事務所経営
社長が「気づき」を得られる経営助言で関与先を優良企業に導こう!
- 目次
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- ■参加者
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小湊 昭会員(関東信越会)
久野賢一朗会員(東・東京会)
野口大樹会員(城北東京会)
◎司会/寺島智成会員(TKC全国会システム委員会TKC経営指標編集小委員長・千葉会)
◎オブザーバー/西田拓平TKCシステム開発研究所部長
TKC全国会は運動方針の一つに「黒字化を支援し、優良企業を育成する」を掲げている。中小企業を取り巻く経済状況が厳しさを増す中、TKCシステムをフル活用した経営助言によって優良企業の育成に力を注いでいる3名の会員に関与先への支援内容や所内の取り組みについて語り合っていただいた。司会進行役はTKC全国会システム委員会TKC経営指標編集小委員長の寺島智成会員(千葉会)が務めた。
1万1081社のBAST優良企業を2893事務所が輩出
──本日はBAST優良企業をいかに育成するのかをテーマとする座談会です。『TKC経営指標(BAST)』とは、TKC会計人が毎月実施する巡回監査と月次決算により作成された会計帳簿を基とする中小企業25万社超の決算書(貸借対照表と損益計算書)を基礎データとして集計された世界に類例のない経営指標です(資料参照)。
BASTにおける優良企業ですが、次の六つの条件を満たした企業を指しています。
- (1) 書面添付の実践
- (2) 中小会計要領への準拠
- (3) 限界利益額の2期連続増加
- (4) 自己資本比率が30%以上
- (5) 税引き前当期純利益がプラス
- (6) 自計化システム利用による月次決算の実施
TKC経営指標(BAST)」について
「TKC経営指標(BAST)」は、「財務三表システム」「建設業会計システム」「農業会計システム」「FX4クラウド」を2年以上利用している中小・中堅企業(年商100億円以下)の経営成績と財務状態を分析したものです。
TKC会計人が毎月継続して実施した巡回監査と月次決算により作成された会計帳簿を基礎とし、そこから誘導された決算書(貸借対照表及び損益計算書)を基礎データとしています。
これらの決算書は、すべてそのまま法人税の申告時に利用されたものです。2024年版の収録企業数は、確定決算期が2023年1月期から12月期までのもので、25万8,452社(全国の法人の約9%)、1190業種に及んでいます。その黒字決算割合は53.5%(2023年版では53.5%)となっています。これだけの精度と速報性を持つ中小企業の経営指標は、世界にも類例がなく、税務当局や金融機関等から高く評価されています。また、当指標はデータベース化され、月次決算において同業者比較を行うほか、中期経営計画を策定する際にはベンチマーキングの指標として活用されています。
(『TKC全国会のすべて』(2024年9月版)から抜粋)
司会/寺島智成会員
TKC全国会は運動方針(期間:令和4年から令和6年末)の一つに「黒字化を支援し、優良企業を育成する」を掲げています。また、株式会社TKCからも、令和4年から優良企業を輩出した会員事務所を表彰する制度で、全国会運動方針を後押ししていただいており、令和6年版BASTの優良企業数は1万1081社で、2893事務所が優良企業を輩出しています。
優良企業の増加は日本経済の成長を押し上げることになりますので、さらに多くの会員事務所が「赤字企業の黒字企業化・黒字企業の優良企業化」に取り組まれることを期待して、今回は、優良企業の育成に力を注いでいる3名の会員にお集りいただき、関与先支援に向けた事務所づくりについて語り合います。それでは自己紹介をお願いします。
野口 東京都板橋区にある税理士法人ブレイスの野口と申します。平成13年に現事務所の前身である加藤税理士事務所(昭和48年開業)に入所し、平成26年から代表を務めています。職員数は26名、うち有資格者・税理士が5名です。関与先数は月次の顧問先が約260社です。板橋区はもともと農家を営んでいた地主さんが多く、確定申告は年間に約400件をお受けしています。確定申告の繁忙期でも、翌月巡回監査率を落とさないよう業務効率化に努めています。そのためにFXシリーズによる自計化率は95%、継続MASは約80%で利用、書面添付も月次巡回監査の対象先は全件添付しており、TKCシステムを徹底的に利用しています。
久野 税理士法人Dream24の久野です。私の父が平成8年に東京都江戸川区で関与先ゼロ件から独立開業した事務所で、平成19年の税理士法人化後、平成23年に代表社員に就任しました。職員数は39名です。月次の顧問先は約340社です。さまざまな業種のお客さまとお仕事をさせていただいていますが、特に保育園の支援に力を入れています。私もTKCの理念と事務所方針に沿って、100%近い翌月巡回監査率の維持に努めています。FXシリーズは約280社で利用しており、継続MASは約200件、書面添付も約220社で実践しています。
小湊 新潟県燕市で開業している小湊昭税理士事務所の小湊です。昭和49年に開業しました。現在、職員は22名で関与先数が約190社となっています。燕市は金属加工業で有名な地場産業の町で、関与先の9割以上を燕市内のお客さまが占めている地域密着型の事務所です。TKCシステムに絶対的な信頼を置いており、FXシリーズとPXシリーズ(戦略給与情報システム)の導入率は100%。SXシリーズ(戦略販売・購買情報システム)は40%以上に導入しています。翌月巡回監査率もほぼ100%です。
優良企業化は社長の自助努力の賜物 社長へ黒字化の重要性を伝えて支援する
──皆さんの事務所には高い翌月巡回監査率とTKCシステムの徹底活用という共通点があります。どのようにして今の事務所体制を築きあげたのか。「優良企業の育成」を通じて、掘り下げていきます。
まずは優良企業の実績について、令和6年版BASTにおける優良企業数と前年からの増加数、増加につながった要因を教えてください。
野口大樹会員
野口 優良企業の数は23社で、前年から14社増えました。令和4年版で優良企業の定義が大幅に変更されましたが、関与先への指導方針や指導方法は変えていません。私の事務所は、従前から「関与先の黒字化」支援に取り組んでいます。まずは巡回監査を担当する職員には「絶対に黒字化しなければならない」という意識を持ってもらい、社長に黒字化の重要性をきちんとお伝えして、そのための支援を徹底しています。
──職員さんには具体的にどのような指導をされているのですか。
野口 毎月の巡回監査で訪問した後に、職員と月次試算表で私が気になった項目があれば、決算までにどう解決していくのかを話し合い、関与先に指導してもらっています。
優良企業数の増加に向けた取り組みについては、所内に設けているシステム委員会が、OMSの「目標管理(KPI)機能」を活用しています。優良企業の各充足条件を目標値に落とし込み、目標と実績との差異分析を行い、原因をその関与先を担当する職員と一緒に一つずつ解消していきました。
──定義変更によって、充足条件が絶対評価となり、関与先が該当か非該当かをすぐに確認でき、足りない部分への対策が取りやすくなりました。
久野 私の事務所は優良企業が26社で、純増数は18社です。令和4年に優良企業の事務所表彰制度が始まった際、私の事務所の規模からすると「意外に少ない」と思って愕然としました。そこで同規模の会員先生に話を聞くと、どこの事務所もよく似た状況でしたので、優良企業数を増やしたい気持ちが強くなりました。結果的に優良企業が増加して、とても嬉しいのですが、これも各企業、社長による自助努力の賜物であり、私たちがお手伝いできた部分はごく一部だと思っています。
──具体的に何を行いましたか。
久野 一つ目は、毎年年初に発表する経営方針書に「優良企業の輩出」を入れ、目標を30社としたこと。二つ目は、事務所の目標管理(賞与査定)への追加です。事務所全体の目標である優良企業数30件に対する達成率に応じて、事務所の賞与の財源が変わる仕組みを作りました。
この二つ以外にも、私は事務所総合力(KFS:継続MAS・自計化システム・書面添付、クラウド、DXなどの推進)の向上に比例して、優良企業が増えてきたと感じています。
小湊 私の事務所は25社です。年度によって対象関与先が異なっており、件数は前年からほとんど変わっていません。野口先生や久野先生がおっしゃるように、経営は社長が行うもので、優良企業化は社長の努力の結果です。関与先の指導はまず社長に「黒字が当たり前。赤字は異常だ」という認識を持っていただくことが大事なポイントだと思います。私の事務所は最近まで黒字企業割合は8割を超えていたのですが、時間をかけて、社長に黒字化の必要性を理解してもらえるよう取り組んできました。
「365日変動損益計算書」を活用した限界利益に着目する経営で優良企業化に
──まずは黒字化にこだわって、関与先支援に注力されていることがよく分かりました。次に、黒字化の先にある優良企業化についてです。優良企業に認定されるには、先に挙げた6条件のうち「限界利益額の2期連続増加」が最も厳しい条件です。条件達成の鍵は、FXシリーズの「365日変動損益計算書」の活用だと思っているのですが、皆さんの事務所の活用状況をお聞かせください。
久野 令和4年の第49回TKC全国役員大会で飯塚真玄TKC名誉会長による特別講演「TKC方式による『優良企業』の育て方」(『TKC会報』2022年9月号に収録)を聞いて以来、経営方針書に「365日変動損益計算書の活用」を入れて、取り組んでいるところです。限界利益に着目した経営は確実に優良企業化に結びついています。
野口 「365日変動損益計算書」の活用状況ですが、実は、令和4年に優良企業の定義変更のお話が出てくるまで、ほとんどの職員がメニューを開いたことすらない状態でした。そこで、私が講師となって所内研修を開催し、「まず1回はメニューを開いてみよう」というところからスタートしました。
徐々に職員が慣れてきたところで、勘定科目の変動費と固定費の区分を見直しました。固変区分を適切に設定しないと正しい限界利益額が得られないため、大事なポイントだと思います。あらためて見直すと結構、適切に設定されていなかったので、ここには時間をかけました。
小湊 日ごろの指導を通じて、業績の変化に関心を持つ社長が多いので、巡回監査では、FX2の「全社業績の問合せ」から「365日変動損益計算書」は必ず確認しています。社長に毎月、限界利益額を確認してもらうことにより、黒字化への意識が高まっていると感じています。
継続MASで社長は考えを数字化して「気づき」を得ることができる
──全国会の運動方針「黒字化を支援し、優良企業を育成する」に向けた巡回監査と経営助言をさらに推進していくために、本年7月に開催された第51回TKC全国役員大会では、継続MASでの予算登録を標準化し、「経営者と顔の見える関係」を構築することが示されました。私はシステム委員会で継続MASの小委員会にも属しているので、皆さんの事務所の継続MASの活用についてもお話をぜひ聞いてみたいと思います。
久野賢一朗会員
久野 私の事務所では5年前は数十件しか予算登録をしていませんでしたが、今は約200件まで増えています。これも事務所の方針として「予算登録を全社でやろう」と掲げたからです。その際、職員には「継続MASを難しく考えるな」と言い続けました。「社長が興味を持ってくれない」という職員には、自ら主導して「予算をこういう風にしましょう」と社長に提案して登録するよう指示しました。そして、登録したら月次巡回監査で予実対比を使った説明をすることを徹底しています。
最初は興味がなかった社長でも、自社の業績を職員が毎月説明すると、自然と予実対比を意識し、差異に注目し始めます。こうして自社の数字に興味を持っていただけるようになってきたことが優良企業数増に影響を与えていると思います。
野口 経営助言と言っても、私たちは売上を上げる方法を社長にピンポイントで示すことはできません。答えは社長の頭の中にあるので、それを対話から引き出し、数値化して経営計画に落とし込むことが私たちの仕事です。これを職員が標準業務として行うには継続MASが欠かせません。予算登録すれば、予実対比・同業他社比較・3期比較などが可能になり、社長は数字から「気づき」を得られて、経営判断ができます。
ここで大事なのは社長主体で考えてもらうことです。基本的には、社長に事務所に来ていただき、FXクラウドを一緒に見ながら勘定科目ごとに「昨年はこうでしたが、今年はどうですか」といった会話をしながら、最終的に社長が考えていることを継続MASの経営計画に落とし込み、予算登録しています。
ただ、全ての社長が関心を持っているわけではありません。その場合は、まず巡回監査を担当する職員に予算を考えてもらい、私がその根拠を聞いたうえで問題がなければ、社長と話し合って予算登録してもらうようにしています。
──職員が自分で予算を考えて社長へ提案するには、日ごろから巡回監査で経営状況を把握しておかねばならず、職員にとって勉強になりますね。小湊先生はいかがですか。
小湊 昭会員
小湊 私の事務所でも継続MASは相当昔から使っています。税理士の業務は所得計算が中心なので、損益計算書ベースで物事を考える習慣があります。一方で、社長は損益だけでなく、キャッシュフローや資金繰りも常に気にされています。そこに気がついてからは継続MASをフル活用するようにしました。経営計画を策定し、予算登録しておけば、期首1カ月目から「期末までの業績予測」ができます。シミュレーション機能も充実していて、資金繰りや借入金の返済計画なども確認できます。
そして、第2四半期(6カ月目)以降は納税額予測ができます。早い段階から社長に納税額を提示しておくことで、決算時に社長から「税金を減らせ」と言われることはなくなります。我々が業務を行う際に、節税対策を前面に出した税務業務を行っていると、どうしてもプレッシャーになります。社長に「所得が出るのは当たり前。納税が当たり前だ」と認識してもらえると、我々は決算対策で悩む必要がなくなり、職員の精神的な負担は相当軽くなると思います。継続MASをはじめTKCシステムの利用価値はこの点にあるという気がします。
──1カ月目の月次巡回監査から、期末までの見込みを提示することを繰り返していくと、社長も当然黒字の意識が高まり、自ら考えるようになりますね。会計事務所が行う経営助言を考えるうえでとても参考になるお話です。
巡回監査で経営助言を充実したものにするためには、限られた巡回監査の時間を効率的に使う必要があります。野口先生はいかがですか。
野口 その点は、FXクラウドであれば、事務所と関与先のデータを常に共有しているので、事務所のパソコンからいつでも仕訳や残高、証憑などのデータを事前確認できます。お客さまに確認しておいてもらいたい点は、訪問前に付箋機能でお願いしています。これにより関与先でチェックする時間は大幅に減り、その分、社長とお話をする時間に充てられるようになりました。今関与先の8割がFXクラウドへ移行済みで、残りも順次移行を進めています。
社長に正確な情報を早く、分かりやすくお伝えできれば、高い評価を得られる
──TKCシステムをフル活用し、巡回監査を標準業務とすることが基本だということがよく分かりました。事務所経営全般において、職員教育や関与先支援などで、ほかに工夫をされている点や大事にしている考えをお聞かせください。
野口 事務所で工夫していることは、先ほど少し紹介した委員会活動です。システム委員会以外にも、研修委員会では、役員を含めた全職員に対して年間で何時間、どの研修を受けるのかを決めて管理しています。また、さまざまな研修も企画しており、先日は新しい体験をしようという意図で、全員で防災館を見学しました。体験型の研修は所内に一体感が生まれます。仕事上でも社長との会話の引き出しが増えて、「防災館へ行ってきた」という話から関与先のリスク管理の話へと展開することもありました。このような組織を横断した委員会活動で事務所の活性化とレベルアップを図っています。
久野 私が重要視しているのは、関与先に対して最新情報を素早く提供することです。例えば、補助金に関する情報をうちの職員がお伝えする前に、関与先が同業の社長さんや他の税理士さんから聞いたとすると、きっと不満に思うでしょう。ですから、情報提供はどこよりも常に一歩先を行こうとしています。そこから関与先の生産性向上につながるものは積極的に提案して、導入していただくことが非常に大事だと思っています。
小湊 我々のやるべきことは、社長に正確な情報を早く、分かりやすくお伝えすることです。お二方のお話にもありましたが、全ての社長が自社の数字を理解しているわけではありません。社長が興味を持って見てくれるデータをどのように提供できるのかを常に考えています。
例えば、FX2の「マネジメントレポート設計ツール」を使った独自のデータを提供しています。また、PX2では1人当たり支給総額や労働時間を把握できるので、従業員や機械の生産性の分析に活用しています。そして、SX2でも、得意先別(仕入先別)・商品別・部門別に売上高(仕入高)や粗利益額が把握できるので関与先に活用してもらえるよう指導しています。
PX2やSX2のような業務システムでも社長が経営判断に使えるデータは提供できます。関与先が今使っているシステムから新たな付加価値を生み出すことができれば、社長からより高い評価が得られ、我々が提示する顧問報酬に納得されるのではないかと思っています。
社長に必ず届く「月次決算速報サービス」で限界利益率と自己資本比率の重要性を伝える
──会計事務所が行う経営助言に役立つツールとして、この11月にTKCから「月次決算速報サービス」が新規提供されます。そこで、当サービスについてTKCシステム開発研究所の西田拓平部長から概要を説明していただき、皆さんの意見をお聞きします。
西田 TKCシステム開発研究所の西田です。「月次決算速報サービス」は、月次巡回監査の終了(月次更新の完了)時に、業績速報を関与先経営者と会計事務所の所長に対してメールで自動通知するものです。スマートフォンに「変動損益計算書」「純売上高の内訳」「変動損益計算書から分かること」「売上高・限界利益・経常利益・限界利益率の推移」「自己資本比率の推移」が届き、確認できます。
利用条件は、①FXクラウドシリーズ(FX4クラウドを含む)を利用している②継続MASで策定した予算の登録③巡回監査機能(FX4クラウドの場合は巡回監査支援システム)の利用──です。
──当サービスは、飯塚真玄TKC名誉会長が、税理士が経営者と対話し、経営者を適切に方向付け、かつ励ます機会を作るためのもので、「経営参謀」として経営者から直接感謝と信頼を得るためには経営助言の実践が不可欠であるとの思いから発案されたとのことです(『TKC会報』2024年10月号参照)。
西田 会員先生からは、職員さんが巡回監査で関与先へ訪問しても「社長となかなかお会いできず業績報告ができていない」「社長に経営助言で何をお伝えすればよいかわからない」といった声をお聞きします。当サービスの効果は、確実に社長へ最新業績をお届けし、会話のきっかけにしていただくこと。そして、社長が「限界利益率」と「自己資本比率」の重要性に気づき、それらを習熟していただくことで会社の業績が自ずと改善されること。社長が会計事務所に早期の巡回監査と経営助言を期待されることです。ぜひご活用ください。
野口 今のお話で、とても腑に落ちました。私は、巡回監査は社長と会うことが仕事だと思っています。社長にはその場で報告が完了するので、事後の報告は不要だと思っていました。しかし、社長と会えない時もあるので、必ず通知されるのは効果的だなと思います。
久野 私の事務所でも、巡回監査の品質を守るために、巡回監査で社長にお会いしてお話しすることを前提にしているのですが、経験が浅い職員には「これを使って社長に説明してください」と言えるので、巡回監査の標準化に役立つのではないかと思います。
小湊 確かに社長に会えないケースもあるため、そういう意味ではよい機能だと思います。実際に送られるデータを確認して、活用方法を考えてみたいですね。
野口 あと、ぜひTKCチャットでも通知してほしいです。関与先の社長、特に20代・30代の方の主な連絡手段はSNSで、メールはたまにチェックする程度のようです。しかし、大事な情報を一般のSNSでやりとりするのはセキュリティー面で不安があります。そこでTKCチャットで通知されると安心です。
西田 ご提案ありがとうございます。現在、TKCチャット等でも通知が受けられるよう検討しています。また「スマート業績確認機能」との連携も考えています。ご期待ください。
──これから経営助言に注力しようとしている会員先生には頼りになるサービスとなるでしょう。楽しみにしています。
黒字化・優良企業化への支援を通じて会計事務所の成功の鍵をつかもう
──最後に、これから関与先の黒字化や優良企業の育成に取り組もうとしている会員先生にメッセージをお願いします。
野口 変化を恐れずに、TKC全国会が示す運動方針に愚直に取り組んでいくことの必要性をお伝えしたいです。私たちのお客さまは、ほとんどが中小零細企業です。社長は会計事務所を相談相手として頼りにしています。その期待に応えてきちんと支援できるかは、事務所の質にかかっています。職員を育てて、巡回監査を軸とした関与先支援ができれば、中小企業の成長を通じて地域も元気になってくると思います。みんなで優良企業を増やしていく活動に取り組みましょう。
久野 税理士であれば誰でも「事務所を良くしたい。お客さまにも良くなってもらいたい」と思っているはずです。それはTKCシステムを活用した翌月巡回監査の徹底で実現できます。所長はまず、ご自身の考えを事務所方針に落とし込む。そして、属人化しないよう職員全員が実践できる体制を整えていけば、事務所総合力が向上し、経営助言ができる付加価値の高いサービスをお客さまに提供できるものと思います。
小湊 TKC全国会は、時代を見据えて常に正しい方向性を示してくれていますし、TKCからはシステム面でほぼ完璧にフォローされています。TKC会員になっていながら、TKC全国会やTKCが発信する情報やツール、システムを使わないのはもったいないです。全てを使うのは無理だとしても、肌に合うものだけでも、もっと一生懸命に使ってみてはいかがなものかと率直に思います。
──しっかりと職員さんを指導し、関与先の社長を動機付けして、黒字化・優良企業化へ導いていく仕掛けがあることがよく分かりました。会員の皆さんにも、まずはOMSメニューにある「優良企業の条件充足状況確認」を開いて、職員さんと黒字化・優良企業化へ向けた現状把握と打ち手を検討していただきたいと思います。関与先の黒字化・優良企業化への支援を通じて、日本の中小企業の成長・発展に貢献し、会計事務所の成功の鍵をつかみましょう。
(構成/TKC出版 石原 学)
(会報『TKC』令和6年11月号より転載)