが得たい結果や幸せの形は違うと思いますが、それを私たちが理解せずに的確な支援はできないと考えています。そのために、月次巡回監査と継続MASの活用を徹底し、経営者とたくさんコミュニケーションをとるように職員に伝えて自分でも実行しており、「翌月巡回監査率達成90%超」(第1位)と「継続MAS純増件数」(第2位)の項目で表彰していただきました。
小島 私の事務所は、地元の北海道深川市という人口が約2万2千人の町にあって、「会計で深川を元気にします」という文句を売りに開業しました。
私も以前勤めていた事務所がTKC会員事務所でしたので、開業前からTKCに入会していました。前の所長先生が書面添付も継続MASも何もかも実践されるような方で、私も月次決算は当然のことだと思っていたので、年一決算が通常だという地元の現状に驚き、自分の手で、もっと深川市を元気にしていけるのではないかと思ったんです。
職員は妻1人で、関与先は法人60件、個人20件の計80件で、法人のうち新設法人が33件、さらに新設法人のうちの23件は農業法人です。関与先全体で見ても3分の1以上が農業で、農業を中心に置いていることが事務所の特徴です。
伯父が農家なので、コンバイン等の農業機械にも乗ったことがあり農業の仕組みも分かっています。加えて地元のネットワークがあって、農協に行けば知り合いがたくさんいるような環境で、自然と相談が集まりやすいですね。
関与先の自計化件数は62件で、「FX2純増件数」(第1位)で表彰していただきました。
山村 私も地元の岐阜県恵那市で開業しており、職員2名体制の事務所です。関与先数は法人が16件、個人が27件で合計43件です。
開業後は半年間ほど、どのシステムを使おうか悩んでいたのですが、そのときに参加したTKCのセミナーでまさに本日の司会をされている渡辺先生の話を聞いて入会を決めたので、すごく縁を感じています。
ほぼ全てのお客さまに書面添付を実践していて、表彰項目は「書面添付純増件数」(第2位)と「翌月巡回監査率90%超達成」(第1位)です。
「全てのお客さまの幸せの創造」が事務所の経営理念です。開業から2年半経ったときに「うちの事務所は何をしているんだろう」と深く考える機会があり、その時につくった経営理念です。今はこの理念を軸に仕事をしていこうと決め、所内でも話をしています。
──経営理念は、自分が迷ったり困ったりしたときに、判断の物差しになるものであり、立ち返る場所でもあります。それを軸に組織も強くなっていくと思うので、大事にしてほしいですね。
「成幸人生支援拠点」として経営計画策定で夢を具体化
──表彰項目の推進のきっかけや取り組みについて教えてください。まず「翌月巡回監査率90%超達成」、「継続MAS純増件数」の2項目で受賞された、清水さんからお願いします。
清水智文会員
清水 契約締結初期段階においては、TKC方式の自計化・月次巡回監査・継続MASの全てを活用し、早期にPDCAサイクルを構築することが大切だと考えています。よって、全てのお客さまに「TKC方式の自計化」を顧問契約の条件としております。「自計化することによって、会計を経営に活かす」ということをきちんと私が伝えられなければ契約につながりませんので、得られる結果のイメージを鮮明に具体的に持っていただけるような契約時の説明を心掛けています。
私たちの事務所は経営理念に基づいてお客さまの「成幸人生支援拠点」となることを目指していますので、お客さまの「幸せ」を理解するにはやはり一緒に将来を考えることが不可欠です。
そのため、社長からお聞きした夢や目標を具体的な数字にして継続MASで経営計画を策定します。
毎月の訪問で、お客さまに明るく元気になってもらいたい。経営が思い通りにいかなくても暗くなるのではなく、「この項目について具体的に頑張っていこうと思えた」、「今日は新たな気付きがあった」などと言ってもらえるのはとてもうれしく、やりがいを感じています。お客さまの人生に寄り添いながら、経営計画だけでなく、ライフプランも一緒に考えます。お互いに年をとって白髪頭になってからも、楽しい人生だったねと一緒に振り返れるような、経営者の『経営における親友』、一番の応援団長でありたいと考えています。
「自分の訪問で会社が笑顔になること」を目指す
──同じく「巡回監査率90%超達成」、それから「書面添付純増件数」の項目で表彰された山村さんはいかがですか。
山村祥弘会員
山村 私は巡回監査で社長さんに会いに行くのが楽しみの一つです。「私の訪問で会社が笑顔になること」を目指しているので、月次巡回監査を徹底することは開業当初から決めていました。また、以前勤めていた会計事務所はTKCではありませんでしたが、月次監査を行う事務所でしたので、当然のことだという感覚でした。
書面添付の推進を始めたのは、単純にお客さまがお金を借りやすい状況をつくってあげたかったからです。社長さんはどういう人物なのか、税務署や金融機関の融資担当者は分かりませんので、それを伝えられる立場の私たちが、どういった過程で決算書をつくったのかを明らかにして経営者の思いを伝えるお手伝いをしたいと考えました。
加えて、大学院時代の指導教授が国税庁出身の教授だったこともあり、「国の財政の最前線で働く税務署や税理士事務所は、立場は違えど徴税コストのこともしっかりと考えなくてはならない」という考え方ができる環境にいました。
税理士法第1条やTKC全国会の方針を見ても、書面添付の実践は、お客さまである納税者と税務当局の双方にとって有意義なことだと思います。自分が書面添付を行うことに意義があるのであれば、全てのお客さまに書面添付を実践しようと決めました。
──「FX2純増件数」の項目で表彰された小島さんはいかがでしょうか。
小島 開業当初は来る者拒まずで、どんなお客さまでも受けていたのですが、正しい決算を行うためにはこのままではだめだと途中で気付きました。見積もりの時点でTKCシステムのサポート料も含めて提案して、それでだめなら関与しないという方針に変えました。
関与先の多くを占める北海道の農家は、ほとんどが農協の組合員勘定制度という資金供給・決済の機能のある制度を活用しており、データ照合により取引明細をダウンロードできます。そのデータを抽出してFXシリーズの「他社システム仕訳の読込機能」を使って、ボタン一つで簡単に読み込める状態になっているので、毎月の作業がすごく楽です。これができなければ、今の関与先数まで増やすことはできなかったと思います。
「TKCにしたら会社が良くなった」社長の言葉が事務所の評価を高める
──KFSの推進や、巡回監査率を向上させることは、事務所経営上、どのようなメリットがあると感じますか。
清水 TKCシステムで業務を全て網羅できることは大きな強みですね。そのことによって、お客さまに提供できる事務所のサービスの質が向上していると思います。e21まいスターや、OMSクラウドも活用できるようになり、目標管理(KPI)機能も使えるようになったこの時期に開業できたことは非常にタイミングが良かったです。
特にOMSは、お客さまの情報を「一元管理」することができますし、職員の巡回監査の内容もすぐに上がってきますので、進捗状況を確認できて、経営に役立っています。
山村 私の事務所のお客さまは、新規開業や他の事務所から移られてからまだ1、2年という方が多いのですが、「以前はなかなかおりなかった融資が受けやすくなった」と喜んでいただいています。
月次巡回監査を徹底し、「記帳適時性証明書」、税理士法第33条の2の書面を決算書に添付するという、私たちにとっては当然と思えるようなことが、お客さまにとっては非常に付加価値のあることで喜んでいただける。これは一番大きなメリットなのかなと思います。
小島 私も、社長に喜んでもらえるというのは大きなメリットだと思います。最近、新たにFX4クラウドを導入してくれた社長からは「TKCにしたら会社が良くなったよ」と言っていただけます。
TKCの先輩会員から事務所経営のノウハウを一から教えていただいて取り組んできた結果、お客さまや金融機関、信用保証協会の方が私たちの代わりに営業マンになってくれて、口コミが広がり、紹介が増えるという仕組みをつくってくれているように思います。
事務所経営の危機が金融機関や保証協会とのパイプを構築
──金融機関や信用保証協会と、そのようなつながりができたきっかけは、何だったのでしょうか。
小島拓也会員
小島 実は開業当初に、勢いで初期投資を行っていたらあっという間にお金がなくなってしまいました(笑)。「開業してから1カ月ですが、お金がショートしそうです、助けてください」という状況で、開業1カ月半にして私自身と信用保証協会と金融機関で経営サポート会議が開かれることになりまして。
──それは、すごく貴重な経験をしましたね(笑)。
小島 そこで初めて信用保証協会の支店長と会うことになり、「絶対に深川を変えます」という思いを汲んでもらって助けていただけたのですが、それがまさに事務所の転機でしたね。保証協会にちょくちょく顔を出して話しやすくなってくると、金融機関を紹介してもらえるようになりました。
ちょうどその頃TKC全国会の7000プロジェクトが始まって、信用保証協会から依頼があって倒産寸前のところを一気に5件ほど引き受けたんです。倒産寸前の経営者の気持ちは痛いほど分かりますので(笑)。7000プロジェクトを進めていくうちに金融機関とのつながりもどんどん深まっていきました。
例えば、北洋銀行さんとは農業融資の案件に取り組み、約1年かけて当時の課長と一緒にスキームを構築したのですが、その後は農業融資の相談ができる事務所として案件をいただけるようになりました。
外部セミナーを年間25回実施 印象に残る自己紹介で関与先拡大
──関与先拡大の話が出ましたが、山村さんと清水さんはどんな取り組みをしていますか。
山村 関与先拡大のため、外部セミナーを積極的に行っています。当時のセンター長が「山村先生、これからはセミナーを開催するといいですよ」と言ってくれたことがきっかけでした。
昨年の外部セミナーの開催は25回を超えています。関与先の法人、司法書士や電機商業組合の例会、金融機関の講座等、いろんな業界でセミナーを行っています。そのときお渡しする事務所の資料や、セミナー最後のまとめの言葉には「山村祥弘、ただ今お客さんとお嫁さん募集中です」という台詞を添えていて(笑)、とにかく来てくれた方の印象に残るよう、覚えてもらえるように心掛けています。
その効果もあってか、最近は外部からの問い合わせや紹介が飛躍的に増えています。今年に入ってからは8件関与先が増えました。
清水 私の事務所は飛び込み営業等は行っておりませんし、基本的には紹介をいただいてお客さまを増やしています。
それから、私も外部での講演等を行っています。TKCの例会に参加すると「俺、忙しくてできないから、講演を半分やってくれないか」というように先輩会員から仕事を回していただけることもあって、とてもありがたいことだと思います。
あとは、『TKC会報』に登場されている先輩会員のノウハウを読んで、自分に合いそうなものがあれば自分なりにアレンジして「とりあえずやってみよう」と挑戦していますね。
「経営における親友」である限り低価格化の波にはのまれない
──これからTKCに入会される方へのメッセージと、今後の抱負をお願いします。
小島 資格を持っている皆さんには、せっかくなら開業しましょうと言いたいですね。自分で借金して開業すると、経営者の気持ちが分かるんですよ。どうやって売り上げを増やそうかと悩む経営者の気持ちは同じ経営者でなければ理解できません。
私の事務所はTKCに入会したことで、地元で他の事務所と完全に差別化することができたと思います。お客さまには自信をもって一番のシステムだとご案内していますし、オールTKCの事務所だと言えば金融機関からの信頼を得ることもできます。
今後はやみくもに関与先を拡大するのではなく、地元で基礎をがっちりと固めることに注力して、お客さまや金融機関等との信頼関係を築きながら、低価格競争の波にのみ込まれないような強い事務所づくりをしていきたいと考えています。
山村 TKCに入会すると、勉強できる時間と場所をつくってもらえます。実務の話だけならよそでも聞くことができるかもしれませんが、生の言葉で事務所経営の成功の秘訣や、失敗談を聞くことができる。これは他にはない、TKCならではのことだと思います。
何十年もかけて磨かれた技術を持つ先輩方に、ノウハウを教えてもらうことができて、親身に相談に乗ってもらえます。私も何人かの先輩に弟子入りさせてもらっていますが、開業して、自分の技術を磨き続けたいと考えているなら、TKC入会の一択だと思います。
そして、入会したらぜひ自分が次世代の後輩に何を伝えられるか考えて発信していただきたいです。その時代の最新のノウハウが伝えられていくということはTKCの素晴らしい文化だと思います。
私の夢は、この先、自分と同じように「お客さんのためになりたい」と考えながら仕事をしてくれる税理士を10名育てることです。今後は後輩を育てられるような事務所の規模まで、もっていきたいと考えています。
清水 TKCにはさまざまなメリットがありますが、学びの場という点では、職員のための研修も充実しており、本来は自分の事務所で教えなくてはいけないようなことも先輩会員に講師をしていただけるという仕組みがすごくありがたいです。
また、何と言ってもTKCシステムでの一気通貫、OMSによる事務所管理が、事務所経営における大きな強みになると思いますので、入会を検討されている方にはぜひTKCで一緒に頑張っていきましょうと伝えたいですね。
最近ではクラウド会計による顧問料の低価格化の波が来ていますが、経営者の『経営における親友』として、経営助言を行い、人生をサポートしていける存在であれば、大きな波にのまれることはないだろうと考えています。そのために、私たちを必要として高く評価してくれるお客さまに対して、私たちは学び成長し続け、TKCシステムを活用しながら高付加価値経営で全力でお客さまの幸せを支援する事務所を目指していきたいと思います。
──私たち税理士はお客さまに真に必要とされる仕事をすれば生き残っていけると思います。お話を聞いて、皆さんには共通して「お客さまを元気にしたい、幸せにしたい」という強い思いが軸となっていることが分かりました。本日はありがとうございました。
(構成/TKC出版 小早川万梨絵)
(会報『TKC』平成28年5月号より転載)