福島市観光開発株式会社 様

福島市観光開発株式会社

後列左端は和田明巡回監査担当

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

3事業所8施設を重層管理し
社員の意識改革につなげる

福島市観光開発は福島市や福島商工会議所などが出資して設立された、いわゆる第三セクター。指定管理事業として、市内飯坂地区の共同浴場をはじめとする施設を指定管理、経営している。近年は観光名所の広報宣伝活動や、ソーシャルメディアを活用した情報発信に余念がない。『FX4クラウド』導入による効果を尋ねるべく、飯坂町にある公共施設「パルセいいざか」を訪れた。

広報営業活動に注力し施設の利用促進を図る

渡邉勉社長

渡邉勉社長

──組織の概要を教えてください。

渡邉 もともと福島市から委託された施設の管理運営を通し、観光、文化の発展を図るべく、1977年に設立されました。現在「パルセいいざか」や温泉施設、「旧堀切邸」、農村マニュファクチャー公園「四季の里」を管理しているほか、JR福島駅地下歩道の広告看板および駅前駐車場の運営も担っています。パルセいいざか内のコンベンションホールは、1940名収容できる県内有数の規模。各種団体が主催する大会や講演会、歌謡ショーといったイベントの会場として利用されています。

──近隣に複数の共同浴場があると聞きました。

渡邉 飯坂地区には計9つの共同浴場があり、当社が管理しているのは「鯖湖(さばこ)湯」「波来(はこ)湯」をはじめとする5つの施設。いずれもお湯が熱いことで知られ、浴槽温度が48度をこえるときもあります。地域の共同浴場利用者数は年間27万人にのぼりますが、2019年は10連休等もあり、前年を上回るペースで推移しました。

「旧堀切邸」

「旧堀切邸」には湯めぐりの合間に訪れる観光客も

──旧堀切邸とは?

渡邉 江戸時代から続いた豪農・豪商の旧家で、邸内の建造物を補修、整備し、10年に開館しました。歴史価値の高い主屋や蔵など6件が国登録有形文化財とするよう答申され、「十間蔵」は県内最大最古の土蔵として市の有形文化財に指定されています。土蔵内では、写真パネル展などを随時開催。無料で入館でき、源泉かけ流しの足湯につかりながら美しい庭園を眺められる人気スポットとなっています。

──先日首里城で火災がありましたが、歴史的建造物の防火対策が課題になっています。

渡邉 消防訓練を定期的に行うとともに、消防署による防火点検もぬかりなく実施しています。また、館内は全面禁煙とし、防火管理者を常駐させるなどしています。

武田昭人取締役社長室長

武田昭人取締役社長室長

──どのような集客、広報活動を行っていますか。

武田 福島市は06年に指定管理者制度を導入し、公共施設の管理運営を民間企業や財団法人、NPO法人等に委ねるようになりました。指定管理者は5年ごとの更新制のため、安穏としていられません。広告宣伝方法の見直しを図り、メディアに広告をただ出稿するだけでなく、旧堀切邸で地元ラジオ番組の公開生放送を行ったりして、集客効果がより見込める広報活動に取り組んでいるところです。
加えて営業部門を立ち上げ、担当者がイベント主催団体などの取引先を定期的に訪問したり、顧客を開拓するべく外回り活動を行っています。そうした足で稼ぐアナログ的な営業活動以外では、ソーシャルメディアを活用した情報発信に力を入れていて、19年11月インスタグラムに旧堀切邸など5つのアカウントを開設したばかりです。

コストの「見える化」で社員教育に重点投資

──17年3月に『FX2』から『FX4クラウド』に移行されたそうですね。

「鯖湖湯」

松尾芭蕉も立ち寄ったとされる「鯖湖湯」

渡邉 一番念頭にあったのは、経理業務の効率化です。従前は市内にある3カ所の事業所でそれぞれ『FX2』を運用していましたが、重複して使用していた勘定科目も一部見受けられました。仕訳ルールも統一できておらず、また、特定の社員のパソコンを立ち上げないと業務が滞ってしまうという属人化の欠陥もありました。かねて菅野(かんの)先生から『FX4』への切り替えを提案されており、システムがクライアント・サーバー型からクラウド型に変わり、導入コストが低減されるのも移行を決断した要素のひとつです。

──『FX4クラウド』では部門別に財務管理されているとか。

渡邉 中央事業所、飯坂事業所、西事業所の3部門に分け、さらに飯坂事業所には、パルセいいざかをはじめとする7つの施設を部門として登録しています。18年度から部門別に管理しはじめたため、データを前年と比較して確認できる体制に変わりつつあります。

菅野敦史顧問税理士

菅野敦史顧問税理士

菅野 システムの移行後、巡回監査のため3事業所を訪問する必要がなくなり、事業戦略の打ち合わせにより多くの時間を割くことができるようになりました。

武田 菅野先生と討議する内容が最近変わってきたと感じています。以前は各事業所の経理業務を統一する方策について話し合うことが多かったのですが、利益を上げるための打ち手について検討する機会が増えてきました。

──部門別の業績で重点的に確認しているポイントは?

渡邉 日ごろ頻繁(ひんぱん)にチェックしているのは、ホールや会議室の使用にともなう収入の増減幅の大きいパルセいいざかの財務データです。とりわけ売上高や広告宣伝費等の固定費の推移を注視しています。毎月の確認作業を通し、事業所間で重複して支払っている費用があることを発見できました。武田がふれた広告宣伝費はそのひとつ。効果的な広告宣伝方法を検討するきっかけになり、加えて教育体制の充実化も図りました。

──具体的には?

渡邉 菅野先生に社員教育方法に関して相談したところ、中小企業大学校仙台校の研修プログラムを紹介され、会社の将来を担う社員が定期的に参加しています。他社社員との交流を通じて視野が広がり、新入社員に対する指導方法も改善するなど、効果が表れはじめています。

──システムを移行し、最も変わったのはどんな点でしょう。

渡邉 何よりも組織全体の業績をリアルタイムで把握でき、固定費等の無駄なコストを発見できるようになったのが大きいですね。問題点を早期に発見できれば、いろいろな対策を検討することができる。管理職には社内会議で業績を公開しており、事務機器の入れ替え等の際には、社員が率先して費用をシミュレーションしてくれるなど、原価意識が徐々に芽生えてきました。

武田 社員の意識改革につながっただけでなく、総務企画課の社員がエプロンをつけてラウンジ業務を行ったり、旧堀切邸に関わる業務を手伝ったり、柔軟な働き方を取り入れられるようになっています。

菅野 組織の合併を経て設立された経緯から経理業務を含め、以前は3事業所がバラバラだったきらいがありました。『FX4クラウド』による運用が軌道に乗り、組織の垣根をこえて社員の方々の交流が促進されている印象があります。

──業績発表の場は?

十間蔵

県内最古の土蔵、十間蔵

渡邉 取締役会を年4回開催し、システムから印刷した《変動損益計算書》や《貸借対照表》を出席者に配布しています。クラウドならどの拠点にいても最新業績を把握できるので数字を集計する手間がなく、資料をスムーズに準備できるようになりました。地元中小企業の経営者が取締役に就任しており、なかにはTKCシステムで出力される帳表に日ごろから慣れ親しんでいる人もいます。

──巡回監査の流れに変化はありましたか。

和田監査担当 月間の仕訳枚数が多いため、もうひとりの担当者と2名体制で毎月訪問しています。事務所のパソコンでシステムを起動し、増減の大きい勘定科目などを事前に確認して監査にのぞめるのは便利です。訪問場所も原則1カ所で済み、移動時間がだいぶ減りました。

──抱負をお聞かせください。

渡邉 市内にある県営あづま球場は東京五輪開催時、野球、ソフトボールの試合会場として使用されます。また、4月に放送開始されるNHK朝の連続テレビ小説は、名誉市民である作曲家の古関裕而氏がモデル。20年は福島市がさまざまな面で、国内外から注目される1年になりそうです。これを千載一遇のチャンスととらえ、市の魅力を積極的に発信し、地域経済の活性化に努めていきます。

企業情報

コンベンションホール

パルセいいざか内のコンベンションホール

福島市観光開発株式会社

設立
1977年4月
所在地
福島県福島市中町7番17号 ふくしま中町会館2F
売上高
約5億円
社員数
61名(臨時社員、パート等を含む)
URL
https://www.fckk.co.jp

顧問税理士 菅野敦史税理士事務所
税理士 菅野敦史

所在地
福島県福島市八木田字並柳132番地の3
URL
https://kannokyoueikaikei.tkcnf.com

『戦略経営者』2020年1月号より転載)