目次
左から中里秀雄税理士、志村竜海社長、奥平雄太氏

左から中里秀雄税理士、志村竜海社長、奥平雄太氏

宮城県白石市で養鶏業を営む竹鶏ファーム。2024年に5代目に就いた志村竜海社長は、月次決算の地道な積み重ねで経営危機から見事脱却した。中里秀雄税理士事務所の中里秀雄顧問税理士、監査担当の奥平雄太監査第二課課長を交え、『FX2クラウド』の活用方法などについて聞いた。

──事業概要と会社の強みについて教えてください。

志村 採卵鶏を最大で4万羽飼育できる鶏舎を持ち、1日当たり約3万個の卵を採卵する養鶏業を営んでいます。一般的に養鶏業というと、毎日採卵鶏から採卵して相場価格で卸先に出して終わりというイメージを持たれると思いますが、当社は自社便で当社のブランド卵「竹鶏たまご」を届けるなど、生産から販売まで一貫して行っている点が特徴です。工場併設の自社店舗や公式オンラインショップでは、「竹鶏のたまごぷりん」や「竹鶏のたまごシフォン」などの自社生産の加工品も販売していますが、構成比率でいえば卵の販売が9割以上を占めています。

加工品の製造工程

加工品の製造工程

高い消臭効果持つ竹炭で「竹鶏たまご」がブランド化

──ブランド名の「竹鶏たまご」の由来は?

志村 当社は幹線道路の国道4号線沿いに鶏舎があり、養鶏場特有の臭いを抑制する必要に迫られていました。そこで3代目で父の浩幸会長が、竹炭を鶏の餌に混ぜたり、竹炭でろ過した水を鶏に飲ませたりする取り組みを始めました。竹炭には高い消臭効果があることが分かっていたからです。効果はてきめんで、人間の嗅覚ではっきりと分かるほど臭いが軽減されました。それだけでなく卵の生臭さもなくなり味も良くなったので、「竹鶏たまご」のブランドで販売するようになりました。竹林と炭窯を保有しており、竹炭は一部自社生産も手掛けています。

(左)「竹鶏たまご」のブランドで展開、(右)本社に併設された直営店舗

(左)「竹鶏たまご」のブランドで展開、(右)本社に併設された直営店舗

──販売価格や自社便での販売先などについて教えてください。

志村 10個パック350円程度で販売しているケースが多いですね。販売先は仙南および仙台市内エリアがメインで、松島や利府塩竈エリアなどにも配送しています。以前は飲食店のウエートが高かったのですが、コロナ禍に飲食店向け売上高が大きく落ち込んだため、その後は小売店向けの販売チャンネルを強化しました。地元スーパーや道の駅、農産物直売所への販売がかなり増えています。

──飼料にもこだわっているとか。

志村 品質に影響を与えない程度の量で、白石市内の契約農家からの調達を含め、10年ほど前から国産の飼料米を使用しています。飼料を輸入に依存している業界の現状に対する危機感から、少しでも飼料自給率の向上に貢献したいという思いもありました。配合飼料の輸入品は近年、原油高や円安の影響で価格が高騰しており、現在は1キログラム当たり80円程度です。一方国産の飼料米は、補助金込みで20~30円程度と、コスト削減にもメリットが出ています。

(左)竹炭は自社生産も手掛ける、(右)採卵鶏は最大で約4万羽飼育が可能

(左)竹炭は自社生産も手掛ける、(右)採卵鶏は最大で約4万羽飼育が可能

仙台拠点からの撤退や緻密な価格戦略を実行

──2024年の社長就任時の経営状況は苦しかったそうですね。

志村 飼料の支払いや給与の支給の心配をしなければならないほど資金繰りが厳しい状態でした。借入金も複数あり、各金融機関からは厳しい指摘を数多く受け、「これ以上の融資はできない」とはっきり言われたこともありました。

──立て直しはどのように?

志村 まず『FX2クラウド』で日々の仕訳入力と経営状況の確認を徹底しました。《365日変動損益計算書》の見方を先生に一から教わり、「システムを毎日チェックする習慣が重要」とのアドバイスの下、毎朝起きるたびにパソコンの画面を開き、業績を確認していた時もあります。

中里 志村社長と最初に決めたのは、「まず固定費の削減に着手しよう」ということでした。具体的な項目については志村社長自身に候補を挙げてもらいました。

志村 今後生き残るためには、余計なことには手を出さず、卵と商品を磨くことに集中することが何より大切だと考えました。そこで、負担の大きかった仙台オフィスの撤退と、業績への効果に疑問があったホームページの管理コストの圧縮を決断しました。

中里 志村社長はとにかく行動が早いのがすごいと思います。PDCAサイクルが停滞することなく常にぐるぐると回っています。今期行った価格転嫁のスピーディーかつ緻密な決断も見事でした。

志村 今期は財務体質がかなり改善したので、販売エリアの特徴や競合店の有無などを考慮しながら、地域ごとに値上げするところとしないところを分ける価格戦略をとりました。数年前だったら急激なコストアップに焦って一律的に値上げをし、顧客離れを起こしていたかもしれません。

──『FX2クラウド』を業績管理でどのように活用していますか。

志村 固定費が過剰に膨らんでいないかを特に注意しています。用途があいまいな支出や必要性が不明確な購入品などにいち早く気づけるようにしています。また売上高を追求するのではなく、利益が残る構造をつくることを重視しており、限界利益と固定費のバランスを意識しています。一方、当社は約200件と取引先が多いことから、《得意先順位月報》の活用など、販売面での活用強化を検討しています。

数字を通じた状況の共有で金融機関が「パートナー」に

──経理業務の効率化の面ではいかがですか。

奥平 できるだけ省力化を図るという観点から、「証憑保存機能」「銀行信販データ受信機能(※1)」からの仕訳計上、「エアレジ」とのデータ連携など、効率向上に役立つ機能は一通り使っています。

──月次巡回監査はどのように行っていますか。

奥平 毎月20日から25日の間ぐらいに行っています。クラウドを通じほとんどの証憑は事務所で事前確認を終えているため、監査当日は原本の確認や設備投資があった時の現地確認などがメインです。その後は「継続MASシステム(※2)」で策定した予算と実績の比較、今後の投資計画などについて意見交換しています。入力を担当されている奥さま、志村社長とのコミュニケーションの時間を十分確保できるよう努めています。

志村 私は月次決算を「経営の透明性を保つための仕組み」だと考えていて、特に正確性と経営のスピード感の両立が非常に重要だと思っています。その点、自分のスマホで足元の業績を確認できる「月次決算速報サービス」も便利で、日常的に活用しています。

──業績検討会も実施しています。

志村 四半期ごとに「継続MASシステム」を活用した業績検討会を行っています。月次決算データをもとにした財務状況の確認だけでなく、競合他社の事例や黒字経営モデルも参考にしながら、今後必要な打ち手や課題の整理について奥平さん、中里先生を交え幅広く議論しています。

──「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」は利用していますか。

志村 はい。取引行すべてに決算書と月次試算表のデータを送信しています。高校時代からの友人に銀行員がいるのですが、彼は「中小企業はTKCシステムを使っているだけでアドバンテージになる」と言っていました。中小企業の決算書は真実性が疑わしいものが多く、財務状況の把握に時間を要する一方で、TKC会員による月次巡回監査を受けている企業は、月次を締める前に会計事務所のチェックが入るため、その分、決算書の信頼性が高くなるそうです。以前は当社に厳しい目を向けていた各金融機関との関係も、「融資を受ける相手」から「一緒に仕事をしていくパートナー」へと変貌を遂げたと思います。

──今後の抱負をお話しください。

志村 当面の目標は黒字の継続、借入金の着実な返済、債務超過の解消です。また苦しい時期をともに乗り越えてくれた従業員に報いるためにも、自社で頑張って得た利益から継続的にしっかりと賞与を出せる会社にしていきたいですね。自己資本を着実に積み上げ、利益体質で筋肉質な「強く長く続く会社」を目指しています。

(協力・中里秀雄税理士事務所/本誌・植松啓介)

※1 銀行信販データ受信機能…複数の金融機関(銀行や信販会社)から、インターネットを利用して取引データを自動受信し、その取引データをもとに仕訳ルールの学習機能を利用して仕訳を簡単に計上できる機能
※2 継続MASシステム…経営者のビジョンに基づいた「中期経営計画」と、次年度の業績管理のための「単年度予算」、「短期経営計画」の策定を支援するシステム

会社概要
名称 有限会社竹鶏ファーム
業種 養鶏業
設立 2000年9月
所在地 宮城県白石市福岡深谷字児捨川向1-2
売上高 約3億円
従業員数 25名(パート含む)
URL https://www.taketori-farm.co.jp
顧問税理士 中里秀雄税理士事務所
代表税理士 中里秀雄
宮城県柴田郡柴田町船岡新栄5-9-16オフィスSD2F東側
URL: https://www.nakazato-zei.com

掲載:『戦略経営者』2026年8月号