導入事例 CASE STUDY
ドミノ・ピザ桜山店 豊明二村台店 様
左は監査担当の成田将友氏
統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例
持ち前の熱意と緻密な財務管理で
パワフルかつ慎重な経営を実践
2018年4月、ドミノ・ピザジャパンとTKCは、ドミノ・ピザのフランチャイズ(FC)店の経営力強化を目的として、基本提携契約を締結した。これによってドミノ・ピザの各店に導入されつつあるTKC方式の自計化は、店舗経営にどのような影響を与えているか。桜山店と豊明二村台店のオーナである奈須晴秀氏と顧問であるJ-MACS税理士法人の三林新栄税理士、成田将友監査担当に話を聞いた。
クルーのモチベーション高め社内の一体感を創り出す
──創業の経緯は?
奈須晴秀社長
奈須 実はいろいろと複雑なんです(笑)。大学生の時にドミノ・ピザの店舗(当時の運営主体はヒガ・インダストリーズ)でアルバイトをしていたのがきっかけといえばきっかけでしょうか。その後、大学を卒業して運送関係の会社にいったんは就職したのですが、数年でそこを退職してヒガ・インダストリーズに今度は社員として入社。2003年から6年間勤めた後、妻と沖縄に移住してバーを経営。3年後、沖縄で再びドミノ・ピザに戻り、さらに中京地区に移ってマネージャーからスーパーバイザーへと昇進しました。ところが、どうもしっくりこない。私自身組織に向いていなかったんですね。FC店舗の割合を増やしたい本部の意向もあり、桜山店と豊明二村台店の直営2店舗を譲り受けて独立しました。昨年の6月のことです。
──それにしてもドミノ・ピザとの縁は深いですね。
奈須 おそらく好きなんでしょう、ドミノ・ピザが(笑)。時には不満が口に出たりもするのですが、入社後かなり経ってから、妻に「あなたはドミノ・ピザで働いているときが一番楽しそうね」と言われ、はじめてそのことに気づきました。
──どのあたりが〝好き〟なのでしょうか。
奈須 よく分かりませんが、一番はクルー(アルバイト)との一体感かもしれません。例えば、当店のクルーは高校生から年配の方までさまざまな年代・性別の方がおられるのですが、彼らと目的をひとつにして一体になる感じが良いですね。また、学生のクルーは卒業まで勤め上げる人も多く、彼らの成長を見ることができるのも楽しみのひとつです。
──独立には勇気が必要だったのではないですか。
奈須 桜山店の方は中京地区で最も古い店舗で顧客もついていたのですが、ここ豊明二村台店は赤字店舗でした。そのため最初は不安もありましたが、ふたを開けてみるとスタートから好調で、2店舗合計の売上高が約1億8000万円、以前と比べて約2400万円アップさせることができました。
──どのような戦略を?
奈須 一番大きいのはメニューの配布精度を上げたことだと思います。直営店の時には、枚数を重視していたので、どうしても配りやすい集合住宅などに集中する傾向があったと聞いています。その偏りをなくすよう、効率の悪い一戸建ての住宅地などにもまんべんなく配布するように心がけたのです。メニューがお客さまの手元にあるかないかでは、注文の可能性に大きな差がでますからね。それとクルーのモチベーションアップにも力を注ぎました。本部の提示してくる数字を目標にしながら、それを達成したら全員で飲み会を催したり、あるいは、普段からお互いにコミュニケーションをとり、楽しみながら仕事ができるような雰囲気をつくるように心がけました。
──サービス面では?
奈須 注文を受けてからお客さまにとどけるまでの「サービスタイム」の短縮を心がけています。本部の基準をクリアすべく、ピザを焼きはじめたらすぐに指名された担当者が地図で確認し、焼き上がったら即座にバイクに乗って出発できるように日々トレーニングを行っています。結果、現在は21~22分くらいのサービスタイムとなっており、これも少なからず顧客満足度の向上につながっているのではないでしょうか。
業務システムとの仕訳連携で作業効率が大幅アップ
──経理体制はどのように?
奈須 独立時から三林(新栄)先生のJ-MACS税理士法人にお世話になっていますが、右も左も分からないなかで頼りになる存在です。初めての起業なので比較する対象はありませんが、丁寧な指導をいただき満足しています。当初は、経理の内容もちんぷんかんぷんでしたが、訪問の都度、監査担当の成田さんに前月の試算表の内容について熱心に教えていただくうちに、少しずつ数字の意味を理解できるようになってきました。
三林新栄税理士
三林 昨年4月のドミノ・ピザジャパン(DPJ)とTKCの提携(※)にともない、紹介を受けたのが関与のきっかけです。まずは、『FX2』(TKC戦略財務情報システム)を導入して自計化を行い、巡回監査、月次決算体制を整えました。店舗別の損益管理や経営計画の策定も当初から行っています。奈須社長は、とてもパワフルな経営者というのが第一印象。それでいて慎重で真面目、地に足のついた経営をされます。
──今年の5月にはクラウド型会計システム『FX4クラウド』へバージョンアップされました。
奈須 当店を含めドミノ・ピザの各店は、DPJ独自の販売管理システムに日々のデータを打ち込み、業務を確認していますが、以前はアウトプットされたデータを『FX2』に打ち直す作業が必要でした。しかし、『FX4クラウド』への移行と同時に、データ連携が可能になったことで入力ミスがなくなり、業務のスピードが上がりました。
成田(監査担当) 具体的には、本部からCSVファイルがメールされ、『FX4クラウド』の仕訳連携機能を利用し、そのCSVファイルを読み込むことで仕訳が自動的に作成されます。POSシステムの売り上げと経費、本部からの請求明細で当機能を利用し、これによって経理業務の工数が減り、確実性も増しました。
奈須 成田さんは、とても冷静な印象があります。妻との会話で出てくるほどですから(笑)。「事業主勘定」と「経費」との境目もきっちりと指摘され、いい加減な経理処理は許されません。いつしか、われわれも「きっちりしないと」という意識になっていました。
成田 奈須オーナーは、もともと直営店のスーパーバイザーだったという基礎がありますから、知識の吸収も早かったのだと思います。
──財務を管理されるなかで、とく注目される科目は何でしょう。
奈須 当然、売上高や利益あるいは飲食店経営で重要とされるFLコスト(食材費と人件費)は気になりますが、頻繁に確認するのはキャッシュフロー、つまり現預金残高です。というのも、当社は創業間もないFC店で、イニシャルコストの償却やロイヤルティーが必要なので、常に資金ショートに注意し、バランスをとりながら店舗運営をしていかなければならないからです。
──ほかに、TKCシステムで印象深い機能はありますか。
奈須 金融機関から、インターネットを利用して取引データを自動受信できる「銀行信販データ受信機能」はとても良いですね。過去の仕訳内容から予想される仕訳を提示してくれる「学習機能」がすばらしいと思います。簡単に仕訳が計上できるので、メニューの配布コストや家賃など、日々の支払いの際の手間がとても楽になりました。
成田 創業当初からインターネットバンキングを利用されていたので、銀行信販データ受信機能の導入はスムーズでした。昨年の暮れくらいに、すでに利用されていたと記憶しています。非常にやる気のある社長さまなので、われわれの提案に反応良く応えていただいています。
──抱負を教えてください。
奈須 短期的には3店舗目のオープンを考えています。桜山店の近くにはなりますが、有望な店舗がありますので現在検討中です。長期的には、5歳と1歳の息子たちに継いでもらえるような体制をつくっておきたいという気持ちはあります。遠い先の話過ぎて、いまはまだぼんやりとイメージしているだけですが……。
※株式会社ドミノ・ピザジャパン(DPJ)と株式会社TKCはドミノ・ピザの経営力強化を目的に提携。DPJはFC店の勘定科目体系や会計処理方法を統一し、FC店から収集する月次損益計算書を加工・分析して経営資料を提供する。そのため、DPJはすべてのFC店の会計システムをTKCシステムに統一し、関与する税理士もTKC会員に切りかえるよう促していく予定。
企業情報
ドミノ・ピザ桜山店 豊明二村台店
- 創業
- 2018年6月
- 所在地
- 愛知県名古屋市瑞穂区桜見町1-4-1
- 社員数
- 50名(アルバイト含む)
顧問税理士 J-MACS税理士法人
税理士 三林新栄
- 所在地
- 愛知県名古屋市天白区梅が丘2丁目1601-2
(『戦略経営者』2019年10月号より転載)