導入事例 CASE STUDY
株式会社スマイル・ライフ 様
統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例
高齢者・障がい者支援事業を支える
部門別管理と素早い業績把握
兵庫県神戸市内の6拠点で訪問介護事業、障がい者グループホーム事業を展開するスマイル・ライフは、2014年10月に『FX4クラウド』を導入した。税務顧問の園田敦子税理士を交え、TKCシステムの活用法や経営戦略について同社の荒田裕彦社長に聞いた。
──事業概要をご説明ください。
荒田裕彦社長
荒田 居宅介護支援事業と訪問介護事業、通所介護サービスをメイン事業とし、神戸市内に「神戸介護支援会スマイル・ライフ垂水ステーション」「同須磨ステーション」「音の羽デイサービススマイル・ライフ」の3拠点を展開し、活動してきました。さらに2020年には障害者グループホーム事業も開始し、障がい者グループホーム「音の羽」と「音の羽Ⅱ」をオープン。8月には3棟目となる「音の羽Ⅲ」の利用を開始する予定です。
──グループホームの特徴は?
荒田 残念ながらこの業界では、古い建物に最低限のリフォームを施しただけで「やってあげている」という感じを受けざるをえないグループホームが少なくないのが現状です。家賃を低く抑えることはできますが、やっぱりそうしたホームではなかなかくつろいで暮らすのは難しい。厳しい支援員が目を光らせていて緊張してしまうような空間ではなく、入居される障害者の方が、実家のようにくつろげるホームにしたいと考えています。そのためにはまず私自身が住んでみたいと思えるような内装や設備の充実を心掛けています。
──サービス面ではいかがでしょう。
荒田 当たり前のことを当たり前にすることを心掛けています。例えばグループホームでは電話をかけても支援員が作業中で電話に出られないことも珍しくないのですが、当社ではそうしたことのないように徹底しています。またサービス管理責任者を含めベテランスタッフが多く、安心して業務を任せられるのも当社の優位性の一つになっています。
──参入して2年ですが、感想はいかがですか。
グループホーム「音の羽」(上)
グループホーム「音の羽Ⅱ」(下)
荒田 入居者の方には喜んでいただけているのに加え、ご家族や関係機関の方からも大変評価していただいており、満室の状況が続いています。障害者の方を支えているご家族が高齢の場合も多く、「親亡き後にどうするか」という問題は当事者にとって切実ですが、例え一人になっても自立して暮らせる住まいを提供するこの事業は非常に社会的意義が高いと感じています。住宅地の中で雇用を生むこともできるし、中古住宅の再構築にもつながりますからね。また入居者の方の外出介助サービスもすぐに提供できるなど、従来から展開してきた訪問介護事業とのシナジーも生まれています。
──最初は一事業部門だったそうですね。
荒田 父親が1989年に設立した関西物流という会社の一事業部門として発足したのがはじまりです。関西物流に私は98年に入社したのですが、業務請負や人材派遣分野の先行きに不安を感じていたところ、2000年の4月から介護保険制度が始まることになり、将来性を感じ介護事業に参入しました。この分野に経験も知見もないまったくの素人でしたが、ヘルパーさんやケアマネージャーなどの人材を派遣する訪問介護ビジネスでこれまでのノウハウを生かせると感じたのです。
──組織づくりに苦労されたとか。
荒田 介護事業に参入した当初の私はまだ30そこそこで経営のことなどまったく分かりませんでした。従業員を増やし、神戸市内に拠点を相次ぎ新設するなど拡大路線を突っ走ったのです。事業単体の売上高はすぐに3億円に達しました。しかし決算ではまったく利益が出ていませんでした。そうこうするうちに主力スタッフが数名ごっそり退職してしまう事態に陥ります。組織の内部崩壊ですね。そこではじめて組織の重要性を痛感し、内部体制の充実を図りました。会社に残ってくれたスタッフに部長職などの役職をつけ、ピラミッド型の役割分担、職務分掌をきっちりと定めました。
──人材活用についてはどのようにお考えですか。
荒田 介護報酬が一律に決まっているこの業界では、なかなか企業ごとの差別化が難しい。では何を競争力の源とすればよいのでしょうか。詰まるところ、人間力で勝負するしかありません。そこで最近では、少しでも気持ちよく働いてもらえるようオフィスの環境を整備したり、月に1回全スタッフが一堂に会するミーティングを開き意見を出してもらったりなど、社員満足度をいかに高めるかに心を砕いています。待遇面でも福祉・介護職員処遇改善加算制度にともなう処遇改善金を給与にプラスしています。
半日かかった資料作成がわずか数秒で完了
──園田先生に税務顧問をお願いした経緯について教えてください。
荒田 以前は大阪の会計事務所と契約をしていましたが、月に1度試算表を送ってもらうだけで経営についてなかなか意見交換できる機会はありませんでした。そんな悩みを私が所属する中小企業家同友会の知人の経営者に打ち明けたところ、「うちの会社の顧問税理士の先生は素晴らしいから一度会ってみたら」とすすめられたのが園田先生です。税理士の方と話すときには遠慮気味に身構えてしまうことがあるのですが、園田先生はまったくそんなことはありませんでした。何でも気さくに話ができる人柄で、質問にも丁寧に回答していただけるので、決断に対する迷いはありませんでした。
園田敦子顧問税理士
園田 ありがとうございます(笑)。はじめに資料を拝見したときに、規模がそれなりに大きく、勘定科目の数も多かったので、部門別管理や変動損益計算書の活用で大きなメリットが生まれると感じました。荒田社長から「よりタイムリーに業績を確認したい」という要望があったのに加え、経理担当の方のスキルが高くしっかりとした入力をされていたこともあり、すぐに『FX4クラウド』をご提案しました。導入にあたりとにかく意識したのは、経理業務の効率化と時間短縮による経営スピードの向上ですね。
──部門別管理はどのように?
園田 訪問介護ステーション2拠点、デイサービス1拠点、グループホーム2拠点と施設ごとに部門を立て、さらにその部門の下に重層的に部門を設け管理できるような設計にしています。部門別管理のほか、マネジメントレポート(MR)設計ツールや仕訳連携機能などの活用による経理業務の効率化、生産性の向上も実現しています。
──効果はどうですか。
グループホーム「音の羽Ⅲ」
荒田 タブレットなどですぐに業績が確認できる点が気に入っていますね。TKCシステムに切り替える前は、毎月月末に行っている業績会議で使用するための資料を半日かけて作成していました。しかも資料のもととなる数字に追加や修正がある場合は、自作の資料もそれに応じて作成しなおさなければならないなど、かなりの負担になっていたのです。それが現在では自由に帳表をデザインできるMR設計ツールによって、ものの数秒で資料をつくることができるようになりました。とても楽になったと感じています。データ入力業務の省力化によって月次決算の早期化が実現したのもうれしく思っています。
──一番気になるところは?
荒田 この事業の特徴ですが、入居者数が一定で落ち着けば毎月の収入にほとんど変動はありません。やはり一番気になるのは人件費の部分ですね。労働生産性が低下しないように常に気を配っています。
──今後実現していきたいことは?
園田 給与計算の業務効率向上のため策を練っているところです。介護・福祉業界は特殊な計算が必要になりますので、既存のソフトウエアと『PX2』を組み合わせた方法を検討しています。このほかインターネットバンキングからデータを自動受信する「銀行信販データ受信機能」の活用や電子取引データの保存や管理なども検討していきたいですね。
荒田 将来的にはキャッシュフローの予測を含めた中期経営計画の作成にチャレンジしたいと思います。事業面ではグループホームを少なくとも合計入居者50人程度まで拡大し、事業単体で2億円くらいの売り上げを達成したいと考えています。また実は飲食業界で働いていた長男が昨年11月に当社に入社しました。事業承継の受け渡す側と受け継ぐ側ではやはり引き渡す側の責任がより重たいので、いかにいい形で事業承継を進められるか本格的に検討していかなければと考えています。
企業情報
本社外観
株式会社スマイル・ライフ
- 設立
- 2009年6月
- 所在地
- 兵庫県神戸市垂水区福田5-5-22
- 売上高
- 約1億8,000万円
- URL
- http://www.smilelife2000.com/
顧問税理士 園田敦子税理士事務所
所長 園田敦子
- 所在地
- 兵庫県神戸市中央区琴ノ緒町2-2-7 上田ビル4階
(『戦略経営者』2022年8月号より転載)