【ユーザー事例】まちの未来を見据え、クラウドの共同利用を決断
基幹系システム > 埼玉県毛呂山町
企画財政課 課長 大野 勉 氏 / 企画財政課情報管理係 係長 市川 正 氏
- 住所
- 埼玉県入間郡毛呂山町中央2丁目1番地
- 電話
- 049-295-2112
- 面積
- 34.07平方キロメートル
- 人口
- 33,576人(2019年12月1日現在)
- URL
- http://www.town.moroyama.saitama.jp/
──毛呂山町ではクラウドの共同利用へ参加し、2019年11月から基幹系システムを稼働されました。システム移行の背景を教えてください。
大野 埼玉県では県内の全町村による埼玉県町村会が組織されています。そのうち、基幹システムの構築・運用を共同で行おうという町村が集まり12年に設立されたのが「埼玉県町村情報システム共同化推進協議会」です。
当時、毛呂山町でもクラウドの共同利用を検討しましたが、最終的に協議会への参加を見送りました。そして、17年に町村会から改めて案内をいただき、これまでの共同利用の実績などを熟考した結果、協議会への追加参加を決めたものです。
毛呂山町では約20年前、クライアントサーバシステムへ移行を行なった際に“日本の標準システム”を目指して、職員がベンダーとともに基幹系システムを創り上げてきたという経緯があります。また、すでに一部システムを除き、単独クラウド化も完了していました。共同利用の検討を行なった際も、システム移行に伴う〈職員の作業負担〉や〈住民サービスなど業務面への影響〉などへの不安から、5年前には参加に踏み切れませんでした。
しかし、人口縮減やデジタル革新など自治体を取り巻く外部環境が大きく変化する中、単独でシステムを運用・保守するのはますます困難になっていくでしょう。一方、共同利用であれば、コスト削減をはじめさまざまなスケールメリットが期待できる。それらを総合的に考えた結果、まちの未来にとっても共同利用への参加がベストな選択と判断しました。
円滑な移行へ、WGで徹底議論
大野 勉 課長
──具体的にどういった点がメリットと考えられたのでしょうか。
市川 最大の決め手は、参加団体同士の〈横のつながり〉です。例えば、昨今、法制度改正が相次いでおり、解釈に悩むこともありますが、そうした場合でも他団体と情報交換できます。これは安心ですし、システム担当職員の負担も軽減されます。また、同一のパッケージシステムを利用しているため、職員同士が業務ノウハウや最善の業務プロセスなどを共有することもできます。さらに、システムの機能強化を要望するという点でも、単独よりも高い交渉力を持つことができるでしょう。
加えて〈業務継続性の確保〉もあります。昨今は台風が大型化し、ゲリラ豪雨など大雨による被害も激化するなど、自然災害の脅威が増しています。実際、2019年は全国各地で台風による甚大な被害が発生しました。今後、協議会での検討が必要になりますが、万一、庁舎が被災した場合でも、他団体のシステムを借りて住民サービスを継続できる、あるいは職員の相互支援が期待できるということも共同利用の大きなメリットだと考えています。
──システム移行の際に、工夫された点は何でしょうか。
市川 これまで利用していたシステムは、現場のノウハウを長年つぎ込んで創り上げてきた“財産”ともいえるものでした。しかし、新たなシステムをこれに合わせてカスタマイズしては、せっかくの共同化のメリットを享受できません。そこで移行にあたってはノンカスタマイズを原則とし、必要に応じて代替手段を提案してもらう、という方針を立てました。
大野 その上で、移行のためのワーキンググループを設置し、職員とTKCの担当者が現行業務の流れを一つ一つ分析し、システム移行後の運用がどのように変わるのか──などを繰り返し確認しました。方針どおりほぼノンカスタマイズでシステムを導入できた要因には、このように十分に議論を重ねたことがあると考えています。
じっくり落ち着いて取り組めるよう、ワーキング専用の会議室を用意したこともスムーズな移行につながった一因だと思います。
変わる、情報システムの〈役割〉
市川 正 係長
――業務効率化や住民サービス向上に向けた取り組みを教えてください。
市川 窓口業務の効率化は、自治体に共通する喫緊の課題だと考えています。その打ち手の一つとして、毛呂山町では20年3月から証明書コンビニ交付サービスを開始する予定です。これにより窓口業務の分散化を図り、職員が住民の相談対応など本来業務に集中できるようになることを期待しています。
大野 そのためにはマイナンバーカードの普及拡大が不可欠ですね。いま、マイナポイントや健康保険証としての利活用などの動きが本格化しており、これが追い風になることを期待しています。その一方で、カードの申請件数の増加を想定した体制整備が課題といえ、これについても並行して検討していきたいと考えています。
システムは無事本稼働となりましたが、職員が操作に慣れていないこともあり、TKCには今後も継続的なサポートをお願いします。これから長く付き合ううちには、システムの不具合が発生することもあるでしょう。そんな時に重要なのは、いかに迅速かつ的確な対応をしてくれるかです。この点でも大いに期待しています。
また、「スマート自治体」の観点では、AIやRPAなどを活用した業務の効率化の動きもあります。人口縮減の時代を迎え、いま自治体には従来の枠にとらわれずに考えることが求められています。〈人の判断を要しない業務の自動化〉など、情報システムに求める役割も変わりました。その点では、一層の機能拡充や操作性の改善をお願いしたいですね。
掲載:『新風』2020年1月号