【ユーザー事例】デジタル化で税務業務を効率化
申告受付支援システム、イメージ管理サービス > 兵庫県神戸市
行財政局税務部市民税課 個人市民税指導担当 係長 窪田奈々 氏 / 池内健志 氏 / 根本祐輔 氏
- 住所
- 神戸市中央区加納町6-5-1
- 電話
- 078-331-8181(代表)
- 面積
- 557.02平方キロメートル
- 人口
- 151万6,638人(2020年11月1日現在)
──神戸市が、システムを活用し税務業務の最適化に取り組まれた狙いは。
根本 昨今、地方税電子申告や国税連携など、税務業務の急速なデジタル化が進んでいます。これに対応するため、課税業務の最適化に取り組んだことがきっかけです。また、これまで多様なシステムを利用していたことから、運用が煩雑となり課税ミスや事務処理誤りが懸念され、税制改正のたびに多額の改修費もかかっていました。
そこで、eLTAXデータを後続システムへ連携する「データ連携サービス」、紙の課税資料をスキャン、数値化されたデータを後続システムへ連携する「課税業務支援システム」、数値化されたデータの精査・合算を行う「申告受付支援システム」、課税資料イメージを管理する「イメージ管理サービス」、これらを組み合わせた「市民税サブシステム」を導入しました。
加えて、税務業務では①職員の退職や異動により事務知識を有する人材が減少、②システムの運用知識・技術の継承が困難、③多様化する住民ニーズへの対応──など対処すべき課題が山積しています。これら課題を解決しサービス品質の維持・向上を図るため、2019年8月に9カ所の区役所に分かれていた税務部門を新長田合同庁舎に集約。これに合わせて新システムを導入し、業務のあり方も見直しました。
100万件以上を自動連携
写真左から根本氏、窪田係長、池内氏
──業務はどう変わりましたか。
根本 やはり、作業効率が格段に向上しました。第一に、データ連携サービスによりeLTAXデータが申告受付支援システムに自動連携されることです。従来は職員が100万件以上のeLTAXデータをダウンロードし、これを手動でシステムに取り込んでいました。特に、当初課税の時期はこれをほぼ毎日行っている状況で、手間がかかっていました。
第二に、申告受付支援システムにより経験が浅い職員でも迷わず正確に課税資料の精査・合算処理を行えるようになりました。また、グループ単位で精査・合算処理を進めていますが、それぞれの進捗状況が一目で分かるようになったことと、職員に配布するリストもシステムで簡単に抽出・作成できるようになりました。
さらに、全ての課税資料をイメージで管理することで、市民からの問い合わせへ速やかに対応できるようになったのも大きな効果だと考えています。
池内 合同庁舎に集約することでサービスが低下しないよう、各区役所にテレビ電話会議システムを設置して相談対応にあたっていますが、イメージ管理サービスはそこでも威力を発揮しています。加えて、業務の最適化という点で、住民税当初課税時期においては、進捗管理機能により約80名の職員の処理状況を把握しやすくなりました。
根本 システム導入にあたって、最も重視したのはコスト削減です。従来は税制改正対応に数千万円の改修費が発生することもありました。感覚として半分以上削減できたのではないでしょうか。ほかにも業務の最適化・標準化を実現できること、あるいは災害時などの業務継続性の確保──などに留意しました。当初、掲げたこれらの目的はほぼ達成できたと実感しています。
池内 加えて、統計や分析が容易になりました。そうした情報は、今後、経営資源の効率的な配分などに役立つと期待しています。
長年、“神戸仕様”のシステムを使ってきたので、正直、パッケージシステムに対する不安はありました。また、システムの操作に慣れていないこともありましたが、1年目で100万件以上のデータをほぼ問題なく処理できたことは大成功だったと考えています。
今回の反省点を踏まえて運用面を工夫するとともに、われわれの知見をシステムの機能強化に生かしてもらうよう働きかけていきます。それによって、さらなる業務効率化につながるはずで、3年目には完成形といえるよう結果を出していきたいですね。
業務改革推進を一段と加速
──行政デジタル化や窓口業務改革など、今後の取り組みを教えてください。
窪田 2020年、税務部に業務改革推進本部が発足しました。ここでは、ICTの活用などによる利便性向上と業務の効率化を図り、「デジタル社会に対応した市民サービスの向上」と「税務職員としての業務に特化した体制」を目指して徹底したBPRへ取り組んでいます。
デジタル社会に対応した市民サービスの向上という点では、スマートフォンやパソコンからの申告・納税などができるよう検討しています。また、一つ一つの業務フローを分析して、RPAなどによる自動化や事務の外部化・簡素化により、職員がコア業務に専念できる体制構築にも取り組みます。
2040年問題などもあり、かねてより業務改革の検討は進めてきましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大が、その取り組みに一層拍車をかけたといえますね。この1年で、市民や職員の意識や行動は大きく変わりました。
今回、神戸市では税務部門の集約化に伴いテレビ電話会議システムを活用する形となりましたが、〈市民を来庁させない〉という点ではオンライン化やマイナンバーカードの普及拡大も重要な課題でしょう。また、申告時期など繁忙期には職員が区役所等に出向いて対応していますが、その見直しも考えなければなりません。もはや窓口改革は待ったなしです。自治体DXの推進により、職員も住民も便利な行政サービスの実現に取り組んでいきたいと考えています。
掲載:『新風』2021年1月号