事務所経営

業務改善支援とシステム活用で信頼を深め、白洋舎殿とその子会社との顧問契約を締結

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藤井優貴会員

藤井優貴会員

連結会計システム(eCA-DRIVER)を活用した業務改善支援で信頼関係を構築し、法人電子申告システム(ASP1000R)、インボイス・マネジャー2025、海外ビジネスモニター(OBMonitor)、統合型会計情報システム(FX5クラウド)、固定資産管理システム(FAManager)を採用され、TKCシステム間のデータ連携により大幅な業務効率化を図った白洋舍殿と、その子会社1社と顧問契約を締結された藤井優貴会員(千葉会)にお話を伺いました。

「三方良し」が事務所の行動指針関与先の右腕として寄り添いたい

──事務所の概要を教えていただけますか?

藤井 私は2009年から2016年まで監査法人で監査業務に従事していましたが、お客様に寄り添いながら事業の発展や課題解決のご支援をしたいという思いが強くなり、2016年に税理士事務所を独立開業しました。関与先ゼロからのスタートでしたが、未入会向けのセミナーに参加してTKCのビジネスモデルに深く共感し、開業と同時に入会しました。現在、正社員6名、パート1名の計7名体制となり、月次巡回関与先法人約60件、個人約10件と顧問契約を締結しております。
 「お客様の一番の伴走者として、お客様に寄り添い伴に問題を解決し、お客様を笑顔にする」を事務所の基本理念として掲げるとともに、「三方良し」を基本的な行動指針としています。関与先の黒字化支援や伴走支援のためにTKCシステムを活用することで、事務所の力を100%発揮できると考えています。関与先とは単なる税務の専門家ではなく、経営の右腕として寄り添う関係を目指しています。

デジタル時代こそあえて顧客と直接顔を合わせて縁をつなぐ

──中堅・大企業との関わり合いについてお伺いできますか?

藤井 監査法人に勤めていたことから、上場企業の決算スケジュールを把握しており、経理部と監査法人の双方の立場や課題を理解できるため、両者にとって良い仕事「三方良し」を目指せると思っています。
 監査法人時代のご縁も大切にして、退職後も「事務所通信」を送ったり定期的に挨拶に行ったりしていました。そのおかげか、監査法人時代に監査を担当していた企業から、ある日お声がけいただき、顧問税理士を頼まれたことがありました。今回、顧問契約を締結した白洋舍殿とも数年経ってからのご縁ですし、アナログな形で会いに行き、「元気にしています」とご挨拶することで、何か必要な時に思い出していただけるよう心掛けていました。

──中堅・大企業へのシステム・コンサルティングをTKCから委託された際の感想や、当業務に取り組む上で苦労された点や心がけていたことを教えてください。

藤井 大企業を相手にする業務ですので、システムを十分に理解しているだろうかとか大企業の税務に対応できるだろうかという不安がありました。実際にシステム・コンサルティング業務が始まると、顧客を十分に理解できていないことや、システムの複雑さに苦労しました。大規模案件を担当した際は、何日もかけて取り組むこともありましたが、顧客との対話を重ねて悩みや課題を把握し、最新の会計基準を踏まえて専門性を活かし対応しました。
 会計や税務に関する深い知識の習得は不可欠ですが、顧客自身のことや、業務の複雑さを理解するためにも、顧客との信頼関係構築やコミュニケーション能力が重要だと思っています。質問をされて即答できない場合は、持ち帰って調べてから回答する、という姿勢を大切にしています。また、システムに精通したTKCの社員さんと、会計税務の専門家である私たちTKC会員が連携することで、それぞれの専門性を活かすことができるのが強みだと思っています。

TKCシステムの連携で属人化した連結決算業務の内製化を実現

──今回、株式会社白洋舍殿と顧問契約を締結されたと伺いました。きっかけや経緯などを教えていただけますか?

藤井 白洋舍殿とは、前職の監査法人勤務時代に8年間監査を担当していました。その後、私は独立開業しましたが、白洋舍殿では連結決算に取り組むために、システムとしてeCA‐DRIVERを利用されていました。ただ、当時の連結決算担当者に業務が属人化しており、監査法人からもブラックボックス化しているとの指摘が多々あったようです。
 そうした背景から、当時の白洋舍殿の経理部長から、体制改善のため、私に連結決算業務をお願いできないか、と相談をいただきました。実際に白洋舍殿の連結決算業務を受けるとなると、年間の1/3の業務時間を充てることになるため、私自身の業務もある中で、さすがに厳しいと感じました。ただ、その後も法人税の申告の相談を受けて、ASP1000Rを導入することになったり、組織再編で子会社化した会社の顧問税理士の話をいただいたりするなど、継続して相談を受けていました。
 そのような関係が続く中で、2022年に再び連結決算業務の体制改善のご相談をいただきました。さすがに断れないと思い、私が受けるからには「上場企業の当然の責務として連結決算の内製化を目指します」とお伝えして了承いただき、支援することになりました。報酬についても、内製化の進捗に応じて減額していただいても差し支えないと申し出ました。
 連結決算業務改善のコンサルティング契約の締結とあわせて、白洋舍殿のeCA‐DRIVERのシステム・コンサルタントが不在だったため、私がその業務も担当することになりました。コンサルティング業務を開始した2年間は、eCA‐DRIVERの運用方法を見直して、極力手入力を減らして徹底的に自動化していきました。また、白洋舍殿の立場で一緒に監査法人とも協議して連結決算に与える影響範囲や金額を踏まえて一つひとつ処理を決めていきました。
 3年目ぐらいから、ようやく誰がやってもできる仕組みが整い、監査法人からの指摘はほぼなくなりました。内製化が進んだことで私の仕事が減るかと思いきや、反対に次々と相談が寄せられて、仕事が増えるんですよ。子会社の顧問のお話とか、親会社の業務改善とか、幅が広がるんです。

白洋舎

──TKCシステムとしてはASP1000Rの導入が決まり、その後、次々とシステムを採用いただきました。

藤井 2020年にASP1000Rの導入が決まり、これが大きかったですね。電子申告義務化という制度改正があったので「事務所通信」を送るときにASP1000Rの資料も同封していました。その資料を見ていただいたことでASP1000Rの導入が決まり、縁がつながったという感じです。ASP1000Rの導入によりシステムの改訂案内で定期的に訪問する機会があり、そのタイミングでシステムに関係する相談が多々ありました。そのたびに固定資産管理であればFAManagerを、証憑書類の保存であればインボイス・マネジャーを、海外子会社のデータを見たいとなればOBMonitorを、それぞれTKCの社員さんと連携して導入しました。TKCシステム間の連携により、決算早期化や業務の属人化を排除するという提案を心がけていました。

FX5クラウド導入でグループ全体の経理業務を標準化

──白洋舍殿の課題をシステムを含めて解決されたことが、顧問契約にもつながったのでしょうか。

藤井 そうですね。これまで多くのやり取りをしてきた先方の担当者が、新しく経理部長に就任されたタイミングで顧問税理士のお話をいただきました。連結決算業務が内製化できたことや、システム導入により業務改善を支援できたことで経営層の信頼を得られたことが大きかったです。

──顧問契約と同時に、FX5クラウドでグループの会計システムを統一することになったと伺いましたが。

藤井 白洋舍殿のグループでは、親会社と子会社で会計システムや顧問税理士が異なり、決算期も3カ月ずれているなど、管理が分断されている状況でした。親会社が経理処理要領を統一して、子会社の管理や指導する仕組みが必要と感じていました。
 そのため、顧問契約の打診と同じ時期に、FX5クラウドによる会計システム統一の意思決定をいただきました。FX5クラウド導入により、科目体系や仕訳入力方法を親会社主導で統一し、親会社が許可した科目のみ使用可能とすることで、経理業務の標準化を図ることができました。また、Excel伝票による入力やマネジメントレポート設計ツールを活用した帳表作成、支払管理もシステム化することができて、大幅な業務効率化につながりました。

──固定資産管理についてもFAManagerの導入効果があったと伺いましたが、どのような課題解決ができたのでしょうか?

藤井 従来は償却資産申告書を紙で郵送していました。申告先も120件以上あり、準備に2カ月以上かかっていました。それが、現在は電子申告で、手作業がなくなったことにより、作業時間が9割削減されて、12時間で完了できるようになりました。大幅な業務効率化につながっています。また、資産除去債務は従来のExcel管理から、FAManagerで一元管理しています。

──今後、子会社と顧問契約をされると伺いました。

藤井 2026年3月から白洋舍殿のグループ会社2社と契約する予定です。同時にFX5クラウドとFAManagerも導入していただきます。

大企業支援が差別化要素に不安を乗り越えて挑戦を!

──システム・コンサルティング業務に取り組まれて事務所経営に役立ったことや、今後の展望などを教えてください。

藤井 まず挙げられるのが、大企業に関与することで知識やスキルの維持向上が図れたことです。中小企業だけでは、グループ通算や税効果会計、リース改正などは関係ないですから。中堅・大企業を支援しているという実績が、事務所の差別化要素となり、職員の自信にもつながっていると思います。
 また、私は「黒字化支援が大事だ」と常々職員に伝えています。中小企業の場合は、黒字決算割合が最も重要と考えています。ただ、大企業の悩みは少し違っていて、業務効率化や標準化などに課題が置き換わるのだと思います。この課題を解決して経理部や監査法人などの全ての関係者にとって望まれるシステム・コンサルティングを目指していきたいですね。システムに強いことはもちろんですが、忘れてはいけないのは会計・税務の専門性が高いという点。それが大企業に求められる事務所になるために重要であるということです。

──最後に、中堅・大企業市場にこれから取り組まれる会員先生へのメッセージをお願いします。

藤井 大企業向けのコンサルティングなので不安が先行すると思いますが、せっかく時間をかけて挑戦する業務ですので、企業の役に立てるように業務に取り組む心構えが必要と感じています。単にTKCから委託された業務を行うのではなく、一工夫して提案する気持ちが大事だと思います。また、TKCの良さである会員間の横のつながりやTKCの社員さんとの深いつながりを活用して、一人で悩まずに専門家に頼ることも大切です。これで分からないことの大半は解決できます。
 大企業との顧問契約は、事務所の経験値が蓄積されるとともに、職員の自信にもつながります。TKCには素晴らしい支援体制があるので、恐れず、試行錯誤を重ねながら挑戦すれば結果は得られると信じています。

白洋舎

(インタビュー・構成:企業情報営業本部 山田浩生)

事務所概要
事務所名 藤井優貴公認会計士・税理士事務所
所在地 千葉県千葉市中央区新町1-13木村ビル5F
開業年 平成28年9月(平成28年9月TKC入会)
代表者 藤井優貴(平成24年8月公認会計士登録・平成28年10月税理士登録)
職員数 7名

(会報『TKC』令和7年11月号より転載)

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