【ユーザー事例】システム更新を機に、財務会計業務のDXに挑む
公会計システム > 東京都東村山市
経営政策部 情報政策課 課長 堀口裕司 氏 / 課長補佐 谷 知彌 氏 /主任 堀内慎高 氏
経営政策部 財政課 課長補佐 山本理恵 氏 / 主査 嶋﨑裕太 氏 / 主任 山本 翔 氏
- 住所
- 東京都東村山市本町1丁目2番地3
- 電話
- 042-393-5111
- 面積
- 17.14平方キロメートル
- 人口
- 151,891人(2022年6月1日現在)
──今春、財務会計システムが本稼働しました。この経緯を教えてください。
堀口 システムの更新時期を迎えるにあたり、地方公会計が一体となった財務会計システムの導入を決めました。
ここで新たなシステムに求めたのは、LGWAN-ASP方式でのサービス提供に加え、①事務の効率化・職員の負担軽減ができる、②適正な財務処理ができる、③財政マネジメントの強化に向けた実施計画・行政評価との統合型システム、④将来のスマート自治体の実現に資する高い機能を持つ──などの要件です。プロポーザルの結果、最終的にTKCのシステムを選定しました。
また、財務会計は全庁に共通する事務でありシステムに求めることも所管課によって異なります。今回は移行を機に〈業務の最適化〉を図る狙いもあったことから、ノンカスタマイズを基本として、所管課に運用手順の見直しを依頼しました。
業務最適化へ、運用手順を棚卸し
谷 最初に取り組んだのが、全庁的な運用手順の棚卸しでした。実は同じベンダーの製品を10年以上使っていたことで、そのシステムに沿った市独自の運用が数多く存在していたのです。
とはいえ、業務が重なる部分など、それぞれの所管課だけでは決められないこともあります。そこで移行にあたって、システムごとにワーキンググループを設置しました。当初は、運用を変えることへの不安の声も聞かれましたが、情報政策課も一緒になり各部門の課題解決に向けて繰り返し議論しました。ここには、TKC社員も参加し、業務効率化・最適化に向けた案を提示していただきました。
擦り合わせが必要な項目が多く、半年ほどの間に開催したワーキンググループは90回を超えましたが、最終的にはみんなが納得できる内容になったと考えています。
堀口 移行作業と並行して、ちょうど『東村山市DX推進基本方針』(2022年3月策定)の検討を進めていたことも、大きな後押しとなりましたね。今回、多くの部署が関わり、さまざまな難しい調整を経て既存の業務や仕組みを見直した経験は、今後のDX推進につながる大きな成果だと感じています。また、移行作業を通じてパートナー選びの大切さを実感しました。市の考え方を理解して、最後まで協力いただいたTKCには感謝しています。
──ありがとうございます。情報システムの担当部門が、ここまで積極的に関わるのは珍しいケースですね。
山本(理) その点では、情報政策課がワーキンググループ間の“パイプ役”となってくれたからこそ、既存の考え方にとらわれずに業務を見直すことができたとあらためて実感しています。
DX推進は、地域とともに
──導入効果はいかがですか。また、今後に期待することを教えてください。
谷 令和4年度の予算編成から処理を開始し、現在、公会計システムのほか、起債管理、固定資産管理、契約管理、源泉徴収管理のシステムを利用しています。また行政評価システムの利用も予定しており、今年度中にワーキンググループで運用手順を検討します。
システムを本格利用してまだ数カ月と、詳細な検証はこれからですが、個人的にはすでに一定の効果があったと感じています。その一例が予算執行伺から契約にかかる業務の効率化です。情報政策課では毎年150件ほどの契約を行いますが、処理が簡素化され時間短縮につながりました。
また、今回は支出負担行為の伝票への押印や手書きの支出伝票なども見直しましたが、システムに慣れていく中で「ここはもっと改善できそうだ」という新たな発見もあるでしょう。その点では、継続して業務の最適化に取り組んでいきたいと考えています。
山本(理) 財政課では、特に連結財務書類の作成業務の効率化に期待しています。また、日々仕訳や固定資産台帳との連携による決算業務の効率化に期待する職員の声も多いですね。さらに、会計部門では電子決裁に注目しています。その他にも、電子契約や電子請求書、インボイス制度の開始──など、いま財務会計に関わる変化が急速に進んでいます。TKCには、これらの最新動向に関する情報提供などのサポートも期待しています。
堀口 重要なのはシステムを導入することではなく、それをどう運用していくかです。その点で、TKCシステムは他団体のベストプラクティスを採り入れるなど、常に機能を進化し続ける点を評価しています。〈使う人に優しい〉システムとして、一層の進化を期待しています。また、同じシステムを利用する約300団体の取り組みには、新たな業務改革につながるヒントが埋もれていると思われ、ぜひ事例の共有をお願いします。
今春に策定した『東村山市DX推進基本方針』は、市役所だけではなく地域全体のDX推進に関する方針として位置付けられています。市民や民間事業者などを含めた地域全体でデジタル化を考えるのは、行政サービス分野だけに限りません。例えば、紙の請求書発行には多くの手間とコストがかかっています。役所の都合で紙の請求書を求め続けることは、事業者のDX推進を阻害します。しかし、デジタル化すれば請求書を発行する側も受け取る側も効率化できるでしょう。
その意味でも市役所が率先して変革に取り組み、〈デジタルのチカラで素敵な明日へ〉の実現を目指して、地域全体に新たな価値を提供していきたいと考えています。
掲載:『新風』2022年7月号