【ユーザー事例】 資産・債務改革は、まちづくりの第一歩
庁内情報系ソリューション「固定資産管理システム」 > 埼玉県三芳町
財務課 細谷俊夫副課長 / 財務課管財営繕係 吉川祐二主任
- 住所
- 埼玉県入間郡三芳町大字藤久保1100番地1
- 電話
- 049-258-0019
- 面積
- 15.3平方キロメートル
- 人口
- 38,541人(平成22年7月末日現在)
- URL
- http://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/
細谷俊夫副課長
──「固定資産管理台帳」の整備にあたり、三芳町ではいつ頃から、どんな作業をされてきたのでしょうか。
細谷 実際に作業を開始したのは2年前からですが、検討を始めたのはずっと前に遡ります。実は、我々が「固定資産管理台帳」の整備を意識したのは、新地方新公会計制度改革が直接のきっかけではないんです。三芳町では、以前より一般的なデータベースソフトを使って当時の担当者が「財産台帳」を作成し、町所有の土地や建物などを管理していました。いま、市区町村でもいろいろな業務に表計算ソフトやデータベースソフトを利用していますが、これらは融通が利いて便利なツールである反面、担当者間でシステムを引き継いでいくなかで、データのメンテナンスやバージョン管理などが曖昧になるというリスクがあります。また、更新履歴が管理できないため、入力ミスなどがあっても気づきません。そうした状況では担当者としても、このデータは本当に正しいのか不安が残ります。そのため、職員のスキルによらず簡単に利用でき、しかも結果が正しいと確認できるような財産管理の仕組みがないものか模索していました。そんな折に、新地方公会計制度改革で「固定資産管理台帳」の整備が求められたことから、この機に長年の懸案を解決すべく、パッケージシステムの導入を検討した結果、「TASK.NET固定資産管理システム(公会計版)」の採用を決めました。
“簡単” “正確な”仕組みをめざして
吉川祐二主任
──実際、固定資産管理台帳の整備ではどのような作業をされたのでしょうか。
吉川 三芳町では、町所有の土地と家屋については「TASK.NET固定資産税システム」で情報管理しています。まず、業務の合間をみながら約1年かけて、既存の財産台帳と固定資産税システム、それに登記簿謄本等のデータを突合したところ、いくつかの差異が見つかりました。原因は、建物の増改築や土地の一部が道路に変更していたことによる面積の増減などが更新されていなかったものですが、これを1件ずつ追いかけ調査をするのに多少手間がかかりました。特に土地の場合、複数の筆を一体利用として全体で評価することがあるので、台帳からでは判断できないものもあります。これについては固定資産税担当に協力してもらい、GISを活用して航空写真と比較しながら検証しました。これにより、業務効率は格段に上がりましたね。
細谷 固定資産管理台帳の整備にあたっては、一定地域ごとの平均単価を用いる算定方法も認められています。でも、せっかく整備するのであれば、最初から公有資産の額をできるだけ正確に把握したいと考えました。そこで、「固定資産税システム」を使って町所有の資産の評価額を算出し、これを「固定資産管理システム」へ読み込んで基礎データとしました。そのための準備として、固定資産税の担当部署では所有者名の表現統一など、データの見直しが発生しましたが、業務面で多少余裕のある夏の期間をこの作業に充てることで負担軽減を図りました。固定資産管理台帳は作成すればおしまいではなく、継続的に運用していくものです。担当者は大変だったと思いますが、土地については「固定資産税システム」と連動できたことで、今後は評価の見直しなど台帳のメンテナンスも楽になるでしょう。
吉川 「いつ・誰が・どんな手順でデータを更新するのか」など、運用管理のルールやプロセスの策定が今後の課題です。これについては今年度中にまとめたいと考えています。また今回、台帳作成にあたっては、後から他の職員が見ても分かるように数字の根拠を明確にするよう心がけたのですが、システム側でも、そうした運用管理に役立つ機能、特に統計処理(データのソート含む)や検索などの強化をお願いしたいですね。さらに「固定資産管理システム」をデータベースとして捉えれば、固定資産管理台帳から該当する土地・建物に関連する写真や地図などのデータへリンクできると、すべてが一元管理できて非常に便利です。ぜひ、検討していただきたいと思います。
次なる挑戦は、公共施設改革
──固定資産管理台帳の結果を、今後、どう活用していく計画ですか。
吉川 今回、各課が持つ資産を棚卸しできたことで、未利用地を別の用途に利用する、あるいは売却するといった検討材料としてすぐに使えると思います。まだ、具体的なアイデアがあるわけではありませんが、いずれ事務事業評価などでの活用も考えられるでしょう。
細谷 三芳町は、長期にわたって地方交付税不交付団体です。しかし、景気悪化による税収減に加え、昭和40年代の人口急増時代に転居してきた住民の多くが団塊の世代で、今後一挙に高齢化が進むことから、安定した税収確保がますます困難となります。一方で、共働き世帯の増加による子育て支援の需要も高まっています。そこで、『三芳町第4次行政改革大綱』として「地域の元気」と「スリムな行政」を掲げ、地域の活性化と行政の減量化を両輪とした経営改革へ取り組んでいます。大切なのは、町の財政事情を住民に分かりやすく公表し、住民理解のもとで歳入・歳出改革を図ることです。そのために財務諸表とともに事業別予算を公表し、財政の見える化を図ります。また、町有財産の効率運用および公共施設改革も推進します。具体的には、「ストックマネジメント(既存の建築物の有効活用やコスト削減、長寿命化を図ること)」や、住民の生活スタイルに合わせた「公共施設の統廃合、民間化」などへ取り組みます。我々は、「固定資産管理システム」という“容れ物”を得たことで、資産・債務改革に向けた最初の一歩を踏み出すことができました。これを行政改革の基礎資料として、具体的な施策や事業計画へしっかり反映させていこうと考えています。
掲載:『新風』2010年9月号