導入事例 CASE STUDY
株式会社ナカシマホールディングス 様
統合型会計情報システム『FX4クラウド』
『TKCモニタリング情報サービス』 ユーザー事例
積極的なディスクロージャーで
金融機関からの信頼を獲得
創業4年目ですでにグループ売上高38億円に達したナカシマホールディングス。物流業界のレジェンドとも評される中島祥輔代表取締役社主、税理士法人下田総合事務所の下田泰寛CEO・税理士、小笠原雄税理士に、TKCシステムを活用した業務の効率化や金融機関への積極的な情報開示について聞いた。
3PL事業強みに再出発から急成長
──1960年代から物流ビジネスに携わり、2018年に今の会社を立ち上げたとお聞きしています。
中島祥輔代表取締役社主
中島 20歳のときに物流会社を旗揚げし、「若さを感じられる名前にしよう」と当時存在したプロ野球球団の「国鉄スワローズ」にあやかって社名にスワローの文字を入れました。今でこそ当たり前になりましたが、東京の物流会社でカタカナの社名をつけたのは私がはじめてです。物流だけではなく、倉庫や不動産事業にも幅を広げ成長し、株式公開寸前まで社長を務めました。
しかし諸事情があり上場を前に辞め、個人で株を所有していた企業をまとめて新しく立ち上げたのがナカシマホールディングスです。ゼロからのスタートでしたが、50年以上のキャリアを生かし4年目で売上高38億円まで拡大することに成功しました。自分がかつて開拓した取引先からの依頼も次第に増えてきていますし、苦楽を共にしたスタッフも少しずつ当社に入社してきてくれるようになっています。グループ全体の売上高は来年には50億円を突破する見込みです。
──再出発からの成長スピードが速いですね。
中島 川上から川下まで、つまり生産工場から小売店舗まですべての物流を行い、商品管理や検品、出庫作業などをトータルで請け負う3PL事業を得意としていたので、倉庫を確保するまでなかなか売り上げが伸びませんでした。
しかし銀行に日参しながら手を変え品を変え事業計画を説明し、段階を踏んでコツコツと実績を積み重ねていった結果、ようやく銀行からの融資が決まったのです。これも創業して3年がたち、着実に売り上げが伸びたからでしょう。見通しだけではなかなか銀行は融資をしてくれませんからね。
銀行は一時期企業の相談に見向きもしない時期がありましたが、現在は少しずつ資金を出してくれるようになりました。資金調達をもとに栃木県に倉庫を建設し、先月ヤマト運輸に配送センターとして貸し出しを開始したところです。
──取引先にはどんなところがありますか。
中島 物流企業の経営者としての私は、イオングループの事業拡張の歴史とともにありました。おんぶにだっこといってもいいくらいです。しかし現在はドラッグストアが主流になりつつあります。とくに東京のようなビルインタイプの店舗ではなく、サッカー場のようなだだっ広い駐車場を持ち、低価格商品を大量にさばく郊外型店舗の力が年々強くなっています。
私たちが売上高100億円という強気の事業計画を表明しているのは、取引先であるドラッグストア各社の事業計画が軒並み高成長を続ける見込みだからです。
──新グループ設立後に子会社各社の事業改革を実行したとか。
中島 個人で株式を所有していた7社のうち、赤字だった会社をすべて黒字化することに成功しました。やり方は極めてシンプルです。トラック1台1台のスクラップ&ビルドです。瞬間的には売上高は落ちますが、営業努力で取り戻せばいい。実際どの会社も売り上げをリカバリーし、今でははるかに大きな数字を達成しています。
同社グループの保有車両
──先進的な技術の導入も進めているとお聞きしました。
中島 私の信条は「悪いものはやめる、新しくて良いものはどんどん取り組んでいく」こと。取引のあるリース会社から提案があり、ソフトバンクが開発したAI搭載通信型ドライブレコーダー「ナウト」を2018年から導入しています。これはドライバーの目線を監視し、注意が散漫になったり居眠りの兆候などを察知してブザーを鳴らす先進的なシステムで、インターネットを通じ事務所の端末と常時連動しています。各ドライバーの運転の様子や事故が発生してしまったときの原因などを追うことができます。効果を感じるのはこれからだと思いますが、従業員には「事故が少なくなれば保険料などが安くなる。そのうち半分は会社、残り半分は従業員に還元する」と宣言しています。
フィンテック活用などで経理業務の自動化を実現
──『FX4クラウド』を導入した経緯について教えてください。
中島 下田先生が他の税理士事務所に勤務していたときから見ていただき、独立されて事務所を立ち上げた後も引き続きお世話になっています。下田先生が独立されたほぼ同時期に以前経営していた会社で上場を検討することになったのですが、その際下田先生から「上場の準備を進めるにあたってTKCシステムを導入すべき」とご提案いただいたので、他社ソフトから『FX4クラウド』への切り替えを決めました。
──『TKCモニタリング情報サービス』(MIS)の活用もされているとか。
下田泰寛CEO・税理士
下田 ナカシマホールディングスさんは銀行員OBの方が顧問を務めているなど、銀行との関係が深い会社なのが特徴です。そこで中島社主にMISの話をしたところ、銀行OBの方からの「導入すべきだ」という提言もあり、月次試算表提供サービスを通じたより積極的な情報開示に取り組むことになったのです。これによって銀行からの信頼は一気に高まったと思います。黒字転換も果たし、借り入れもスムーズに行えるようになりました。新しいものは積極的に取り入れるオーナーの姿勢が生んだ結果だと思います。
中島 MISは非常によいサービスだと思います。決算を待つことなく、銀行が常に会社の最新の資料を持つことができますからね。業績が悪いときは数字の公開に消極的になりがちですが、私は会社のデータはすべてディスクロージャーしたほうがいいと思っています。
──業務の効率化についてはいかがですか。
小笠原雄税理士
下田 新しい機能をご提案するとどんどん取り入れていただけるので、TKCシステムはほぼフル活用の状況です。インターネットを利用して金融機関から取引データを自動受信する「銀行信販データ受信機能」はもちろん、電子取引データの保存が行えるサービスもいち早く利用を始めました。『PX4』との連携、請求書データとの連携など、業務に占めるかなりの割合で自動化を実現しています。また「MR設計ツール」も活用しており、グループ各社の試算表を横並びで確認できる資料も独自に作成しています。
小笠原 ナカシマホールディングスさんはグループ会社が多いうえ、グループ内で債権債務の発生する内部取引があります。そのため、全体として儲(もう)かっているのか儲かっていないのか分かりづらいときがあり、また銀行からもグループ間の債権債務内部取引を消去した財務資料を作成してほしいという要望がありました。そうした資料も『FX4クラウド』では一瞬でつくることができるので、金融機関への対応という点で非常に効果が高いと思います。
トラック1台ごとの管理をシステムで実現するのが目標
──今後の抱負を。
中島 だいぶデジタルの活用は進んできましたが、目指すゴールはまだ先だと思っています。例えば現在当社は所有している300台以上のトラックについて、1台ごとの収支をまとめた表を毎月手作業で作成しています。どの車両がどこの現場で仕事をしているか、運転手は誰か、燃料費はどのくらいかかっているか、利益をどれくらい生んでいるか──経営は病気の手術と一緒で、こうした細かいデータを常にチェックし、悪い部分を取り除いていかなければなりません。そのためにはまず数字を正確に把握することが大切です。この車両1台ごとの収支管理をTKCシステムで実現できれば鬼に金棒だと思います。
──事業の方向性についてはいかがですか。
中島 私の経営の原点は不動産だと思っています。物流事業は、今日はうまくいっても明日はドライバーがうまく手配できなかったりなど変動リスクが大きい。一方倉庫などの不動産は一度つくってしまえば人件費もかからないし長期契約も可能です。トラックをもとにしたビジネスに比べ金額も大きく、借り入れをしてレバレッジを効かせることもできます。こうしたことを考慮し、事業全体で物流の比率を下げていくことを目標にしています。
企業情報
栃木県上三川町の新倉庫外観
株式会社ナカシマホールディングス
- 設立
- 2017年6月
- 所在地
- 東京都江戸川区西葛西6-8-1
- 売上高
- 約38億円(グループ合計)
- 社員数
- 331名
- URL
- https://www.swallowgroup.co.jp/
顧問税理士 下田泰寛
税理士法人下田総合事務所
- 所在地
- 東京都千代田区神田佐久間町2-24
- URL
- https://shimoda-tax.jp/
(『戦略経営者』2022年5月号より転載)