導入事例 CASE STUDY
株式会社イゲタ金網 様
寸法確認を丁寧に行う
統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例
109種類もの定尺品を製造する
金網メーカーが支持される理由
ものづくりのメッカ、東大阪市で建築・工業用金網を製造するイゲタ金網。55年の歴史のなかで、品質へのこだわりと顧客ファーストの姿勢を貫き、利益体質の企業体へと成長してきた。その経営戦略と「会計」へのこだわりを、森崇倫社長とアルバ会計事務所の井上岳彦顧問税理士、大石由紀子税理士に聞いた。
──豊富な歴史をお持ちですね。
森崇倫社長
森 1963年に祖父の春二が同業の前職から独立して創業し、私で3代目になります。創業以来大切にしているのは「たとえコンクリートに埋まってしまう金網でも、少しでもきれいな正方形の製品を出荷しよう」という姿勢です。機械で生産する1枚1枚の網に対して寸法確認を行うなど「品質至上主義」をモットーにしており、また、すぐにお使いいただけるように寸法切断加工も行うなど、お客さま第一の姿勢が支持されてきたのだと思います。
──さまざまな種類の金網を製造されています。
森 線径が2.6~6ミリのワイヤーメッシュ(鉄、ステンレス)、0.7~2.0ミリのファインメッシュ、また、一定のピッチで列線を絡ませるひし形金網も製造しています。
──強みは?
森 溶接金網の技術でしょうか。
──溶接金網とは?
ファインメッシュ
森 直角に配列した鉄やステンレスの線の交点を電気抵抗溶接したものです。とくにファインメッシュは線径が細いので溶接が難しく、そこが当社の強みでもあります。線径0.7~6ミリ、網目6.35~20ミリまで(109種類)を製造し、定尺品としてこのように多彩なサイズの製品を在庫しているメーカーは、日本でも当社だけです。30年以上前に、ドイツ製のファインメッシュの製造機械を導入した先代社長の先見の明と言えるでしょう。小ロットや特殊なサイズの定形外製品にも幅広く対応しており、競合他社からの注文も少なくありません(笑)。
──ファインメッシュの製造上のポイントは?
森 線が細いので電気が強すぎると交点が溶けてしまうし、弱すぎると外れてしまう。そのさじ加減が難しいところです。熟練の技術が必要です。
──製造した金網は、どのようなところに使われるのですか。
森 さまざまですが、通常のワイヤーメッシュでいえば、一番の用途はスラブ等で、ひび割れ防止用にコンクリートに埋め込むものです。あるいは農作物の獣害用フェンス、パレット、安全柵などにも使用されます。
──ファインメッシュは?
森 これも多彩な用途があって、防鳥網や洗浄かご、コンビニ大手チェーンの揚げ物用のフライヤーなどに使われます。ファインメッシュは交点をすべて溶接しているので、広い網目でも線径を細くすることができ、交点にゴミやカスが溜まりにくいという利点があります。
──福利厚生に手厚いのも特徴です。
森 社員全員に気持ちよく働いていただきたいというのが当社の願いです。1時間単位の有給休暇制度の導入や子供手当の増額など、時流に合った制度改革を行ってきました。残業もほとんどありません。そのためでしょうか、離職率は低く抑えられています。
──製造業特有の人材不足については?
森 4年ほど前から外国人の技能実習生の受け入れをスタートし、また、日本語資格を持った外国人高度人材の雇用にも取り組んでいるため、製造現場の人員は十分に足りています。ただ、営業担当社員の高齢化が進んでいますので、ここの若返りが課題だと考えています。
経営データの詳細な把握で会社を統括的に管理する
──アルバ会計とのご関係は?
森 先代の小泊順二所長に税務顧問をお願いしたのは2016年12月ですが、実はそれ以前からお付き合いをさせていただいていました。
井上岳彦顧問税理士
井上 私は17年に事務所を承継して以来のお付き合いになります。森社長は、当事務所が主催するNPC(NEXTPRESIDENTCLUB)という次期社長候補・後継者を対象とした勉強会に来ていただいており、関与以前から信頼関係があったと聞いています。
──16年に税務顧問を変更されたわけですね。
森 はい。その少し前に、同業者2社をM&Aで吸収した際、工場数、顧客数ともに2倍になりました。そのため、それまでお願いしていた会計事務所の「2か月後に試算表が送られてくる」といったやり方では、とても業績を把握できないと感じたのです。たまたま24歳くらいからNPCに通っていたので、小泊会計(現アルバ会計)さんの考え方がある程度分かっており、「ぜひ税務顧問に」とお願いしました。
──変更後の印象は?
森 もともと数字が強いほうではなく、経理はどうしても後回しになる分野でしたが、アルバ会計さんからは、大石先生に毎月来ていただき、その都度、専門家の意見を聞きながら業績を検証できるので、いやでも意識が向上します。
──自計化(企業が自ら会計ソフトを使って財務管理を行うこと)は?
井上 まず、『FX2』を導入し、翌月巡回監査による月次決算、部門別管理を行う体制を整えました。
──部門別はどのように?
交点を溶接する
大石 通常のワイヤーメッシュとファインメッシュ、それと仕入れ販売商品の3部門で管理していましたが、1年前『FX4クラウド』にバージョンアップしてからは、ここに工場別を絡ませて、より複雑な部門別管理となっています。
──複雑とは?
大石 ワイヤーメッシュとファインメッシュの下に5つの工場をぶら下げました。つまり工場別の損益が分かるようにしたのです。
──そもそも『FX4クラウド』にバージョンアップされた理由は何なのでしょうか。
森 20年4月、パンデミックの影響もあり、より柔軟な働き方にシフトするため、アルバ会計さんのアドバイスのもとIT導入補助金を利用して『FX4クラウド』での統括的な管理体制に変えていこうということになりました。
──導入の狙いは?
森 いろいろありますが、まず、分散入力機能を利用して経理の属人化を解消すること。また、工場別の詳細なデータを把握し、経営に生かすこと。さらに、それらデータを従業員と共有することで一体感を生み出すことです。それと、いつでもどこでも業績を確認できるのは、経営判断の上でも大きいと考えました。
──ところで、森社長がとくに注視されている勘定科目はありますか。
森 限界利益率です。もちろん売上高や経常利益は重要ですが、受注量に左右される部分は個別に見てもきりがありません。その点、限界利益率はもろもろの夾雑物が取り除かれて分かりやすい。
井上 限界利益率は企業の本来の力を示していますからね。
森 毎月、巡回監査時に大石先生とお話する時にも、まずは「今月、限界利益率は〇%でした」という話からスタートします。
加工品例
──経営計画はつくられていますか。
森 単年度計画はもちろん、今年度は5カ年計画もつくり、それを従業員と共有することができました。経営計画の重要性は分かっていたのですが、これまで毎月の売上目標さえありませんでした。現在の状況があるのは、毎月、大石先生と経営データをもとにした具体的な対話を行うことで鍛えていただいたおかげです。
井上 森社長の会計に対する姿勢と取り組みはすばらしいと思います。経営データをしっかりと検証しながら経営計画を立て、それを実行していくというマネジメントの基本をとても大切にされています。
──今後はいかがでしょう。
森 24歳で入社した時には、会社は赤字の状態が続いており、父が苦労していたのを傍観者として見ていた感じです。その後、32歳(12年)の時に社長となり、試行錯誤の結果、いまはありがたいことに利益を安定的に出せるようになっています。この状況を続けることで、従業員が安定して定年まで勤めあげることができる場をつくっていきたい。当社はあくまで従業員が主役です。この考え方を堅持して、成長していきたいですね。
企業情報
獣害用金網
株式会社イゲタ金網
- 設立
- 1963年12月
- 所在地
- 大阪府東大阪市西堤学園町1-8-9
- 売上高
- 8億2,000万円
- 社員数
- 43名
- URL
- https://www.igeta-kanaami.co.jp
顧問税理士 所長 井上岳彦
アルバ会計事務所
- 所在地
- 大阪府東大阪市市川俣1-1-8
- URL
- https://alba-tax.jp
(『戦略経営者』2021年9月号より転載)