導入事例 CASE STUDY
大和不動産鑑定株式会社 様
統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例
DXで生産性向上に注力する
不動産鑑定業界のトップランナー
不動産鑑定の分野で日本の高度成長を支え、バブル崩壊やリーマンショックのハードルを越えながら、今また「不動産の総合コンサルティングファーム」として新フェーズに入った大和(だいわ)不動産鑑定。その成長の過程を、波多江裕之社長、野上哲専務、税務顧問の山下勝弘税理士・公認会計士に聞いた。
──創業は?
波多江裕之社長
波多江 1966年に大阪で創業しました。当時、日本は道路、港湾、ダムなどのインフラが未整備で、私有財産を公共用地に供する必要があったのですが、土地の補償金を支払うための根拠となる土地価格が明確ではありませんでした。そのため、国策として、不動産鑑定士が行う不動産鑑定評価という制度がつくられ、われわれのような企業も勃興してきたわけです。
──当時は公共事業が中心ですか。
波多江 顧客はお役所がほとんどでした。潮目が変わったのはバブル崩壊後です。不動産の証券化スキームを使い、暴落してしまった不動産マーケットを活性化する民間の取り組みがスタートしたのです。時流に乗り、この分野にうまく参入できたのが大きかったです。
──具体的には?
波多江 いわゆるJ-REITの運用会社からの不動産鑑定業務の受注です。J-REITとは上場不動産投資信託のことですが、当社のJ-REITにおける不動産鑑定のシェアは23%を占めるまでに成長しています。
財務管理体制を確立し東京に経営資源を集中
──時流に乗れたのはなぜ?
野上 公共事業は、年度末にならないと入金されないので、財務の健全化が必須でした。そこで、創業期からお世話になっていた山下会計さんの支援を得ながら1989年にFXシリーズを導入し、自計化(会計ソフトを導入し、自社で財務管理を行うこと)を行い、財務管理体制を整備。これがその後の成長のベースになりました。
山下勝弘税理士・公認会計士
山下 FXシリーズの黎明期に導入されたと記憶しています。パソコンを1人1台配布されたのも非常に早かったですね。
波多江 2000年代に入って、関西から関東へ経営資源を移管し始めました。整理回収機構(RCC)や預金保険機構などの不良債権処理の仕事を受けるなかで、東京に多くの鑑定評価のニーズがあることを知ったからです。当時はフル稼働でニーズに対応し、ビジネスにおける東京一極集中化の流れにうまく乗ることができました。また05年には、山下会計さんのサポートのおかげで、優良納税法人の表彰を受けるまでになりました。
──勝ち残ってきた秘訣は?
波多江 当初、全国展開している不動産鑑定会社のなかでもラジカルなほどに東京に経営資源を投入したのが当社でした。官から民へシフトするとともに、不動産鑑定以外の事業にも進出。事業領域を広げてきました。当時は営業活動を含め、本当にすさまじい働き方をしていたと思います。
──不動産鑑定以外の事業とは?
野上 1990年代、関西や福岡から開始した固定資産税の路線価付設業務は、07年に東京都の業務を受注し、全国展開を図っています。現在では、路線数ベースで全国の10%強の地方自治体のコンサルティングを行っています。
──そのほかには?
野上哲専務
野上 エンジニアリング・レポート(ER)を中心とする建築コンサルティング事業が伸びています。ERとは、建物の物理的状況や順法性、土壌などを調査した報告書のこと。不動産を証券化するにはこのERが必要となります。ERについては、不動産鑑定業界の中ではトップシェアを持っています。あわせて、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)認証コンサルティングなど、環境コンサルティング事業も成長中です。あとは、自社開発した固定資産評価管理システム『DACSUS』や蔭地計算システム『蔭武者』も市場から高い評価をいただいています。
山下 『蔭武者』(※)は2017年にTKCの相続税申告書作成システム(TPS8000)のオプション機能として採用されており、当事務所でも使わせていただいています。とても便利ですね。
野上 おかげさまで、毎年2,000以上の事務所にご利用いただいています。
※『蔭武者』…地番図や地積測量図をスキャナーで読み込んで、画地形状をなぞり、間口を指定することで、想定整形地を描画し、間口・奥行き等の計測、蔭地割合の算定が瞬時に行なえるシステム。
ペーパーレス化の推進で印刷枚数が3分の1以下に
──『FX4クラウド』では30もの部門に分けて管理されているとか。
野上 大きくは不動産鑑定、システム評価、ER業務を含むAS(資産ソリューション)、環境コンサルティングなど事業別に損益を出し、さらにそれを部署別、支社別に分けて重層的に管理しています。
山下 これだけしっかりとこまかく部門別管理を行う会社はなかなかありません。だからこそ、ここまで成長できたのだと思います。
──注目されている指標は?
波多江 生産性の指標として、人件費(外注費込み)当たり売上高を重視しています。これを部門ごとに算出して、過去からのトレンドを見ていくと、各部門の生産性が上がり基調なのか下がり基調なのかが一目で分かります。
──入力はどのように?
野上 自社開発の基幹ソフトに入力し、それを本社に集約して『FX4クラウド』に連携します。そのデータを、RPAを活用して自動的に独自の帳表に落とし込んでいます。いつでも最新のデータを見ることができるようになっており、それを役員会議や部長会議などの資料として、意思決定の材料にしています。
波多江 これからの経営はDXによって、いかに省力化して生産性を上げるかが重要です。当社ではペーパーレス化を徹底しており、その象徴ともいえるのが電子納品数で、19年は30件だったものが、23年には3,484件と急上昇しています。結果として、全社の印刷枚数は、15年の532万枚から22年には137万枚と4分の1近くに激減しました。
野上 『FX4クラウド』はもちろんですが、13年に導入した『PXまいポータル』もペーパーレス化に大きく貢献しています。導入前までは紙で渡していた給与明細書や源泉徴収票をウェブで安全に配布できるようになり、年末の扶養控除申告書や、今回の定額減税の申告書の作成もすべて『PXまいポータル』で実施しました。
また、旅費等の経費精算は『楽楽精算』(ラクス社)を使用し、そのデータを『FX4クラウド』に連動しているので、領収書などもペーパーレス化されています。
東京本社リフレッシュエリア
──今後はいかがでしょう。
波多江 不動産鑑定に対する社会的ニーズの中身は、時代に応じて変遷し複雑化してきており、今後も安泰とは言い切れません。そのために、固定資産税評価や建築・環境コンサルティングの分野を広げてきました。現在は全体の40%近くが不動産鑑定以外の事業です。今後も、この方向性を続け、“不動産の総合コンサルティングファーム”として成長していきたいと考えています。
最後に宣伝ですが、読者の方で「不動産購入時の資料がない」とお困りの方は、当社の『「不明」取得費査定サービス』をご利用ください。過去のデータベースなどからしっかり調査するので、概算取得費(売却価格の5%)を上回る適正な取得費を査定できます。利用には条件もありますが、譲渡益を圧縮できる可能性があります。
企業情報
東京本社オフィス
大和不動産鑑定株式会社
- 業種
- 不動産鑑定業ほか
- 創業
- 1966年3月
- 東京本社
- 東京都千代田区一ツ橋1-1-1
- 本支社
- 大阪本社、仙台、横浜、名古屋、
京都、奈良、神戸、北九州、福岡 - 売上高
- 約49億円
- 従業員数
- 364名
- URL
- https://daiwakantei.co.jp
顧問税理士 税理士・公認会計士 山下勝弘
山下会計事務所
- 所在地
- 大阪府大阪市天王寺区生玉前町3-3
- URL
- https://cpa-myamashita.tkcnf.com
(『戦略経営者』2024年8月号より転載)