【ユーザー事例】住民も行政も便利な、スマートシティ実現へ
スマート申請システム > 大阪市町村スマートシティ推進連絡会議
スマートシティ戦略部 戦略推進室 地域戦略推進課 市町村DXグループ 課長補佐 松尾 浩 氏
総括主査 中井章太 氏 / 主査 大東恵美子 氏 / 主事 土井原幹生 氏 / 主事 重親歩美 氏
- 略 称
- GovTech大阪
- 参加団体
- 大阪府内 43市町村
- 事 務 局
-
大阪府 スマートシティ戦略部 戦略推進室
地域戦略推進課 市町村DXグループ - 住 所
- 大阪市住之江南港北1 大阪府咲洲庁舎
- 電 話
- 06-6210-9097
──大阪市町村スマートシティ推進連絡会議について、教えてください。
中井 「大阪市町村スマートシティ推進連絡会議」(GovTech大阪)は、大阪府と府内の全市町村(43団体)がシステムやネットワークなどに関する情報交換や共有、連携・協働を目的として設立されました。大阪府では、2002年に全国初の実務型組織(大阪電子自治体協議会)を設置し、府と市町村が共同でシステムの開発・運用等に取り組んできました。
潮目が変わったのは吉村洋文知事の就任です。20年3月に、住民の生活の質(QoL)の向上を主目的とした『大阪スマートシティ戦略』を策定。実現には住民に最も近い市町村との連携が必要不可欠で、GovTech大阪を新設し、活動を集約したものです。現在、①市町村の情報化及びスマートシティ化に関する調査研究、②情報システム及び情報ネットワーク等の共同調達、③LGWAN府域ネットワーク運営連絡会の運営、④情報セキュリティ技術セミナー等の開催、⑤各種情報政策に関する情報交換──などに取り組んでいます。
共同調達で、現状の課題を解決
──なぜ、電子申請システムの共同調達を行ったのでしょうか。
松尾 20年度から市町村アドバイザー制度を開始し、ヒアリングを進める中で多くの団体から聞かれたのが「住民が来庁せずにスマートフォン等から各種手続きができる電子申請システムの導入が急がれる」ということでした。
コロナ禍のいま、ワクチン接種事業など職員の業務負担は急激に増しています。地方財政への影響も長期化が予想され、新たな予算確保は厳しい。そうした〈住民QoL向上〉と〈財政負担緩和〉を両立するための一つの解決策が共同調達でした。そこで、21年にチャットツールと電子申請システムA・Bの共同調達を実施しました。このうち、電子申請システムA(法人認証機能や代理申請機能を備え、あらゆる行政手続きのオンライン化に対応できるプラン)に採用したのがTKCの「スマート申請システム」で、現在、府内6団体が共同で利用しています。
今回の共同調達によりスケールメリットによるコスト削減につながったほか、参加団体からは「庁内調整が円滑に進んだ」「調達事務の負担軽減ができた」という声も寄せられています。
──共同調達案件や事業者の選定はどのように進められるのでしょうか。
中井 毎年5月頃にアンケートを実施しています。その結果をもとに、〈補助金や財政措置の有無〉〈コロナ対策に資するなど政策意義〉〈未導入団体が多い、小規模団体からも要望がある、など足並みを揃えやすい〉〈コストメリットが期待できる〉などを加味し、市町村と意見交換した上で次年度の調達案件を決定します。
また、アンケートでは人員・組織体制や計画の策定状況、オンライン化の状況、現状の課題、共同調達のニーズを聞くとともに、システムの導入状況や契約ベンダー、契約金額・期間、システムやベンダーに対する満足度なども調査しています。そうした緻密なバックデータを利用しながら、事業者の選択を行っています。
電子申請は、使ってなんぼ!
──DX推進の課題や、それをどう解決しようと考えているのでしょうか。
中井 以前はDX推進の課題は〈カネ〉〈ヒト〉の順でしたが、いまやその順番は逆転しました。市町村ではやるべきことがどんどん増える一方で、職員数は確実に減少していきます。共同調達はこうした人的課題に対しても一つの解になると考えています。
大規模団体であれば自力でDX推進計画を作成・実行することができますが、小規模団体の場合はなかなか困難です。その点で府が事務局として“目利き”を行い、優良なベンダーに声を掛けてプロポーザルを実施する形は、マンパワーやノウハウ不足を補う点でも有効です。今後も共同化領域を拡大するとともに、調達のみならず運用の一元化などの検討も行う考えです。
またデジタル人材の育成でも広域でできることを模索しており、昨年度から研修の拡充に取り組んでいます。
松尾 電子申請は“使ってなんぼ”です。市町村では〈住民の利便性向上〉と併せて、内部の〈業務の最適化・生産性向上〉も重視しています。これを実現するにはシステムを導入して終わりではなく、それを使ってどう行政サービスや業務を改革していくのか、中長期の視点からしっかり深掘りしていく必要があると考えています。
また、電子申請は自治体DXの中でも特に住民QoLに直結するため、まずはサービスを始める団体を増やすことが肝要です。その点では、申請サービスの種類や申請フォームなどの好事例を共有し合えればいいなと考えています。府内でもさまざまな創意工夫の例が生まれており、府内や全国の団体と事例を共有することで電子申請の普及・利活用促進、ひいては業務・運用の統一にもつながると思われ、そうした場をつくることが望まれます。
さらに、いま多くの市町村が注目しているのが窓口のデジタル化です。これも住民QoLに関わる分野ですが、基幹系システムとの連携を考えると標準化対応後に実施すべきか悩ましいテーマです。TKCには情報提供などの支援も期待しています。
DX推進へやるべきことが多く市町村の皆さんは大変ですが、住民も職員も“双方よし”な世界を実現するには絶好のチャンスです。好事例は模倣し、尖るところは尖りながら、さらなる高みを目指していきましょう。
※編集部注:「電子申請システムB」は、電子申請システムAから仕様(機能)を絞ったスモールスタートプラン
掲載:『新風』2022年7月号