東邦フイルム株式会社 様

東邦フイルム株式会社

右端は赤澤浩樹税理士。三谷社長の左隣が中村圭二監査担当

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

独自作成した業績管理資料が
社員に「考える」習慣を促す

徳島県北東部に位置する板野町で、フィルムの加工販売業を営む東邦フイルム。2017年には経済産業省が選定する「地域未来牽引企業」に選ばれるなど、注目度が高まっている。同年、財務会計システムを『FX4クラウド』にバージョンアップ。全国4カ所にある営業所からの仕訳入力が可能になり、月次決算の早期化を成し遂げた。

考えることを合言葉に「高付加価値」を追求

──業容を教えてください。

三谷郁彦社長

三谷郁彦社長

三谷 店頭で販売されている青果物や雑貨類のパッケージをオーダーメードで製造しています。おしゃれなデザインをあしらったり、合成樹脂フィルムと不織布を組み合わせて機能性を高めたり、発想力と技術力を生かして製品に価値を付加できる点が当社の売りです。

──営業活動はどのように?

三谷 本社営業部のほか東京、大阪、福岡に営業所があり、営業担当者が顧客から製品に関する要望をうかがいながら提案を重ねています。製品のデザインから製造加工、印刷、出荷配送まで一貫して行えるため、スピード感を持って対応できるのも強み。グラビア印刷は関連会社の東邦アートで行っています。おかげさまで商品の出荷先は47都道府県、500社まで拡大しました。
 社外の人から驚かれることもありますが、私自身も営業マンとして複数社を担当しています。商談時にノートパソコンを持参し、画像編集ソフトを用いて提案すると、その場で即決いただける場合も少なくありません。

──経営のモットーを挙げるなら?

三谷 社員には「考えることを大切にしよう」と訴えています。日々の仕事において大事なのは、どれだけ顧客の身になって考えることができるかなので、デザイン、機能性、価格帯など顧客の真のニーズをつかんだ上で、喜ばれる商品を提案する必要があります。単なる営業マンではなく、ひとりの人間として信頼されるために「人間力」を鍛えるようにと、日ごろから話しています。
 そのためのツールとして用いているのが、毎月発行している「ニュースレター」(社内報)です。読んだ書籍の一節や、セミナーなどで書き留めた言葉を掲載し、人間力について考える材料を提供しているほか、産業医の方に健康管理に関する原稿を執筆してもらっています。この4月で通算70号になりますが、私1人で制作しているんですよ。

──それはすごいですね。ボランティア活動にも日ごろから取り組まれているとか。

2年前に増改築した本社工場

2年前に増改築した本社工場

三谷 知的障害のある人たちにスポーツトレーニングや競技会の場を提供している認定NPO法人スペシャルオリンピックス日本・徳島の会長として、水泳やスキーの指導を行っています。技術を身につけ上達していく姿を見ると指導方法について気づきを得られ、心のよりどころにもなる。社員にも積極的な参加を促しており、イベント開催時には手伝ってもらったりしています。

──設立は1972年ですが、会社を継承する意思はもともとあったのでしょうか。

三谷 入社前は兄が会社を継ぐことを見越し、料理人を目指して調理師専門学校に通っていました。就職を間近に控えていたとき、調理師の道に本当に進んでいいのか、創業者である父に確かめたんです。そこで兄弟で会社を手伝ってほしいと打ち明けられ、急きょ進路を変更し、フィルムメーカーで働くことになりました。調理師免許を取得したことは、仕事を効率的に進めるために段取りを入念に行ったり、さまざまな仕事を同時並行でこなす上で役立っています。

スピードと安心感を生む「クラウド」の先進性

──おととし、『FX2』から『FX4クラウド』に移行されたと聞きました。

三谷 システムの移行を検討したのは、クラウドなら時間と場所を問わず詳細な業績データを閲覧できるようになり、かつ本社だけでなく営業所でも仕訳入力が可能になれば、経理業務を効率化できると考えたためです。最新業績を元に独自の管理帳表を出力できる「マネジメントレポート(MR)設計ツール」にも魅力を感じました。

最新鋭のグラビア印刷機を保有する

最新鋭のグラビア印刷機を保有する

──システム移行後、最も変わったのはどんな点でしょう。

三谷 やはりスピードですね。全社業績を早期につかめるようになりました。営業所で発生する旅費交通費や接待交際費などの経費関連の仕訳入力は、各営業担当者が随時行っています。当初、仕訳入力に不慣れな社員もいましたが、「仕訳辞書」を活用することでスムーズな運用ができました。さらに売り上げ、仕入れに関わるデータは業務システムから仕訳を連携。毎月中旬には前月までの業績を把握できる体制になっています。

──まさに月次決算ですね。

三谷 以前『FX2』を利用していた頃は、営業所から領収書などの書類を定期的に本社へ郵送してもらい、経理担当者が1人で仕訳入力していました。1カ月前の日付の取引を入力する場合もあり、仮払金に金額が残っていたり、領収書を紛失するケースもあったようです。
 現在はタイムリーに業績を把握し対策を施せるので、安心感があります。営業所への出張時はノートパソコンとルーターを携行し、『FX4クラウド』の〈変動損益計算書〉画面を開いて、営業所長に業績を説明しています。

──「MR設計ツール」ではどのような資料を作成していますか。

三谷 帳表に抽出する科目は経理担当者の清水と打ち合わせ、設計しています。TKC主催のセミナーに出席し、操作方法をひと通りマスターしました。さまざまな帳表を作成していますが、「3期比較純売上高・累計推移グラフ」「変動費前期比較グラフ」などの内容は月に一度開催する全体朝礼で発表しているほか、ニュースレターやグループウエアにも掲載し、社員に公開しています。数字をただ並べるだけでは把握しづらかった業績の推移も、グラフにして対比すれば一目瞭然です。「MR設計ツール」は多様な帳表を出力できる可能性を秘めたツールなので、今後も活用方法を勉強していきたいですね。

総務部・清水貞憲氏

総務部・清水貞憲氏

清水 「MR設計ツール」では集計科目を自由に設定できたり、オリジナル帳表を簡単に作成できるのでとても便利です。

──赤澤会計事務所では、2名体制で月次監査をされているそうですね。

中村 もう1人の監査担当が事務所のパソコンからインターネット経由で入力済み仕訳の内容を確認したうえで毎月訪問しています。ただ最近は清水さんがほぼ100点に近い正確な仕訳入力をされているので、事務所のパソコンでチェックする機会は減りました。監査後は、目標予算に対する進捗(しんちょく)状況や変動の大きかった取引内容などを三谷社長と経理担当部長に説明しています。

赤澤 さらに毎年11月に開催する決算報告会には当事務所の所長も含め、3名でおうかがいし、決算内容と次期予算案の報告をしています。また、書面添付も10年以上実践しています。

──書面添付(※)開始のいきさつは?

社内風景

三谷 2007年に本社工場を現在の場所に移転した際、税務調査を受けたのがきっかけです。当時会長だった父は月次でなく、日次決算をするように常日頃話していました。また、会社の決算書類について国税当局および金融機関の信頼性を高める方法について赤澤事務所に相談したところ、書面添付を提案されたのです。

赤澤 適正な帳簿に基づく税務申告を担保する最善の方法は書面添付しかないと考えました。提出書類には、月次巡回監査時に相談を受けた事項を詳細に記載しています。

──目標をお聞かせください。

三谷 当社の経営理念は、全社員の物心両面の豊かさを追求し、地域社会の発展に貢献すること。顧客ニーズをふまえた他社にまねできない製品を提供し、社会から必要とされる会社にするのが目標です。社内体制では、働き方改革の一環として作業効率の向上、残業時間の削減が課題になります。業績をオープンにして社員に動機づけを図りながら、メリハリある働き方を追求していきたいですね。

書面添付制度
 税理士が、税理士法第33条の2に基づき、関与先企業の税務申告書の提出に際して、自ら「計算し、整理し、又は相談に応じた事項」を記載した書面を添付する制度

企業情報

東邦フイルム株式会社

東邦フイルム株式会社

設立
1972年4月
所在地
徳島県板野郡板野町羅漢字川原崎2番地1
売上高
21億5,000万円
社員数
94名
URL
http://www.tohofilm.co.jp/

顧問税理士 赤澤浩蔵税理士事務所
税理士 赤澤浩蔵

所在地
徳島県徳島市西新町2-26-3
TEL
088-625-5218

『戦略経営者』2019年4月号より転載)