導入事例 CASE STUDY
株式会社伝食 様
統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例
計数管理意識を浸透させ
継続的な黒字決算を実現
日本有数の海産物の産地として知られる福井県。「甲羅組」のブランドを掲げてカニや海産物の販売を手掛ける伝食は、徹底した業績管理と経理事務の合理化により創業2期目以降、黒字決算を継続している。田辺晃司代表取締役社長、増田学専務取締役、そして顧問税理士の山形晃士郎税理士(山形会計事務所)に、統合型会計情報システム『FX4クラウド』を活用した業績管理手法について聞いた。
徹底した「現場主義」で新鮮な海産物を提供
──業容を教えてください。
田辺晃司社長
田辺 「世界一のカニブランドを作る」を理念に、敦賀の地でカニや海産物の販売を手掛けています。2011年の創業当初は、8畳ワンルームの自宅アパートをオフィスにしていましたが、資金や社会的信用など何一つなく、商品の仕入れさえもままならない毎日でした。それでも、私を含め5名の創業メンバーで力を合わせ、なんとか危機を乗り越えて現在に至っています。
──通信販売からスタートしたと聞きました。
田辺 創業当初から店舗販売と通販の2本柱で事業展開する予定だったのですが、良い店舗物件が見つからなかったので、泣く泣く通販事業を先駆けて展開することになりました。通販といっても、当社では、楽天市場やヤフーショッピングといった大手ECモールを積極的に活用してきました。自社サイトで販売ページを設けることも検討しましたが、ゼロからのスタートの中、自社サイトを構えるよりもECモールに出店したほうが多くの人の目につきやすいだろうと考えたからです。今ではある程度の収益が見込めるようになったので、自社サイトにも販売ページを設けています。
──工夫したポイントは?
田辺 ネット通販の場合、単純に商品の写真や説明文を載せるだけでは、他社と似たようなレイアウトになってしまい、お客さまの目に留まらないと考えました。そこで、創業の経緯や仕事にかける思いを綴(つづ)った「手紙」を販売ページに掲載することで、「伝食から買いたい」と思ってもらえるように工夫しました。
──実店舗での販売を始めたのは?
田辺 創業から半年後の2011年10月に、初めての店舗を敦賀市内にある「日本海さかな街」に出店しました。実店舗では顧客とのコミュニケーションが重要になるので、「マニュアル」的な対応ではなく、お客さまとの「対話」を意識した接客を心掛けています。繁忙期となる11~12月は経営陣も店頭に出て、商品の陳列や呼び込みを行うこともあります。
おかげさまで店舗販売事業も軌道に乗り、今では静岡県の「焼津さかなセンター」や東京の築地場外市場でも店舗を運営しています。
──飲食事業も展開されているとか。
新鮮なカニや海産物が店頭に並ぶ
田辺 創業から4年後の2015年にスタートし、日本海さかな街に2店舗、敦賀市赤レンガ倉庫内に1店舗を構えています。店舗販売事業とは異なり、食事をしたお客さまから反応がダイレクトに返ってきますので、それらをもとに、料理の質やスタッフのホスピタリティーはもちろん、活気あふれるお店づくりに取り組んでいます。
──商品を提供する上でのモットーは?
田辺 新鮮でおいしいカニや海産物を1品でも多く店頭に並べることに尽きます。当社では年間400トンのカニを取り扱っていますが、例えば不良品率が0.1%だったとしても、その0.1%を買ったお客さまは不満に思いますよね。商品を一つ一つしっかりと見定め、本当に良いと思ったものだけを仕入れることで、その不満をゼロにしたいと考えています。
私自身、今でもおいしい海産物を求めて、敦賀はもちろん小浜や金沢など、さまざまな漁港に足を運んでいます。市場は朝が早く、時には午前0時に自宅を出て、2~3時開始の競りに参加するというスケジュールになることもありますが、「新鮮なカニや海産物を届けたい」という一心で、創業以来、業務に取り組んできました。
変動損益計算書を共有し計数管理意識を育てる
──山形会計事務所との関係は?
山形晃士郎税理士
田辺 山形(晃士郎)先生には創業時からずっと面倒を見てもらっています。会計や税務面のアドバイスはもちろん、創業計画書の作成に関しても相談に乗っていただきました。金融機関に事業計画を説明する時も同行していただいたりと、本当にお世話になっています。
山形 第1期目は限界利益でマイナスを計上し、約1000万円の赤字となってしまいました。財務面での懸念が強かったのですが、田辺社長や増田専務をはじめ従業員の皆さんが黒字化に向けて知恵を出し合う姿を見て、私もしっかりサポートし、会社を大きくしていきたいと感じるようになりました。
──『FX4クラウド』を導入したきっかけは?
増田 創業当初から『FX2』を利用して適時かつ正確な記帳と《変動損益計算書》を活用した業績管理を行っていましたが、店舗販売、飲食事業と業態が拡大するにつれて入力業務や詳細な管理が困難になりつつありました。
そのような状況のなか、出張先から最新業績を確認できず、もどかしく感じていることを山形先生に相談したところ、『FX4クラウド』を提案されたのです。システムの説明を聞いて「これしかない!」と切り替えを即決しました。
──部門階層別業績管理を活用されていると聞きました。
増田学専務取締役
増田 『FX4クラウド』では部門を細かく分けられる点がとても良いですね。通販事業部門はECモールごとに、店舗販売部門と飲食事業部門はそれぞれの店舗ごとの売上高や限界利益が把握できるように部門分けしています。店舗によっては物販と飲食の両機能を兼ねているので、組別の業績管理機能を活用して配賦(はいふ)計算を行っています。
──店長クラスにも計数管理意識をもたせているとか。
増田 毎月の店長会議で全店舗の《変動損益計算書》を共有し、各店舗の売上高や限界利益率などの計数データを元に次月の計画や打ち手を議論しています。なかには《変動損益計算書》の読み方はもちろん、「限界利益」や「変動費」といった言葉の意味を理解していない店長もいましたが、私や周りの店長どうしでコミュニケーションを図りながら、理解を深めています。
山形 1期目に赤字決算を経験しているので、業績管理の重要性は田辺社長、増田専務をはじめ皆さん十分に理解されていました。比較的早い時期からTKC方式の自計化と業績管理をしっかりと行うようになったので、2期目以降は毎期黒字決算を継続しています。
──『TKC証憑(しょうひょう)ストレージサービス』も活用しているそうですね。
各店舗の証憑書類をクラウドで一元管理
増田 焼津に出店する時に、証憑書類をどのように管理するかが課題でした。これまでは同じ敦賀市内に出店していたので、場合によっては直接取りに行くなどの対応をしてきましたが、遠隔地だとそういうわけにはいきません。
ファクスや郵送も考えましたが、それでは取引の発生から記帳までにタイムラグが発生してしまったり、証憑書類の紛失や送付漏れなどのリスクが生じたりするので、そのリスクを抑えられる方法を検討していました。そんな時に、山形先生から証憑書類をデータ化してクラウド上で管理する『TKC証憑ストレージサービス』(TDS)を提案してもらったのです。
山形 繁忙期になると経理処理に手が回らないぐらい忙しくなるので、証憑書類はため込まず、タイムリーに処理する必要がありました。TDSでは証憑書類や売上日報の画像データをクラウド上で管理し、『FX4クラウド』の仕訳と紐(ひも)づけることもできるので、経理業務全体がスリムになりましたね。
増田 TDSを導入してからは、証憑書類の管理を各拠点から行えるようになったので、経理スタッフの業務改善を図れ、本社に居ながら毎日の店舗の売上高などが把握できるようになりました。今年に入ってからはすべての店舗にTDSを導入し、経理事務の合理化を実現させました。
──今後の展望をお聞かせください。
田辺 既存事業に今以上に力を入れ、サービスを充実させるとともに当社ならびに「甲羅組」のブランド力をさらに向上させていきます。
また、海外需要も積極的に取り込みたいと考えています。築地場外市場では海産物をその場で調理して提供するのですが、特にアジア系の観光客の方が多く買い求め、「おいしい」と日本語で感想を話してくれるなど、需要の高さを改めて感じているところです。
今はまだ構想中ですが、いずれは海外の方に向けた販売事業も着手したいと考えています。
企業情報
株式会社伝食
- 設立
- 2011年3月
- 所在地
- 福井県敦賀市中央町2-22-32
- 売上高
- 33億円
- 社員数
- 120名(パート・アルバイト含む)
- URL
- http://kouragumi.co.jp/
顧問税理士 山形会計事務所
税理士 山形晃 山形晃士郎
- 所在地
- 福井県敦賀市三島町3-36-16-10
- URL
- https://yamagatakaikei.tkcnf.com/
(『戦略経営者』2019年8月号より転載)