株式会社姫路ヴィクトリーナ 様

株式会社姫路ヴィクトリーナ

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

月次決算と部門別の予実管理で
黒字経営と強いチームづくりを実現

日本有数のバレーボール競技人口を誇る兵庫県姫路市。2016年に誕生した日本初のプロバレーボールチーム「ヴィクトリーナ姫路」は、設立わずか3年目で最高峰のV1リーグに昇格、1年目の2019年も見事残留に成功した。同社の橋本明球団社長、元日本代表監督の眞鍋政義オーナー、顧問税理士の犬賀善治氏などにTKCシステムのメリットや今後の戦略などについて聞いた。

「アスリート社員」制度などスポンサー企業へ個別に提案

──創業の経緯を教えてください。

橋本明球団社長

橋本明球団社長

橋本 前職で私は、マラソン選手の有森裕子氏と共同でスポーツ選手のマネジメント会社を経営していました。その会社に在籍していた約80人のアスリートのうちの一人が眞鍋オーナーで、「日本のバレーボール界で初となるプロチームをつくりたい」という計画を聞き、そのビジョンに共感したのが姫路ヴィクトリーナを立ち上げたきっかけです。バレーボールの経験もなかったので、ゼロからルールを覚えたりと、最初は苦労の連続でしたね。

──スポンサーの獲得はどのように進めましたか。

橋本 設立前に播磨地域の企業数やそれに対するスポーツチームの数などを綿密に調査していたので、ある程度のスポンサーが獲得できることは予想しており、実際にスポンサー企業や応援してくださる方の数は順調に増えました。しかし試合がなかなか組めなかったり、選手が思うように集まらなかったりと、とても苦労しました。強くなって実績を積めば出場できる試合が増えるのですが、どうしても最初は試合が少ないですからね。ただチームの頑張りで徐々に勝利を重ねられるようになった2017年の後半くらいからうまく回りはじめるようになり、周囲が一気に盛り上がるようになってきたと感じています。

──ビジネスモデルについてご説明ください。

ヴィクトリーナ姫路

橋本 スポンサー収入、放映権、グッズ販売、ホームゲームやイベント等のチケット収入が一般的にプロスポーツの売り上げになりますが、当社の売上高は約8割をスポンサー収入が占めているのが特徴です。スポンサー数は4年で約350社まで増やしました。地元企業はもちろん、東京まで営業範囲を広げています。
 スポンサー獲得にあたっては、経営トップにいかに直接面会できるか、あるいはその企業が取り組んでいることにどれだけ当社が個別の提案ができるかどうかを心掛けています。たとえばスーパーを経営されている企業には離職率が高いという悩みがあります。そこで当社の二軍に近い育成チームの選手を雇用していただく「アスリート社員」という制度を提案、そこで働く当社からの派遣社員を応援することで、職場の仲間が団結する雰囲気を生み出すのが狙いです。実業団チームをつくる負担をかけることなくそれと同じような効果が得られる制度として評価されています。

──新型コロナウイルスで試合もできず、今は我慢の時ですね。

橋本 ホームゲームや地域イベントでファンの方々と交流ができなくなるとはまさか思いませんでした。まさに想定外の状況です。しかし自宅でのトレーニングや料理の様子をSNSで配信するなど、選手たちが自主的にファンとの交流を行ってくれています。
 また昨年末から新しいファンクラブを立ち上げる準備を進めていたのですが、今回の事態をきっかけにファンとのつながり方をあらためて見直し、さらによりよいものにするつもりです。もともとインターネットによるチケット購入や動画配信などを予定していたのですが、より双方向的なコミュニケーションができるような機能を盛り込むことにしました。

「MR設計ツール」の活用で数週間の作業を数日に短縮

──犬賀先生と顧問契約を結ばれた経緯についてお聞かせください。

橋本 最初に私が、非常に信頼を寄せている金融機関のある方に「月次の決算をできるだけ早く見たい」と相談したのがきっかけです。その金融機関の方にご紹介いただいたのが犬賀先生でした。お会いして現状を説明したところ、複数の人が素早く月次データを確認できるシステムとして『FX4クラウド』を提案していただいたのが決め手になりました。

──早く見たい理由とは?

橋本 スポーツリーグには、サッカーやバスケットボールなどのように成績が悪いと降格するオープンリーグと、プロ野球のように降格がないクローズドリーグの2種類があります。私たちが属するオープンリーグでは、予算をできる限りチームの活動に投資して何はなくとも降格を第一に避けなければなりません。収入や観客動員に大きな影響を与えてしまいますからね。
 しかしだからといって投資をしすぎて経営状態の悪化を招いても、リーグが定めるライセンス基準を満たすことができなくなります。このジレンマに陥らないためには、できるだけ早く経営の状態を把握する必要がありますが、以前お願いしていた会計事務所では月次決算の結果が2~3カ月後にならないと判明しませんでした。ちょうどV1リーグ昇格を目前に控えている時期でもあり、新しい会計事務所でより早く経営の実態をつかめる仕組みを取り入れることにしたのです。

──システムの具体的な活用方法について教えてください。

犬賀善治税理士

犬賀善治税理士

犬賀 ファンクラブや後援会など複数の方からたくさんの入金があり、その作業が大変煩雑でした。そこで「銀行信販データ受信機能」を活用し仕訳を簡単に計上できるようにしています。また各部門長に部門予算を厳格に見積もってもらったうえで『TKC継続MASシステム』で予算組みをし、それを会計システムに入れて予実対比を実践、毎月の経営会議で確認しています。このほかチームの小口管理についてエクセルで作成した表を『FX4クラウド』に吸い上げて管理したり、支払管理機能の活用で6カ月先までの資金繰り表を作成したりしています。

──導入のメリットをどのように感じていますか。

橋本 一番実感しているのは、Vリーグライセンスの交付を受けるために、毎年第三者機関に提出する書類の作成作業がとても楽になったことです。ライセンスの交付審査に必要な財務書類では、一般的な会計上の科目とは異なるスポーツチーム固有の経費費目が分析の対象となります。従ってこれまでは税務会計のために計算したものをすべて集計し直しており、年1回の手続きですが大変な手間がかかっていました。それが犬賀先生からオリジナル帳表を作成できる「MR(マネジメントレポート)設計ツール」の活用を提案いただき、今年はボタン一つで数字を引き出せる状態になっています。3週間くらいかかっていた申請作業が、今年は数日で終わる見込みです。

──部門別管理はどのようにしていますか。

橋本 選手やチームスタッフが所属しているメインのチーム統括部、私が兼任で直轄しているマーケティング営業本部、ホームゲームやイベントを行う部署、管理本部の4部門です。『FX4クラウド』を導入する前は、予算を使いすぎる部署が出ていたのですが、今は新しいシステムで部門ごとに年間で必要な内容をきちんと積み上げて調整しているので、実績が予算と大きくずれる部門が出てくることはなくなりました。

──よく見られている帳表は?

犬賀 当月の実績と計画、前年同月実績を一覧できる《変動損益計算書(当月・当期分析表)》を重視しています。経営会議ではさらに試算表を提示し、重要なキャッシュの数値や異常値をマーキングして説明するほか、取引先ごとの資料などをまとめて報告しています。4月に行った経営会議では、一部の役員から「もう少しチームに投資しないとスポンサーも納得しないのでは」などといった意見が出て、スポーツビジネスに詳しくない私にはとても勉強になりました。異業種から迎えた社外取締役も会議に参加し活発な議論が交わされています。

──今後の目標を。

橋本 2016年にスタートした中期経営計画で掲げたV1リーグへの昇格は3年で達成することができました。同計画で目標にしたスポンサー数も現状で4割上回っています。V1リーグで戦い続けることが第一の目標ですが、第2次の中期計画では、東南アジアを中心とした海外展開や日本代表への選手・スタッフの輩出も目標に定めています。新型コロナウイルスの問題で見通しは立てにくいですが、2023年までに売上高10億円を目指したいと考えています。

「姫路から世界へ」を掲げバレーのプロ化を推進

◎眞鍋政義オーナー

眞鍋政義オーナー

まなべ・まさよし
1963年、兵庫県姫路市生まれ。1985~2003年全日本代表、1988年ソウル五輪出場、イタリアセリエA挑戦など、日本を代表するセッターとして長く活躍。2005年に現役引退し久光製薬スプリングス監督に就任、2009年から2016年まで女子日本代表の指揮を執った。同年12月にクラブチーム「ヴィクトリーナ姫路」を立ち上げる。

 日本のバレーボール界はいまだに「企業スポーツ」の域を脱していません。しかし隣国の韓国や中国などを含め、世界では指導者も選手もプロになるのが当たり前。私はかつて日本代表として世界中で試合に出場しましたが、「いずれは日本でもプロチームをつくらなければならないだろう。今後日本の男女バレーがオリンピックや世界バレー、ワールドカップで表彰台に上るためには、少なくとも世界と同じ土俵に乗らないとダメだ」という思いを抱き続けていました。この夢をかなえるため、全国でも有数のバレー競技人口を抱えるこの播磨地域でプロチームを設立したのです。

 サッカーや野球、バスケットボールなどではすでにプロリーグが存在しますが、バレーボールは従来の企業スポーツ、プロチーム、クラブチームが混在している状況です。一からフレームをつくらなければならないのでそれは大変でした。

 しかし私たちがまず成功しないことにはバレーボールのプロリーグ化も実現しないだろうという不退転の決意でここまで続けてきました。選手3名からスタートした4年前のことを思うと、口では強気の発言をしていたものの、まさか3年でV1リーグに昇格できるとは夢にも思っていませんでした。これも選手たちの頑張りとそれをサポートした竹下佳江前監督の指導があったからだと思っています。

 私たちは設立当初から「姫路から世界へ」というスローガンを掲げてきましたが、いまでは姫路を入れた8市8町からなる播磨地域全体から応援していただいています。スポンサーや後援会、ファンや地域のみなさんと一緒になって、バレーボールだけなく播磨地域のいろいろなイベントに取り組みながら、地域を盛り上げていきたいですね。将来的にはこのチームから日本代表に選出されるような選手やスタッフを輩出し、日本一を目指して頑張りたいと思います。(談)

企業情報

株式会社姫路ヴィクトリーナ

株式会社姫路ヴィクトリーナ

設立
2016年3月
所在地
兵庫県姫路市白銀町86番地 白鷺白銀町ビル2階
売上高
約5億円
社員数
10名
選手・スタッフ数
21名
URL
https://www.victorina-vc.jp/

顧問税理士 犬賀税理士事務所
所長 犬賀善治

所在地
兵庫県姫路市飾磨区上野田4丁目79-1
ヴィラ・フェリーチェ105号
URL
https://tkc-nf.com/inuga

『戦略経営者』2020年6月号より転載)