事務所経営

「巡回監査士」は、職業会計人のスタートライン

目次
出席者写真

 令和6年度の巡回監査士試験は、2582名が受験し、551名が合格した(合格率21・3%)。その中で、優秀合格者として第151回TKC全国会で表彰を受けたTKC会員事務所職員3名が、中村哲郎中央研修所副所長の司会進行のもと、オンデマンド研修・テキスト・例題集を利用した勉強法や、巡回監査時の心掛け、今後の目標等について語り合った。

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■とき:令和7年1月17日(金) ■ところ:グランドプリンスホテル新高輪

◉出席者
島田宗太氏(税理士法人ベストサポート・静岡会)
白石宏行氏(枡田宗利税理士事務所・近畿大阪会)
神浦友樹氏(税理士法人宇都宮会計・九州会)
◉司 会
中村哲郎会員(TKC全国会中央研修所副所長)

月次巡回監査を目の当たりにし、会計事務所業界への転職を決意

──中村(司会) あらためて、皆さんおめでとうございます。はじめに、自己紹介と事務所の特徴についてお聞かせください。

島田 静岡県の富士市と富士宮市にあります税理士法人ベストサポート(代表:望月慎一郎会員・工藤哲也会員)の島田宗太と申します。大学卒業後は地元の金融機関に就職しました。たまたま受講したセミナーの講師を望月代表が務めており、その内容に感銘を受け、「お客さまと、より密接に関わる仕事ができるのでは」と考え転職し、現在2年目です。
 事務所の特徴としては、経営理念の一つでもある「常に誠心誠意を尽くし、お客様、地域にとってかけがえのない存在となる」の通り、「人」を大事にしており、職員一人一人に対しても同様です。また、事務所の皆さんがとにかく前向きでやる気に満ち溢れているので、切磋琢磨できる環境だと日々実感しています。

島田宗太氏

島田宗太氏

白石 枡田宗利税理士事務所の白石宏行です。事務所は大阪府大阪市の谷町にあります。私は前職も会計事務所で、弊所に転職し4年半が経ちます。実は所長がTKCに入会したのは1年半前で、そのとき初めて「巡回監査士試験」の存在を知りました。受験に関しては自由だったのですが、税務や会計に関する自分自身の知識がどの程度のレベルなのか確認したかったことと、職業倫理についてもしっかりと身に付けたかったことから、まずは「巡回監査士補」にチャレンジし、次に「巡回監査士」を受けました。
 私の事務所は関与先としっかりとした信頼関係を築いた上で伝えるべきことは包み隠さず伝える、というスタイルを重視しています。また、枡田所長は裏表がなく、われわれ従業員に対して非常に誠実に接してくれています。いつかは「枡田所長のような税理士になりたい」と思い、日々業務に励んでいます。

白石宏行氏

白石宏行氏

神浦 税理士法人宇都宮会計(所長:宇都宮一崇会員)の神浦友樹です。事務所は鹿児島県鹿児島市にあります。私は出身が鹿児島の枕崎市というところなのですが、大学進学を機に地元を離れ、就職後は東京や仙台などで働いていました。
 そんな日々を過ごす中で、地元に直接貢献できるような仕事がしたいと思い、鹿児島に帰り、まずは医療法人に勤め総務・経理を担当しました。実はその医療法人がTKC会員事務所の関与先で、そこで初めて「会計事務所の仕事」や「月次巡回監査」というものを目の当たりにし、実際に巡回監査担当者の方から経理指導をしていただくこともありました。このような仕事であれば、地元中小企業の発展にも貢献できて自分の理想を実現できると感じ、「会計事務所業界」への転職を決意しました。
 働きながら「簿記論」と「財務諸表論」を取得し、その後「消費税法」と「法人税法」の勉強を進める中で、実務経験を積む必要があると考え、ご縁があり宇都宮会計に転職しました。
 宇都宮会計は、宇都宮一崇所長が「税務・会計」以外にも事業承継やM&Aの経験が豊富で、さまざまな業務に携わることができると考え、志望しました。また、入所前に相続税の勉強に力を入れていたので、現在、相続税関連の業務を多く任せてもらっており、日々大変貴重な経験をさせていただいているなと感謝しています。

神浦友樹氏

神浦友樹氏

──巡回監査士試験に合格した感想はいかがでしたか。

白石 まさか表彰までしていただけるとは思っていなかったので、身が引き締まる思いです。

神浦 これから「巡回監査士」として月次巡回監査を行うと考えると、業務にもより責任感を持って取り組めますし、合格は素直にうれしいですね。

島田 試験前に、他事務所(記帳代行型)から移ってこられた関与先のFX4クラウド立ち上げのため、とても忙しい時期があって、実は資格取得を諦めかけた瞬間もありました。ですから、資格を無事取得できて本当にうれしいですし、安心しています。

司会/中村哲郎副所長

司会/中村哲郎副所長

「優秀者を狙います!」宣言が自分自身を奮い立たせた

──実務と勉強の両立はなかなか大変だと思いますが、どのように勉強されましたか。

神浦 私は税理士試験の「消費税法」と「相続税法」に挑戦していたので、8月に税理士試験が終わってから巡回監査士試験の勉強を始めました。ただ、税理士試験で結構燃え尽きてしまっていたので、また新たに資格取得に挑戦するというのは、かなり辛かったです(笑)。
 基本的には「巡回監査士オンデマンド研修(税法4科目)」を一通り見て、その後はテキストを見ながら何度も何度も例題集を解きました。
 勉強は9月ぐらいから取り組み始めて、平日は終業後約2時間、休日は5~6時間勉強しました。勤務時間内にオンデマンド研修を見ることを許可されており、所内でも受験する人が複数名いて、合同で勉強会などを行いましたので、実務とは両立しやすい環境でした。

島田 前職のときから資格取得のために勉強する機会が多くありましたので、勉強する癖付けはできていたと思います。また、私は巡回監査士補を入社初年度に取得し、社内でともに巡回監査士試験全6科目を受ける職員が2名いたので、「負けていられないな」という気持ちで勉強に臨むことができました。
 さらに、所内ではまだ巡回監査士全6科目を1発合格した人はいない、ということもあり、「全科目1発合格して、巡回監査士試験優秀者も狙います!」と事務所内で宣言してしまったんです(笑)。それが結果的に自分自身を奮い立たせるモチベーションにつながりました。
 勉強方法は、まず「巡回監査士オンデマンド研修(税法4科目)」を受講して、例題集を軽く読んで、分からない部分だけテキストを見るようにしていました。おそらく例題集は6科目とも5~6周は繰り返し解いたと思います。オンデマンド研修に関しても分からない部分は3~4回と繰り返し受講しました。テキストは5月頃に届くので、その頃から少しずつ読むようにすると非常にスムーズに理解が進むと思います。

白石 弊所はコロナ禍を機にリモートワークを積極的に導入し、ほとんど残業もないので勤務終了後、平日でも4時間は勉強時間を確保することができました。私も「巡回監査士補」を先に取得しました。
 「巡回監査士」のテキストは届いていたものの、税理士試験の「消費税法」の勉強があり、なかなか手が付けられず、実際に勉強を始めたのは10月だったので、約1カ月ちょっとしか時間はありませんでした。ですので平日は4時間、土日は朝から晩までずっと勉強していましたし、神浦さん、島田さんと同じく例題集は全6科目とも最低でも3周はしました。オンデマンド研修に関して、「巡回監査士オンデマンド研修(税法4科目)」は分からない部分だけ見て、直前対策は全て見ました。ただ、本当に時間がなかったので、4月に入所される方は平日1~2時間、休日3時間ぐらいの学習時間を確保してコツコツ進めていただくのがおすすめです(笑)。

──皆さんに共通しているのはオンデマンド研修を見てから、何度も例題集を解かれていることですね。また、勉強の習慣化と継続力が素晴らしいなと思いました。その他の研修で実務に役立ったものはありますか。

島田 オンデマンド研修だけでなく、秋季大学も含めてさまざまな研修を受けていますが、TKCの研修はどれも素晴らしい内容だと思っています。
 年末には曽根隆寛先生(西東京山梨会)が講師を務めた静岡会の初期指導研修に参加しました。自計化の取り組み方だけではなく、「経理体制の整え方や自計化をした結果、関与先がどうなるのか」という経理の本来の在り方からその先まで見据える必要があることを丁寧に教えていただきました。経理の在り方や自計化の必要性を学ぶ意味でも全ての職員にとって、すごくためになる研修だと思いました。

白石 私はオンデマンド研修を積極的に活用しています。「税制改正研修会」やインボイス制度に関するさまざまな研修など、実務に直結する内容が多く大変ありがたいです。
 最近のお客さまはご自身でニュース番組やYouTube等で情報を入手しており、質問をいただく機会も多くなりました。ですから、あらかじめ最新情報を確認することができるのは非常に便利だなと感じています。

神浦 巡回監査Ⅰ(職業倫理・巡回監査)で「税理士の業務は本来、税務に関する法律業務である」と飯塚毅初代会長がおっしゃったことを学んだのが最も印象に残っています。税法の勉強はそれなりにしていたつもりでしたが、その視点が全くなかったので驚きました。やはり世間一般的には税理士の仕事は「税金の計算」というイメージがまだまだ強いですが、そうではなく、独立した公正な立場で正しく税法を実践していく。これが税理士の使命の一つである、ということを初めて学ぶことができました。

巡回監査士試験優秀者座談会

「継続MAS」を駆使し、経営者と未来の数字を話し合う

──実際の巡回監査で心掛けていることについて、教えてください。

神浦 入所後3カ月目ぐらいから担当を持ち始め、現在は10件の関与先を担当しています。私が常に心掛けているのは月次巡回監査後、経営者に対して経営状況を説明する際は必ず変動損益計算書を用いて、「限界利益」や「固定費」、「経常利益」などそれぞれの項目と、損益分岐点についても説明することです。これは、経営者にそれぞれの数字に対する意識をしっかりと持っていただくためです。
 経営者によっては、「限界利益」や「固定費」への理解よりも、とにかく「売上」や「人件費」を気にされる方がいらっしゃるのですが、変動損益計算書を理解していただいて、はじめて経営全体の方向性が見えてくると私は思っています。

白石 私は現在、法人・個人それぞれ30件ずつ担当を持っていて、積極的にコミュニケーションをとるように心掛けています。資格で得た知識を活かし、今後はしっかりと「月次巡回監査」に取り組めればと考えております。

島田 私は入所後2カ月目くらいから引き継ぎを始め、現在は17件担当しています。月次巡回監査時には「曖昧な部分を残さない」、「聞かれたことにはなるべく翌日までに答える」ということを重視しています。分からない部分は所長に聞くか、「TKC税研データベース」で調べて、なるべく早めにお答えするようにしています。
 あとこれは私の課題なのですが、月次巡回監査時になかなかお会いできず、あまり対話ができていない経営者もいらっしゃいます。重要なのは月次巡回監査で経営者と対話し、「継続MAS」で経営計画の策定や業績予測を行うことで経営者に気付きを与え、経営判断をしていただくことだと考えています。今後の月次巡回監査は経営者と直接お話しできる機会をもっと増やせるようにしたいと考えています。
 また、経営者の方々は納税額をすごく気にされているので、業績予測から納税額を算出して節税対策を提案すると非常に喜んでいただけます。
 そのため、「継続MAS」を駆使して経営者と未来の数字を話し合うのは極めて重要ですし、その場で画面を見ながら数字を変えることができるので大変便利なシステムであると感じています。

証憑保存機能等を活用して「自計化の質を高める」

──「自計化」や「書面添付制度」についてはいかがですか。

神浦 「自計化」に関しては、私が所属している鹿児島中央事務所は98・2%と、ほとんどの関与先が自計化できています。
 最近は「自計化の質を高める」ことを目標とした取り組みとしてFXシリーズ「証憑保存機能」やインボイス・マネジャー「領収書等AI読取りオプション」の推進を積極的に行っています。「パソコンの操作が苦手で……」とおっしゃる方も一定数いらっしゃいますが、一回操作手順を覚えてしまえばお客さまの入力は格段に楽になります。
 例えば4カ月前から「領収書等AI読取りオプション」を導入された個人事業者の方は、これまで月の後半にまとめてレシートの内容を仕訳入力されていたので、月次巡回監査は月末でしたが、その都度レシートを読み込むようにしたことで、作業時間が大幅に改善されて月初に月次巡回監査を行えるようになりました。「自計化の質を高める」ことが関与先にとっても事務所にとっても重要であると考えています。

白石 弊所では積極的にFXクラウドシリーズを導入して、自計化を進めている関与先が一定数ありますので、引き続きしっかりと推進したいと考えています。

島田 書面添付については所内の月初会議で関与先ごとに付けているか、付けていないかを確認します。書面添付を実践することで「自分が何に取り組んできたのか」という振り返りになりますし、自計化や月次巡回監査をしっかりと行うことで、より精度の高い「書面添付」ができると考えています。
 担当している関与先の自計化率はほとんど100%で残り1件になります。望月代表からは「月次巡回監査でしっかりと仕訳の自動化を推進して、関与先の入力精度を上げなさい」といつもご指導いただいています。

よりプロフェッショナルな職業会計人を目指したい

──最後に、皆さんの今後の目標を教えてください。

島田 これまでも月次巡回監査には取り組んでいましたが、あらためて職業会計人として巡回監査を行う上でこの「巡回監査士(士補)の資格」はようやくスタートラインに立てるライセンスだと思っています。また、自分のためにというよりは、どちらかと言えばお客さまへのサービス向上のために取得すべき資格だと思っています。静岡会としても翌月巡回監査率第1位を目指していますので引き続き、しっかり取り組んでまいります。

──静岡会全体のことまで考えられているのは本当に素晴らしいですね。

島田 ありがとうございます。目標としては、もちろん税理士試験に挑戦したいと思っています。また、入社して約2カ月のときに望月代表に言われた「富士宮事務所を頼んだぞ」という言葉が今でも印象的ですので、関与先の皆さまはもちろん、望月代表や工藤代表、事務所で働く皆さんのために、今よりもプロフェッショナルな職業会計人を目指したいと思います。

白石 「巡回監査士」の資格取得でようやく月次巡回監査にしっかりと取り組む準備が整いました。目標は、1日でも早く税理士の資格を取得して関与先の皆さまや、事務所に貢献できるようになることです。今回、巡回監査士(士補)の勉強を通じて、自分に合った勉強方法を見つけることができました。習慣となったこの学習ペースを崩さずに税理士試験にも引き続きチャレンジします。また、今回、職業倫理や税法に関する基本的な知識をインプットできたので、今後は積極的にアウトプットすることで、関与先の付加価値向上に寄与したいと考えています。

神浦 巡回監査士は継続研修の受講が義務付けられており、学び続ける姿勢が重要であると考えています。また、この資格は巡回監査担当者として、税制改正への対応等含め、責任感をより一層強めるものだと思っています。今後も日々の業務に責任感を持ち、精一杯取り組みます。
 これからは、税理士試験の残り1科目「法人税法」に早めに合格し、税理士として活躍したいと考えています。そのためにもまずは目の前のお客さまのために日々懸命に取り組み、そういった日々の積み重ねが、結果的に地元鹿児島の発展につながればいいなと思っています。

──皆さんの具体的な勉強方法や、実際の月次巡回監査でのエピソードなどを聞けて大変参考になりました。より一層のご活躍を期待しています。本日はありがとうございました。

(構成/TKC出版 米倉寛之)
(会報『TKC』令和6年4月号より転載)