事務所経営

高付加価値経営へ転換!TKCシステムへの移行で顧客満足度を高める

目次
出席者写真
◎出席者(左から)
枝崎恵治会員(城北東京会) 矢田宏昌会員(中部会) 蝦名和広会員(北海道会) 角入亮太会員(静岡会)
司会/TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会フォロー企画小委員長 橋本真一会員(関東信越会)

※肩書は座談会開催日時点のものです。

 会計事務所を取り巻く環境は、複雑化する法改正への対応や顧問報酬の低価格化傾向、職員の採用や定着などの課題を抱え厳しい状況にある。これらの課題を克服するためには高付加価値経営の実現が欠かせない。そこで11月に開催される「ニューメンバーズフォーラム2024in高松」において、分科会講師を務める会員4名が集まり、TKCシステムへの移行に取り組んだ経緯や関与先への指導法、職員教育、移行のメリットなどについて語り合った。

■とき:令和6年6月18日(火)■ところ:TKC東京本社

橋本(司会、以下──) TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会フォロー企画小委員長の橋本です。TKCニューメンバーズ・サービス委員会は①新入会員(おおむね3年以内)の支援、②会員増強の支援ならびに情報提供──を担当する委員会です。
 委員会を通じて出会った開業間もない先生や記帳代行を業務の中心に据えておられる先生とお話しすると、共通の悩みは顧問報酬の低価格化でした。本日は、低価格路線から脱却し高付加価値経営に取り組んでいる4名の会員先生にお集まりいただきました。先生方は11月に開催される「ニューメンバーズフォーラム2024in高松」で講師を担当されるということで、本日はその一部をお話しいただきたいと思います。それでは自己紹介をお願いします。

矢田 岐阜県川辺町から来ました矢田です。大学卒業後、県内の会計事務所に4年半勤めた後、平成25年4月に独立開業して、TKCに入会しました。事務所には私のほかに3名の職員(正社員2名とパート社員1名)がいます。 関与先数は60件です。
 事務所がある川辺町は山間部にあり、人口が約9500名の小さな町で税理士は私だけです。さらに私は税理士であり、僧侶でもあるという珍しい経歴を持っています。2つ以上の職種をかけもちしながら、また、小さな町で税理士が私一人という状況下でも、しっかり高付加価値のサービス提供を続けてきた経験が私の強みだと思っています。

枝崎 税理士法人高津会計の枝崎です。本社は北海道根室市で、私が所属する西日暮里支店は東京都にあり、令和4年11月に高津会計の傘下に入った事務所です。私は税務官公署出身で、42年間勤めた後、令和元年に退官しました。その後前身の事務所に入所、令和4年11月に高津会計となった翌12月にTKCへ入会しました。入会3年未満のニューメンバーズ会員です。
 当支店の関与先数は約90件です。私の他に税務官公署出身の税理士が1名と職員5名の計7名がいます。長く税務官公署で培った経験と知識でお客さまを支援できることが特徴です。

蝦名和広会員

蝦名和広会員

蝦名 北海道札幌市から来ましたAimパートナーズ総合会計事務所の蝦名です。平成26年6月に税理士登録して事務所を開設し、12月にTKCへ入会しました。私はもともと平成15年から社会保険労務士(社労士)・行政書士事務所を開業しておりました。税理士事務所には私の他3名の税理士がおり、いずれも税務官公署出身の方です。職員数は40歳代を中心に20名います。関与先数は346件です。また、長年付き合いのある弁護士と司法書士の先生に「Aimパートナーズ」の屋号で同じビルに入居してもらっており、お客さまの幅広い相談にワンストップで対応できる体制を整えています。

角入 かどいり税理士法人の角入です。令和2年4月に静岡県富士宮市で開業して、令和4年12月に税理士法人化しました。TKC入会も令和4年12月で、私もニューメンバーズ会員です。
 私の経歴は、事務所開業までに金融機関と会計事務所、税務官公署での勤務経験があります。大学卒業後に入行した静岡銀行に4年間勤めたのですが、税理士試験に挑戦するために静岡市内の会計事務所に転職しました。そこで国税に携わる仕事を知り、公務員試験を受けて名古屋国税局に採用され、12年間主に担当したのが法人の調査でした。令和元年10月に税理士登録し、翌年4月に開業となります。税理士は私を含めて2名、職員6名の計8名です。関与先数は法人84件、個人が17件の計101件で、その多くは開業間もないころに知り合いの税理士さんが体調を崩され、事業継続が難しくなったことから引き継いだお客さまとなります。

TKC入会の動機

小さな町でも高付加価値経営が可能と即答され入会

──皆さんのTKC入会のきっかけを聞かせてください。

蝦名 私は税理士になる前から、社労士・行政書士としてTKC会員の税理士さんとお付き合いがありました。お酒の席でご一緒すると「TKCは良いよ」とよく言われていて、税理士試験に合格後、迷いなく入会しました。

──具体的にTKCのどんな点が良いと感じたのでしょうか。

蝦名 税理士になる前に、社労士・行政書士の事務所運営やリスクヘッジに関する書籍をよく探していました。しかし社労士・行政書士事務所の経営に関する書籍は数が少なく、同じ士業の税理士さんが執筆されている書籍を参考にしていました。その参考にしていた書籍の多くがTKC出版の発行物だったのです。特に、飯塚毅全国会初代会長の書籍は中小企業を支援する専門家、経営者としても心に響くものがあり、自然とTKCへの共感が生まれました。

角入 私も地元のTKC会員の皆さんの影響で入会しました。富士宮市の会計事務所の特徴は個人事務所で所長先生と奥様の二人で経営されている小規模の事務所が多いことです。その中で、TKC会員事務所を訪問すると、職員をたくさん雇っていて、教育が行き届き、組織化されている印象が強く、自分も職員を雇い安定した経営基盤をつくりたいとの希望があって入会しました。

矢田宏昌会員

矢田宏昌会員

矢田 私の場合、TKC入会の目的はTKCが毎年公表している「TKC経営指標」(BAST)のデータが欲しかったからです。それでTKCが主催するセミナーに参加したところ、牛田策啓会員(静岡会)が、「TKC方式の自計化」と巡回監査による会計事務所の高付加価値経営についてお話しされました。私が独立・開業する前に勤務していた税理士事務所は他社システムを利用する記帳代行型の事務所でした。担当を60件ほど持っていて、常に入力作業に追われる毎日でした。記帳代行型の事務所しか知らない私は、お客さま自身が会計システムに入力するうえに顧問料も今の事務所よりも格段に高く、安定した事務所経営が実現できることが信じられず、セミナー終了後、牛田先生に「うちのような田舎の小さな事務所でも実現できますか」と思わず強い口調で聞いてしまいました。牛田先生は「矢田先生の地域にも、高付加価値のサービスを期待している見込み客は一定数必ずいます」と即答されたので、「そこまで言うのなら信じてやってみよう」とTKCの運動方針に沿った取り組みを始めました。まだ事務所は発展途上にありますが、理想に近づきつつあります。牛田先生にはとても感謝しています。

TKCシステムへの移行理由

法令完全準拠と仕訳入力ゼロでTKCシステム転換を即決

──枝崎先生は事務所の経営母体が変わったことでTKCに入会されましたが、入会後の印象はいかがでしたか。

枝崎 高津会計の傘下となった令和4年11月に金沢市でニューメンバーズフォーラムというイベントがあると聞きました。全国から入会歴の浅い会員やこれから入会を検討されている方が集まり、未来の事務所経営像について話が聞けるというので、私も参加したのです。
 それまでTKCのことは税務署に勤めていたときに毎月届く『TKC会報』に目を通してはいたのですが、フォーラムに参加してTKCの理念やシステムのことを詳しく知ると、他社のベンダーとの違いを感じました。

──どこに違いがありましたか。

枝崎 一番は信頼性の高さです。TKCシステムは法令に完全準拠しているため、入力を間違えなければ、常に正しい計算結果が出ます。また、会計システムと税務システムが連携しており、手間なく一気通貫で税務申告書まで作成できる点に安心しました。さらにデジタル化への取り組みが進んでいる印象がありました。フォーラムの分科会では、FXクラウドシリーズをベースに証憑保存機能や銀行信販データ受信機能を活用して、お客さまの仕訳入力が限りなくゼロになるという事例紹介があり、大きな衝撃を受け、うちの事務所もすぐに全件FXクラウドシリーズを導入しようと決めました。

均一な高品質サービスを提供し低価格路線から脱却したい

──TKCシステムの導入を決断した経緯、そして現在の関与先の自計化の進捗状況を教えてください。

角入亮太会員

角入亮太会員

角入 先ほど申したとおり、私の場合は、知り合いの税理士からお客さまを引き継いだのですが、全て記帳代行をしていたので、自計化への切り替えにとても苦労しました。それでも少しずつ切り替えて、ようやく6割強まで進みました。今も全件自計化に向けて取り組んでいるところです。

矢田 私の事務所は10年間で移行期が3回ありました。最初は独立開業した時です。前に勤務していた事務所で利用していた他社システムを5年リースで組んでいたのですが、牛田先生のお話をきっかけに、まず前事務所から引き継いだ6件のお客さまから順次、「TKCシステムは良いから使って」と切り替えていきました。2回目の移行期は、近隣で知り合いの税理士さんが亡くなられ、記帳代行のお客さまを承継することになり、順次移行しました。
 最近「第3移行期」と称して挑戦しているのが、どうしても移行できなかったお客さまのシステム移行です。きっかけは4月末に記帳代行を任せていた職員が1人辞めたことです。代わりに私がやることにしましたが、他社システムでの記帳代行では高付加価値サービスが提供できず、とても大変でした。それで、一層のことFXクラウドシリーズに全て移行してしまおうと決意したところです。

蝦名 私の事務所ではようやくシステム移行の取り組みが軌道に乗り出したところです。現在は関与先346件のうち約60件がTKCシステムで税務と会計の一気通貫を実現しています。
 TKCシステムに本格的に移行しようと決意したのは2年前です。当時、お客さまからのクレーム対応で謝罪に行くことがあり、事務所が提供するサービスの品質をどのようにして見直していこうかと検討を始めました。そこで思い出したのが入会前にTKC会員の先生がよく言われていた「TKCは良いよ」という言葉でした。お客さまから信頼を取り戻すにはTKCシステムの信頼性の高さが必要でした。職員を抱える所長、そして税理士として、法令に完全準拠したシステムを導入することは経営上のリスクヘッジとなり、職員を守ることにもつながることに気が付きました。

角入 私も以前勤めていた会計事務所や知り合いから引き継いだ事務所は他社システムを利用していました。開業当時の私の悩みは、お客さまによって提供するサービスや報酬にバラつきがあり、報酬も低いままでなかなか上げられなかったことでした。また、職員がTKCの研修に行くとTKCシステムをベースとした話を聞いてくるので、「所長の言っていることとやっていることが違う」という話になってしまいました。そこで、提供するサービスの品質を高いレベルで均一化して報酬料金を上げるために、職員を育てて、TKCシステムによる巡回監査を事務所の標準業務にしようと決めました。そして所長が経営に専念できる組織を構築したいと思ったのです。

枝崎 私は、先ほど申し上げた通り、11月にニューメンバーズフォーラムに参加してすぐに西日暮里支店では「12月1日からTKCシステムへ全件移行する」との方針を打ち出しました。ただし、関与先によって事情は異なりますので、一気に行うのではなく決算期ごとに移行する形で進めています。最終目標が明確なので、いまは目標達成に向かっている状況です。

システム移行・自計化のメリット

継続MASによる予実管理と経営計画策定は社長の関心が高い

──移行を進める中で、関与先企業にはどのような点に着目して説明を行っているのでしょうか。

蝦名 私が10年間記帳代行のお客さまに関与してきて実感したことは、記帳代行を請け負っている会社は成長力が乏しいということです。関与先には黒字化を実現し、成長・発展していただきたいと考えており、そのためには自計化が必要不可欠であり、金融機関との関係強化も必要です。社長とお会いする際には、自計化により、社長自身が自社の財務内容を把握し、金融機関に対して自社の状況を自分の言葉で語ること、これが金融機関からの信頼につながり、資金調達力を高めることにつながることをお話ししています。この点は会社の規模に関係なく全関与先の社長に直接お話ししています。

角入 私もまだ移行できていないところには決算報告の際に話をします。こちらからお話しした内容と社長の反応をOMSの進捗管理機能に記録し、継続的に提案できるようにしています。
 また、職員が増えてきたのでシステムの習熟度向上のため、来年中にTKCシステムへ一本化することを決めました。お客さまにもすでに「事務所が提供するサービスについてのお知らせ」の書面をお渡ししており、期限を来年12月末に区切ってTKCシステムへの移行を行うか否かの意思確認をしていきます。

矢田 私の場合は、継続MAS(社長のビジョンに基づく中期および短期経営計画の策定を支援できるシステム)のデモデータを使い、経営計画策定や予実管理の画面を社長にお見せして、「こんなことができますが、やってみませんか」と聞いています。
 すると多くの社長は「やってみようか」という反応をされますので、すぐに利用できるよう設定します。新たなサービスを提供することに伴う顧問料やシステム利用料はきちんと正規の料金を請求書に計上します。もし料金据え置きの要請があれば値下げで対応するのですが、しばらくして正規の料金に戻しても、提供する情報量が圧倒的に増えているので、社長の満足度は高く、値下げの解消に対する不満は出てきていません。
 継続MASで提供するデータは社長の関心が一番高い情報だと思います。継続MASで経営助言できる状態にするためには当然FXクラウドシリーズで自計化する必要があります。

枝崎恵治会員

枝崎恵治会員

枝崎 継続MASで予実管理ができるようになると、今まで年1回の関与だったお客さまとの接触頻度が増えます。社長に「毎月の売上実績が目標に沿っているか」「目標に足りない場合は具体的にどう行動を起こしたらいいのか」を考えてもらうきっかけになります。ある居酒屋さんでは、「どうしたら利益が出るのか。おつまみを一個増やすよりもお酒を一杯勧めたほうが効率がよい」「じゃあ、おあいその前に一杯勧める運動をしましょう」という話になり、売上が目に見えて上がりました。するとさらなる向上策を考えるようになるという好循環が生まれました。
 継続MASや365日変動損益計算書など、社長の経営判断に役立つ最新業績をタイムリーにお見せできるのはTKCシステムのもう一つの強みだと感じています。私たちも巡回監査を通じて毎月お客さまの商売を見ているからこそ数字に基づく具体的なアドバイスができます。これが年1回関与のお客さまではできません。

──お客さまとの接触頻度が上がると顧問報酬のアップにもつながりますね。

職員教育と所内体制の整備

丁寧な説明と手順の「見える化」が職員の離職率低下につながる

──次に事務所内の話に移ります。新しい方針を職員さんに伝える際のポイント、気を付けている点をお話しください。

蝦名 経験上、システム移行に限らず、所長から「明日からやりましょう」と号令をかけるだけでは職員はなかなか動いてくれません。そこで所長は熱量を持って継続的に自分の思いや方針を伝え続けるとともに、目標に対する進捗状況を「見える化」する必要があります。私の事務所では毎月1回行う定例会議で、職員全員と進捗状況を共有し、職員間でも相談しやすい環境を作っています。
 ただ、2年前に方針を打ち出したときには職員たちは他人事のように聞いていたように思います。私の想いを理解してくれて、自計化の推進に取り組んで結果に結びついてきたのは最近のことです。これからも私は熱量を落とさずにしっかりと職員を見守っていきます。

角入 私は移行を始めたころを振り返って反省していることがあります。それは「今後はTKCでやる」との方針だけを決めて、職員に「なぜTKCでやるのか」を丁寧に説明しなかったことです。移行が順調に進んでいると思っていたある日、突然、職員から退職の申し出がありました。その職員は私が引き継いだ事務所で記帳代行業務を行っていました。職員の気持ちを考えると、事務所の方針転換によって20件弱の担当を持たされて苦痛だったと思います。もっと丁寧に自計化の必要性を説明し、フォローすべきだったと反省しています。

矢田 私の場合は、移行に取り組んだときは関与先数も少なかったので、私一人で作業を行いました。自身で作業して感じたことは、「この作業を職員に任せると移行を嫌がるのではないか」との心配でした。そこで職員の心理的なハードルを下げるため、移行作業をパターン化して手順をマニュアル化しました。
 いまは正社員2名が巡回監査業務を担当しているのですが、1名は最初から巡回監査担当者で採用し、もう1名は記帳代行業務の入力を担当するパート社員として採用しました。その後、自計化が進んで巡回監査担当者を増やす必要があり、パート社員に巡回監査をやってみないかと確認したところ「やってみたい」という答えが返ってきました。話を聞くと、どうやら私がもう一人の職員に手厚くサポートをしながらお客さまを訪問している姿を見て、興味を持ったようです。

──育成はどうされましたか。

矢田 最初はOJTで巡回監査に私も同行しました。徐々に私は見守るだけにして、慣れてくると社長への説明も職員が行うようにしました。いまでは正社員としてお客さまから信頼され、仕事を任せられるようになっています。

──職員のストレスを取り除くことは所長の重要な仕事ですね。蝦名先生は職員さんが多いですが、職員の採用や育成についてはいかがですか。

蝦名 昔は離職率が高くて、5年前に職員が一気に辞めたこともありました。最近ようやく定着してきたところです。そこで分かったことは職員研修をしっかりと行うべきだということです。例えば、私が講師を務める新人研修を週2回(一コマ90分・全13回)行っているのですが、この研修を始めてから離職率は低下しています。あとは業務日報に全て目を通してコメントを返したり、所内の雰囲気に何か違和感やマンネリ化の傾向が見られたときにはイベントを開催するなど、どれも当たり前のことばかりですが、常に所内全体と職員一人ひとりに目を配り、フォローすることが大事だと思います。

角入 私も職員とのコミュニケーションを大事にしています。巡回監査担当者が提出する巡回監査報告書には全てコメントをつけて返しています。そのときに関与先から預かってきた宿題で消化しきれない部分があれば、次回の訪問の際に私も同行してサポートする。人事考課面談や目標設定面談などで定期的に職員と話し合う場を設けることもしています。

──対面では言いにくいことがあっても、業務日報や巡回監査報告書などのツールを活用すれば、職員さんが発するSOSを察知することができますね。

今後のビジョンとメッセージ

手厚いサービスを提供する事務所とのブランディングを図る

司会/橋本真一会員

司会/橋本真一会員

──事務所の今後のビジョンを聞かせてください。

矢田 やだ会計事務所は小さな事務所ですが「巡回監査を行い、手厚いサービスをしてくれる事務所」というブランディングがしたいです。小さな町ですので規模の拡大は望まず、職員がプライドを持って働くことができ、他の企業で勤めるよりも少しだけ良い給料が払えるよう安定した経営ができるビジネスモデルを作りたいと思います。

枝崎 税理士法人全体として事業規模の拡大と職員の待遇を安定させるという目標があります。特に西日暮里支店は、私を含めて税理士の高齢化が進んでいるので、いずれは事務所の承継を考えなければならず、そのためには職員を育てる必要があり、経営を安定させなければなりません。早くTKCシステムへ全面移行し、経営助言を通じて、多くの優良企業を輩出できる体制を目指します。

蝦名 10年前に飯塚毅初代会長の理念に感銘を受けて入会したものの、2年前まではTKCの会務は避けていました。いまはTKCの運動方針に沿って、高品質のサービスを提供することで関与先拡大と顧問料のアップを行い、職員への待遇を大企業並みにして、事務所の基盤を盤石にするという目標を達成できるよう努力しています。

角入 皆さんと全く同じです。これからも事務所の業務品質向上と関与先の拡大、職員のスキルアップのために常に業務改善していく。それに尽きると思っています。

──最後に会員先生へのメッセージや「ニューメンバーズフォーラム2024in高松」の聞きどころをお願いします。

角入 記帳代行はお客さまが本来行うべき作業を会計事務所が丸抱えし、その責任を負うという大変ストレスのかかる仕事です。お客さまが自計化する本来の姿に移行できれば、私たちは最新業績に基づく経営助言を行うことで、社長が将来の見通しを立てるお手伝いができ、社長から感謝いただける仕事ができます。さらに我々にとってもストレスがなくなるだけでなく、報酬単価のアップにもつながります。「すぐにやらない手はない」と申し上げたいです。

蝦名 自分が経験してきた苦労を皆さんにしてほしくないと思います。私は規模の拡大のみを求めて、記帳代行でも何でも引き受けてきた結果、いま事務所の経営改善に苦労しています。できることなら開業当初から「TKC方式の自計化」で高品質・高付加価値の事務所を丁寧に作っていきたいです。多くの方に私の経験を通じて、事務所経営の参考にしていただきたい気持ちが強くあります。

枝崎 繰り返しになりますが、TKCシステムの一番良い点は法令に完全準拠している点です。税務と会計の一気通貫で申告書が作成できるだけでもストレスは軽減されます。申告書の作成で一度でも苦労した方はTKCシステムを選んで損はないことを伝えたいです。

矢田 私の事務所は小さな町で超低価格の記帳代行業務からスタートしました。いまは低価格路線から脱却するためにTKCシステムへの移行を決意して取り組んでいます。私と同じような事務所経営の悩みをお持ちの方へ、低価格路線から脱却し高付加価値経営のためのFXクラウドシリーズへの移行方法を、より具体的にお伝えできればと思っています。

──4名の会員でTKCシステム移行による高付加価値経営実現のポイントを語り合っていただきました。本年11月14日─15日に開催する「ニューメンバーズフォーラム2024in高松」ではさらに掘り下げたお話をしていただきます。
 当日は、関与先拡大や職員の採用・育成、システム活用などをテーマとする4つの分科会や坂本孝司全国会会長と飯塚真規TKC社長による講演、フォーラムを総括する全体パネルディスカッションが予定されています。理想の事務所づくりに役に立つ多くの気づきが得られるものと思います。また全国から約1千名が集う懇親会もあります。毎年、参加者から「事務所経営の道標となった」「先輩、仲間と知り合うことができた」との声を多数いただいています。今年も多くの方のご参加をお待ちしています。

(構成/TKC出版 石原 学)

(会報『TKC』令和6年8月号より転載)