株式会社ヤスムラ 様

株式会社ヤスムラ

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

「共通費の配賦」に目を配り
9営業所の部門別管理を徹底

神奈川県を中心に8拠点(9営業所)を展開するヤスムラは、給湯器の修理・メンテナンスなどを請け負う、ノーリツ社のサービス認定店。2代目の安村圭一社長(45)は、今年5月から「社長業」と「経理業務」の両方をこなす“二刀流”を実践している。そんな安村社長の力強い味方が、TKCの財務会計システム『FX4クラウド』だ。

──給湯器のアフターサービスが主業務だとか。

安村圭一社長

安村圭一社長

安村 給湯器メーカーであるノーリツ社のアフターサービス代行業者として、一般住宅で使用されている給湯器のほか、ホテルや病院、介護施設などで使われる業務用給湯設備の修理・メンテナンスを行っています。また、キッチン、バスルーム、洗面化粧台といった「湯まわり」のメンテナンスについても事業領域としています。

──主な営業エリアは。

安村 神奈川県と静岡県の一部です。現在、本社のある相模原市や横浜市などに合計8拠点(①本社・相模原営業所②藤沢営業所・神奈川システム営業所③旭営業所④港北営業所⑤横須賀営業所⑥平塚営業所⑦小田原営業所⑧沼津営業所)を置いています。

──修理の依頼はどのような形で入ってくるのでしょうか。

安村 一般のお客さまやガス事業者の方などが直接電話をしてくるケースもあれば、メーカーのコンタクトセンターから当社に依頼が入るケースもあります。

──安定した受注を得るためには、メーカーからの信頼を得ることが重要になりそうですね。

安村 はい。ノーリツ社がアフターサービス事業を立ち上げた初期の時代から、当社がお手伝いをさせてもらっています。その意味では、長年かけて築いてきた信頼関係があると自負しています。

──初期の時代というと、いつ頃ですか。

神奈川県を中心とした8拠点に総勢約60名のサービスマンが在籍

神奈川県を中心とした8拠点に総勢約60名のサービスマンが在籍

安村 1972年12月に先代社長である父(安村誠一郎氏)が有限会社ヤスムラ商会を設立して、ノーリツ社のアフターサービスの代行業務を開始しました。

──その後、少しずつ拠点数を増やしていったわけですね。

安村 1980年5月に株式会社となったのち、ノーリツ社の要請に応じて横浜市や平塚市などに営業所を開設していきました。

──いまは2010年に事業を承継した安村社長が会社のかじ取りをされています。経営戦略として力を入れている取り組みがあれば教えてください。

安村 当社の強みは、給湯器の修理を名目に、サービスマンがお客さまの目の前に立てることにあります。つまり、給湯器の修理にうかがったときに、しっかりとした修理技術と応対でサービスを提供できれば、再度、湯まわり関係の依頼をいただくことができるのです。飛び込み営業ではないので、気軽にふだんの生活に関する困り事を話してくれる方も多く、それを私たちが解決することで信頼獲得につながるケースも少なくありません。こうした強みを生かして、湯まわり修理のリピート需要を獲得していくことを、会社の経営戦略としています。たとえば、電球交換などの軽作業ができずに困っている高齢者の方には率先して作業を代わってあげるなど、「かゆいところに手が届くサービス」の提供に努めています。

──サービスマンの人数は。

安村 約60名です。給湯器の修理をするうえで必要になる技術面の研修には力を注いでおり、メーカー主催の研修のほか、電気工事士の資格取得を目指す若手社員対象の社内勉強会を開いたりもしています。

部門別管理の重要性を痛感し『FX4』の導入に踏み切る

──部門別の業績管理を徹底されているそうですね。

安村 今から十数年前にTKCの財務会計システム『FX4』(従来版)を導入したときから、営業所ごとの部門別管理を行っています。それ以前は、会社全体の売上高や利益はつかめていたものの、営業所単位の計数管理はできていませんでした。『FX4』を使えば、それができるようになるというので、1年間試しに使わせてもらったところ、ある営業所が大きな赤字を出していたことが明らかになったんです。そこは、人口の多い横浜方面にある営業所で、売上高も大きかった。だから誰もが当然、黒字だと思い込んでいたのですが、粗利(売上総利益)から人件費などを差し引いた営業利益ベースでみると実は赤字だったんです。要するに、仕事量に対してスタッフの人数や経費が多すぎたわけです。逆に、赤字だと思われていて人数が少なかった営業所が本当は黒字だったりと、部門別に業績を把握することの重要性を痛感しました。

──先入観があったわけですね。

安村 はい。十数年前だと、まだ仕事量が増加傾向にある時代だったので、会社が赤字になるようなことはなかったのですが、今はそんなドンブリ勘定を続けていたら大変なことになってしまいます。2016年10月に『FX4クラウド』に切り替えてからも、9部門(拠点は8つだが、「藤沢営業所」と「神奈川システム営業所」は別部門で管理)が、それぞれきちんともうけを出しているか毎月必ずチェックしています。

黒石陽子税理士

黒石陽子税理士

黒石陽子税理士 安村社長はより正確に各営業所の採算状況を知るために、部門間の「共通費の配賦」についてもしっかり行われています。営業車の購入代やリース代など車両関係の共通費については、「サービスマンの人数」を基準にして配賦。一般経費(備品代や光熱費など)の共通費については、「事務員を含めた社員人数」を基準に配賦しています。

安村 ほかにも営業所の「家賃」など、各部門の責任者の判断で決められないものは、共通費として配賦するようにしています。これらの配賦方法は、いまは私自身がすべて決めています。もともとルールづくりのときから携わっていたのと、経理担当の女性が産休に入ってしまい、経理業務を引き継げる者が自分しかいなかったという事情からです。

──仕訳入力の作業も社長ご自身でされているのですか。

安村 今年5月以降はそうですね。なかなか人が採用できない時代なもので(笑)。

黒石 そんな安村社長にとって頼もしい味方になってくれているのが、TKCのFinTech(フィンテック)サービスである「銀行信販データ受信機能」と、他の業務システムとのデータ連携が簡単にできる「仕訳読込テンプレート」の2つの機能です。

「仕訳ルールの学習機能」で経理業務を滞りなく遂行

──銀行信販データ受信機能は、インターネットバンキングの取引(入出金)データなどを自動収集し、そのデータをもとに仕訳を簡単に計上できる機能ですが、具体的にどんな仕訳入力の作業に役立てているのですか。

安村 当社では、大手警備保障会社が提供する入金機オンラインシステムを用いて、売上金(現金)の管理をしています。その入金データや、ノーリツ社に支払う部品代などの出金データの仕訳入力に、銀行信販データ受信機能を活用させてもらっています。

──一方で仕訳読込テンプレートを活用して、どんなデータとの連携をされているのでしょうか。

安村 例えば、スプレッドシートで管理している売り掛け台帳のデータや、給与計算のデータ、営業車のガソリンカードのデータなどを連携させています。

──その2つの機能を活用することで、だいぶ〝省力化〟が図れているのではないでしょうか。

安村 はい、これらの仕訳データを一つ一つキーボードに打ち込んでいたら大変な作業になってしまいます。私一人ではとても手に負えません。
 また、銀行信販データ受信機能にある「仕訳ルールの学習機能」は、私のように経理業務に不慣れな者にとっては非常にありがたいです。たとえば給料支払いの際の「預り金」といった、忘れてしまいがちな勘定科目についても一度システムに覚え込ませておけば次回以降、同種の取引データを読み込んだ際には、その仕訳を提示して入力を手助けしてくれます。

──社長の仕事に加えて、経理業務も行うことで得られたメリットがあればお聞かせください。

安村 営業所で働く現場スタッフは経理のことが見えないし、経理スタッフのほうは現場スタッフのことがよく見えません。その2つを私がやることによって、〝二度手間〟になっている無駄な作業が明らかになったことは、思わぬ成果でした。
 例えば、営業所の事務員は売掛データをつかむのに、インターネットバンキングの画面コピーを資料として使っていました。しかし長年の慣習から、本社に売掛データを報告する際には、月初に記帳した銀行通帳を送っていた。だから銀行通帳に記帳するという作業は、営業所の事務員にとっては二度手間でしかない。そこで、本社への報告もインターネットバンキングの画面コピーで構わないとして、業務を効率化させました。

──ところで、各営業所の責任者を集めての業績検討会のようなものは開催されていますか。

安村 「責任者会議」といった名称で、毎月行っています。会社全体や各営業所の業績について話し合う以外にも、最近は私のほうで「利益を出すとはどういうことか」を説明したり、「人件費を含めた費用対効果をよくするためにはどうすればよいか」などといった話もしています。

──今後の抱負は……。

安村 ITを活用した業務効率化をさらに行っていきたいと思っています。新製品の開発などを計画的に手掛ている製造会社などとは違い、当社の仕事はどちらかというと、日々の繰り返しに近いところがあります。それだけに、ITを活用して効率化しやすいし、そのぶん顧客サービスの充実に時間を費やせるようになる。世の中にある仕組みをいかに上手に使いこなしていけるかが、これからの課題になってくるでしょう。

企業情報

株式会社ヤスムラ

株式会社ヤスムラ

設立
1980年5月
所在地
神奈川県相模原市南区相模台4-2-23
売上高
9億5000万円
社員数
約90名
URL
http://www.yasumura.co.jp/

顧問税理士 ライトハウス税理士法人
小田原オフィス 所長 税理士 黒石陽子

所在地
神奈川県小田原市本町2-3-24青色会館2F
URL
https://www.lighthouse-tax.jp/

『戦略経営者』2018年10月号より転載)