事務所経営

5つの強みで通算グループ33社と顧問契約を締結

目次
しんわ税理士法人

逢坂秀雄氏と田中明子会員

2011年のeConsoliTaxとeTaxEffectの導入を皮切りに、FX5、eCA-DRIVER、FAManagerを採用する親会社(上場企業)、子会社等の計33社と顧問契約を締結された、しんわ税理士法人の田中明子会員(南近畿会)と逢坂秀雄氏にお話を伺いました。

事務所理念は日々の業務の道標 毎朝の朝礼で唱和し浸透を図る

──事務所の概要を教えていただけますか。

田中 私は国税局に7年間務め、1999年4月に税理士登録後、すぐにTKCに入会しました。当初は近畿京滋会に入会、その後2010年8月にこの場所(南近畿会)へ事務所を移転し、2015年10月に「しんわ税理士法人」を設立しました。現在、職員は顧問の税理士を含めて11名です。社員税理士が2名、顧問が1名、監査担当者は20代から40代前半と、10年以上の経験を持つ4名と新人2名、さらに補助スタッフが2名という構成で事務所を運営しています。
事務所の特長は、「我々の商品力とは一体何なのか?」という問いを考え、「しんわの商品力」と題してお客様にわかりやすく説明できることです。
しんわ税理士法人の強みのポイントは以下の5つです。

1.月次巡回監査に保障された会計
2.相談力と親身なアドバイス
3.若きスタッフの機動力
4.幅広いネットワーク
私たちは、関与先に困ったことがあったら「とりあえずしんわに聞こう」と言っていただけることを心がけています。
5.国税OBによる紛争予防税務
税務当局の視点から月次巡回監査を基本に日々活動し、税務調査がなるべく行われないことを目指しています。

「事務所理念(私たちは、日本一お客様に喜んで頂ける税理士事務所を目指します。)」を毎日の朝礼で全職員で唱和しています。この理念は日々の業務で迷った時の一つの道標となることを願って作りました。

「付加価値のある業務で中堅・大企業の関与先を増やす」を方針に

──次に、中堅・大企業へのシステム・コンサルティングについてお伺いします。A社との関係はかなり長いとお聞きしています。委託された時の感想や取り組む上でのプレッシャーなどありましたか。

田中 最初にTKCさんからA社の委託を打診されたのが2011年11月でした。この時、A社グループの会社数は、現在の半分以下でした。お話をいただく前から、せっかく勉強して税理士になったのに実務に生かさないのはもったいないという思いと、付加価値のある業務を持って中堅・大企業のお客様を増やそうという事務所の方針がありました。
そのため、TKCさんからシステム・コンサルタントの打診された時は正直不安でしたが、前向きに考えてお受けすることに決めました。その時の担当者は、ここにいる逢坂ではありませんでした。

──その後、導入コンサルティングをされて、長年にわたり運用コンサルティングも実施されてきたわけですが、導入コンサルティングを振り返って苦労した点や信頼を勝ち取るために工夫された点などはございますか。

田中 最初は親会社だけの担当だったため、逢坂一人で対応していました。この時点では中大研業務が事務所として定着するかどうかは不透明でしたので、所長としては次の担当者を育てる仕組みを構築するか否かがこの仕事を引き受ける上での最大の悩みでした。
当初は、ホームページでIR情報を確認し、最新の情報を常に頭に入れておくようにしていました。また、企業訪問前には事前にロールプレイを行うなどして臨むようにしていました。
システム・コンサルタントとして、今後の見通しや将来的に起こりうる事例を仮定し、一歩先を見据えた内容を提供することを心掛けました。また、話し方についても、ただ単に棒読みするのではなく、目次で内容を確認し、メリハリのある話し方でゆっくりと話すようアドバイスしました。私は毎回企業訪問に同席していましたが、回数を重ねるごとに逢坂が成長していくのを実感し、「1社だけでなく、次もまた受けたい」と思ったことを覚えています。
このA社で非常に多くのことを学ばせていただき、大変幸運でした。A社がオールTKCシステムで取り組まれたため、勉強できる貴重なチャンスをいただけたことに感謝しています。

逢坂 私は事務所に入ってすぐの業務だったため、自学自習を行いました。税制についてはある程度答えられるものの、システムに関してはまだ自信がなく、当時は連結納税の勉強に加えて、システム操作研修会にも参加し、どこに何を入力すればどうなるかを自分なりに学びました。
また、ユーザーからの質問をまとめたQ&Aがあったので、それを活用し、どのような質問が来るかを想定して臨むようにしていました。さらに、事務所では他の職員も巻き込んで話の練習を繰り返し行っていました。こちらから一方的に話すのではなく、とにかく対話形式で進めようと意識し、常に確認しながら説明を行いました。その中でいただいた質問には、できるだけその場で回答し、遅くとも次の日には回答するよう心掛けました。

関与先からの質問は必ず所内でデータベース化し、全員に共有

──今回、A社グループ33社と顧問契約を結ばれたそうですが、契約の内容やサービスの範囲を教えていただけますか。

逢坂 はい。正確には通算グループ30社と、それ以外に通算グループ外の子会社等を含めて、計33社と顧問契約を結びました。契約のメインの内容は、年4回の四半期決算に関わる税金計算です。四半期ごとに先方が入力した内容をこちらが資料として受け取り、その試算表と申告書を確認し、レビューを行い、不明点を確認するという業務を主に行っています。その他には、予定申告や確定申告も含まれます。また、税務会計の相談業務も行っています。

──最初にこのお話が来た時は、どう思われましたか。

田中 最初にTKCさんから相談のお電話をいただいた時、正直大変戸惑いました。もちろん、その場で即答することはできません。私自身もどうしようか悩んだのですが、「しんわ税理士法人」にお声をかけてくださったことは非常にありがたいと思いました。これは逢坂が十年以上にわたり頑張ってきた成果であり、事務所としてぜひともお応えしたいと思いました。
また私の背中を押してくれたのは、他の監査担当者が「逢坂君が頑張ってきたことが、A社から顧問契約の選択肢として選ばれるという形になった。僕たち職員全員で支えます」と言ってくれたことです。この言葉を聞いて「絶対この仕事を契約しないと」と思いました。結果として、当事務所ともう1社と検討された上で、当事務所を選んでいただけました。ただここまでのグループ数がある企業との報酬や顧問形態、契約の締結方法についての経験がないため、中大研の先生に相談し、大企業との顧問契約をどのように締結しているのかを教えていただきました。そして、年商や事業所税等のボリュームなどを勘案した見積シートを試行錯誤で作成し、先方へ提案しました。企業と何度かの打ち合わせを経て契約の詳細を決めていきました。

──今回の顧問契約が、他の関与先さんへのサービス提供に役立ったなど良い副次効果はありましたか。

田中 大企業も普段関与している企業も根本は同じです。大企業からいただく質問や得た知識は、関与先にも活用できるので「質問は多くても大丈夫です。質問をもらった方が知識として身に付いてくるので、どんどんください」というスタンスで臨んでくれています。さらに、いただいた質問は必ず所内でデータベース化し、職員全員に共有して次に生かしています。

TKCシステムを活用することで事務所理念に沿った仕事ができる

──事務所として業務拡大や関与先拡大のために何か意識して行われているサービスや、優良顧客の離脱防止のために心掛けていることがあれば教えてください。

田中 やはりTKCシステムの徹底活用が一番だと思っています。いつも職員には「あなたたちが一番の営業マン」と伝えています。お客様のところで彼らがどのような姿勢で仕事をしているのかが、一番大事です。私がいくら偉そうな話をしていても、現場の職員が事務所の理念に沿った仕事ができていなければ、絵空事です。
TKCシステムには理念がしっかりと組み込まれています。このシステムを使うことで、事務所は迷子にならず、誤りなく進んでいけます。そして、お客様に自信を持って伝えられることが重要です。お客様が他のお客様を呼んでくださり、全ての方がお客様にならなくとも、考えを共有できるお客様と一緒に仕事ができればそれで十分だと思っています。継続MASを頑張ろうとか、巡回監査支援システムを徹底活用しようと目標を設定することが、関与先の拡大につながると感じています。

中堅・大企業での業務拡大成功要因

──他に拡大で工夫されていることは?

田中 事務所では月に1回の読書会と、年に1回の関与先との交流会を開催しています。しんわの交流会では、税制改正の話や書面添付の表彰など、事務所のプチアピールの場となっていますが、関与先の方だけでなくお友達も呼んでいただいています。それが将来的にお客様につながればいいなと思っています。関与先のお客様同士の関係性をより高めることで、予期せぬお客様を呼んでいただいたり、お客様同士のお仕事につながったりしています。しんわの「わ」のネットワークは、税理士や士業のネットワークだけでなく、お客様同士のネットワークも含まれています。

しんわ税理士法人

TKC会員なら自信を持って中堅・大企業支援に挑戦してほしい

──最後に、中堅・大企業市場にこれから取り組まれる会員先生にメッセージをお願いいたします。

田中 自分一人、そして自分の事務所だけではないという自信を持っていただければと思います。オンデマンド研修や集合研修の場があり、情報もたくさんTKCが準備してくれます。また、中大研の先生方との交流の場や情報交換会もあります。積極的に挑戦していっていただきたいと思います。引き続き中大研やTKCには、会員の要望やニーズ、悩みをオールTKCで支える体制づくりを願っています。

今回A社には、しんわ税理士法人を選んでいただきましたが、今後はこのご縁をしんわだけでなく他の会員との連携を図りながらつなげていければと思います。オールTKCで中堅・大企業支援に取り組まれる会員を支える仕組みがあれば、不安なく、年齢に関係なく、この仕事ができるのではないかと思います。そうなれば大半の中堅・大企業にTKC会員が関与するような状況になるのも夢ではないと思います。システムコンサルのシェアはそういう状態に近づいていると思います。

同時に、「税務顧問のレベルが高く、親身になって相談しやすいTKC会員」と認識されることが必要と思います。大手の税理士法人であっても結局は人対人であって、組織がいくら大きくとも、その担当者がどのように仕事をするかが重要で、規模ではないと考えています。そうした志を持つ先生が増え、やりがいある仕事が世の中に浸透していくことで税理士の魅力はさらに高まるはずです。税理士になりたいという若い人たちもきっと増えてくると思います。

(インタビュー・構成/企業情報営業本部 筒井 修)

事務所概要
事務所名 しんわ税理士法人
所在地 大阪府大阪市西区京町堀1丁目13-19-6階
開業年 平成27年10月(平成11年 TKC入会)
代表者 田中明子(平成11年4月税理士登録)
職員数 11名

(会報『TKC』令和7年2月号より転載)