導入事例 CASE STUDY
株式会社富士商会 様
左から髙木秀輝税理士、木村洋明社長、木村亮介専務、
横尾隆行監査担当
統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例
部門別の詳細な業績管理で
自社の経営課題を迅速に把捉
福岡県大川市を拠点に鋼材の販売・加工業を営む富士商会では、『FX4クラウド』の業績データを参考にしながら経営意思決定を行っている。同社の強みと緻密な業績管理の効用について、木村洋明社長、木村亮介専務、髙木秀輝顧問税理士、横尾隆行監査担当に聞いた。
──今年の3月に会社設立70周年を迎えたそうですね。
大川市内にある本社と倉庫(下)
木村洋明社長 1954年の3月に設立して以来、この大川の地で長きにわたって商いを続けてきました。もともとは鋼材、家具資材、機械部品など、多岐にわたる商品を扱っていましたが、時代の変化に合わせて徐々に取り扱い品目を変えていき、現在は鋼材、塗料、機械工具を中心にそろえています。ちなみに私は5代目で、リーマンショック直後の2009年5月に社長に就任しました。
──リーマンショックの影響は甚大だったのでは?
社長 受注量が目に見えて減少していき、この時期に創業以来はじめて赤字を計上しました。リーマンショック以降の2~3年は経営的に厳しく、苦しい状況が続きましたね。その後、業績はV字回復を遂げるのですが、その理由は、後ほど説明する在庫管理の適正化、配送品質のさらなる向上、鋼材加工の内製化など、難局を打開するための戦略を、全役社員が一丸となって実行したからだと考えています。
──アピールポイントを教えてください。
社長 二つあって、一つは突発的な注文にも迅速に対応できるよう、在庫管理と配送管理を適切かつ効率的に実施していることです。当社はリーマンショックを契機に、2~3年かけて滞留在庫の整理・処分に着手しました。現在はどの商品も常に適正在庫を維持しており、種類別に分けて商品を保管するなど、注文連絡後すぐに出荷できる体制を構築しています。また、当社ではトラックを10台以上所有しており、鋼材1本など少量の注文でも迅速にお届けするよう心がけています。
木村亮介専務 ちなみに、当社が拠点を置く大川市をはじめ、福岡県の筑後エリア、佐賀県東・南・北部、熊本県北部のお客さまには即日納品で対応しています。
──もう一つは?
社長 鋼材の加工を手がけていることです。当社では得意先であるメーカーの多様なニーズに応えられるよう、切る・削る・穴をあけるといった加工ができる高性能の機械を導入しています。鋼材の加工を内製化したことで、注文から納品まで迅速かつワンストップで対応できるようになり、さらに得意先の製造工程において工数が削減されるなど、顧客企業の業務効率の向上にも結びついています。
──鋼材加工を手がけるようになったのはなぜですか。
社長 一番の理由は家具資材の出荷数が減少していったことです。冒頭でも説明したように、かつて当社では家具資材を取り扱っており、主に大川市内の家具メーカーなどに卸していましたが、生活様式の変化や少子高齢化の影響などにより、徐々に得意先の廃業や事業撤退が相次ぐようになったのです。その一方で、当時鋼材加工のニーズが上昇傾向にあり、加工業者に外注に出す量が増えつつあったことから、18年に一念発起して商品のラインアップを鋼材関係に絞るとともに、加工業務を内製化するべく加工機の導入を決断したのです。
会計事務所の勤務経験を生かし業績データを経営判断に活用
鋼材の加工は富士商会の主力事業に成長
──加工業務の内製化を決断するにあたって、部門別の業績データを参考にされたと聞きました。
専務 もともと当社ではスタンドアロン版の『FX4』を活用しており、全社ならびに部門別の業績データを、経営判断を下すための参考情報として役立ててきました。『FX4クラウド』にアップグレードした後もこの姿勢は変わっておらず、設備投資や賞与の支給など、経営上の重要な意思決定については業績データを参考にしながら行っています。鋼材加工の内製化に舵を切ったのも、家具資材部門の低迷と鋼材部門の外注加工費の上昇が数字に表れていたから。数字は時に厳しい現実を突きつけてきますが、その分、早急に対策を立てることができるので、会社を成長に導くうえで詳細な業績管理が欠かせないと思います。
横尾監査担当 富士商会さまでは会議の場でも業績データを活用されています。例えば月に1度、役員・幹部社員・営業担当者が一堂に会して、業績の進捗確認と今後の打ち手を話し合う営業会議を開催されています。この会議では、《365日変動損益計算書》のうち、売上高から限界利益までを抜粋した資料を全員に配布し、出席者全員で意見交換されています。
──木村専務の発案で、役社員全員が一堂に会し、全社業績と部門ごとの業績を確認する場も設けたとか。
専務 はい。先ほど説明した営業会議とは別に、全役社員が出席する全体朝礼を月に1度開催しています。狙いは全員が自社ならびに自部門の業績に関心を持ち、モチベーションアップにつなげてもらうこと。そして、部門の垣根を超えたコミュニケーションの活性化を図ることにあります。かれこれ7~8年ほど継続しているでしょうか。全体朝礼では主に売上高・限界利益・経常利益など、主要な指標の実績と推移を毎月報告し、自社と自部門の現状について理解を促しています。
──ところで、専務は髙木秀輝税理士事務所の前身である松枝弘税理士事務所で、監査担当者として勤めていたそうですね。
専務 松枝事務所では、中小企業の黒字化を支援することの難しさを学びました。このときの経験は、経営に携わるうえで糧となっています。
適正な納税の積み重ねが「優良申告法人」の表敬に
優良申告法人として大川税務署長から
6回表彰されている
──大川税務署長から過去6回にわたって「優良申告法人」の表敬を受けていると聞きました。複数回表敬を受けている要因は何でしょう。
社長 「企業は社会の公器である」という松下幸之助の言葉にもあるとおり、ヒト・モノ・カネなどの経営資源は社会から預かっているものですから、獲得した利益の一部は社会に還元しなければならないというのが、当社の考えです。この考えのもと、日々の記帳をきちんと行い、帳簿や書類を適切に保存し、申告と納税をもれなく実施する。その積み重ねが、優良申告法人の表敬に結びついているのではないでしょうか。適正に申告・納税できているのは髙木先生や横尾さんの日ごろの支援があってのことですから、おふたりの存在は本当に心強いです。
髙木税理士 富士商会さまは自己資本比率が高く、実質無借金経営を継続されるなど、「堅実経営」が特長の会社です。木村社長の説明にもあるとおり、会計処理を適時かつ正確に行っておられるので、当事務所としても自信を持って書面添付ができています。また、「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)で各種帳表を開示するなど、金融機関との関係構築も重視しておられます。
──今後の抱負を。
社長 いろいろありますが、まず実現したいのが倉庫と本社の集約です。当社は本社のほかに倉庫を2拠点構えていますが、業務効率をさらに上げるべく、これらを1カ所に集中させたいと考えています。現在は移転先の土地を探しているところで、私が社長であるうちに土地を確保し、移転を実現したいですね。
※1…優良申告法人
申告納税制度の趣旨に即した適正な申告と納税を継続し、他の納税者の模範としてふさわしいと認められる法人
※2…書面添付制度(税理士法第33条の2)
申告書作成のプロセスにおいて、計算、整理、相談に応じた事項を明らかにした書面を申告書に添付し、税務の専門家である税理士が、その申告が誠実に行われていることを示す制度。この書面添付を行うことで、顧問税理士が税務署から意見聴取を受けた上で企業への税務調査が省略されることがある。
企業情報
倉庫には各種鋼材が
整然と保管されている
株式会社富士商会
- 業種
- 鋼材販売、加工業
- 設立
- 1954年3月
- 所在地
- 福岡県大川市大字榎津300-1(本社)
- 売上高
- 24億円
- 従業員数
- 31名
- URL
- http://www.fujishoukai.jp
顧問税理士 税理士 髙木秀輝
髙木秀輝税理士事務所
- 所在地
- 福岡県大川市大字向島1760-2
- URL
- https://takakikaikei.tkcnf.com
(『戦略経営者』2024年8月号より転載)