株式会社ピッチ&パッチ 様

統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例

少数精鋭の効率的な事務処理で
多様な障害者福祉サービスを展開

北海道釧路市などで多様な障害者福祉サービスを展開している株式会社ピッチ&パッチは、少数精鋭の事務職員による効率的なバックオフィス業務を行っている。創業者の山口晋二相談役、総務部の小松佳奈さん、経理部の遠藤弘貴さん、顧問税理士の小田伸一氏に、TKCシステムの活用法などを聞いた。

──起業の経緯を教えて下さい。

山口晋二相談役

山口晋二相談役

山口 私は28歳の時に転職し建材メーカーの社員として東京で20年ぐらい営業の仕事をしていました。介護保険法が施行された後、その会社をやめてふるさとの釧路に帰り、2006年に高齢者のグループホームである認知症対応型共同生活介護施設「よいしょ!春採」の運営をスタートしました。
 ところが同年に施行された障害者自立支援法の中身に大変刺激を受け、障害者福祉の分野にかじを切りました。

──事業の特長をお話しください。

山口 07年11月から、共同生活援助(障害者グループホーム)事業を開設しています。どちらかというと重い障害を持つ方の入所が多くなっています。通常障害者グループホームといえば、住宅街のなかの一軒家をリフォームして4人など少人数で使用するケースが多いですが、当社ではそうしたタイプのグループホームではなく、最初に開設した高齢者のグループホーム施設を基本としています。なぜかというと、障害者自立支援法をよく読むと、そこで定められている障害者の共同生活援助のあり方が、介護保険法における高齢者の共同生活援助をベースにしていると理解したからです。20年から定員20名までの「日中サービス支援型共同生活援助」がスタートしましたが、これは認知症対応型共同生活介護の2ユニットに酷似していると言えます。

──どんな方が入所していますか。

山口 06年10月までは、知的障害、精神障害、身体障害の3障害の特性ごとに法律があり、福祉施設もそれぞれの法律別でつくられていました。ところがそれらの障害を横断的にカバーする障害者自立支援法が施行されたのです。われわれは新法成立後に参入してきたので、それらの3障害の垣根をつくることなく受け入れています。13年4月から対象に加わった難病の方、強度行動障害のある方、医療観察制度により精神科で治療を受けている方、胃ろうが必要な方など多様な障害者の方の受け皿になっています。

──人手不足や賃金アップにはどのように対応されていますか。

山口 人手不足の現状は間違いなくありますが、人材紹介サイトと契約するなど業界でも比較的採用はできているほうだと思います。また新入社員の基本給がここ数年上がり続けており、既存社員との公平性に懸念が生じてきたため、今年思い切って全社的に賃金の見直しを実施しました。平均で5.6%の賃上げとなり、高齢者介護業界と比較しても高い賃金水準を達成していると思います。

銀行信販データ受信機能と証憑保存機能をフル活用

──『FX4クラウド』を導入した理由を教えてください。

小田 最初の高齢者グループホーム「よいしょ!春採」の横で「くしろはるとり」をオープンして障害者福祉事業がスタートしましたが、その後北見市川東、幕別町、釧路市鳥取地区、旭川市神楽岡地区と次々と事業所が増えていきました。
 こうした複数施設の業績管理で一番の課題は現金の取り扱いです。そこで『FX4クラウド』を導入し、複数拠点での入力が可能になるようにしました。給与計算の面でも『PX4クラウド』を導入し、ほぼ1人のスタッフだけで作業ができるようにしています。

山口 気が付けば社員数340人、売上高19億円という規模となりましたが、経理と総務の社員が実質2人だけで業務を回せているのは、『FX4クラウド』の力によるところが非常に大きいと思います。

──使い勝手はいかがでしょう。

小松佳奈さん(上)、遠藤弘貴さん(下)

遠藤弘貴さん(左)、小松佳奈さん(右)

小松 何らかの障害でエラー表示が出て接続されなくなったときや、操作方法が分からなかったときなど、手軽にコールセンターに電話しています。システム全体をまだまだ使いこなせているとはいえないので、問い合わせへの回答を通じて新たな機能や使い方を知ることができるので便利だと思います。

遠藤 当社の場合、同じ銀行でも事業所ごとに複数の通帳が存在するなど、現金取引の処理が本当に大変でした。以前は各施設から本社にすべて証憑(しょうひょう)書類を郵送してもらって入力していましたが、届くまでのタイムラグもありますし、不足していた場合は追加で送ってもらうよう連絡する手間も生じていました。しかし「証憑保存機能」を使ってからは、各施設でスキャンしてもらった証憑書類をすべて本社のパソコンの画面上で確認できるので、手間と時間の大幅な削減につながりました。またシステムが学習して次回以降は自動的に仕訳の内容を表示してくれる機能もとても助かっています。「銀行信販データ受信機能」や「証憑保存機能」を使っていなければとても私1人では処理しきれていないと思います。

小松 昨年12月に家族皆コロナにり患してしまいました。忙しい時期でしたので、パソコンを自宅に持ち帰り、給与計算業務や年末調整業務をすべて行うことができました。また社会保険の手続きも、CSV形式のファイルで切り出し電子申請しています。事業所が増えるたびにスタッフの数も増えるので、システムからスムーズに電子申請ができるのはとても便利だと感じています。

部門別業績管理で施設ごとの収益推移を常に確認する

──部門別で業績管理をされていますか。

小田伸一税理士

小田伸一税理士

小田 はい。共通部門に加え「よいしょ!春採」「くしろはるとり」「きたみ川東」「さつない」「とっとり北」「かぐらおか」「帯広」とエリアごとにグループ分けした八つの部門で管理しています。さらにその下の階層で各施設に分けて業績を管理しています。

──売り上げや利益の水準が一目瞭然で比較できますね。

山口 良いところもあれば悪いところもあります。たとえば北海道河東郡音更町にある2つの施設はM&Aで取得し経営再建中のため利益は出ていません。また旭川市内に3年前に開所し、職員も60名近く新規雇用した「かぐらおか」はコロナ禍が直撃して2年間赤字になりました。
 こうした施設に加え、放課後デイサービスやショートステイ(短期入所事業所)は利益率が悪く、金融機関からは「利益率の低い施設はやめてもいいのでは」と言われることもあります。

──撤退を検討したことはありますか。

山口 そう簡単な話ではありません。例えば病気や事故で脳の障害が残った患者さんが、保護者もご高齢ということで自宅に帰れないことがあります。そうした場合、とりあえず下宿代わりに当社の短期入所事業所「はなれ」(釧路市鳥取北)を利用してもらいます。その後2~3カ月経過し市町村の方と打ち合わせしながら、障害者区分の確定→受給者証の交付→空きがあるグループホームに移動してもらう、という場合があるのです。以前は「はなれ」の職員が特別支援学校へ送迎して卒業にこぎつけた利用者さまもおり、地域に必要な社会資源になっているのです。

──理想の事業所像や今後の抱負についてお話しください。

山口 当社の事業所の理念は「今日も1日楽しく有意義な時間を過ごす」。職員には「家で嫌なことがあっても、施設の玄関に入った瞬間からみんな楽しんでいこう」と話しています。この理念のもと、当社ではレクリエーション活動に力を入れています。今後も企業理念である「世のため他人(ひと)のため」「人の幸せが法人の喜び」実現のため、障害者総合支援法の精神にのっとって、入所者とそのご家族に安心して利用いただけるサービスの提供に努めていきたいと思います。

企業情報

2021年に旭川市内にオープンした
「ピッチ&パッチかぐらおか」

株式会社ピッチ&パッチ

業種
4障害(知的障害・精神障害・身体障害
 および難病)に対応した生活介護事業所の運営等
設立
2004年4月
所在地
北海道釧路市黒金町13-1-4
売上高
約19億円
従業員数
345名
URL
http://www.pitti-patti.com

顧問税理士 小田伸一税理士事務所
税理士 小田伸一

所在地
北海道札幌市中央区北6番西27丁目1番21号301
URL
https://sodatax.tkcnf.com

『戦略経営者』2024年10月号より転載)