京浜ラムテック株式会社 様

左から経営企画室 星野淳子氏、影山勇気CFO、松本成史CEO、
立花美果税理士、経営企画室 中田さおりリーダー

統合型会計情報システム(FX4クラウド)・
海外ビジネスモニター(OBMonitor) ユーザー事例

オンリーワン技術と特許戦略で
ワールドワイドに製品を供給

真空成膜装置事業、FSW(摩擦攪拌接合)事業、マテリアル事業の3本の柱がいずれも好調な京浜ラムテック。ここ数年の右肩上がりは、技術力の高さが世界のマーケットで認められ始めている証左である。同社の松本成史CEOと影山勇気CFOを中心に話を聞いた。

──歴史を教えてください。

FSW(摩擦攪拌接合)

FSW(摩擦攪拌接合)

松本 先代が1972年に立ち上げた会社で、当初はベアリング部品の製造・販売が主力業務でした。その後、産業機械の部品加工へと業容を移し、2003年には、日本でいち早くFSW(摩擦攪拌接合)装置を導入して、液晶パネルや半導体製造装置の心臓部まわりの部品加工を受託するようになりました。

──FSWとは?

松本 金属同士を接合する技術の一つです。英TWI社とライセンス契約している技術で、接合ツールを回転させながら摩擦熱で母材を軟化させ、攪拌して接合するものです。ターゲットを電子ビームで溶かして接合する従来のやり方では気泡が出たりしてしまいますが、FSWでは、そのようなこともないので歪や欠陥が少なく、強度も上がります(図1参照)。

──さらに2013年には装置分野にも進出されました。

図1

図1

松本 それまでは装置メーカーからの受託加工でしたが、自社製品を世にリリースしたい思いで、従来の水平対向型ではなく4面対抗型の「低ダメージカソード」を開発し、これを搭載したスパッタリング(※)装置の製造・販売を開始しました。

──どういったものなのでしょうか。

松本 簡単に言うと、粒子を直接ぶつけると基板にダメージが出てしまうので、4面から粒子と粒子をぶつけて微細化された粒子を吹き付けることで均一な成膜が可能となり、結果としてダメージを極小化する技術です(図2参照)。これは当社独自の技術であり、特許も10件以上、ワールドワイドに取得しています。

──ニーズは?

図2

図2

松本 有機ELや次世代太陽電池などのニーズが大きいです。有機材料はダメージを受けやすく、これまでの成膜プロセスでは対応しにくい面があります。
 それと、6年くらい前、次世代太陽電池を研究している海外の大学のドクターたちが、パネルを成膜していく過程で、どうしても壊れてしまうという問題を抱えていました。そこで、当社の低ダメージカソードを試したところ、ノーダメージだったということで、多数の論文に引用されるなど高い評価をいただきました。ちなみに、当社のR&Dセンターでは、日々6名の社員が技術開発に取り組んでおり、特許戦略を駆使し独自技術を守りながら、他社より1歩も2歩も先んじた、オンリーワンの製品づくりを行っています。

──すごいですね。

松本 そうした背景があって、2018年、米国の欧米セールスマーケティング支社としてサテライトオフィスを設け、ワールドワイドに販促をかけた結果、すでに米国やドイツをはじめ中国やシンガポールからも引き合いがきています。

※スパッタリング…薄膜を形成するための技術のひとつ。金属などに不活性ガスを吹きつけ、それにより弾き出された分子を目的物の表面につける。均一で高品質の膜が形成され,半導体の製造過程などで用いられる。

 

管理会計の要素を取り入れ個人目標にまで落とし込む

──海外展開ということでは、中国にも進出しておられます。

円筒ターゲット

円筒ターゲット

松本 2016年に蘇州工場を現地法人として設立しました。これまで築き上げてきた加工技術やノウハウを用いて、ものづくりをすると同時に、平板型のものよりも使用効率や生産性の向上が期待できる「円筒ターゲット」の生産技術指導を現地サプライヤーに行い、日本の取引先さまに提供しています。

──その蘇州工場を適切に管理するためにTKCの海外ビジネスモニター(OBM)を導入されました。

影山 その前段階の『FX4クラウド』の設計と運用からご説明いたします。私が入社して3年ですが、それ以前は当社ではまだ部門別管理を行っていませんでした。また、受注管理ソフトと会計ソフトの連動もなされず、前月の締めが翌月末、さらに経営陣への報告は翌々月と迅速な業績管理ができていない状況でした。

──現在とは大きく異なる体制です。

影山 はい。私としてはとにかくタイムリーさと管理会計の要素を取り入れて、会社の内実が手に取るように分かるようにしたかった。そのために、『FX4クラウド』を導入して、大きくFSW部門、装置部門、マテリアル部門に分け、その下にプロジェクト別、工場別業績をぶら下げるという階層別管理ができるようにしました。さらに『FX4クラウド』の仕訳連携機能を使って受注管理ソフトと連動させて効率化も行いました。

星野淳子氏(経営企画室 経理担当) 毎月2,000件の伝票数がありますが、受注管理と会計の連動によって、いまでは仕訳の手入力は500件くらいに納まっており、とても助かっています。フィンテック機能も便利ですね。

影山 あと、緻密な会計ソフトの設計を行うことで予算もつくれるようになりました。3年前、10億円ほどの年商だったのですが、なんと当社には予算がありませんでした。なんとなく儲かってきた会社なので予算なしでも50年会社は続いてきましたが、これはとてもリスキーです。比較できるちゃんとした会計ソフトの設計があってこその予算の作成が可能になります。いまでは各部門別に予実管理を行い、部門ごとの目標をたて、さらにはそれを個人のKPI評価にまで落とし込むことができています。もちろんPLだけではなくキャッシュフローベースまで見ていますので、適正な賞与原資のもと、適正な評価により賞与を支払えるようになり、従業員満足度も上がっていると思います。

まったく業績が見えなかった海外現法を“可視化”する

──「なんとなく儲かっている」という感覚は蘇州現法にもありましたか。

低ダメージカソード

低ダメージカソード

影山 はい。蘇州現法は、総経理と経理がいて、そこに経理コンサルタントがついていて、完全に「おまかせ」の状態でした。リアルタイムの業績どころか、1年に1度、中国の様式での分かりにくいデータが送られてくる、という感じでした。

──OBM導入のきっかけは?

影山 こちらから日本同様の月次報告をお願いしたら、「毎月プラスだ」と。「この売り上げでプラスは何かおかしいな」と思ってよくよく聞いてみると、営業利益はマイナスだけど、補助金でカバーしている現状が確認されたのです。そのような時に横浜銀行の担当行員からTKCとの共催セミナーにお誘いいただいたことをきっかけにOBMの存在を知り、さっそく導入に動きました。

──ソフトはOBMありきだった?

影山 『FX4クラウド』の勘定科目に合わせたいとの思いが強かったから他社ソフトは考えませんでした。蘇州現法は中国の会計ソフトを使っていて、かつ、中国独特の科目の並びでしたので分かりにくかったですね。

──導入効果は?

影山 『FX4クラウド』に合わせて、現地会計ソフトを会計データ化することで、いまでは『FX4クラウド』とまったく同じ感覚で蘇州現法の業績をみることができるようになりました。「一つの部門」という扱いで国内同様に状況がタイムリーに分かるようになりました。

──月次報告会などは?

影山 現地の役員と毎月行っています。確固たる共通言語の数字で語れるようになったので、その数字を切り口に営業活動だけではなく、会社運営に至るまでいろいろな事が分かるようになり、お互い納得感のある有意義な会議となっています。
 すでにOBMは蘇州現法とのコミュニケーションツールとして十分に機能していると思います。なくてはならないツールです。

コンサルタントの眼

税理士 立花美果 / コンパッソ税理士法人

 当初、京浜ラムテックさまはFXシリーズを導入しておらず、私が伝票を「財務エントリ21」(※)にひたすら打ち込んでいました。しかし、次第に規模が膨らみ、伝票枚数も300枚くらいになったころ、『FX2』を導入。ただ、茨城工場の資料がこちらに届いてから集計する必要があったため、翌月末にやっと締めることができて、そのあとに経営陣に報告。1カ月半のタイムラグがありました。その後、さらに会社は大きくなり、リアルタイムで入力しないと翌月の状況把握が難しくなったので『FX4クラウド』を導入いただきました。 

 導入後は、工場での入力も一部可能になりましたし、『PX4クラウド』との連動も行いつつ、同社経理スタッフと一緒になって経理体制を整備していきました。おかげで、今年のように5月決算にもかかわらず「翌期の予算編成確定のため6月10日にはざっくりとした決算書を上げてください」という要望にも対応できるようになりました。

 京浜ラムテックさまは、先代から現社長と、用意周到な準備のもとにビジネスを展開していく気構えをもっておられます。そのためには、先々を見据えた予算の作成が必要になってくるし、リアルタイムの現状把握も求められます。現状はハイレベルな経理のもとでそれが対応出来ています。今後とも、TKCをフル活用していただき、さらに発展していかれることを期待しています。

※「財務エントリ21」…TKC会員事務所が関与先企業の仕訳を毎月入力し、月次の試算表を作成するシステム

企業情報

蘇州工場

京浜ラムテック株式会社

業種
電子部品製造
設立
1972年7月
所在地
神奈川県横浜市港北区新横浜3-23-3
売上高
約22億円
従業員数
88名
URL
https://www.ramtech.jp

顧問税理士 コンパッソ税理士法人
税理士 立花美果

所在地
神奈川県川崎市中原区今井上町1-34
URL
https://compasso.jp

『戦略経営者』2023年10月号より転載)