【ユーザー事例】栃木県真岡市マイナンバーカードで実現する業務改革と市民サービス向上
もっと便利な市役所へ──将来を見据え、窓口の業務改革へ挑む栃木県真岡市。
マイナンバーカードの普及促進でも、「TASKクラウドかんたん窓口システム」の仕組みを活用して
来庁の〝ついで〟に申請する簡単さを市民にアピールし、着実な成果を上げている。
栃木県真岡市は、基本計画の柱の一つに「効率的で市民にわかりやすいまちづくり」を掲げ、業務の効率化と市民サービスの向上へ取り組んできた。新庁舎建設(2020年秋完成)を機に、まちの将来を見据えた業務内容の見直しや新サービスの検討にも組織的に取り組む。その一環として19年4月に「証明書コンビニ交付サービス」を開始し、9月には市民に申請書を書かせない・手続きで迷わせない「総合窓口システム」(TASKクラウドかんたん窓口システム)の本格運用もスタートした。
基幹連携で業務を大幅に簡素化
市民生活部市民課の塩沢勇課長は、「今回の窓口改革の狙いの一つに、市民にマイナンバーカードの利便性を実感してもらうことがあった」と語る。いま、全国の市区町村がカードの普及・利用拡大に取り組んでいる。だが、「現状では、せっかくカードを取得しても自宅で大切に保管したままという人が多い。これでは利活用は進まない。そこでカードの取得促進とともに、市民にカードを常に持ち歩こうと思ってもらうことが大切」(塩沢課長)というのだ。
総合窓口では、マイナンバーカード等とタブレット端末を利用し、①証明書の交付申請書の記入が不要(証明書交付申請)②住所異動の際に住民が質問に答えると利用可能な行政サービスを自動判定し、そのまま申請書を作成(手続き案内・申請書作成支援)──のサービスを実施している。
市民課窓口係の関根美佐係長は、新サービスの効果について「複数の手続きを行う市民には、何度も記入する手間や手続きにかかる時間が軽減され喜ばれている」と語る。また、業務改革の点でも「手続き案内票が自動作成されることで、経験の浅い職員でも対応できるようになった」そうだ。
ここで特筆すべき点は、基幹系システムとの自動連携を実現していることだ。これにより、住基システムへのデータ入力を削減するなど業務の簡素化につなげている。
市民課窓口係の大滝啓太主事は、「まだ操作に慣れていないが、以前と比べて時間的に25%程度削減された」と述べる。さらに、「手続き案内票のQRコードを読み込むと、来庁者の手続き内容や完了状況が分かり手続き漏れを防止できる」とサービス品質の向上にも期待する。もし市民が手続きを忘れて帰宅しても後日案内できるなど、市が掲げる〈市民本位のサービス向上〉でさらなる進化の可能性を秘めているのだ。
(写真左から)塩沢勇課長、関根美佐係長、大滝啓太主事
マイナンバーカードの取得促進では、市民課だけでなく窓口が一丸となって勧奨に取り組む。11月には県内初の試みとしてハローワークでの出張申請支援もスタートした。啓発活動にも意欲的で、産業祭などでのPR活動のほか、3月に開催する「全国いちごサミットinもおか2020」でも会場に臨時窓口を設ける計画だ。
また市民課の窓口には、〈申請にかかる負担・時間の軽減〉により市民が気軽にマイナンバーカードを取得できる環境も整えた。それが、かんたん窓口システムの機能を活用した“ついで”申請の促進だ。
申請時来庁方式を採用する自治体は少なくないが、本人確認や複数の書類記入などに手間・時間がかかるのは心理的にも高いハードルとなる。この点、真岡市では運転免許証から読み取った基本4情報をあらかじめ申請書に印字することで、市民の記入作業を不要とした。その場で写真撮影も行う。こうした取り組みにより、「実際に申請手続きをした市民は、一様に『マイナンバーカードって、こんなに簡単に作成できるんだ』と驚く」(関根係長)という。
〈ついでに、簡単に作成できる〉というポジティブイメージの浸透は、十分、カードを取得する理由となる。職員としても市民に勧めやすく、「10月の申請件数は前月比の2・5倍程度に増えた」(大滝主事)と着実に効果を挙げている。
攻めの姿勢で、変化をチャンスに
「マイナンバーカードの取得促進は、ゴールではなくスタートライン。カードの適切な更新管理など、今後考えるべき課題は山ほどある」(塩沢課長)。そのため、真岡市では今年度中にマイキーIDの設定支援員を配置する。また、自治体ポイント「ベリポ」を18年4月から導入しており、改めて利用店舗の拡大を図る。さらにカードを持ってもらうという点では、引き続き利用方法の普及浸透に努める考えだ。
真岡市の取り組みは決して特別なものではない。だが、少しの工夫とアイデアで着実に成果を挙げている。その秘訣は、受け身ではなく〈変化をチャンスに変える〉攻めの姿勢にあるといえそうだ。
掲載:『新風』2020年1月号