導入事例 CASE STUDY
株式会社福岡今岡 様
中央右が今岡孝之社長。左端から宮本ゆり監査担当、
平川浩紹顧問税理士
統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例
緻密な財務マネジメントで
社員の「経営者感覚」を養う
国内4カ所の百貨店で時計売り場を運営している、福岡今岡。豊富な品ぞろえと確かな商品知識を武器に、着実な成長を遂げてきた。TKCシステムによる自計化を契機に中期経営計画を策定し、月次予算を念頭に置いた経営に取り組んでいる。今岡孝之社長は「幹部社員が経営者目線で目標達成のための打ち手を検討できるようになった」と語る。
多彩なイベントを主催し「接点づくり」に注力
大丸福岡天神店東館エルガーラ4Fにある売り場
──大丸福岡天神店で運営されている時計売り場は「九州最大の時計フロア」とうたわれています。
今岡 国内外約40ブランドの腕時計を常時2,000点超取り扱っています。ブランド数、商品点数とも西日本最大級であると自負しています。
──業況はいかがですか。
今岡 コロナ禍以降、資産アイテムとしての腕時計の価値が高まっています。インバウンド需要も回復しつつあり、世界水泳選手権が昨年福岡で開催された際には、当店で腕時計を購入する選手や関係者も見られました。インバウンドのお客さまには、メイドインジャパンの商品が特に人気です。
──円安も追い風ですか。
今岡 スイスをはじめ海外ブランドの商品を数多く仕入れているため、一概に追い風になっているとは言えません。ステンレス等の原材料価格高騰を受け、商品が値上がりしているのが実情です。
──数多くのブランドの時計を扱われていますから、接客力が肝になりそうです。
今岡 時計というアイテムで面白いのは、価格帯が非常に幅広いところです。数億円する高額商品もあれば、100円ショップで購入できるものもある。きめ細かい接客を通して、時計の付加価値を高めるのがわれわれの役割であると考えています。
スタッフに何より求められるのは、豊富な商品知識です。商品ラインアップごとの特徴や性能はもちろん、ブランドの歴史を知ることが欠かせません。スタッフは海外での研修に参加し、ウオッチメーカーの工場見学などを通して知識を習得。ウオッチコーディネーター、時計修理技能士資格の取得を目指しています。また、時計の最新トレンドに関しては、例年3月末にスイスで開催される新作モデル発表会を視察して学んでもらっています。
──2014年の社長就任以降、どのような取り組みに注力されてきましたか。
今岡 先にふれた時計の付加価値向上と、顧客との接点づくりです。商品を購入されたお客さまに改めてお会いするのは、メンテナンスか修理時である場合がほとんど。そうした慣習が果たして良いことなのか、疑問に感じていました。新たな施策を社員と話し合うなかで挙がったのが、顧客が腕時計をつけて気軽に参加できる「場づくり」でした。
──具体的には?
今岡 近年はいろいろなイベントを積極的にしかけています。先日は福岡巿内のクラブを借り切って、ある海外ブランドの腕時計をお買い求めいただいた顧客向けのパーティーを開催しました。あるいは、ホテルの最上階フロアを借りて、お得意さまを対象とした花火観賞会を開いたこともあります。イベントではワインやシャンパン、チョコレートといったブランドの発祥地にちなんだ特産品を提供したりしています。
業績を幹部社員と共有して店長会議で将来を話し合う
インバウンドに人気の国産腕時計
──平川浩紹税理士と顧問契約を結ばれたいきさつを教えてください。
今岡 平川先生と顧問契約を結んだのは2018年です。ほぼ同時期に『FX2』(戦略財務情報システム)の活用を提案され、利用しはじめました。
平川 労務顧問をされている社会保険労務士の先生から福岡今岡さまの年末調整業務を依頼され、今岡社長と知り合いました。『FX2』による自計化に加えて、業績の予実分析を行うべく、中期経営計画の策定にも着手しました。
──自計化する前はどのような経理体制でしたか。
今岡 手書きで起票した伝票を以前お世話になっていた顧問税理士の方に渡して、翌々月ぐらいに試算表を提供してもらうという流れでした。われわれが年間の業績を知るのは決算申告後。伝票を起票している時点では、業績がどのように推移しているのかわかりませんでした。自計化を機に、月次巡回監査を経た正確な数字を把握できるようになり、会計事務所との関係が点から「線」に変わったと感じています。
宮本監査担当 現金主義から発生主義への変更をはじめ、経理体制が劇的に変化したにもかかわらず、経理担当の方々が勉強熱心でシステム操作に早く慣れてもらえました。今では仕訳をスムーズに入力いただいており、詳細な業績分析に役立てられています。
──『FX2』を導入されてから社内会議を定期的に開催されていると聞きました。
今岡 毎月20日前後に各店の店長、副店長、一部マネジャー、そして監査担当の宮本さんをメンバーとする「店長会議」を開いています。直近のイベントの成果や呼び込み状況などを確認した後、店舗別の業績目標に対する進捗報告を受け、打ち手を話し合っています。以前はこうした業績を確認する機会はなく、そもそも議題にのせられる業績データもありませんでした。
──経営計画はどのように策定しましたか。
今岡 平川先生と宮本さんに支援いただきながら経営理念をまず考え、SWOT分析を行いました。最初の中期経営計画が完成するまでに平川先生と重ねた打ち合わせ回数は、15回ほどにのぼります。計画期間は3カ年で、年間目標を月次予算に落とし込み、TKCシステム上で予実対比を行っています。
──現在は『FX4クラウド』を利用されています。
今岡 ちょうど1年前に『FX2』から移行しました。店長、副店長にノートパソコンを貸与しており、彼ら全員が『FX4クラウド』を起動して、時間や場所を問わず全社業績を確認しています。私は会社の方向性を示すことはできますが、目標を達成できるかどうかは現場のスタッフにかかっています。そのため、幹部社員と業績を共有し、意思決定に役立てる仕組みはとても大切なんです。
4店舗別の業績資料をMR設計ツールで作成
売り場併設の商談スペース
──注目されている業績指標は?
今岡 福岡今岡をはじめ、グループ3社で4店舗(福岡県内2店舗、長崎県内1店舗、山口県内1店舗)を運営しており、「マネジメントレポート設計ツール」を用いて、4店舗の《変動損益計算書》をひと目で比較できるオリジナル資料を作成しています。その中で最も注目しているのは在庫回転率です。ブランドごとの売り上げと在庫点数を確認することで、売れ筋やトレンドから外れている商品などを把握でき、品ぞろえに反映させています。それと広告宣伝費ですね。年間予算を念頭に置き、効果的なタイミングでフェアを企画するなどしています。
──幹部社員の方々に業績を公開され、変化はありましたか。
今岡 店長会議では3カ月ほど先の計画まで話し合えるようになりました。一人ひとりが経営者目線で業績をとらえられるようになったのは『FX4クラウド』のおかげだと感じています。
宮本 店長会議に出席されている幹部社員の方々は、目標と月次業績との間で差異の大きい勘定科目がある場合、『FX4クラウド』で仕訳までドリルダウンし、原因を追究した上で会議に臨まれています。ある店長の方が、「タイムリーな打ち手で利益率が目に見えて改善するなど『FX4クラウド』を利用して世界が変わった」と話されていたのが印象的でした。
──抱負をお聞かせください。
今岡 日々の生活にいっそうの楽しさやワクワク感を提供するために、腕時計にかぎらず宝飾品も取り扱っていきたいと考えています。幹部社員が経営者意識を持ち、『FX4クラウド』をいっそう使いこなして意思決定できる体制に磨きをかけるのが目標です。
企業情報
株式会社福岡今岡
- 業種
- 時計小売り
- 設立
- 1976年10月
- 所在地
- (本社)福岡県福岡市中央区舞鶴2-1-10
天神フロントスクエア8F - 売上高
- 22億円
- 社員数
- 34名
- URL
- https://watch-fukuoka-tenjin.com/
顧問税理士 平川浩紹
税理士法人バディ 平川浩紹税理士事務所
- 所在地
- 福岡県春日市春日原東町1-2 河波ビル301号
- URL
- https://www.tax-h.jp/
(『戦略経営者』2024年2月号より転載)